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不動産相続の手続きガイド|流れ・必要書類・費用を司法書士が解説


《この記事の監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら

最終更新日:2026年3月22日
 

不動産を相続した場合、「何から手をつければいいのか分からない」という方は少なくありません。不動産の相続では、遺産分割協議、相続登記(名義変更)、税金の申告など、やるべきことが多岐にわたります。

このページでは、不動産を相続した際の手続きの全体像から、相続登記の具体的な進め方、必要書類、費用・税金まで、司法書士の実務経験をもとに分かりやすく解説します。

2024年4月1日から相続登記が義務化されました。不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記申請をしないと、正当な理由がない限り10万円以下の過料が科される可能性があります。過去の相続(義務化前に発生した相続)も対象です。詳しくは相続登記の義務化のページをご覧ください。

不動産相続の全体の流れ

不動産を相続したときの手続きは、大きく分けると以下の流れで進みます。すべてを同時に進める必要はありませんが、全体像を把握しておくと、今どの段階にいるのかが分かりやすくなります。

1
死亡届の提出・葬儀

亡くなった日から7日以内に市区町村役場へ死亡届を提出します。同時に葬儀の手配を進めます。

2
遺言書の有無を確認する

遺言書があるかないかで、その後の手続きの流れが変わります。自宅の金庫、貸金庫のほか、公証役場や法務局(自筆証書遺言書保管制度)に遺言書が保管されていないかも確認しましょう。

3
相続人を確定する

被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、法定相続人が誰であるかを確定させます。戸籍を集める際は、法定相続情報一覧図の取得も併せて検討すると、その後の手続きがスムーズになります。

4
相続財産を調査する

不動産の所在地・地番を確認します。固定資産税の納税通知書、登記事項証明書(登記簿謄本)、名寄帳(市区町村で取得可能)などを使い、被相続人名義の不動産をすべて洗い出します。なお、2026年2月2日からは所有不動産記録証明制度が施行され、登記記録上、被相続人が所有者として記録されている不動産の一覧を法務局で証明書として取得できるようになっています。預貯金や有価証券なども含めて相続財産の全体を把握しましょう。

5
遺産分割協議を行う

遺言書がない場合は、相続人全員で「誰がどの財産を取得するか」を話し合います。合意した内容を遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名・実印で押印します。この遺産分割協議書は、相続登記の申請に必要になります。遺産分割の進め方について詳しくは遺産分割協議・調停・審判についてをご覧ください。

6
相続登記(名義変更)を申請する

不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。管轄の法務局に必要書類を揃えて申請します。2024年4月から義務化されており、3年以内の申請が必要です。

7
相続税の申告(該当する場合)

相続財産の総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に税務署に相続税の申告・納付が必要です。

相続放棄・限定承認を検討する場合

相続財産に借金(負債)が多い場合や、不動産を相続したくない場合は、相続放棄を選択することもできます。相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったものとして扱われ、不動産を含むすべての相続財産を引き継がなくなります。

相続放棄の期限は、相続の開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。この期間を過ぎると原則として放棄ができなくなるため、早めの判断が求められます。

ご注意:相続放棄をしても管理義務が残る場合があります。民法改正(2023年4月施行)により、相続放棄をした時点でその不動産を現に占有している場合は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまでの間、自己の財産と同一の注意をもって保存する義務が生じます。

相続登記(名義変更)の手続き

不動産を相続した場合、法務局で「所有権移転登記」の申請を行い、不動産の名義を被相続人から相続人に変更します。一般的に「相続登記」や「不動産の名義変更」と呼ばれる手続きです。

相続登記の義務化(2024年4月1日施行)

2024年4月1日から、相続登記が法律上の義務となりました。主なポイントは以下のとおりです。

項目内容
申請期限不動産を相続したことを知った日から3年以内
罰則正当な理由なく期限を過ぎた場合、10万円以下の過料(行政上の制裁)
過去の相続施行日前に発生した相続も対象(施行日から3年=2027年3月31日が目安。ただし相続の事実を知った日が2024年4月以降の場合はその日から3年以内)
相続人申告登記遺産分割がまとまらない場合の暫定的な申告制度(義務の履行とみなされる)

特に、過去に親や祖父母から相続した不動産で名義変更をしていないケースは要注意です。原則として2027年3月31日までに登記申請が必要です(ただし、不動産を相続で取得したことを知った日が2024年4月1日以降の場合は、その日から3年以内)。詳しい解説は相続登記の義務化・期限についてのページをご参照ください。

相続パターンごとの登記手続き

不動産の相続登記は、相続の状況によって手続きの流れや必要書類が異なります。代表的な3つのパターンを確認しましょう。

パターン1:遺産分割協議による相続

遺言書がなく、相続人が複数いる場合に最も多いパターンです。相続人全員で話し合い、不動産を取得する人を決めます。合意内容をまとめた「遺産分割協議書」に相続人全員が署名し、実印を押印します。

たとえば、父が亡くなり、相続人が母・長男・長女の3人で、長男が実家の土地建物を相続する場合は、3人で遺産分割協議を行い、長男名義への登記を申請する流れになります。

パターン2:法定相続分による相続

遺産分割協議を行わず、法律で定められた相続分(法定相続分)どおりに共有名義で登記するパターンです。たとえば、配偶者と子2人が相続人であれば、配偶者が2分の1、子がそれぞれ4分の1ずつの共有持分で登記されます。

なお、法定相続分での登記は相続人のうち1人からでも申請できますが、共有名義のまま放置すると、将来の売却や建替え時にすべての共有者の合意が必要となり、トラブルの原因になることがあります。可能な限り遺産分割協議を行い、単独名義にしておくことをおすすめします。

パターン3:遺言による相続

被相続人が遺言書を残していた場合は、原則としてその内容に従って登記を行います。公正証書遺言であればそのまま登記申請に使用できますが、自筆証書遺言(法務局保管制度を利用していないもの)の場合は、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。

相続登記の必要書類

相続登記に必要な書類は、相続のパターンによって異なります。ここでは、最も多い「遺産分割協議による相続」の場合を中心に解説します。

共通で必要な書類

書類取得先・備考
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本本籍地の市区町村役場(広域交付制度を利用できる場合もあるが、コンピュータ化されていない古い戸籍は本籍地での取得が必要)
被相続人の住民票除票(または戸籍の附票)最後の住所地の市区町村役場
相続人全員の現在の戸籍謄本各相続人の本籍地の市区町村役場
不動産を取得する相続人の住民票住所地の市区町村役場
対象不動産の固定資産評価証明書不動産所在地の市区町村役場(東京23区は都税事務所)
登記申請書法務局の書式を使用して作成

パターン別の追加書類

相続パターン追加で必要な書類
遺産分割協議遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印)+相続人全員の印鑑証明書
法定相続分追加書類は基本的に不要
遺言による相続遺言書(公正証書遺言 or 検認済みの自筆証書遺言)

なお、法定相続情報一覧図を取得済みの場合は、戸籍謄本一式の代わりに法定相続情報一覧図の写しを提出することができます。手続き先が複数ある場合(法務局+銀行など)は、法定相続情報一覧図を取得しておくと便利です。

必要書類のさらに詳しい解説は、相続登記の必要書類一覧のページにまとめています。

不動産相続にかかる費用・税金

不動産を相続する際には、登記にかかる費用のほか、相続税が発生する場合もあります。ここでは主な費用項目を整理します。

登録免許税

相続登記を申請する際に法務局に納付する税金です。金額は以下の計算式で算出します。

登録免許税の計算式
固定資産評価額 × 0.4%(1,000分の4)
例:評価額2,000万円の不動産 → 登録免許税は8万円

固定資産評価額は、毎年送付される固定資産税の納税通知書(課税明細書)に記載されています。なお、土地の評価額が100万円以下の場合は登録免許税が免税となる特例措置があります(2027年3月31日まで)。

戸籍等の取得費用

書類手数料(1通あたり)
戸籍謄本450円
除籍謄本・改製原戸籍謄本750円
住民票・住民票除票200〜400円(自治体により異なる)
印鑑証明書200〜400円(自治体により異なる)
固定資産評価証明書200〜400円(自治体により異なる)

被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めると、通常3〜8通程度になります。戸籍の取得費用の合計は数千円〜1万円程度が目安です。

司法書士への依頼費用

相続登記を司法書士に依頼する場合の報酬は、一般的に5万円〜15万円程度が相場です。ただし、不動産の数や相続関係の複雑さによって変動します。

費用の内訳や具体的な料金例については、相続登記の費用・税金のページで詳しく解説しています。

相続税の基礎知識

相続税は、相続財産の総額が「基礎控除額」を超える場合にのみ課税されます。

相続税の基礎控除額
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
例:法定相続人が3人の場合 → 基礎控除額は4,800万円

不動産の相続税評価は、土地は「路線価方式」または「倍率方式」、建物は「固定資産税評価額」をもとに算出されます。自宅として利用していた土地については「小規模宅地等の特例」により、330㎡まで評価額を80%減額できる場合があります。

相続財産の総額が基礎控除額以下であれば、相続税の申告・納付は不要です。一方、基礎控除額を超える場合は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に税務署への申告が必要になります。相続税の申告・計算については、税理士に相談されることをおすすめします。

不動産相続でよくあるケース

不動産の相続は、相続する不動産の種類や相続人の状況によって対応が異なります。実務上よくご相談いただくケースをご紹介します。

実家を相続したが住む予定がない場合

相続した不動産に住む予定がない場合でも、相続登記は必要です。名義変更をしないまま放置すると、義務化に伴う過料のリスクがあるだけでなく、将来の売却や活用が困難になります。

住む予定のない不動産については、主に次の選択肢が考えられます。

まず「売却」です。相続登記を完了させた上で、不動産会社を通じて売却する方法です。被相続人の居住用財産を売却した場合、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例(空き家特例)があります。なお、相続人が3人以上の場合は2024年1月以降の譲渡で控除額が2,000万円に制限されます。相続不動産の売却の流れについては相続した不動産の売却と注意点のページも参考にしてください。

次に「賃貸活用」です。立地条件がよければ、賃貸物件として活用する方法もあります。ただし、建物の状態によってはリフォーム費用が発生します。

最後に「相続土地国庫帰属制度」です。2023年4月にスタートした制度で、一定の要件を満たす土地について、国に引き取ってもらう(所有権を国庫に帰属させる)ことが可能です。ただし、建物がある土地や抵当権が設定されている土地は対象外であるなど、利用条件があります。また、審査手数料(14,000円)と負担金(原則20万円〜)がかかります。

相続人が複数いて意見がまとまらない場合

相続人全員の合意が得られず遺産分割協議がまとまらない場合でも、相続登記の義務を果たす方法があります。

一つは「相続人申告登記」です。2024年4月から新設された制度で、「自分が相続人である」ことを法務局に申告するだけで、相続登記義務の履行とみなされます。遺産分割協議がまとまっていなくても、相続人が単独で申告できるため、期限内の対応が可能です。ただし、あくまで暫定的な措置であり、遺産分割が成立した後は改めて正式な相続登記が必要になります。

もう一つは「遺産分割調停・審判」です。話し合いでまとまらない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。調停でも合意に至らない場合は、審判により裁判所が分割方法を決定します。

古い相続(数十年前の相続)が未登記の場合

親や祖父母の代で相続が発生したにもかかわらず、名義変更がされていない不動産は少なくありません。この場合、時間の経過とともに相続人の数が増えていき(数次相続)、手続きが複雑になります。

たとえば、祖父名義の不動産を孫の代で名義変更する場合、祖父の相続人を確定させた上で、さらに先に亡くなった相続人の相続人も特定する必要があります。関係する相続人が10人以上になるケースも珍しくありません。

このようなケースでは、早めに専門家へ相談されることを強くおすすめします。時間が経つほど必要な戸籍の量が増え、相続人の特定も難しくなります。

自分で手続きするか、専門家に依頼するか

相続登記は、ご自身で法務局に申請することも可能です。一方で、専門家(司法書士)に依頼するケースも多くあります。それぞれのメリット・デメリットを確認しましょう。

自分で手続きする場合

自分で手続きを進める場合のメリットは、司法書士への報酬がかからないため費用を抑えられることです。法務局では登記手続きの相談窓口が設けられており、予約すれば担当者に書類の書き方などを相談できます。

一方、戸籍の収集に時間がかかったり、書類の不備で法務局から補正を求められることもあります。特に相続関係が複雑な場合(相続人が多い、数次相続が発生している等)は、相応の時間と労力が必要です。

自分で手続きする場合の具体的な流れは、相続登記を自分でやる方法のページをご覧ください。

司法書士に依頼する場合

司法書士に依頼する最大のメリットは、戸籍の収集から登記申請まで一括して任せられることです。申請書類の作成はもちろん、遺産分割協議書の作成サポートや、法定相続情報一覧図の取得代行なども対応可能です。

以下のようなケースでは、司法書士への依頼を検討されるとよいでしょう。

状況司法書士に依頼するメリット
相続人が多い(4人以上)戸籍収集・連絡調整の負担を軽減
遠方の不動産がある管轄法務局への郵送申請を代行
数次相続が発生している複雑な相続関係の整理・書類作成
仕事が忙しく時間が取れない手続き全体をワンストップで対応
不動産が複数ある管轄の異なる法務局への一括申請

相続登記を専門家に依頼するには

当事務所では、不動産の相続登記に関するご相談を承っております。相続登記の義務化に伴い、「何年も前に相続した不動産の名義を変えていない」「手続きの方法が分からない」といったご相談が増えています。

戸籍の収集から遺産分割協議書の作成、法務局への登記申請まで、手続きの全体をサポートいたします。まずはお気軽にお問い合わせください。

相続登記の手続き全般については、相続登記(不動産の名義変更)のカテゴリページもご覧ください。

よくある質問(FAQ)

不動産を相続したら必ず名義変更が必要ですか?

はい。2024年4月1日から相続登記は義務化されています。

不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記(名義変更)を申請する必要があります。正当な理由なく期限を過ぎた場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。

過去に発生した相続(義務化前の相続)も対象であり、原則として2027年3月31日までに登記申請が必要です(不動産を相続で取得したことを知った日が2024年4月1日以降の場合は、その日から3年以内)。

相続登記は自分でもできますか?

はい。ご自身で申請することも可能です。

法務局の相談窓口を利用すれば、登記申請書の書き方について担当者に相談することもできます。ただし、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成にはある程度の時間と手間がかかります。

相続人が多い場合や、数次相続が発生しているケースなど、相続関係が複雑な場合は司法書士への依頼を検討されるとよいでしょう。

遺産分割協議がまとまらない場合はどうすればよいですか?

「相続人申告登記」で義務を果たしつつ、協議を続けることができます。

2024年4月から新設された「相続人申告登記」制度を利用すれば、遺産分割協議がまとまっていなくても、相続人が単独で申告するだけで義務の履行とみなされます。

ただし、これはあくまで暫定的な措置であり、遺産分割が成立した後は改めて正式な相続登記が必要になります。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法もあります。

相続した不動産を売却するにはどうすればよいですか?

まず相続登記を完了させてから、売却の手続きに進みます。

被相続人名義のままでは不動産を売却することはできません。相続登記により相続人名義に変更した上で、不動産会社を通じて売却する流れになります。

なお、相続した空き家を売却した場合は、一定の要件を満たせば譲渡所得から最大3,000万円(相続人3人以上の場合は2,000万円)を控除できる特例があります。税金に関する詳細は税理士にご相談ください。

相続登記にはどのくらいの費用がかかりますか?

登録免許税+書類取得費用で数万円〜、司法書士に依頼する場合は報酬も加算されます。

登録免許税は固定資産評価額の0.4%です。例えば評価額2,000万円の不動産であれば8万円になります。これに戸籍等の取得費用(数千円〜1万円程度)が加わります。

司法書士に依頼する場合の報酬は、一般的に5万円〜15万円程度が相場です。詳しくは相続登記の費用・税金のページをご参照ください。

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司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Planやビジネスメディアへの寄稿実績多数。
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