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不動産相続の基礎知識|手続き・費用・税金を司法書士がやさしく解説


《この記事の監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら

最終更新日:2026年3月27日
 

ある日突然、親が亡くなり、実家の土地や建物を相続することになった——。

「名義変更はどうすればいいの?」「費用はいくらかかる?」「相続税は払うの?」と、不安を感じている方は多いのではないでしょうか。

不動産の相続は、預貯金や株式の相続と比べて手続きが複雑です。しかも2024年4月からは相続登記が義務化され、正当な理由なく申請を怠ると10万円以下の過料の対象となることがあります。

このページでは、不動産相続の全体像を司法書士がわかりやすく解説します。「まず何をすればいいのか」が5分で把握できるよう、手続き・費用・税金のポイントをコンパクトにまとめました。各トピックの詳しい解説ページへのリンクも掲載していますので、気になる部分から読み進めてみてください。

不動産を相続したら、まず何をすべき?

相続発生から名義変更までの全体の流れ

ご家族が亡くなってから不動産の名義変更(相続登記)が完了するまでには、おおむね次のようなステップがあります。

1死亡届の提出(7日以内)
2遺言書の有無を確認(※自筆証書遺言の場合は家庭裁判所での検認が必要)
3相続人の調査(戸籍の収集)
4相続財産の調査(不動産・預貯金など)
5遺産分割協議(遺言書がない場合、相続人全員で話し合い)
6相続登記の申請(法務局へ)
7相続税の申告(必要な場合のみ・10ヶ月以内)

すべてを一度に進める必要はありません。まずはステップ1〜4で状況を把握し、それから遺産分割の話し合いに入るのが一般的な流れです。

期限に注意が必要なもの

相続手続きの中には、法律で期限が決められているものがあります。特に重要な3つの期限を押さえておきましょう。

手続き期限補足
相続放棄3ヶ月以内相続の開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述が必要です
相続税の申告10ヶ月以内相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内。基礎控除以下なら申告不要です
相続登記3年以内2024年4月から義務化。届け出ないと10万円以下の過料の可能性があります

このうち相続放棄の3ヶ月は特に短いため、借金が心配な場合は早めに検討する必要があります。

相続登記(名義変更)の義務化とは?

2024年4月から、3年以内の登記申請が義務に

相続登記とは、亡くなった方の名義になっている不動産を、相続人の名義に変更する手続きのことです。以前は「いつまでにやらなければならない」という法律上の期限はありませんでしたが、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。

相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に、法務局へ登記の申請をしなければなりません。

届け出ないとどうなる?

正当な理由なく期限内に登記をしない場合、10万円以下の過料(行政上のペナルティ)が科される可能性があります。罰金とは異なり前科にはなりませんが、金銭的な負担が生じます。

過去の相続も対象です

義務化の対象は、2024年4月1日以降に発生した相続だけではありません。それ以前に発生した相続も対象です。この場合の期限は2027年3月31日までとなっています。

「何年も前に親が亡くなったけど、名義変更をしていない」という方は、早めに対応されることをおすすめします。長年放置していた相続でも、手続き自体は可能です。

ポイント:遺産分割がまだまとまらない場合は、「相続人申告登記」という簡易的な届出で基本的な申請義務を履行できます。ただし、遺産分割が成立した後は、その内容に沿った相続登記を別途行う必要があります。

不動産相続にかかる費用はいくら?

費用の全体像:3種類の費用がかかる

不動産の相続にかかる費用は、大きく分けて3種類あります。シンプルな案件であれば10〜20万円程度が一つの目安ですが、不動産の評価額や物件数によっては20万円を超えることもあります。

① 登録免許税(税金)
不動産の名義変更を法務局に申請する際に納める税金です。金額は固定資産税評価額 × 0.4%で計算します。たとえば評価額1,000万円の不動産なら、登録免許税は4万円です。

② 書類の取得にかかる実費
戸籍謄本や住民票、固定資産評価証明書などの取得にかかる費用です。おおむね数千円〜1万円程度が目安です。

③ 司法書士への報酬(専門家に依頼する場合)
司法書士に手続きを依頼した場合の報酬は、5万〜18万円程度が一般的な相場です。不動産の数や相続人の人数、案件の複雑さによって変動します。

評価額別の費用早見表

不動産の固定資産税評価額ごとに、おおよその費用総額をまとめました。

固定資産税評価額登録免許税実費司法書士報酬総額の目安
500万円2万円約0.5万円5〜10万円約7.5〜12.5万円
1,000万円4万円約0.5万円6〜11万円約10.5〜15.5万円
2,000万円8万円約0.5万円7〜13万円約15.5〜21.5万円
3,000万円12万円約0.5万円8〜15万円約20.5〜27.5万円
5,000万円20万円約0.5万円10〜18万円約30.5〜38.5万円

※上記は不動産1件・相続人の争いなし・遺産分割協議書作成を含む場合の目安です。実際の金額は個別の状況により異なります。

費用を安く抑える方法

相続登記の費用を少しでも節約したい場合、次のような方法があります。

自分で登記申請する:司法書士報酬が不要になり、実費+登録免許税のみで済みます。ただし書類の準備や法務局とのやり取りを自分で行う必要があります。

免税措置を活用する:相続した土地の評価額が100万円以下の場合、登録免許税が免税になる措置があります(※期間限定の特例です)。

戸籍の広域交付制度を利用する:2024年3月から、本籍地以外の市区町村窓口でも戸籍謄本を取得できるようになりました。交通費や郵送費の節約につながります(※利用できる人や取得できる範囲には制限があります)。

相続税はかかる?かからない?

基礎控除の計算式

相続税は、すべての相続で課税されるわけではありません。遺産の総額が基礎控除額を超えた場合にのみ、超えた部分に対して課税されます。

基礎控除の計算式
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

例:相続人が配偶者と子ども2人(計3人)の場合
→ 3,000万円 + 600万円 × 3 = 4,800万円

遺産の総額(不動産+預貯金+株式など)がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかからず、申告も不要です。

不動産2,000万円を相続した場合の具体例

たとえば、相続人が子ども2人で、遺産が「評価額2,000万円の実家と預貯金500万円」だったケースを考えてみましょう。

遺産総額は2,500万円。基礎控除は3,000万円+600万円×2=4,200万円です。遺産総額(2,500万円)が基礎控除(4,200万円)を下回っているため、このケースでは相続税はゼロです。

相続税がかかるのは全体の約9%

国税庁の統計によると、相続税の課税対象となるのは亡くなった方全体の約1割です(国税庁公表・令和5年分で9.9%)。つまり、大多数の方は相続税がかかっていない計算になります。

ただし、都市部に不動産をお持ちの方や、複数の不動産を所有されている方は基礎控除を超えるケースもありますので、心配な場合は税理士に相談されることをおすすめします。

ご注意:相続税と相続登記の費用(登録免許税など)は別のものです。相続税がかからない場合でも、名義変更に伴う登録免許税や実費は発生します。

不動産相続でよくある5つの疑問

Q1. 相続の対象に不動産は含まれる?

はい、不動産は相続財産に含まれます。土地・建物・マンションの区分所有権など、亡くなった方が所有していた不動産は、預貯金や株式と同様に相続の対象です。

なお、賃借権(借りている土地の権利)なども相続の対象になる場合がありますので、亡くなった方がどのような不動産に関わっていたか、確認しておくとよいでしょう。

Q2. 不動産と現金、相続するならどちらが得?

相続税の観点だけで考えると、一般的には不動産のほうが有利になるケースが多いです。不動産の相続税評価額は、実際の市場価格(時価)よりも低く評価されることが多いためです。たとえば、時価5,000万円の土地でも、相続税の計算上は3,000万〜4,000万円程度に評価される場合があります。

さらに、亡くなった方が住んでいた土地については「小規模宅地等の特例」により、評価額が最大80%減額される制度もあります。

一方で、不動産は現金と違い「分けにくい」という難点があります。相続人が複数いる場合は、誰が不動産を引き継ぐかで意見が分かれることも少なくありません。

Q3. 実家を相続したけど住まない場合は?

実家を相続したけれど自分は住まないという場合、選択肢は主に3つあります。

売却する:名義変更をした後に売却する方法です。相続した空き家を売却した場合、一定の要件を満たせば売却時の税金(譲渡所得税)が軽減される特例(最大3,000万円控除)を利用できる場合があります。

賃貸に出す:リフォームして賃貸物件として活用する方法です。

そのまま維持する:将来使う可能性がある場合は保有を続ける選択肢もあります。ただし固定資産税や維持管理費がかかり続ける点には注意が必要です。

いずれの選択をするにしても、まず相続登記(名義変更)を済ませることが前提です。亡くなった方の名義のままでは、売却も賃貸もできません。

Q4. 相続人が複数いて話がまとまらないときは?

相続人全員が合意できない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てる方法があります。調停委員が間に入り、話し合いを進めてくれます。

調停でもまとまらなければ「遺産分割審判」に移行し、裁判所が分割方法を決定します。

争いが長引くと手続き全体が止まってしまいますので、早い段階で弁護士や司法書士に相談されることをおすすめします。

Q5. 自分で手続きできる?司法書士に頼むべき?

相続登記は、ご自身で行うことも制度上は可能です。実際に、法務局の窓口では申請書の書き方を教えてもらえますし、法務局のウェブサイトには申請書の様式も公開されています。

ただし、次のようなケースでは司法書士に依頼するほうがスムーズに進む場合が多いです。

・相続人が多い(3人以上)
・不動産が複数ある
・亡くなった方の戸籍が複雑(転籍が多い、古い戸籍がある)
・数次相続(相続が何代にもわたって未処理)
・仕事が忙しく、平日に法務局や役所に行けない

まとめ:不動産相続で失敗しないために

不動産の相続は「名義変更の手続き」「費用の準備」「税金の確認」の3つが柱です。最後に、やるべきことを一覧表にまとめました。

やること期限費用の目安詳しい解説
相続放棄の検討3ヶ月以内3〜10万円(専門家依頼時)相続放棄の費用
相続登記(名義変更)3年以内7〜30万円程度手続きの流れ費用の詳細
相続税の申告10ヶ月以内税理士報酬:遺産の0.5〜1%基礎控除以下なら申告不要

大切なのは、一人で抱え込まないことです。不動産の相続は多くの方にとって初めての経験であり、分からないことがあるのは当然です。

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板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Planやビジネスメディアへの寄稿実績多数。
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