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《この記事の監修者》
司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら)
最終更新日:2026年4月4日
親が亡くなり、土地や建物といった不動産を相続することになった場合、単に「もらった」で済ませるわけにはいきません。相続登記という手続きを通じて、正式に自分の名義に変える必要があります。特に2024年4月の義務化以降、これは単なる推奨ではなく法的な義務となりました。
このガイドでは、司法書士として17年の経験から、相続登記の全体像をお伝えします。流れ、必要書類、費用、不動産の種類による違い、そして気をつけるべきポイントまで。相続不動産をお持ちの方が、最初のステップから完了まで、迷わずに進められるように、わかりやすく解説していきます。
相続登記とは、亡くなった方が所有していた不動産を、相続人の名義に変更するための法律手続きです。法務局(不動産登記を管理する公的機関)に申請して、登記簿の所有者名義を更新してもらう、という流れになります。
不動産は「登記簿」という公的な記録によって、誰が所有しているかが明確にされます。相続が発生した時点では、亡くなった方の名義のままです。これを新しい所有者(相続人)に変えるのが相続登記です。
相続が開始すると、不動産の権利自体は相続人に承継されます。ただし、登記名義が被相続人のままだと、売却や担保設定の手続きが進めにくく、金融機関や買主との調整も止まりやすくなります。名義を実体に合わせるのが相続登記です。2024年4月の義務化により、放置すると10万円以下の過料に処せられる可能性も生じました。
相続登記が必要な不動産は、登記されているものすべてが対象です。種類を区分すると、以下のようなものがあります。
登記されていない建物(未登記建物)や、既に滅失した建物の登記などは、事前に別の手続きが必要になることがあります。
相続手続きの第一歩は、被相続人(亡くなった方)が遺言を残しているかどうかの確認です。遺言がある場合とない場合で、その後のプロセスが大きく変わります。
遺言書は自宅で見つかることもありますが、公正証書遺言や法務局での保管制度を利用していないかも確認が必要です。公正証書遺言は、最寄りの公証役場で遺言検索を申し出れば、全国の公証役場で作成された遺言の有無と保管先を確認できます。
次に、法律上の相続人が誰であるかを確定させます。これは遺言がない場合や、遺言でも相続人全員の同意が必要な場合に重要です。相続人を確定させるには、被相続人の出生から死亡までの全ての戸籍謄本を取得する必要があります。
転籍を繰り返している場合や、再婚・養子縁組がある場合は、戸籍が複数の市町村に散らばっていることがあります。ここを取り違えると、後から相続人の漏れが判明して遺産分割協議をやり直す事態になりかねません。なお、2024年3月から「広域交付制度」がスタートし、最寄りの市区町村窓口で全国の戸籍をまとめて請求できるようになりました。ただし、兄弟姉妹や甥姪が相続人になるケースでは利用できないなど制約もあるため、収集が難航する場合は早めに専門家への相談を検討してください。
遺言がない場合、相続人全員で「誰が何をもらうか」を話し合う必要があります。この話し合いを遺産分割協議といい、その結果を書面にしたものが遺産分割協議書です。
相続登記では、どの相続人が該当不動産を取得するかを明記する必要があります。この協議が整わないと、登記申請に進めません。全相続人の実印による署名押印が必須です。
相続登記に必要な書類は、相続のパターン(遺言の有無、遺産分割協議の有無)によって異なります。一般的には以下のようなものが必要になります。
詳細な書類リストについては、必要書類ページをご覧ください。
必要な書類が揃ったら、不動産がある地域を管轄する法務局に申請します。申請は、法務局へ書面で提出する方法のほか、登記・供託オンライン申請システム(登記ねっと)を利用する方法があります。ただし、オンライン申請には専用ソフトやマイナンバーカード(電子署名)が必要なため、ご自身で手続きされる方の多くは法務局への直接持参か郵送を選んでいます。不安がある場合は、司法書士に依頼することをお勧めします。
申請から完了までは、通常1〜2週間程度ですが、法務局の混雑状況により異なることがあります。
登記が完了すると、法務局から登記完了証と登記識別情報通知書が交付されます。登記識別情報は、不動産ごと・登記名義人ごとに定められる12桁の符号で、将来の売却や担保設定の際に必要になるため、厳重に保管してください。
遺言がなく、相続人で遺産分割協議を行った場合の標準的な書類一覧です。
| 書類 | 取得先 | 備考 |
|---|---|---|
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 本籍地の市町村役場 | 複数の戸籍に分かれていることが多い。丹念に揃える必要がある |
| 相続人全員の現在の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市町村役場 | 被相続人の死亡日以後に取得したもの |
| 遺産分割協議書 | 自作または司法書士作成 | 全相続人の実印押印が必須。署名は自筆で記入 |
| 相続人の印鑑証明書 | 各相続人の住所地の市町村役場 | 有効期限の制限なし(遺産分割協議書に押印した実印の証明として添付) |
| 登記簿謄本 | 法務局(不動産のある地域) | 申請時は取得済みなら不要。法務局で確認可能 |
| 固定資産税評価証明書 | 不動産所在地の市町村役場 | 登録免許税の計算に必要 |
| 不動産を取得する相続人の住民票または戸籍の附票 | 住所地の市町村役場 | 登記簿に記載される住所の証明として必要 |
被相続人が遺言を残している場合は、遺言が有効であることを示す書類が必要です。
遺言もなく、相続人が一人である場合、または相続人全員が法定相続分のまま相続する場合は、遺産分割協議書は不要です。この場合、相続人全員の同意を明示する必要はなく、申請も比較的簡素化されます。
詳しくは必要書類ページで書類チェックリストをご確認ください。
相続登記をする際、最初に確認すべき費用が登録免許税です。これは国(法務局)に納める税金で、固定資産税評価額を基準に計算されます。
計算式は単純です:固定資産税評価額 × 0.4%
例えば、固定資産税評価額が1,000万円の土地を相続した場合、登録免許税は40,000円になります。評価額は固定資産税納税通知書に記載されていますが、市町村役場で「固定資産税評価証明書」を取得することでも確認できます。
相続登記を司法書士に依頼する場合、報酬がかかります。相場は事務所や地域、不動産の複雑さによって異なりますが、一般的には以下のような目安があります。
相続登記の費用プランについて、詳しくは費用ページをご覧ください。また、費用シミュレーションで、ご自身の案件に近い費用を概算することもできます。
戸籍謄本や印鑑証明書などの取得費用も必要です。一通あたり数百円程度ですが、戸籍が複数の市町村に分散していると、集計費用がかさむことがあります。通常、司法書士依頼時はこれら実費を別途請求される形になります。
土地の相続登記でまず確認すべきは、その土地が何であるかです。宅地であれば比較的シンプルですが、農地や山林、借地権の場合は追加手続きが必要なことがあります。
農地の場合は、相続人が農業を営んでいなくても相続による取得自体は可能です(農地法3条の許可は不要)。ただし、相続後おおむね10ヶ月以内に農業委員会への届出が義務付けられています。その後に売却・貸付け・転用をする場合には農地法上の規制を別途確認する必要があるため、早めに農業委員会に相談しておくのが賢明です。
山林や原野の場合は、相続人不明の問題や、分割が難しいという課題があります。複数の相続人がいる場合、その後の管理や売却をどうするかを事前に協議しておきましょう。
借地権がある場合、土地を借りる権利が登記されています。この権利も相続登記の対象です。地主の同意が必要な場合もあるため、地主との関係確認が大切です。
建物の相続で気をつけるべき点は、未登記建物の存在です。古い建物や、建て増しした部分が登記されていないことがあります。この場合、先に建物を登記してから相続登記に進む必要があります。
建物が複数ある場合(例えば、母屋と納屋)は、それぞれが別々の登記簿を持つため、複数の相続登記申請が必要になります。
また、建物が老朽化している場合、相続後に倒壊のおそれなどの理由で管理命令を受けることもあります。相続後は責任を持った管理が求められることを念頭に置いてください。
マンションは「区分所有」という形で登記されます。購入した専有部分(あなたの部屋)と、敷地権(土地を共有で持つ権利)がセットになっています。相続登記ではこれら両者を同時に登記する必要があります。
マンションの相続で注意すべきは、管理費や修繕積立金の滞納がないか確認することです。相続人は前所有者の滞納を引き継ぐことになるため、事前に確認が重要です。
共有名義のマンションの場合(例えば、配偶者と共有)は、各共有者の相続登記を別々に行う必要があり、手続きが複雑になります。
複数の人が共有で不動産を持っている場合、共有持分のみが相続の対象となります。例えば、親と子が共有していた土地を、親が亡くなった場合、親の共有持分だけが子に相続されます。
この場合、全共有者の同意がなくても相続登記できますが、その後の売却時には全員の同意が必要になることに注意が必要です。
2024年4月1日、相続登記が義務化されました。これまで「推奨」だった相続登記が、法的な義務へと変わったのです。この変更は、相続後の不動産が所有者不明となるのを防ぎ、不動産の有効活用を促進するための重要な施策です。
相続登記の期限は、「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日」から3年以内です。なお、遺産分割協議が後日成立した場合は、その成立日から3年以内に分割内容を反映した登記をする追加的義務も生じます。
実務的には、相続発生から3年以内に申請を完了させる必要があります。書類の収集に時間がかかることを考えると、できるだけ早めに動き始めることをお勧めします。
義務化は、2024年4月1日より前に発生した過去のすべての相続にも遡って適用されます。30年前、50年前に亡くなった方の名義のままであっても対象です。過去の相続に関する猶予期間は2027年(令和9年)3月31日までと目前に迫っています。
「昔の相続だから大丈夫」という考えは危険です。数次相続(相続人がさらに亡くなること)が発生して権利関係が複雑化する前に、至急手続きを進める必要があります。
期限を超えて相続登記を行わない場合、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。これは行政上の罰則であり、刑事罰ではありませんが、無視できない責任です。
また、過料に加えて、登記がないままでは不動産を売却することもできず、将来的なトラブルの種になる可能性が高いです。
相続登記には、従来の登記とは別に、2024年4月から「相続人申告登記」という新しい仕組みが導入されました。これは、遺産分割協議がまだ整っていない場合でも、「この不動産について、相続人がいる」という事実を登記簿に記録するものです。
この申出をしておけば、申出をした相続人については基本的な申請義務を履行したものとみなされ、過料の対象になりません。時間がかかる遺産分割協議の間に、まず申告だけしておくという戦略も有効です。ただし、後に遺産分割が成立したら、その内容を反映した正式な相続登記を別途行う必要があります。
相続した不動産に自分や家族が住む、または農地であれば引き続き農業に使うという選択肢が最も一般的です。この場合、相続登記を行い、必要に応じてリフォームするなど、有効活用できます。
相続した不動産を売却することは、よくある選択肢です。特に、相続人が複数いる場合や、遠く離れた不動産で管理が難しい場合に有効です。売却には相続登記が必須となります。
相続した不動産を売却する際は、譲渡所得税が発生することがあります。詳しくは税理士にご相談ください。また、当事務所では相続不動産の売却についても専門的なサポートを行っています。
賃貸用として貸し出し、毎月の家賃収入を得るという選択肢もあります。この場合も、相続登記を完了させた上で、賃貸管理会社との契約や、賃貸人としての責任を果たす必要があります。
相続した不動産が負債を伴う場合(例えば、大きな借金の抵当権がついている場合)や、管理する余裕がない場合は、相続放棄という選択肢があります。
ただし、相続放棄は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。相続した後ではなく、相続を受けるかどうかの判断段階で検討すべき手続きです。検討する場合は早めに専門家に相談してください。
相続登記は、被相続人から相続人へ、不動産の所有権を正式に移行させるための重要な手続きです。2024年4月の義務化に伴い、期限内に完了させることが法的な責任となりました。
必要書類は多く、書類作成も複雑です。特に相続人が複数いる場合や、遺産分割協議が必要な場合は、間違えると後の修正が大変になります。
当事務所では、相続登記に関する相談から申請までの全段階をサポートします。不動産の評価から費用計算、複雑な案件の対応まで、豊富な経験があります。

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