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相続登記を自分で申請したところ、法務局から「補正してください」「このままでは却下になります」と連絡が来て、どうすればよいか分からず不安になっていませんか。登記の世界では、申請に不備があったときの対応として「補正」「取下げ」「却下」という3つの手続きがあり、それぞれ意味も対処法もまったく異なります。この記事では、司法書士が、3つの違い・補正の進め方・却下されたときの登録免許税の扱い・自分で申請して詰まりやすい典型ミス・専門家に切り替えるべき判断基準まで、一般の方向けにわかりやすく解説します。
● 補正とは:申請書の記載誤りや不足書類などの不備を、登記官が定めた期間内に直すことです。その場で直せるものも、不足書類を後日提出するものもあり、申請はそのまま生かせます。
● 取下げとは:すぐに直せない不備があるとき、申請をいったん引っ込めて作り直すことです。重大な不備は却下される前に取下げで対応するのが実務の基本です。
● 却下とは:補正もされず不備が残ったまま、登記官が申請を正式に拒否することです(不動産登記法第25条)。実際にはまれです。
● 補正の期限:登記官が定めた相当の期間内です。期間内に補正すれば、その不備を理由に却下されることはありません(不動産登記規則第60条)。
● 登録免許税:取下げ・却下のどちらでも、納めた税は還付されます。さらに取下げの場合は、1年以内に同じ法務局で出し直すなら「再使用証明」で使い回せます(登録免許税法第31条第3項)。
● 詰まりやすい原因:戸籍の不足、登記簿上の住所がつながらない、登録免許税の計算ミス、遺産分割協議書の不備などです。
● 途中からの依頼も可能:補正・取下げの段階からでも司法書士に引き継げます。何度も補正連絡が来る・戸籍が揃わないときはご相談ください。
相続登記の申請に不備があったときの対応は、不備の程度によって「補正」「取下げ」「却下」の3つに分かれます。このうち補正と却下は登記官が行う対応で、取下げは申請人が申請をいったん撤回する手続きです。まずはこの3つの違いを押さえておくと、自分が今どの状況にあるのか、何をすればよいのかがはっきりします。
ポイントは、不備があっても、いきなり却下されるわけではないということです。法務局はまず補正で直せないかを案内し、補正で直せない重大な不備であれば、申請人に取下げを促すのが一般的な流れです。却下は、補正にも取下げにも応じないまま不備が残った場合の最終手段で、実務上はまれです。次の章から、それぞれの対処法を順に見ていきましょう。
補正とは、申請内容や添付書類に軽微な不備があるときに、登記官の指示にしたがってその不備を訂正することです。補正で対応できる場合は、申請をいったん取り下げる必要がなく、最初に出した申請をそのまま生かして登記を完了できます。法務局から「補正のお知らせ」が来たら、まずは落ち着いて指示の内容を確認しましょう。
補正の対象になるのは、申請の根幹には関わらない、その場で訂正できる程度の不備です。たとえば次のようなものです。
反対に、相続人を確定するための戸籍が根本的に足りない、遺産分割協議書に相続人全員の押印がそろっていない、といった申請の土台に関わる不備は補正では直せず、取下げて出し直すことになります。どこまでが補正で直せるかは登記官の判断によりますので、連絡が来たら遠慮なく担当部署に確認しましょう。
補正は、いつまでにでもよいわけではありません。登記官が定めた相当の期間内に補正する必要があります。法律上も、登記官が補正期間を定めたときは、その期間内はその不備を理由に申請を却下できないと定められています(不動産登記規則第60条)。裏を返せば、定められた期間内に補正しないと、その不備を理由に却下される可能性があるということです。補正のお知らせが来たら、提示された期限を必ず確認し、間に合わないと感じたら早めに法務局へ相談してください。
申請書を窓口や郵送で提出する書面申請の場合、補正は法務局の窓口に出向いて行うほか、軽微な不備の訂正や書類の追加であれば郵送(返信用封筒の同封など)で対応できるケースもあります。捨印で直せる軽微な誤字はその場で訂正でき、添付書類の不足は不足分を追加します。特に遠方の法務局へ申請した場合は、担当の登記官に連絡し、郵送での補正方法を確認しましょう。
「登記・供託オンライン申請システム」を使った電子申請(オンライン申請)の場合は、申請書の補正は原則としてオンラインで行います。システム上で補正情報を送信する形になります。どの方法で補正するか不明なときは、補正のお知らせに記載された連絡先(多くは電話)で確認するのが確実です。なお、相続登記の申請の流れ全体は相続登記を自分でやる方法のページでも解説しています。
補正が必要なときは、申請書に記載した連絡先に法務局から電話で連絡が入るのが一般的です(登記所によっては郵送等の場合もあります)。知らない番号だからと放置すると、補正期限を過ぎて却下につながるおそれがあります。相続登記を申請したあとに見慣れない固定電話の着信があったら、法務局からの補正連絡の可能性を疑い、折り返すようにしましょう。
却下とは、申請に不備があり、それが補正もされなかった場合に、登記官がその申請を正式に拒否することです。どのような場合に却下されるかは、不動産登記法第25条に具体的に定められています。
同条は、登記官は申請が次のいずれかに当たるときは却下しなければならない、と定めています(全部で13の事由があります。相続登記に関係しやすいものを中心に抜粋します)。
相続登記では、戸籍や遺産分割協議書、住所証明情報といった必要な添付書類が不足している場合も、補正できなければ却下の対象になります。そして同条の柱書のただし書きで、「当該申請の不備が補正することができるものである場合において、登記官が定めた相当の期間内に、申請人がこれを補正したときは、この限りでない」と定められています。つまり、補正できる不備を期間内に直せば却下されない、というのが法律のしくみです。
却下されると登記は実行されませんが、すでに納めた登録免許税は還付(返金)されます(過誤納金の還付。登録免許税法第31条)。なお、登録免許税を次の申請に使い回せる「再使用証明」は取下げの場合の制度(同法第31条第3項)で、却下の場合は利用できません。実務でも、重大な不備は却下される前に取下げで対応するのが一般的です。
却下されると登記そのものがされないため、登記が完了したときに発行される登記識別情報通知(いわゆる権利証にあたるもの)も交付されません。また却下の場合は「却下決定書」が出されます。重大な不備があるときに、登記官が却下する前に取下げを促すのは、却下という記録を避け、申請書や添付書面(戸籍・遺産分割協議書など)を確実に返してもらって、スムーズに出し直せるようにするためでもあります。登記識別情報については登記識別情報通知とはのページで詳しく解説しています。
戸籍が足りない、遺産分割協議書に不備がある、といった補正では直せない重大な不備があるときは、申請を取下げて、書類を整え直してから出し直します。実務では、却下されるよりも取下げのほうが申請人にとって有利な点が多いため、登記官から取下げを促されたら、これに応じて出し直すのが一般的です。
このような不備は、その場の訂正では直せず、戸籍を追加で集めたり協議書を作り直したりする必要があるため、いったん取下げてから再申請します。戸籍が集まらないケースの対処は相続登記の必要書類が取れない場合、戸籍の種類の違いは相続登記で必要な戸籍の種類のページもあわせてご覧ください。
取下げの手続きは、申請の方法に応じて次のように行います(不動産登記規則第39条)。なお、取下げができるのは登記が完了する前までです。
書面申請取下書を法務局に提出する
申請を取り下げる旨を記載した取下書を登記所に提出します。司法書士などの代理人が取り下げる場合は、取下げについての委任があることが前提になります。取り下げると、提出していた申請書および添付書面は還付(返却)されます。
電子申請取下げの情報をオンラインで送信する
登記・供託オンライン申請システムを使って、申請を取り下げる旨の情報を登記所に送信します。
取下げの場合、すでに納めた登録免許税は、「再使用証明」を受けて次の申請に使い回すか、還付(返金)してもらうかを選べます。再使用証明とは、印紙などで納付した登録免許税を、もう一度別の申請で使えるようにしてもらう証明のことです(登録免許税法第31条)。ただし、再使用証明には次の2つの制限があります。
同じ不動産について書類を整え直してすぐ出し直す場合は、再使用証明を使えば登録免許税を二重に負担せずに済みます。一方、別の法務局に出し直す場合や、しばらく再申請の見込みが立たない場合は、還付を選ぶことになります。なお、再使用証明は収入印紙や領収証書で納付した場合の制度で、電子納付(オンライン納付)の場合は原則として還付で処理されます。登録免許税そのものの計算方法は登録免許税の計算ツールで確認できます。
相続登記を自分で申請する方が、法務局から補正・取下げを求められやすい「つまずきポイント」には、いくつかの定番があります。あらかじめ知っておくと、申請前のチェックに役立ちます。必要書類の全体像は相続登記の必要書類一覧のページもご覧ください。
最も多いのが戸籍の不足です。相続登記では、被相続人の出生から死亡までの戸籍を切れ目なくそろえる必要があります。途中の改製原戸籍や除籍を取り漏らすと相続人を確定できず、補正・取下げの対象になります。本籍を何度も移している方は特に注意が必要です。
登記簿に記録された被相続人の住所と、戸籍の附票・住民票除票に記載された住所が一致せず、登記簿上の人物と亡くなった方が同一人であることを証明できないケースです。引っ越しや住所表記の変更で生じます。住所の沿革をたどる書類(戸籍の附票・住民票除票など)が追加で必要になりますが、これらが保存期間の経過で取得できない場合でも、近年の取扱いでは、固定資産評価証明書や権利証(登記済証)などで被相続人と登記名義人の同一性を確認できれば、相続人全員の印鑑証明書を添えた上申書までは求められないことが多くなっています。どの資料で足りるかは管轄の法務局にも確認しましょう。
登録免許税は固定資産税評価額をもとに計算しますが、複数の不動産の評価額の合算ミス、持分の計算ミス、課税価格や税額の端数処理の誤りが起こりやすいポイントです。税額が不足すると、不動産登記法第25条第12号の却下事由にあたります(不足の程度によっては補正で追納できることもあります)。
遺産分割協議書は、相続人全員が記名または署名し、実印を押し、印鑑証明書を添える必要があります(後日の紛争防止のため自署が安心です)。一人でも実印の押印が漏れていたり、印鑑証明書が不足していたりすると、そのままでは登記が完了せず、補正や協議書の作り直しが必要になります。また、不動産の表示が登記記録と一致していない(地番・家屋番号の誤り、私道や持分の記載漏れなど)と、その不動産について登記できません。協議書の書き方は遺産分割協議書の書き方のページで解説しています。
相続登記では、相続関係説明図(相関図)を提出すると、これが戸籍一式の原本還付の代わりになり、戸籍をすべてコピーして「原本に相違ありません」と記載する手続きを省けます。ただし、相関図に相続人の記載漏れや、本籍・住所・生年月日などの誤りがあると、戸籍の原本が戻らず補正を求められます。相続関係説明図のひな形・書き方は相続関係説明図の書き方のページをご覧ください。
申請書の「登記の目的」「登記の原因と日付(相続の場合は被相続人が亡くなった日)」の書き間違いや、不動産の表示が登記記録と一致していないといったミスです。これらは不動産登記法第25条の第6号・第8号などに関わります。申請書の書き方は相続登記の申請書の書き方のページで確認できます。
相続が複数回重なっている数次相続や、相続人が先に亡くなっている代襲相続では、相続人や持分が複雑になり、見落としや計算違いが起こりやすくなります。原則は相続の流れに沿って登記しますが、中間の相続人が一人だけの場合など、一定の条件で中間の登記を省略できることもあります。条件を満たさないのに中間を飛ばそうとして補正・取下げになるケースもあります。複雑な相続関係は数次相続の相続登記のページもあわせてご覧ください。
軽微な補正であればご自身で対応できますが、次のような状況に当てはまる場合は、補正・取下げを繰り返して時間と費用を無駄にする前に、司法書士へ引き継ぐことをおすすめします。
司法書士は、申請の途中からでも引き継ぐことができます。すでに集めた戸籍や作成した書類を活かしながら、不足を補い、正しい形に整えて再申請します。当センターは全国対応で、郵送・オンラインを活用してお手続きを進められますので、遠方の法務局でも対応可能です。遠方の不動産については田舎・地方の不動産を遠方から名義変更のページもご覧ください。
当センター(司法書士法人 不動産名義変更手続センター)は、不動産の名義変更を専門とする司法書士事務所で、年間2,000件超の相談実績があります。自分で申請して補正・却下でお困りの方の途中からのご依頼も数多くお引き受けしています。初回相談(無料)では、現在の状況をお伺いし、ご依頼いただいた場合のおおまかな手続きの流れと費用の目安をご案内します。個別の必要書類の精査や申請内容の確認は、正式にご依頼いただいた後に行います。
当センターが対応するのは登記手続き(相続登記・贈与登記・財産分与登記・売買登記)です。相続税の申告などの税務は税理士の業務範囲となりますので、必要な場合は税理士にご相談ください(相続税の申告が必要な案件では、関東対応エリアを中心に提携税理士のご紹介も可能です)。相続登記の費用の内訳は相続登記の費用、当センターの料金プランは料金プラン一覧のページでご確認いただけます。
相続登記の申請に不備があっても、いきなり却下されるわけではありません。軽微な不備は「補正」で直し、すぐに直せない重大な不備は「取下げ」て出し直すのが基本で、「却下」は補正にも取下げにも応じなかった場合の最終手段です。補正には登記官が定めた期限があり、取下げの場合は登録免許税を再使用証明か還付で扱えます。自分で申請して詰まりやすいのは、戸籍の不足・登記簿上の住所がつながらない・登録免許税の計算ミス・遺産分割協議書の不備などです。何度も補正連絡が来る、戸籍がそろわない、平日に法務局へ行けないといった場合は、補正・取下げの段階からでも司法書士に引き継げますので、無理に一人で抱え込まずにご相談ください。
Q. 補正と却下はどう違いますか?
補正は、誤字や軽微な書類不足など、その場で直せる不備を登記官の指示で訂正することで、最初の申請をそのまま生かせます。却下は、不備が補正もされないまま残ったときに、登記官が申請を正式に拒否することです(不動産登記法第25条)。実務では、補正で直せない重大な不備は、却下される前に取下げて出し直すのが一般的です。
Q. 補正には期限がありますか?
あります。登記官が定めた相当の期間内に補正する必要があります。その期間内に補正すれば、その不備を理由に却下されることはありません(不動産登記規則第60条)。逆に、期間内に補正しないと、その不備を理由に却下される可能性があります。補正のお知らせに記載された期限を必ず確認してください。
Q. 却下されたら登録免許税は戻ってきますか?
はい、納めた登録免許税は還付されます(過誤納金の還付。登録免許税法第31条)。なお、登録免許税を次の申請に使い回せる「再使用証明」は取下げの場合の制度(同法第31条第3項)で、却下の場合は利用できません。実務でも、重大な不備は却下される前に取下げで対応するのが一般的です。
Q. 取下げと却下、どちらがよいのですか?
一般的には取下げのほうが有利です。取下げなら、納めた登録免許税を1年以内に同じ法務局で使い回せる「再使用証明」(登録免許税法第31条第3項)か還付を選べ、提出した申請書・添付書面(戸籍や遺産分割協議書など)も確実に手元に戻ります。却下の場合は還付のみで、却下処分という記録も残ります。重大な不備があるとき、登記官が却下する前に取下げを促すのは、こうした理由からです。
Q. 補正の連絡はどのように来ますか?
申請書に記載した連絡先に、法務局から電話で来るのが一般的です(登記所によっては郵送等の場合もあります)。相続登記を申請したあとに見慣れない固定電話からの着信があったら、法務局からの補正連絡の可能性があります。放置すると補正期限を過ぎて却下につながるおそれがあるため、折り返すようにしましょう。
Q. 自分で補正できるのはどの範囲ですか?
軽微な誤字(捨印で訂正できるもの)、添付書類の軽微な不足、登録免許税の軽微な不足の追納、原本還付の形式的な不備など、その場で訂正できる程度のものです。相続人を確定する戸籍が根本的に足りない、遺産分割協議書に相続人全員の押印がそろっていない、といった申請の土台に関わる不備は補正では直せず、取下げて出し直すことになります。
Q. 一度取下げ・却下になった後、同じ内容で再申請できますか?
不備の原因を解消すれば、再申請できます。たとえば足りなかった戸籍をそろえる、遺産分割協議書を整え直す、といった対応をしたうえで申請し直します。取下げの場合は、取下げの日から1年以内であれば、同じ法務局で再使用証明を使って登録免許税を負担し直さずに再申請できます。
Q. 途中から司法書士に頼むことはできますか?
できます。すでにご自身で申請して補正・取下げになった案件でも、その段階から司法書士が引き継げます。集めた戸籍や作成済みの書類を活かしながら、不足を補い、正しい形に整えて再申請します。当センターは全国対応で、郵送・オンラインを活用して遠方の法務局にも対応できますので、お困りの場合はご相談ください。
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