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相続登記の必要書類が取れない場合(要点まとめ)
● 同一性の書類が取れなくても可能:住民票の除票・戸籍の附票が取れなくても、代替書類で相続登記を進められます(戸籍そのものの収集は別途必要です)。
● カギは「同一性の証明」:登記簿上の住所と亡くなった方の最後の住所をつなぎ、同一人物だと示すことが目的です。
● 登記済権利証があれば最も簡単:被相続人名義の権利証を提供すれば、不在籍・不在住証明書や上申書は原則不要(平成29年法務省民二第175号)。
● 納税証明書等+不在籍+不在住:不動産の表示がある固定資産税の納税証明書(または評価証明書)と、不在籍・不在住証明書があれば、相続人全員の上申書も省略できます(令和5年法務省民二第1620号)。
● 最終手段は上申書:代替書類が揃わないときは、相続人全員の実印・印鑑証明書付きの上申書で対応します。
● 除籍が戦災で滅失:市区町村長が発行する「交付できない旨の証明書」と残っている戸籍で登記できます。
● 外国籍の相続人:戸籍がない国は、死亡証明書・宣誓供述書(Affidavit)などで相続関係を証明します。
被相続人(亡くなった方)の戸籍謄本・住民票の除票・戸籍の附票が、保存期間の経過や戦災・災害で取得できない——。古い相続や、何十年も放置されてきた相続登記では決して珍しくないことです。しかし、書類が取れなくても相続登記をあきらめる必要はありません。法務局は一定の条件のもとで、代替書類による相続登記を認めています。本記事では「どの書類が取れないと、何で代わりにできるのか」を、登記済権利証・固定資産税の納税証明書・不在籍証明書・不在住証明書・相続人全員の上申書といった具体的な手段とともに、根拠となる法務省通達を示しながら司法書士が解説します。
関連記事:私道など非課税の不動産を見落とさないために「名寄帳」での確認が有効です。取得方法は名寄帳とは?私道漏れを防ぐ取得方法 をご覧ください。
2024年(令和6年)4月から相続登記が義務化され、不動産を相続したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが法律上の義務となりました(不動産登記法第76条の2)。正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料が科される可能性があります(同法第164条第1項)。この義務は2024年以前に発生した相続にもさかのぼって適用されるため、長年放置してきた古い相続も、これから手続きを進めなければなりません。
ところが、放置されてきた相続登記には共通の壁があります。それは必要な書類がもう取れなくなっているということです。役所は書類を永久に保管しているわけではなく、保存期間が決められているからです。書類が取れなくなる原因は、大きく次の3つに分けられます。
このうち①の「住民票の除票・戸籍の附票がなぜ取れないのか(保存期間と廃棄の仕組み)」については、戸籍の附票・住民票が保存期間経過で取れないときの対処法で詳しく解説しています。本記事では、これらの書類が取れないことを前提に、相続登記を完成させるための代替手段に絞って説明します。
まず全体像をつかんでおきましょう。取れない書類ごとに、相続登記で使える主な代替手段は次のとおりです。
相続登記では、登記簿(登記記録)に記載されている所有者と、亡くなった方が同一人物であることを証明しなければなりません。これを「被相続人の同一性の証明」といいます。
通常は、登記簿上の住所から亡くなった時点の住所までを住民票の除票または戸籍の附票でつなぎ、同一人物であることを示します。しかし、これらが保存期間の経過で取れない場合は、別の書類で間接的に同一性を証明することになります。代替手段は次の3パターンです。
被相続人名義の登記済権利証(いわゆる「権利書」)の提供があれば、住所の同一性を証明するための不在籍証明書・不在住証明書や、相続人全員の上申書を添付する必要はありません(戸籍謄本など相続登記に必要な他の書類は別途必要です)。権利証は、その不動産を取得したときに登記名義人本人に交付されるものであり、それを所持していること自体が同一性を強く裏づけるためです。
平成29年までは明確な根拠規定がなく、権利証に加えて不在籍・不在住証明書や上申書まで求められるケースもありました。しかし平成29年3月23日法務省民二第175号により、登記済証(登記済権利証)の提供で被相続人の同一性を確認できることが正式に示されました。
権利証もない場合は、固定資産税の納税証明書または固定資産評価証明書(あわせて「納税証明書等」といいます)+不在籍証明書+不在住証明書の3点をそろえる方法があります。この3点がそろえば、後述する相続人全員の上申書も不要とされています(令和5年12月18日法務省民二第1620号)。ポイントは、その納税証明書等に不動産の表示(地番・家屋番号)と納税義務者(被相続人)の住所・氏名が記載されていることです。登記官がこれを登記記録・住民票・戸籍と照合し、被相続人の同一性を確認します。
ただし、この取扱いには条件があります。登記記録上の不動産の表示・所有権登記名義人の氏名が納税証明書等の不動産の表示・納税義務者の氏名と一致し、納税証明書等の納税義務者の住所・氏名が住民票の写し等の被相続人の住所・氏名と一致し、さらに住民票の写し等の本籍・氏名が戸籍等の謄本の本籍・氏名と一致する——というように、書類どうしが連続してつながっていることが求められます。
固定資産税の納税証明書と固定資産評価証明書は、どちらも代替書類として使えます(地方税法第20条の10。あわせて「納税証明書等」)。大切なのは、その書類に不動産の表示(地番・家屋番号)と納税義務者の住所・氏名が記載されていることです。市区町村によって様式が異なり、納税証明書にもともと不動産の表示が載っている場合もあれば、別途課税明細書などで補う場合もあります。取得前に「不動産の表示が記載されるか」を役所に確認すると確実です。なお評価証明書は、相続登記の登録免許税を計算するためにも必要です。
上記①②のいずれも難しい場合は、最終手段として不在籍証明書・不在住証明書に、相続人全員の上申書(印鑑証明書付き)を添えて提供する方法が実務上認められています。上申書については後の章で詳しく説明します。
代替②③で登場する2つの証明書は、いずれも「その住所・本籍には該当する人がいない(いなかった)」ことを役所に証明してもらう書類です。
いずれも、登記簿上の住所を管轄する市区町村の窓口で取得します。名称や発行の運用は自治体によって多少異なるため、取得前に役所へ確認すると確実です。
「相続登記には被相続人の住民票の除票が必ず必要」と思われがちですが、そもそも除票や戸籍の附票が不要になるケースもあります。同一性の証明という目的を満たせれば、必ずしも除票そのものでなくてよいからです。
たとえば、登記簿上の住所と、戸籍に記載された「本籍」が一致している場合は、戸籍謄本(除籍謄本)自体にその住所(本籍)が記載されているため、住民票の除票を別途用意しなくてよいことがあります。ここで注意したいのは、亡くなった方の戸籍には「最後の本籍」は載りますが「最後の住所」は記載されないという点です。そのため、本籍と登記簿上の住所が異なる場合は、生前に一度も引っ越しをしていなくても、住所の連続性を証する除票や戸籍の附票が原則として必要になります。
戸籍一式を法務局に提出して認証を受ける法定相続情報一覧図を使う場合、戸籍関係の確認はその一覧図に集約できます。ただし一覧図は戸籍がそろっていることが前提のため、戸籍そのものが滅失している場合には万能ではありません。
上申書とは、相続人が「不動産の登記名義人と亡くなった方は同一人物に相違ない」ことを法務局に対して確約するために提出する書面です。代替①②がそろわない場合の最終的な手段として用います。
前述のとおり、登記済権利証がある場合(平成29年民二175号)や、納税証明書等+不在籍+不在住証明書がそろう場合(令和5年民二1620号)には、上申書は不要です。これらがいずれもそろわないときに、上申書で補完します。
上申書には、おおむね次の内容を記載します。
上申書には相続人全員が実印で押印し、全員の印鑑証明書を添付します。さらに不在籍証明書・不在住証明書や固定資産税の納税証明書・評価証明書を付けて補強する運用が一般的です。
相続登記では原則として、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍・除籍・改製原戸籍を提出し、相続人を確定します。しかし古い除籍や改製原戸籍は、戦災などで滅失して取得できないことがあります。
戸籍滅失の最大の原因は戦災です。第二次世界大戦中の空襲により、東京・大阪・名古屋・広島・長崎などの主要都市で多くの戸籍が焼失しました。とくに昭和20年前後の戸籍への影響が大きく見られます。そのほか、関東大震災などの震災・火災・水害、役場の火災や保管施設の老朽化なども原因となります。明治・大正期から昭和初期の古い除籍ほど、こうした災害に遭遇している可能性が高くなります。
除籍等が滅失して謄本を取得できない場合は、市区町村長が発行する「除籍等の謄本を交付することができない」旨の証明書(告知書・廃棄証明書などと呼ばれます)を取得し、残存する戸籍とあわせて法務局に提供します。これにより、取得できない部分を補って相続登記を進めることができます。
廃棄証明書・文書滅失証明書は、その戸籍を管理していた市区町村役場で取得できます。取得の際に重要なのは、どの時期の戸籍が欠けているのかを正確に特定することです。出生から死亡までの戸籍をつなぐ過程で、どの部分が取得できないのか、どの役場が管轄なのかを把握したうえで請求します。
相続人や被相続人が外国籍の場合、日本の戸籍謄本のように家族関係を網羅的に証明する書類がない国も多くあります。その場合は、各国の制度に応じて次のような書類で相続関係を証明します。
これらの外国語の書類には、原則として日本語の翻訳文を添付します。国や時代によって取得できる書類が大きく異なるため、外国籍が関係する相続は、早い段階で専門家に相談することをおすすめします。
ここまでの内容を、実際の進め方として整理すると次のようになります。
関連記事:戸籍がそろわず取下げ・補正になりそうなときは相続登記が補正・却下になったら|取下げ・再申請の手順をご覧ください。
書類が取れない相続登記は、どの代替書類が使えるかの判断、市区町村との書類のやりとり、管轄法務局との事前協議など、通常よりも専門的な対応が必要になります。ご自身での手続きが難しいと感じたら、無理をせず専門家にご相談ください。
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