抵当権抹消登記の必要書類【要点まとめ】
● 金融機関から届く書類(3点):住宅ローン完済後に金融機関から届く弁済証書(解除証書)/登記識別情報通知または登記済証/金融機関の委任状。郵送または窓口で受け取ります。
● 自分で用意する書類:登記申請書(法務局のホームページから様式をダウンロード)。登記事項証明書は添付必須ではありませんが、申請書を正確に作成するため取得を推奨します。
● 本人確認書類・印鑑証明書:法務局への抵当権抹消の申請では不要(認印で可)です。所有権に関する登記ではないため、申請人(所有者)の印鑑証明書の添付は求められません。
● 書類を紛失・金融機関が合併/商号変更した場合:登記識別情報(登記済証)を紛失しても事前通知制度で申請できます。金融機関の名称が変わっている場合は、会社法人等番号の記載や変更の沿革がわかる書類が追加で必要です。
● 費用:登録免許税は不動産1個につき1,000円(土地+建物なら2,000円)。自分で手続きして約3,000〜5,000円、司法書士に依頼して約1.5〜2.5万円が目安です。
住宅ローンを完済すると、金融機関から抵当権抹消に必要な書類が届きます。「これって自分で手続きできるの?」「費用はどのくらい?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、抵当権抹消登記は自分で手続きすることが可能です。ただし、書類の準備や法務局での申請にはいくつかの注意点があります。
この記事では、抵当権抹消登記を自分で行う方法を、必要書類・費用・申請手順・よくある失敗パターンまで司法書士が分かりやすく解説します。
関連記事:住宅ローンを完済する前に名義変更したい方は「住宅ローンが残る家の名義変更|離婚・借り換え・費用を司法書士が解説」をご覧ください。借り換え・債務引受・売却の3つの方法と銀行承諾の取り付け方、ローン完済前と完済後の判断基準を解説しています。
抵当権抹消登記とは
抵当権とは
抵当権とは、住宅ローンなどの借入れに対して、不動産を担保に設定する権利のことです。金融機関は万が一ローンが返済されなかった場合に備えて、土地や建物に抵当権を設定します。
この抵当権は法務局の登記簿(登記記録)に記録されており、ローンを完済しても自動的には消えません。抵当権を登記簿から消すための手続きが「抵当権抹消登記」です。
抵当権の仕組みや設定・抹消の全体像については「抵当権とは?仕組み・設定・抹消の流れを司法書士が解説」をご覧ください。
抵当権抹消登記が必要になるケース
抵当権抹消登記が必要になる主なケースは以下のとおりです。
- 住宅ローンを完済したとき — 最も一般的なケースです
- 不動産を売却するとき — 抵当権が残ったままでは売却できません
- 新たにローンを組むとき — 借り換え等で新しい抵当権を設定する前に、既存の抵当権を抹消する必要があります
- 相続した不動産に抵当権が付いているとき — ローン完済済みなのに抵当権だけ残っている場合があります
相続による不動産の名義変更については「相続登記の費用│司法書士報酬・登録免許税・実費の内訳」で詳しく解説しています。
抵当権抹消登記は自分でできる?
抵当権抹消登記は、登記手続きのなかでは比較的シンプルな部類に入ります。必要書類さえそろっていれば、司法書士に依頼しなくても手間をかければ自分で手続きすることが可能です。
自分で手続きする場合の難易度
抵当権抹消登記は、所有権移転登記(名義変更)などと比べると、必要書類の数が少なく、申請書の記載事項もシンプルです。法務局の窓口で相談しながら進めることもできるため、はじめて登記手続きをする方でも対応できる場合が多いです。
ただし、以下のような場合は手続きが複雑になることがあります。
- 金融機関が合併・商号変更をしている場合
- 不動産の所有者の住所や氏名が登記簿と異なる場合
- 書類を受け取ってから長期間が経過している場合
- 複数の不動産に抵当権が設定されている場合
抵当権者が行方不明で共同申請ができない、抵当権者の法人がすでに解散しているといった古い抵当権(休眠担保権)は、通常の抹消登記とは別の方法で抹消します。詳しくは「休眠担保権の抹消とは?古い抵当権を消す方法・費用を司法書士が解説」をご覧ください。
司法書士に依頼すべきケース
以下に該当する場合は、司法書士への依頼を検討されることをおすすめします。
- 平日に法務局へ行く時間がない
- 書類の内容に不安がある
- 相続登記と同時に手続きする
- 不動産売却で急いでいる。不動産売却と同時に行う
- 金融機関から届いた書類の内容がよく分からない
抵当権抹消登記の必要書類
金融機関から届く書類
住宅ローンを完済すると、金融機関から以下の書類が届きます(郵送の場合は完済後1〜3週間程度)。これらは抵当権抹消登記に必要な書類ですので、大切に保管してください。
| 書類名 | 内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 弁済証書(解除証書) | ローンが完済されたことを証明する書類。抵当権を解除する旨が記載されている | 金融機関によって名称が異なる場合あり(「抵当権解除証書」「抵当権放棄証書」等) |
| 登記識別情報通知または登記済証 | 抵当権を設定した際に金融機関に発行された書類 | 2005年以前の設定は「登記済証」、以降は「登記識別情報通知」 |
| 金融機関の委任状 | 金融機関が登記手続きを委任するための書類 | 委任者欄は金融機関が記入済み。受任者欄に申請人の住所・氏名を記入する |
自分で用意する書類
| 書類名 | 入手方法 |
|---|---|
| 登記申請書 | 法務局のホームページからダウンロードするか、法務局の窓口で入手 |
| 登記事項証明書(登記簿謄本) | 法務局の窓口またはオンラインで取得。現在の登記内容を確認するために必要 |
登記事項証明書は申請の必須添付書類ではありませんが、登記簿の内容(不動産の表示・抵当権の内容等)を正確に申請書に記載するために取得しておくことをおすすめします。
登記識別情報通知について詳しくは「登記識別情報通知とは?権利証との違い・紛失時の対処法」をご覧ください。
抵当権抹消登記の手続きの流れ
ここからは、実際に自分で抵当権抹消登記を行う手順を解説します。
1金融機関からの書類を確認する
届いた書類がすべてそろっているか確認します。解除証書・登記識別情報(または登記済証)・委任状の3点が基本です。不足があれば金融機関に連絡しましょう。
2登記事項証明書を取得する
法務局の窓口またはオンライン(法務省の登記・供託オンライン申請システム「かんたん登記・供託申請」)で、対象不動産の登記事項証明書を取得します。抵当権の内容(受付番号・債権額・債務者等)を正確に確認するために必要です。手数料は窓口請求で600円、オンライン請求は窓口受取490円・郵送受取520円です。
3登記申請書を作成する
法務局のホームページから「抵当権抹消登記申請書」のひな形をダウンロードし、記載例を参考に作成します。主な記載事項は以下のとおりです。
| 記載事項 | 記載例 |
|---|---|
| 登記の目的 | 抵当権抹消 |
| 原因 | 令和○年○月○日 弁済(解除・主債務消滅など)※解除証書の日付&原因を記載 |
| 権利者 | 不動産の所有者の住所・氏名 |
| 義務者 | 金融機関の本店所在地・名称(※登記簿上の表示と一致させる) |
| 添付情報 | 登記識別情報(または登記済証)、登記原因証明情報、代理権限証明情報、会社法人等番号 |
| 不動産の表示 | 登記事項証明書の記載どおりに転記(所在・地番・家屋番号等) |
4登録免許税を納付する
不動産1個につき1,000円の登録免許税がかかります。たとえば土地1筆と建物1棟の場合は2,000円です。収入印紙を購入して申請書に貼付します(法務局内の印紙売り場で購入可能)。
5法務局に申請する
管轄の法務局(不動産の所在地を管轄する法務局)に申請書と添付書類を提出します。窓口持参のほか、郵送でも申請できます。郵送の場合は、返送用の封筒(切手貼付済み)を同封しましょう。
6登記完了を確認する
申請から完了まで通常1〜2週間程度かかります。法務局から「登記完了証」が交付されたら手続き完了です。念のため、登記事項証明書を取得して抵当権が抹消されていることを確認しましょう。
抵当権抹消登記にかかる費用
自分で手続きする場合の費用
| 費用項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 1,000円 × 不動産の個数 | 土地1筆+建物1棟なら2,000円 |
| 登記事項証明書(事前確認用) | 490〜600円 × 不動産の個数 | オンライン請求(窓口受取490円・郵送受取520円)が窓口請求(600円)より安い |
| 登記事項証明書(完了確認用) | 490〜600円 × 不動産の個数 | 任意だが取得を推奨 |
| 郵送費用 | 数百円程度 | 郵送申請の場合のみ |
| 合計目安 | 約3,000〜5,000円 | 土地1筆+建物1棟の場合 |
司法書士に依頼する場合の費用
司法書士に依頼する場合は、上記の実費に加えて司法書士報酬がかかります。報酬の相場は10,000〜20,000円程度です(不動産の数や事案の複雑さにより変動します)。
費用比較表
| 項目 | 自分で手続き | 司法書士に依頼 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 2,000円(2個の場合) | 2,000円(同額) |
| 証明書取得費 | 約1,000〜2,000円 | 実費として請求 |
| 司法書士報酬 | 0円 | 10,000〜20,000円 |
| 合計目安 | 約3,000〜5,000円 | 約15,000〜25,000円 |
| 手間・時間 | 書類作成+法務局への訪問(半日〜1日) | 書類を渡すだけ |
| リスク | 書類不備で補正(再訪問)の可能性あり | 専門家がチェックするためミスが少ない |
費用だけを見れば自分で手続きするほうが1万円以上安くなりますが、平日に法務局へ行く時間がない方や、書類の記載に不安がある方は司法書士に依頼するほうが確実です。
抵当権抹消登記を放置するとどうなる?
住宅ローンを完済しても、抵当権抹消登記に法律上の期限はありません。しかし、放置するとさまざまな不利益が生じる可能性があります。
不動産の売却や新たな融資ができない
登記簿上に抵当権が残っている不動産は、買主や金融機関から見れば「まだローンが残っている物件」に見えます。不動産を売却する際や、新たに住宅ローンを組む際には、必ず抵当権の抹消が求められます。
売却が決まってから慌てて手続きすると、スケジュールがタイトになりトラブルの原因になりかねません。
相続時に手続きが複雑になる
不動産の所有者が亡くなり相続が発生した場合、抵当権が残ったままだと相続人が抹消手続きを行う必要があります。金融機関から届いた書類を紛失していると、再発行の手間が増え、手続きがさらに複雑になります。
書類の紛失・金融機関の変更リスク
時間が経つほど以下のリスクが高まります。
- 書類の紛失:金融機関から届いた解除証書や委任状を紛失すると再発行が必要(数週間〜数か月かかる場合あり)
- 金融機関の合併・商号変更:登記簿上の金融機関名と現在の名称が異なると、変更を証明する書類が追加で必要になり、手続きが煩雑になります
抵当権抹消登記のよくある失敗と注意点
金融機関が合併・商号変更している場合
登記簿上の抵当権者(金融機関)の名称が、現在の名称と異なる場合があります。たとえば「○○信用金庫」が「△△銀行」に合併された場合などです。
この場合、合併や商号変更を証明する書類(閉鎖事項全部証明書など)を追加で添付する必要があります。会社法人等番号を申請書に記載することで、これらの書類添付を省略できる場合もあります。
所有者の住所・氏名が変わっている場合
抵当権設定時から引っ越しや結婚で住所・氏名が変わっている場合、抵当権抹消登記の前に「住所変更登記」や「氏名変更登記」が必要になることがあります。この場合は別途申請書を作成し、登録免許税(不動産1個につき1,000円)も追加でかかります。
なお、住所・氏名の変更登記は令和8年4月1日から義務になっており、変更日から2年以内(令和8年4月1日より前の変更で登記していないものは令和10年3月31日まで)に申請する必要があります。正当な理由がないのに怠ると、5万円以下の過料の対象になることがあります。検索用情報の申出をしている方は、法務局が意思確認のうえ職権で変更する仕組み(スマート変更登記)を使える場合もありますが、実施の時期は法務省が決めるため、抵当権抹消に合わせて個別に頼むことはできません。
共有名義の不動産の場合
不動産が共有名義(夫婦共有など)の場合、抵当権抹消登記の申請は共有者のうち1人から行うことができます。全員が申請人になる必要はありませんが、申請書の「権利者」欄にはすべての共有者を記載します。
書類を長期間放置していた場合
金融機関から書類を受け取って数年が経過している場合でも、抵当権抹消登記は可能です。ただし、以下の点に注意が必要です。
- 資格証明書は期限切れになっているため、会社法人等番号を記載して代用する
- 委任状の日付が古い場合でも、基本的にはそのまま使用できる
- 解除証書を紛失している場合は、金融機関に再発行を依頼する
抵当権抹消登記のよくある質問
Q. 抵当権抹消登記に期限はありますか?
法律上の期限はありません。ただし、前述のとおり放置するほど書類の紛失や金融機関の変更によって手続きが複雑になるリスクが高まります。ローン完済後、なるべく早く手続きすることをおすすめします。
Q. 登記識別情報を紛失した場合はどうすればいい?
金融機関が保管していた登記識別情報通知(または登記済権利証)を紛失した場合でも、抵当権抹消登記は可能です。「事前通知制度」という法務局の手続きを利用することで、登記識別情報がなくても申請できます。金融機関に相談すれば対応してもらえるのが通常です。
Q. 郵送で申請できますか?
はい、郵送での申請も可能です。申請書と添付書類一式を管轄の法務局に送付します。返送用の封筒(レターパックなど)を同封してください。ただし、書類に不備があった場合は法務局に出向いて補正する必要がある点にご注意ください。
Q. オンラインで申請できますか?
法務局の「登記・供託オンライン申請システム」を利用してオンラインで申請することも可能です。ただし、電子証明書の準備や専用ソフトのインストールが必要で、個人の方が抵当権抹消登記のためだけに利用するにはハードルが高いかもしれません。窓口か郵送のほうが現実的な場合が多いです。
Q. マンションの場合、不動産の個数はいくつですか?
マンション(区分建物)の場合、登録免許税は「敷地権の個数 + 建物1個」で計算します。たとえば敷地権が1つなら不動産2個で2,000円、敷地権が2つなら不動産3個で3,000円です。登記事項証明書で敷地権の数を確認しましょう。
Q. 抵当権抹消登記に必要な書類は?
抵当権抹消登記の必要書類は、金融機関から届く3点(弁済証書(解除証書)/登記識別情報通知または登記済証/金融機関の委任状)と、自分で用意する登記申請書が基本です。登記事項証明書は必須の添付書類ではありませんが、申請書を正確に作成するために取得しておくことをおすすめします。
Q. 抵当権抹消登記に本人確認書類(免許証など)は必要ですか?
法務局へ抵当権抹消登記を申請する際、申請人(不動産の所有者)の本人確認書類や印鑑証明書の添付は不要で、認印で申請できます(抵当権抹消は所有権に関する登記ではないためです)。用意するのは金融機関から届く弁済証書・委任状・登記識別情報(または登記済証)と、登記申請書です。なお、司法書士に依頼する場合は、司法書士法にもとづく本人確認のため、運転免許証やマイナンバーカードなどの提示・コピーを求められます。
Q. 金融機関の委任状に有効期限はありますか?
登記申請に使う金融機関の委任状に、法律上の有効期限はありません。数年前に受け取った委任状でも、原則そのまま使用できます。ただし、委任状に記載された金融機関の代表者が交代している場合は、会社法人等番号を記載するか、代表者の変更の沿革がわかる書類が必要になることがあります。
Q. 抵当権抹消の必要書類はダウンロードできますか?
ダウンロードで入手できるのは登記申請書の様式のみで、法務局のホームページから取得できます。弁済証書(解除証書)・金融機関の委任状・登記識別情報は金融機関が発行・保管する書類のため、ダウンロードでは用意できません。住宅ローンの完済後に、金融機関から郵送または窓口で受け取ります。
抵当権抹消登記に関するその他の解説記事は「抵当権抹消登記の関連記事一覧」からご覧いただけます。
まとめ:抵当権抹消登記は早めの対応がおすすめ
抵当権抹消登記のポイントをまとめます。
- 住宅ローン完済後、抵当権は自動では消えない。抹消登記の手続きが必要
- 自分で手続きする場合の費用は約3,000〜5,000円(登録免許税+証明書代)
- 司法書士に依頼する場合は報酬を含めて約15,000〜25,000円
- 必要書類は金融機関から届く3点+自分で作成する申請書
- 放置すると売却や新規融資の際に支障が出るほか、書類紛失のリスクも
- 完済後3か月以内の手続きを目安に、早めの対応がおすすめ
手続きに不安がある方や、お忙しくて法務局に行く時間がない方は、司法書士にご相談ください。当センターでは抵当権抹消登記のお見積りを無料でお出ししています。
