実家の未登記建物の登記費用と相続手続き(要点まとめ)
● 未登記の確認:固定資産税納税通知書は届くのに登記簿(全部事項証明書)が取得できない状態。市町村の家屋課税台帳には載っているが法務局の登記簿には未登録
● 登記費用の目安:シンプルな案件で総額11〜19万円程度。内訳は表題登記(土地家屋調査士)8〜12万円+所有権保存登記(司法書士)3〜7万円+登録免許税 評価額×0.4%。建物の評価額や資料の状況で増減します
● 相続登記義務化との関係:未登記建物は相続登記義務化(不動産登記法第76条の2)の対象外。ただし表題登記義務(同法第47条第1項・所有権取得から1か月以内)があり、違反すると同法第164条第1項により10万円以下の過料に処される可能性があります。実務上、過料が科された例があるか不明ですが、未登記のままでは売却やローン設定ができない実利上のデメリットが大きい点が問題です
● 必要書類が揃わない場合:建築確認済証・工事完了引渡証明書が無くても、固定資産税関係資料・火災保険関係資料・上申書(証明者の印鑑証明書付き)などの代替の証明資料一式で表題登記を進められる場合があります。どの資料を使えるかは事案ごとに異なり、表題登記を扱う土地家屋調査士が判断します
● 役割分担:建物の物理的情報を登録する「表題登記」は土地家屋調査士、所有者情報を登録する「所有権保存登記」は司法書士。順番に申請が必要です
● 費用を抑えるには本人申請:本人申請で総額を抑えられる場合があります。ただし図面作成・補正対応の負担が大きく、司法書士側でも書類の精査が必要なため、古い建物や増改築がある建物は土地家屋調査士・司法書士への依頼が現実的です
● 古い実家・数次相続は加算:祖父の代から放置された未登記建物は、数代にわたる戸籍収集・相続人確定が必要となり、調査費の加算や手続き期間の長期化で総額15〜20万円を超えるケースもあります
「実家を相続することになったけれど、固定資産税の通知書はあるのに、登記簿(全部事項証明書)が見当たらない」「法務局で調べてみたら、『未登記』だと言われた」
相続の手続き中にこのような事実に直面し、どうすればいいのか不安を感じていませんか?結論から言うと、未登記の建物でも相続(権利の引き継ぎ)は可能ですが、そのまま放置することにはいくつかのリスクが伴います。
この記事では、未登記建物(表題登記がない建物)とはどのような状態なのか、そのままにしておくデメリット、そして具体的にどのように相続手続きを進めればよいのかを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
そもそも「未登記(表題登記がない)」とは?
建物が「未登記」であるとは、簡単に言えば「法務局にある登記簿に、その建物の記録が存在しない」状態のことです。
不動産の登記簿は、大きく分けて2つの部分で構成されています。表題部(ひょうだいぶ)は、どこに、どんな大きさの、どんな建物があるか(物理的状況)を示す部分です。権利部(けんりぶ)は、誰が所有者で、担保に入っているかなど(権利関係)を示す部分です。
通常、家を建てたらまず「表題部」を作り(表題登記)、その後に「権利部」を作ります(保存登記)。「未登記」とは、最初のステップである「表題部」すら作られていない状態を指します。
「登記がないのに、なぜ固定資産税の請求書は届くの?」と不思議に思うかもしれません。実は、法務局の「登記」と、市町村の「課税」は別の仕組みで管理されています。役所は航空写真や現地調査で建物を把握し、「家屋補充課税台帳」という独自のリストで管理して税金を請求しています。そのため、未登記であっても固定資産税は課税されるのです。
未登記の建物を相続する2つの選択肢
未登記の建物を相続する場合、あなたの今後のプランによって取るべき手続きが異なります。
建物が古く資産価値がほとんどない場合や、近いうちに取り壊す予定がある場合は、わざわざ費用をかけて登記を作る必要性は低いです。
手続き:建物の所在する市町村役場へ「家屋所有者変更届(未登記家屋所有者変更届)」を提出します。
効果:固定資産税の納税義務者が、亡くなった方から相続人に切り替わります。法的な登記は作られません。
今後もその家に住む、リフォームローンを組む、あるいは将来的に売却を考えている場合は、きちんとした登記を作成する必要があります。
手続き:土地家屋調査士と司法書士に依頼して、正規の登記簿を作成します(手順は後述)。
未登記のまま放置するリスク・デメリット
「お金がかかるなら、未登記のままでいいや」と考える前に、以下のリスクを知っておく必要があります。
これが最大のリスクです。不動産を売買する際や、銀行でお金を借りて抵当権を設定する際には、登記簿が存在することが大前提です。未登記のままでは、買い手がつきませんし、融資の審査も通りません。
登記がないと、第三者に対して「これは私の家です」と法的に主張(対抗)することが難しくなります。もし将来、相続人の間で揉め事が起きた際や、次の相続(数次相続)が発生した際に、権利関係の整理が非常に困難になります。
不動産登記法では、建物の所有権を取得してから1ヶ月以内に表題登記を行う義務があります。これを怠ると10万円以下の過料に処される可能性があります。これまでは厳密に運用されてこなかった側面もありますが、近年の相続登記義務化の流れもあり、放置することは法的に推奨されません。
未登記建物を相続登記する具体的な手順
未登記建物を「きちんと登記して相続する」場合の流れは以下の通りです。通常の相続登記とは順番が異なるため注意が必要です。
まずは相続人の誰がその建物を引き継ぐかを話し合います。遺産分割協議書には、未登記建物を特定するために、家屋番号の代わりに「家屋補充課税台帳の番号」や、納税通知書に記載されている「家屋番号欄の番号」などを記載します。
(所在)〇〇市〇〇町一丁目
(家屋番号)未登記のためなし(納税通知書番号:XXXXX)
(種類)居宅
(構造)木造瓦葺2階建
(床面積)1階 XX㎡、2階 XX㎡
ここが重要です。未登記建物の最初の窓口は司法書士ではなく、「土地家屋調査士」です。調査士が現地を測量し、図面を作成して法務局へ「表題登記」を申請します。
★お得なポイント:直接名義の登記
相続の場合、亡くなった親の名義で一度登記してから相続人の名義に変える必要はありません。相続人(あなた)の名義で直接「表題登記」を申請できます(不動産登記法第47条)。これにより、余分な登録免許税を節約できます。
表題部ができあがったら、次に司法書士に依頼して「所有権保存登記」を行います。これで権利証(登記識別情報)が発行され、名実ともにあなたの所有物となります。
かかる費用の目安(総額11〜19万円)
未登記建物を登記する場合、通常の相続登記よりも費用がかかる傾向にあります。建物の表題登記には現地調査や図面作成が必要になるためです。総額の目安は、シンプルな案件で11〜19万円程度、古い実家や数次相続が絡む場合は15〜20万円を超えることもあります。
| 項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 土地家屋調査士(表題登記) | 8万〜12万円程度 | 建物の大きさや、古い図面が残っているかどうかで変動。複雑な建物は15万円程度になることもあります |
| 司法書士(所有権保存登記) | 3万〜7万円程度 | 前提となる相続手続きへの関与の有無などによって変動します |
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 表題登記 | 非課税(登録免許税はかかりません) |
| 所有権保存登記(登録免許税) | 固定資産税評価額の0.4% |
※一定の要件を満たす住宅であれば、保存登記の登録免許税に軽減税率(0.15%など)が適用される場合があります。
当センターでは、相続関係書類の整理と所有権保存登記を担当します。建物の現地調査・図面作成・表題登記は土地家屋調査士の業務のため、土地家屋調査士にご依頼いただきます(関東対応エリアでは提携の土地家屋調査士をご紹介できます)。費用の総額は事前にお見積りでご案内しますので、相続登記の費用ページもあわせてご確認ください。
未登記建物は相続登記義務化の対象?よくある誤解を整理
2024年4月から相続登記が義務化されたことで、「未登記建物も3年以内に登記しないと過料になるのか」という不安の声をよくいただきます。結論から言うと、未登記建物は相続登記義務化(不動産登記法第76条の2)の直接の対象外です。
相続登記義務化は「登記簿に所有権の登記がある不動産」を対象とした制度です。未登記建物には登記簿そのものが存在しないため、「相続登記をする」という前提が当てはまりません。
ただし「放置してよい」わけではありません。未登記建物の所有権を取得した相続人は、不動産登記法第47条第1項により「所有権の取得から1か月以内に表題登記を申請する義務」を負います。これに違反すると、同法第164条第1項により10万円以下の過料に処される可能性があります(実務上、過料が科された例があるか不明ですが、法律上の義務として定められています)。
過料のリスク以上に実務で問題になるのは、未登記のままでは売却やリフォームローンの設定ができないという点です。「相続登記の義務がないから放置してよい」という判断は誤りで、相続した不動産が処分しにくい状態になってしまいます。将来の売却・活用の予定があるなら、早めに表題登記・所有権保存登記を済ませておくのが安心です。
建築確認済証などの必要書類がない場合の進め方
古い実家の未登記建物では、表題登記に使う建築確認済証や工事完了引渡証明書(建築会社が発行する書類)が失われていることがよくあります。「書類がないから登記できない」とあきらめる必要はありません。代替の証明資料を組み合わせることで、表題登記を進められる場合があります。
建物が誰のものかを客観的に示すため、次のような資料を組み合わせて申請します。
| 資料 | 役割 |
|---|---|
| 固定資産税の課税明細・納税通知書 | 市町村が建物の存在と納税者を把握していることを示す(公的資料として重視されます) |
| 火災保険関係の資料・工事代金の領収書 | 建物の建築経緯・所有関係を補強する |
| 上申書(証明者の印鑑証明書付き) | 客観資料が乏しい場合に、所有関係を説明する補完資料 |
| 相続関係書類(戸籍など) | 被相続人から相続人への承継を示す |
近年は、市町村発行の家屋関係資料や納税実績といった公的な客観資料の積み上げが審査の鍵となります。どの資料を使えるかは、建物の建築経緯・課税状況・相続関係・法務局の運用によって変わるため、最終的な判断は表題登記を扱う土地家屋調査士が行います。当センターでは、相続関係書類の整理と所有権保存登記の申請を中心にご案内し、表題登記は土地家屋調査士の業務範囲のため、土地家屋調査士にご依頼ください(当センターは登記実務に特化)。
表題登記は自分でできる?本人申請の現実
費用を抑えるために「表題登記を自分で申請できないか」と考える方もいます。理論上は本人申請も可能です。表題登記自体には登録免許税がかからないため、本人申請なら実費(住民票・固定資産関係資料の取得費、図面作成にかかる費用など)に収まります。
ただし、表題登記には次のようなハードルがあります。
| 必要な作業 | 難しさ |
|---|---|
| 建物の現地確認・床面積の算定 | 正確な測定が必要 |
| 建物図面・各階平面図の作成 | 精密な縮尺図面が求められ、専門知識がないと不備が出やすい |
| 古い建物の調査 | 増築部分や未課税部分の有無の確認が必要 |
図面の不備があると、法務局の審査で補正(修正)を何度も求められるのが実情です。古い実家や複雑な形状の建物では実務的に難しいため、表題登記は土地家屋調査士に依頼するのが現実的です。費用を抑えたい場合は、表題登記を本人申請し、所有権保存登記のみ司法書士に依頼するという方法もあります。この場合でも、所有権保存登記の段階で別途、登録免許税(評価額×0.4%)が必要です。
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よくある質問(Q&A)
未登記建物の相続は、通常の相続よりも一手間かかりますが、手順さえ踏めば確実に自分名義にすることができます。売却や融資の予定があるなら、必ず登記をする。取り壊し予定なら、役所の届け出だけで済む場合もある。登記する場合、まずは「土地家屋調査士」へ表題登記を依頼することになるが、相続手続き全般については「司法書士」へ先に相談することをお勧めする。
ご自身が「今後その建物をどうしたいか」によって最適なルートは異なります。まずは、司法書士に現状を相談し、方針を検討することから始めてみましょう。
