不動産名義変更手続センターでは、相続や贈与時の土地・家・マンションなどの不動産名義変更手続きについて、お客さまを完全サポートいたします!
《この記事の監修者》
司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら)
地主への地代支払義務は、借地権の相続人が、相続開始時から負担することになります。
遺言又は遺産分割において、借地権の相続人として定められた者は、相続開始時に借地権を取得したことになるからです(民法985条1項、民法909条本文)。
なお、借地権を単独ではなく共同で相続している場合は、共同相続人全員が借地権者となります。
この場合、地代支払義務はその性質上分割できない債務(不可分債務、民法430条)であるため、地主は借地権者の誰に対しても地代の全額を請求することができます(民法430条、436条)。
借地権者の一人が地主に弁済をしたときは、その借地権者は、他の借地権者に対し、弁済額のうち各自の負担部分に応じた額を自己に支払うよう請求することができます(民法442条1項)。
借地(借地権付きの土地)も通常の不動産と同様に譲渡(売買、贈与等)することができます。
ただし、借地は借地権という負担が設定されている土地であり、借地権者(借地権を有する者)との関係を考慮する必要があります。
※現在設定されている借地権の大部分は賃借権であるといわれていることから、「借地権は賃借権」という前提でご説明します。
借地権設定者の地位も一緒に移転
借地権者が対抗要件(自己の権利を第三者に主張するための要件)を備えた場合において、借地が譲渡されたときは、その土地の借地権設定者(借地権者に対して借地権を設定している者)の地位は、譲受人に移転します(民法605条の2第1項)。
従来は、地位の移転について明文の規定がなく、判例により、物件の所有者である賃貸人がその物件を譲渡したときは、特段の事情のない限り、賃貸人の地位も移転するとされていましたが(最判昭和39年8月28日民集18巻7号1354頁)、法改正により、物件の譲渡により賃貸人の地位も移転することが民法で明文化されました。
なお、借地権の対抗要件とは、次のいずれかです。
借地権である賃借権を登記することは稀なので、通常は2の対抗要件を備えることになります。
敷金返還債務も一緒に移転
借地の譲渡に伴って、譲受人に借地権設定者の地位が移転したときは、譲渡人が借地権者から受領済みの敷金を返還する債務は、譲受人が承継することになります(民法605条の2第4項)。
このことも、従来は明文の規定がなく、判例により、物件の譲渡に伴い賃貸人たる地位に承継があった場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は、未払賃料債務があればこれに当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人に承継されるとされていましたが(最判昭和44年7月17日民集23巻8号1610頁)、法改正により、敷金返還債務は譲受人が承継することが民法で明文化されました。
借地権者の承諾は不要
判例では、賃貸借の目的となっている土地の所有者が、その所有権とともに賃貸人たる地位を他に譲渡する場合には、賃貸人の義務の移転を伴うからといって、特段の事情のないかぎり、賃借人の承諾を必要としないとされています(最判昭和46年4月23日民集25巻3号388頁)。
契約上の地位の移転は義務の移転を伴うものなので、基本的には、相手方の承諾が必要になります。しかし、賃貸人の主要な義務は賃借人に土地を使用収益させるというものであり、賃貸人が変わったからといって、特に賃借人に不利益となるものではないので、賃借人の承諾は不要とされています。
譲受人は登記を備える必要がある
借地の譲受人が、借地権設定者の地位を承継したことを借地権者に主張するには、その土地について所有権移転の登記を備える必要があります(民法605条の2第3項)。
例えば、借地の譲受人が登記を備えていない場合に、借地権者が従来どおり譲渡人に地代を支払ったとしても、譲受人は今は自分が借地権設定者だから自分に支払うようにと主張することができません。
借地の売買契約書
上記のとおり、借地が売却されたときは、その土地の借地権設定者の地位は、買主に移転するのが原則ですが、後日の紛争を防止するため、売買契約書には通常の内容に加えて、事案に応じて次のような事項を明記しておくのがよいでしょう。
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