「全部事項証明書」は、不動産の登記記録の全部(抹消された過去の権利の履歴を含む)を証明する書類で、登記事項証明書(登記簿謄本と呼ばれることもあります)の中で最もよく取得される種類です。銀行や不動産会社から「登記簿謄本を提出してください」と言われた書類も、多くはこの全部事項証明書を指します。登記簿謄本は、現在の正式名称「登記事項証明書」とほぼ同じ書類で、ほとんどの場面では「全部事項証明書」を取得すれば対応できます。本ページでは、全部事項証明書とは何か、登記簿謄本・登記事項証明書との関係、3つの取得方法(法務局窓口・オンライン・郵送)、主な4種類(全部・現在・一部・閉鎖)の使い分け、費用、必要な地番・家屋番号の調べ方までを司法書士がわかりやすく解説します。
全部事項証明書(登記簿謄本)の要点まとめ
● 名称:登記簿謄本は、現在の正式名称「登記事項証明書」と実務上ほぼ同じ書類です。
● 取り方:法務局窓口は600円、オンライン送付は520円、オンライン窓口交付は490円です。
● 種類:全部事項証明書・現在事項証明書・一部事項証明書・閉鎖事項証明書の主な4種類があります(このほか、所有権の名義人の住所・氏名のみを証明する所有者証明書もあります)。
● 必要情報:取得には「地番・家屋番号」が必要で、郵便配達用の「住所」とは別物です。
● 誰でも取得可:他人の不動産でも所有者の同意なしに、本人確認書類や委任状なしで取得できます。
全部事項証明書とは?登記簿謄本・登記事項証明書との関係
「登記簿謄本(とうきぼ・とうほん)」は、不動産の所有者・面積・抵当権などの情報を証明する書類の古くからの呼び方です。現在の法務局の正式な書類名は「登記事項証明書」ですが、銀行・不動産会社・税務署では今でも「登記簿謄本」という言葉が広く使われています。
「登記簿謄本」という呼び方は今でも広く使われる
かつては全国の法務局で紙の登記簿を保管し、その内容を写したもの(=謄本)を交付していました。これが「登記簿謄本」です。
その後、全国の登記所でコンピュータ化が進み、現在では登記情報は電子データで管理されています。電子化された登記情報を証明する書類が「登記事項証明書」で、これが現在の正式名称です。
銀行・不動産会社・税務署・確定申告書類などで「登記簿謄本を提出してください」と言われた場合でも、ほとんどの場面では現在の全部事項証明書を取得すれば対応できます。
「登記簿謄本」と「登記事項証明書」の違い
法的には完全な同義ではありません。「登記簿謄本」は紙の登記簿を写したもの、「登記事項証明書」は電子データから出力した証明書という違いがあります。ただし記載される情報・法的な証明力・提出先での効力は同じです。実務上はほぼ同じ書類として扱われます。
制度の詳細は 登記事項証明書とは?種類・取得方法・費用 で解説しています。
「正式な意味での登記簿謄本」が今も残っているケース
多くの場面では「登記簿謄本=登記事項証明書」として扱われますが、本来の意味での「登記簿謄本」(紙の登記簿の写し)は現在でも一部の物件で取得対象になります。代表的なのは次の2ケースです。
- コンピュータ化前の古い登記簿の謄本:現在の電子データに移行される前の、紙の登記簿に記録されていた履歴を遡って確認したい場合。古い相続案件・境界調査・沿革調査の場面で必要になります
- 改正不適合物件の登記簿謄本:登記簿のコンピュータ化に伴う書式変更に対応できず、現在も紙の登記簿のまま保存されている物件です。これらは「登記事項証明書」ではなく、本来の意味での「登記簿謄本」として交付されます
改正不適合物件かどうかは管轄法務局の窓口で確認できます。コンピュータ化前の権利関係を遡って調査したい場合や、対象物件が改正不適合物件にあたる場合は、法務局へ「登記簿謄本(または閉鎖登記簿謄本)を取得したい」と伝えると、紙ベースの登記簿写しを正確に交付してもらえます。古い相続では、土地と建物で保存期間が異なる点(土地50年・建物30年/不動産登記規則第28条)にも注意しましょう。
登記簿謄本でわかること・必要になる場面
登記簿謄本に記載されている内容
登記簿謄本(登記事項証明書)は、主に「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)」の3つのパートで構成され、不動産の「物理的情報」と「権利関係」がひと目でわかる書類です。抵当権が複数の不動産を担保にとっている場合は、これらに加えて共同担保目録も付随して確認します。
読み方の詳細は 登記事項証明書・登記簿謄本で何がわかる?(見方を解説) をご覧ください。
登記簿謄本が必要になる主な場面
登記簿謄本は、不動産に関わるさまざまな手続きで提出を求められます。
- 不動産の売買:買主が物件の所有者・抵当権の有無を確認するため
- 相続登記の事前調査:被相続人名義かどうか、共有者の有無を確認するため
- 住宅ローンの借入・借換え:金融機関への提出書類として
- 確定申告:住宅ローン控除・譲渡所得の申告書類として
- 名義変更・住所変更:変更前後の登記内容を確認するため
- 境界確認・賃借権の調査:隣地・借地・借家関係の事前調査
- 裁判・調停:所有権・抵当権の存在を証明するため
全部事項証明書(登記簿謄本)の取り方3つ(窓口・オンライン・郵送)
登記簿謄本(登記事項証明書)の取得方法は3つあります。手数料・所要時間・受付時間に違いがあるので、目的に合わせて選びましょう。
① 法務局の窓口で取得(最短当日・600円)
手順
- 任意の法務局へ来庁(管轄は不問・全国どこの法務局でも全国の不動産の登記簿謄本を取得できる)
- 申請書(交付申請書)に必要事項を記入:取得したい不動産の所在・地番・家屋番号、自分の住所氏名、必要通数
- 収入印紙600円分を申請書に貼付(法務局内の収入印紙売場で購入可)
- 窓口に提出 → 数分〜数十分で受領
窓口取得は本人確認書類・印鑑・委任状すべて不要。所有者の同意も不要です。受付時間は平日 8:30〜17:15。
② オンライン請求(窓口交付なら最安・郵送受取も選べる)
法務省が運営する「かんたん登記・供託申請」(旧称「かんたん証明書請求」/登記・供託オンライン申請システム)で、自宅PCから請求できます。手数料は窓口より80〜110円安く、受付時間も長いため、急がない場合はオンラインがお得です。
手順
- 「登記・供託オンライン申請システム」で申請者IDを登録(メールアドレスで無料登録)
- 「かんたん登記・供託申請」で不動産の所在・地番・家屋番号を入力(共同担保目録が必要な場合は「共同担保目録あり」にチェックを忘れない/デフォルトでは含まれない)
- 受取方法を選択:「郵送(520円)」または「窓口交付(490円)」
- 手数料を電子納付(インターネットバンキング・Pay-easy対応ATM等)
- 郵送選択 → 翌〜数日で自宅へ到着/窓口選択 → 当日〜翌業務日に指定法務局で受領
オンライン請求ができる時間は、平日 8:30〜23:00・土日祝 8:30〜18:00です(2026年〔令和8年〕8月3日に拡大。12月29日〜1月3日の年末年始を除く)。ただし、平日17:15以降および土日祝に送信した請求は、翌業務日に登記所で受け付けられ、証明書の証明日も翌業務日になります。急ぐ場合は平日17:15までに請求してください。詳細は 登記簿謄本のオンライン請求方法 で解説しています。
③ 郵送請求(遠方の方向け・600円+郵送料)
手順
- 法務局のサイトから交付申請書をダウンロード・印刷(または法務局の窓口で入手)
- 申請書に不動産の所在・地番・家屋番号と必要通数、自分の住所氏名を記入
- 収入印紙600円分を貼付
- 返信用封筒(自分宛・切手貼付・住所氏名記入済)を同封
- 任意の法務局宛に郵送 → 約1週間で自宅へ到着
郵送請求はどこの法務局宛でもOK(管轄は不問)。返信用封筒には、定形郵便で足りる場合でも110円分(2024年10月改定)を貼付します。通数が多い場合やA4封筒(定形外)を使う場合は、重量・サイズに応じて切手を多めに同封するか、法務局へ事前確認しましょう。
3つの取得方法の比較表
全部事項証明書と他の主な証明書(現在事項・一部事項・閉鎖事項)の違い・選び方
登記簿謄本(登記事項証明書)には4つの種類があり、用途によって使い分けます。迷ったら「全部事項証明書」を取れば、ほとんどの場面に対応できます。
全部事項証明書(最もよく使う・迷ったらこれ)
現在の登記記録に記録されている範囲で、過去の所有者から現在の所有者までの権利関係の履歴と、抹消済みを含む抵当権・地上権・賃借権などの履歴が記載されます。売買・相続・融資のほとんどのケースで、これを取得すれば対応できます。ただし、コンピュータ化前の旧紙謄本や、合筆・滅失などで閉鎖された登記記録までは表示されないため、古い相続や沿革調査では別途閉鎖事項証明書も確認します。
現在事項証明書
現在有効な情報のみを記載した証明書です。過去の所有者や抹消済みの抵当権は記載されません。不動産売買の決済直前の最終確認や、ページ数を減らしてシンプルに見せたい場面で使われます。
一部事項証明書(何区何番事項証明書)
共有不動産で、特定の共有者の持分だけを確認したい場合に使う証明書です。大規模マンションの敷地のように共有者が多数いる土地で、特定の共有者の持分だけを確認したい場合に、枚数と費用を抑える目的で使われます(証明書が50枚を超えると超過50枚ごとに手数料が加算されます)。一般の戸建て住宅などで個別に請求する機会はほとんどありません。
閉鎖事項証明書(閉鎖謄本/コンピュータ化前は閉鎖登記簿謄本)
合筆により消滅した土地・滅失した建物・コンピュータ化前に閉鎖された旧登記簿など、現在の登記記録とは別に閉鎖された登記記録を確認するための証明書です。古い相続案件で「祖父の代の不動産が今どうなっているか」を調査するときや、境界確認で過去の登記内容を確認したいときに使います。
閉鎖登記記録の保存期間は、土地が閉鎖日から50年間、建物が閉鎖日から30年間です(不動産登記規則第28条)。土地と建物で追える期間が異なるため、古い相続案件では、必要な閉鎖事項証明書が残っているかを早めに法務局へ確認しましょう。コンピュータ化前の旧紙謄本(手書き・タイプ打ち)が残っている法務局もあります。
登記簿謄本の取得費用一覧
登記事項証明書の手数料(法務省公式)
法務省が定める登記事項証明書(登記簿謄本)の手数料は以下のとおりです。
1通あたり50枚を超える登記簿謄本については、超過枚数に応じて手数料が加算されます(履歴の多い古い不動産・大規模マンション等で稀に該当)。出典:法務省 登記手数料について
「登記情報提供サービス」との費用比較
「内容を確認したいだけ」で提出書類として使わない場合は、民事法務協会が運営する「登記情報提供サービス」がさらに安くなります。
登記情報提供サービスのPDFには証明文や登記官の認証印が付かないため、紙の登記事項証明書の提出を求められる場面では代用できません。ただし、行政機関等へのオンライン申請では「照会番号」を登記事項証明書の代わりに利用できる場合があります。提出先の指定を確認したうえで使い分けてください。
取得に必要な情報(地番・家屋番号・住所との違い)
「住所」と「地番・家屋番号」は別物
登記簿謄本を請求するときは、不動産の地番(土地)または家屋番号(建物)を申請書に記入します。郵便配達で使う「住所(住居表示)」とは別の番号なので、住所だけでは請求できない場合があります。
地番・家屋番号の調べ方
地番・家屋番号は、以下のいずれかの方法で確認できます。
- 固定資産税の納税通知書:毎年4〜5月に自治体から届く通知書に地番・家屋番号が記載
- 権利証または登記識別情報通知:不動産を取得したときに法務局から交付された書類
- 過去の登記簿謄本:以前取得した登記簿謄本に地番・家屋番号が記載
- ブルーマップ(住居表示地番対照住宅地図):法務局窓口・図書館で閲覧可能。住居表示と地番が対応した地図
- 法務局へ電話で問い合わせ:管轄法務局に電話し、住所を伝えると地番を教えてもらえる場合あり
固定資産税の納税通知書や課税明細書は、地番・家屋番号を探す有力な手がかりです。共有名義の不動産は代表者にのみ送付されるので、共有者の方は代表者に連絡を取りましょう。ただし、納税通知書には未登記建物・共有代表者課税・課税明細と登記記録の不一致が混ざることがあるため、相続登記に使う場合は最終的に登記事項証明書または登記情報提供サービスで確認します。
登記簿謄本と「登記情報提供サービス」との違い
「登記情報提供サービス」は、登記簿謄本(登記事項証明書)の内容だけPDFで確認できるサービスです。料金が安く即時にダウンロードできる一方、法的証明力がないため、提出書類としては使えません。
両者の違い一覧表
どちらを取るべきか
- 銀行・税務署・登記申請・裁判の提出書類が必要 → 登記簿謄本(書面・490〜600円)
- 売買検討中の物件確認・所有者確認・隣地調査だけ → 登記情報提供サービス(PDF・330円)
- 相続登記の事前調査 → 申請書や遺産分割協議書に正確な不動産表示を書くため、登記事項証明書または登記情報提供サービスで最新内容を確認します(相続登記の申請時に登記事項証明書の原本提出は必須ではない)
登記情報提供サービスは民事法務協会(https://www1.touki.or.jp/)で利用できます。利用方法は2つ:① 登録利用(個人登録300円・法人登録740円の登録費用が必要/Pay-easyや預金口座振替で決済)、② 一時利用(登録費用なしで即時利用可/クレジットカード即時決済)。短期間に何件か取得するなら登録利用、1〜2件だけならカード決済の一時利用が便利です。
よくある質問
誰でも取得できます。所有者の同意は不要で、申請者の本人確認書類や委任状もいりません。手数料を支払い、地番・家屋番号などで不動産を特定できれば、どなたでも請求可能です。これは登記簿が公開情報であることに基づきます。
取得可能です。不動産の所有者・抵当権者などの権利関係は公開情報のため、第三者でも自由に請求できます。隣地の所有者を調べたい場合や、購入を検討している物件の現状を確認したい場合などに利用できます。
不動産の登記簿謄本はコンビニ交付の対象外です。コンビニで取得できるのは住民票・印鑑登録証明書・戸籍謄本などで、登記簿謄本は法務局窓口・オンライン(かんたん登記・供託申請)・郵送のいずれかで取得してください。なお、法人の登記簿謄本(履歴事項全部証明書等)もコンビニ交付の対象外です。
取得できません。登記簿謄本(登記事項証明書)は法務局の管轄です。市役所では取り扱いがないため、法務局の窓口・オンライン・郵送のいずれかで取得してください。市役所で取れるのは住民票・印鑑登録証明書・戸籍謄本などです。
全部事項証明書を取得してください。過去の所有権の履歴(前所有者からの取得経緯)と、現在の所有者・抹消済みの抵当権を含むすべての情報が記載されるため、相続登記の事前調査・相続税申告・遺産分割協議のいずれにも対応できます。
通知されません。登記簿謄本(登記事項証明書)の請求は公開情報の請求であり、誰がいつ取得したかが所有者に自動で知らされる制度はありません。プライバシー保護の観点から不安に思われる方もいますが、現行制度上、所有者へ通知される仕組みは設けられていません。
登記簿謄本(登記事項証明書)自体に法律上の一律の有効期限はありません。ただし金融機関・裁判所・各種申請先では「取得後3か月以内」など独自の期限を指定されることがあります。古い登記簿謄本は権利関係が変動している可能性があるため、提出用に取得する場合は、提出先の案内を確認し、古いものを使い回さないようにしましょう。
できます。2026年(令和8年)8月3日から、土日祝日も8:30〜18:00にオンライン請求できるようになりました(平日は8:30〜23:00。12月29日〜1月3日の年末年始を除く)。ただし、土日祝日および平日17:15以降に送信した請求は、翌業務日に登記所で受け付けられ、証明日も翌業務日になります。証明書の発行・発送は翌業務日以降となるため、急ぐ場合は平日17:15までにご請求ください。
依頼可能です。当センターでも相続登記・売買登記・贈与登記のご依頼に伴い、事前調査として登記簿謄本を取得しています。地番・家屋番号がわからない、共有不動産で枚数が多い、複数の法務局にまたがる、といった場合は司法書士に一括依頼するのが効率的です。
不動産登記規則第28条により、閉鎖登記記録の保存期間は土地が閉鎖日から50年間、建物が閉鎖日から30年間と定められています。それより古い情報は法務局によっては廃棄済みの場合があるため、古い相続案件では早めの調査が大切です。コンピュータ化前の旧紙謄本(手書き・タイプ打ち)が残っている法務局もあります。
登記簿謄本のまとめ
- 登記簿謄本は、現在の正式名称「登記事項証明書」と実務上ほぼ同じ書類。
- 取得方法は3つ:法務局窓口600円/オンライン送付520円/オンライン窓口交付490円。
- 種類は4つあるが、迷ったら全部事項証明書を取ればほとんどの場面に対応できる。
- 取得には地番・家屋番号が必要(住所とは別物)。固定資産税の納税通知書で確認できる。
- 内容確認だけなら登記情報提供サービス(PDF・330円)が最安だが、法的証明力はない。
- 所有者の同意・本人確認書類・委任状はすべて不要。誰でも取得できる。
