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《この記事の監修者》
司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら)
最終更新日:2026年2月17日
亡くなった方(被相続人)の兄弟姉妹だけが相続人となるのは、被相続人に子供がおらず、配偶者もおらず、さらに両親(直系尊属)がすでに亡くなっている場合です。民法の定める相続順位において、兄弟姉妹は「第三順位」の法定相続人にあたります。
また、被相続人に配偶者がいる場合であっても、子がおらず両親も他界しているときは、配偶者と兄弟姉妹が一緒に相続人になります。兄弟姉妹が複数名いれば、全員が相続人です。
近年の少子高齢化や生涯未婚率の上昇により、配偶者や子がいない方の相続は年々増加しています。兄弟間の相続は、親子間の相続とは異なる法的特性や税務上の取り扱いがあるため、手続きに入る前にその違いを理解しておくことが大切です。
兄弟間の相続を理解するうえで、最も重要なポイントが「兄弟姉妹には遺留分がない」という点です。
遺留分とは、遺言書の内容にかかわらず、一定の相続人が最低限確保できる遺産の割合(権利)のことです。しかし、民法第1042条の規定により、遺留分が認められているのは配偶者・子(代襲相続人を含む)・直系尊属のみであり、兄弟姉妹は対象外とされています。
たとえば、被相続人が「すべての財産を第三者に遺贈する」「特定の兄弟一人だけに全財産を相続させる」という遺言書を作成していた場合、遺言書に名前が記載されていない他の兄弟姉妹は、遺産を一切取得できません。直系親族であれば行使できる「遺留分侵害額請求権」も使えないため、遺言の効力はほぼ絶対的なものとなります。
この特性は、裏を返せば被相続人の意思による財産処分の自由が、兄弟姉妹に対する相続ではほぼ完全に保障されていることを意味します。特定の人物に確実に財産を残したいという意図があれば、公正証書遺言の作成や生前贈与が極めて強力な手段となります。
亡くなった方が遺言書を残しておらず、相続人が兄弟姉妹のみだった場合、遺産の分け方は兄弟姉妹全員での話し合い(遺産分割協議)によって決めることになります。
預貯金、不動産、有価証券など、遺産のすべてが分割の対象です。相続人全員が合意すれば、すべてを長男が相続するのも、不動産は長男・預貯金は二男というように自由に決めることもできます。
ただし、遺産分割協議は相続人全員の合意が不可欠であり、1人でも反対の兄弟姉妹がいると成立しません。当事者間の話し合いで解決できない場合は、以下の流れで進みます。
兄弟間の相続では、被相続人の資産を事前に把握していることが少なく、亡くなってから遺産の内容が判明するケースが大半です。預貯金のように均等に分けやすい財産だけなら問題は起きにくいのですが、遺産の大部分が実家などの不動産である場合、分割は格段に難しくなります。
不動産を分ける方法には、主に次の3つがあります。
| 分割方法 | 内容 | メリット・デメリット |
|---|---|---|
| 換価分割 | 不動産を第三者に売却し、得た現金を分ける方法 | 公平に分けやすいが、売却に時間がかかることがある |
| 代償分割 | 1人が不動産を相続し、他の兄弟に自己資金から代償金を支払う方法 | 不動産を残せるが、取得者に代償金の支払い能力が必要 |
| 共有分割 | 兄弟の共有名義にする方法 | 一見平等だが、将来的に深刻な問題を引き起こしやすい |
兄弟間の相続トラブルは、単なる金銭的な欲求だけで起きるわけではありません。幼少期からの感情的なわだかまり、親の介護に対する貢献度の認識のズレ、経済格差など、さまざまな要因が複雑に絡み合います。
| トラブルの原因 | 解決を困難にする要因 |
|---|---|
| 遺産の大部分が不動産である | 不動産は均等分割が物理的に難しく、誰が取得するか・売却するかで意見が対立しやすい |
| 不公平な内容の遺言書 | 兄弟には遺留分がないため、遺言の有効性そのもの(認知症等による意思能力)を争う訴訟に発展しやすい |
| 同居の兄弟による預金の「使い込み」疑惑 | 正当な生活費支出か私的使用かの線引きが曖昧で、取引履歴の調査に膨大な時間を要する |
被相続人より先に兄弟姉妹が亡くなっている場合、その亡くなった兄弟姉妹は相続人にはなれません。しかし、亡くなった兄弟姉妹の子(被相続人から見た甥や姪)が代わりに相続することになります。これを「代襲相続」といいます。
先に亡くなった兄弟姉妹に子が複数いる場合は、その子全員が相続人となり、遺産分割協議にも全員の参加と承諾が必要です。
相続登記の書類については、相続人全員の署名押印・印鑑証明書・戸籍謄本が必要な点は通常と同様です。ただし代襲相続の場合は、先に亡くなった兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍謄本等が追加で必要になります。
関連記事代襲相続とは?代襲相続人の範囲と相続分をわかりやすく解説 →遺産分割協議がまとまったら、不動産の名義変更(相続登記)の手続きに進みます。兄弟姉妹が相続人となるケースでは、通常の子が相続する場合よりも、はるかに多くの戸籍書類が必要になります。
法務局に対して、次のことを公的書面で証明しなければならないためです。
このため、被相続人本人の戸籍だけでなく、被相続人の父および母それぞれの出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍謄本)が追加で要求されます。
| 必要書類 | 取得先 | 証明する内容 |
|---|---|---|
| 被相続人の出生~死亡の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | 死亡の事実確認、子や代襲相続人が存在しないことの証明 |
| 被相続人の父母両名の出生~死亡の戸籍謄本 | 本籍地の市区町村役場 | 直系尊属の死亡の証明、兄弟姉妹の正確な関係性の確認、異母・異父兄弟の有無の確認 |
| 相続人全員の現在の戸籍謄本 | 各相続人の本籍地の市区町村役場 | 各兄弟姉妹が相続開始時に生存し、相続能力を有していることの確認 |
| 被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票) | 最後の住所地の市区町村役場 | 登記簿上の所有者と死亡した被相続人が同一人物であることの証明 |
| 不動産取得者の住民票 | 取得者の住所地の市区町村役場 | 新たに登記簿に記載される所有者の住所・氏名の確認 |
| 固定資産評価証明書 | 不動産所在地の市区町村役場 | 登録免許税の課税標準額の算定 |
| 遺産分割協議書+相続人全員の印鑑証明書 | 各相続人の住所地の市区町村役場 | 相続人全員の合意が形成されていることの証明 |
不動産を相続する人が決まったら、その方への名義変更(相続登記)を行います。ここで大切なのは、不動産を取得しない他の相続人の協力も必要だということです。
具体的には、遺産分割協議書への署名押印(実印)をしてもらい、さらにその方の印鑑証明書や戸籍謄本も用意が必要です。相続人間の口約束だけでは相続登記はできず、法務局に対して遺産分割協議が成立したことを書面で証明しなければなりません。
遺産分割協議書に実印を押した後に、印鑑証明書の提出や登記への協力を拒否するケースも実務上存在します。この場合、裁判所に対して「所有権の確認訴訟」等を提起し、勝訴の確定判決を得ることで、判決文を添付して単独で相続登記を行うことが可能です。
ただし、この方法は訴訟費用と時間がかかります。実務上は、協議が合意に至ったその場で速やかに署名押印を完了させ、同時に印鑑証明書も受け取っておくことが最善の防衛策です。
兄弟間相続で手続きが最も停滞する原因は、協議のテーブルにすら着かない、あるいは連絡を完全に無視する相続人の存在です。
話し合いに応じない背景には、「親の面倒を見た自分には寄与分があるはずだ」「昔、兄だけが住宅資金の援助を受けた」という積極的な権利主張がある一方、「相続に関わりたくない」「実印を他の兄弟に預けるのが不安」といった消極的な理由も少なくありません。
まずは丁寧な文面の手紙で説得を試みます。手続きを放置すると固定資産税の負担が続くこと、不動産の価値が低下する可能性があることなど、客観的な不利益を伝え、協力を仰ぐ姿勢が重要です。
当事者同士では感情的になってしまう場合は、弁護士等の代理人を立てて、法的な見地から冷静な話し合いを行います。専門家の介入により、相手方が事態の重大性を認識し協議に応じるケースもあります。
弁護士の交渉でも解決しない場合、最終手段として家庭裁判所に遺産分割調停(または審判)を申し立てます。実務上はまず調停からスタートし、調停委員を介した話し合いの中で妥協点を探ります。
長年音信不通で住所や生死も不明な兄弟姉妹がいる場合、その人物を除外して遺産分割協議を進めることは法律上認められません。以下のような法的手続きが必要になります。
| 段階 | 手続きの内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 初期調査 | 住民票や戸籍の附票を取得し、現在の住所を追跡 | 長期間不在の場合、住民票が職権消除されていることもある |
| 接触の試行 | 判明した住所に事情を説明する手紙を送付 | 返事がない場合は遺産分割調停へ移行 |
| 不在者財産管理人の選任 | 家庭裁判所に申し立て、選任された管理人が遺産分割協議に参加 | 住所が全く判明しない場合に必須の手続き |
| 失踪宣告 | 7年以上生死不明の場合、家庭裁判所が法律上の死亡を認定 | 最終手段。その後は代襲相続人等を交えて協議を再開 |
これらの手続きは裁判所への申立書の作成や予納金の準備など、専門的な知識が不可欠です。行方不明の相続人がいる場合は、早い段階で司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。
相続人である兄弟姉妹の誰かが家庭裁判所で相続放棄をした場合、その兄弟姉妹は最初から相続人でなかったものとして取り扱われます。
被相続人より先に兄弟姉妹が亡くなっている場合は「代襲相続」として甥姪が相続人になりました。しかし、相続放棄の場合は代襲相続が発生しません。相続放棄した兄弟姉妹の子(甥・姪)は、相続人にはならないという点は重要な違いです。
相続放棄があった場合、登記申請には「相続放棄申述受理証明書」または「相続放棄申述受理通知書」が必要になります。
なお、相続放棄した兄弟姉妹の印鑑証明書や、遺産分割協議書への署名押印は不要です。相続放棄によりそもそも相続人ではなくなるため、協議への参加自体が不要となります。
兄弟間相続では、手続き面だけでなく税務面でも大きな不利益があります。それが「相続税の2割加算」制度です。
これは、被相続人の配偶者や一親等の血族(子・親)以外の者が財産を取得した場合、納付すべき相続税額が通常の計算額から一律20%増しになるという制度です。兄弟姉妹は二親等の傍系血族であるため、例外なくこの加算の対象となります。
| 区分 | 相続人の続柄 | 補足 |
|---|---|---|
| 加算の対象外 | 配偶者、子、親・祖父母(直系尊属) | 被相続人と極めて近い関係にある者 |
| 加算の対象外 | 代襲相続人となった孫 | 子が既に死亡している場合、子の地位をそのまま引き継ぐため例外的に対象外 |
| 加算の対象 | 兄弟姉妹 | いかなる理由があっても例外なく対象 |
| 加算の対象 | 甥・姪(兄弟の代襲相続人を含む) | 孫の代襲相続とは異なり、加算の対象 |
| 加算の対象 | 遺言による第三者・内縁の配偶者 | 法定相続人以外への遺贈も対象 |
| 加算の対象 | 孫養子(代襲相続事由がない場合) | 租税回避防止の観点から加算対象 |
配偶者がおらず兄弟姉妹のみが相続人のケースで、1人あたりの負担税額の目安は以下のとおりです。
| 遺産総額 | 兄弟1人の場合 | 兄弟2人の場合 | 兄弟4人の場合 |
|---|---|---|---|
| 5,000万円 | 約192万円 | 約96万円 | 0円(基礎控除内) |
| 6,000万円 | 約372万円 | 約216万円 | 約72万円 |
| 7,000万円 | 約576万円 | 約384万円 | 約192万円 |
このように、兄弟間の相続では通常よりも重い税負担が発生します。遺産総額が大きい場合は、税理士への相談を含めた事前の税務対策が重要です。
兄弟間の相続に限りませんが、不動産の名義変更には一定の費用がかかります。大きく分けて、法律上必ず発生する「法定実費」と、専門家に依頼する場合の「司法書士報酬」の2種類があります。
| 費用項目 | 金額の目安 | 内容・留意点 |
|---|---|---|
| 登録免許税(国税) | 固定資産評価額の0.4% | 例:評価額合計4,000万円の場合→160,000円。専門家への依頼の有無にかかわらず必ず発生する |
| 証明書類の取得実費 | 5,000円~数万円程度 | 戸籍謄本(450円/通)、除籍謄本等(750円/通)、印鑑証明書、住民票、評価証明書などの合計 |
| 司法書士報酬 | 50,000円~150,000円程度 | 戸籍収集代行、遺産分割協議書作成、登記申請の代理。相続人の数や不動産の数により変動 |
兄弟姉妹間の相続手続きと不動産の名義変更は、直系親族間の相続と比較して、法的にも税務的にも複雑さが際立つ手続きです。以下のポイントを押さえておきましょう。
相続登記が法的に義務化された現在、放置はもはや許されません。兄弟間相続という複雑な手続きに直面した際は、相続手続きと不動産名義変更の専門家である司法書士へ、早めにご相談ください。

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