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遺産分割の協議・調停・審判|流れ・費用・必要書類


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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最終更新日:2026年5月28日

遺産分割の協議・調停・審判(要点まとめ)

● 協議:相続人全員の合意で成立。一人でも欠けたり反対すれば不成立。

● 調停:家庭裁判所で調停委員会が仲介。申立手数料1,200円(+郵便切手代)、期間半年〜1年が目安。

● 審判:調停不成立で自動移行。裁判官が決定し、即時抗告期間(告知後2週間)を経て確定すると、確定判決と同じ効力を持つ。

● 即時抗告:審判への不服申立は告知日の翌日から2週間以内・高等裁判所へ(収入印紙1,800円)。

● 調停に代わる審判:調停が成立しないものの、家庭裁判所が相当と認めるときに職権で行う審判。

● 司法書士:申立書類の作成・戸籍収集・相続登記まで対応(調停代理人にはなれません)。

● 弁護士:調停・審判の代理人として出席・主張立証まで対応可能。

 遺産分割協議:自由な話し合いの場

遺産分割協議は、相続財産を誰がどれだけ取得するかを決めるために、相続人全員で行う話し合いの場です。この協議は非公開で自由な形式で行われますが、相続人全員の参加が絶対条件となっており、一人でも欠けたり合意しなかったりすれば協議は成立しません

協議が無事にまとまった場合は、その合意内容を明文化した「遺産分割協議書」を作成します。この協議書は法的手続きを進める上で非常に重要な書類であり、特に不動産の名義変更や預貯金の解約といった手続きでは必ず提出を求められます。

さらに2024年以降は不動産の相続登記が義務化され、相続を知ってから3年以内に登記しなければ10万円以下の過料が科される可能性があるため、登記申請の前提となる協議書を正確に作成することの重要性はますます高まっています。

一方、協議が不成立に終わった場合、相続人同士の力関係や感情的な対立が原因で話し合いの継続が困難になるケースが多く見られます。そのような状況では、次の段階として家庭裁判所での「遺産分割調停」という手続きに移行することになります。

遺産分割調停:家庭裁判所における話し合い

遺産分割協議が成立しない場合、相続人は家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立て、第三者である裁判所を介した話し合いによる解決を目指すことができます。

調停の申立先は、相手方相続人の住所地を管轄する家庭裁判所、あるいは相続人同士が話し合いで合意した家庭裁判所となります。申立てに必要な費用は、被相続人1名につき1,200円の収入印紙と、各家庭裁判所が指定する数千円程度の予納郵便切手代です。

【申立ての必要書類】

  • 申立書及び相手方の人数分の申立書の写し
  • 相続関係を証明する戸籍謄本等(相続関係により必要な戸籍謄本等は異なります。)
  • 相続人全員の住民票又は戸籍附票
  • 遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書、有価証券写し等)

調停手続きでは、裁判官1名と2名以上の調停委員で構成される「調停委員会」が設置されます。調停委員会は中立的な立場で相続人同士の主張を仲介し、双方が納得できる合意形成を促す役割を果たします。ただし、調停はあくまで話し合いの延長であるため、当事者全員の合意がなければ成立しません。

遺産分割調停の平均期間は1年程度かかることが報告されています。長期化する主な原因としては、不動産や非上場株式など評価が難しく時間のかかる財産が含まれる場合、感情的なもつれや根深い不信感により相続人同士の主張の隔たりが大きい場合、さらには申立に必要な戸籍謄本や財産資料の収集・整理に時間を要する場合などが挙げられます。

調停が成立した場合、その内容は「調停調書」として作成されます。この調停調書は確定判決と同一の法的効力を持つため、これに基づいて遺産分割手続きを円滑に進めることが可能となります。相続登記する際にも調停調書を添付書類として法務局に提出します。

一方、調停が不成立となった場合、たとえば合意しない相続人がいたり出頭しない相続人がいたりする状況では、調停手続きは終了し、特別な申立てなく自動的に「遺産分割審判」へと移行することになります。

遺産分割審判:裁判官による決定

遺産分割審判は、調停で解決に至らなかった場合に、家庭裁判所の裁判官が各相続人の主張や提出された証拠に基づき、遺産分割の内容を決定する手続きです。調停から移行して審判が行われる場合、原則として追加の申立費用は発生しません。

審判によって下された決定は「審判書」として作成されます。この審判書は調停調書と同様に確定判決と同一の法的拘束力を持つため、相続人はその内容を守る義務があります。審判が確定した後、その内容に従わない相続人がいる場合は、確定した審判書に基づいて強制執行が可能となります。これは私的な協議書にはない、裁判所手続きの最大の優位性の一つといえます。遺産分割審判が確定した場合は、相続登記する際に審判書を添付書類として法務局に提出します。

ただし、審判の内容に納得できない相続人は、審判書を受け取ってから14日以内であれば、高等裁判所に対して「即時抗告」という不服申立てを行うことができます。この即時抗告期間が経過するか、抗告が退けられることで、審判は最終的に確定します。

遺産分割協議・調停・審判の比較:違いと法的効力の分析

遺産分割の3つの段階における最も大きな違いは、手続きが行われる場所と、その結果得られる結論の「法的拘束力」の有無にあります。一般の方がこの手続きのステップを理解する上で、法的拘束力の違いを明確に把握することは不可欠です。

遺産分割協議は、あくまで当事者間の私的な契約に過ぎません。したがって、協議書が作成されても、もし相手方が登記や金銭支払いに応じなかった場合、その協議書自体には強制執行力がありません。協議書の内容を実現するためには、改めて訴訟を提起し、判決を得る必要が生じます。これは時間と費用の二重負担となり、解決を遅らせる要因となります。

一方で、遺産分割調停が成立して作成される調停調書、および遺産分割審判によって下される審判書は、いずれも確定判決と同一の法的効力を持ちます。この法的優位性が意味するのは、相続人間に不信感がある場合や、将来的に相手方が不履行となる可能性が懸念される場合、裁判所の手続きを利用することで将来的な強制執行の可能性を確保できるという、極めて大きな実務上のメリットがあるということです。

この法的強制力の確保こそが、協議から調停、審判へと進む動機付けとなります。単に話し合いの場を変えるだけでなく、紛争解決における最終手段、すなわち執行力の確保を意味するのです。

遺産分割の3ステップ比較表

項目 遺産分割協議 遺産分割調停 遺産分割審判
目的 相続人全員の自由な合意形成 裁判所の仲介による合意形成 裁判官による最終決定
場所 当事者間(私的な場所) 家庭裁判所 家庭裁判所
決定者 相続人全員 相続人全員の合意(調停委員会の仲介) 裁判官(家事審判官)
法的拘束力 低い(合意書のみ) 高い(調停調書は確定判決と同一効力) 高い(審判書は確定判決と同一効力)
費用(申立) 原則無料 収入印紙1,200円+予納切手 調停から移行の場合、追加費用なし

調停・審判の手続きの費用構造と期間

紛争性の高まりとともに、専門家のサポートは不可欠となります。特に遺産分割においては、紛争解決を担う弁護士と、実務的な登記手続きを担う司法書士の役割を明確に区別し、連携させることが重要です。

裁判所への申立費用

遺産分割調停または審判を申し立てる際、裁判所に対して主に発生する費用があります。

まず収入印紙代として被相続人1名あたり1,200円が必要となります。さらに予納郵便切手代として数千円程度が必要ですが、これは裁判所ごとに設定額が異なるため、申立先の家庭裁判所に事前に確認が必要です。

なお、遺産分割審判は通常、遺産分割調停から自動的に移行するため、調停で申立費用を支払っていれば、審判移行時に追加の申立費用は原則としてかかりません。

弁護士費用

遺産分割事件において弁護士に代理交渉や裁判所手続きを依頼する場合、費用は主に「相談料」「着手金」「報酬金」「実費」の4要素で構成されます。

着手金は依頼する時点で支払う費用であり、結果に関わらず支払いが必要です。遺産分割事件における着手金は、一般的に20~50万円程度が目安とされています。一方、報酬金、いわゆる成功報酬は、弁護士による案件処理の結果、依頼者が獲得した「経済的利益」に応じて算出されます。この報酬金は経済的利益の額に応じて料率が逓減する複雑な体系となっており、目安としては経済的利益の5%から16%程度の範囲で変動します。

例えば、経済的利益の額が300万円以下であれば16%、300万円を超え3000万円以下であれば10%に18万円を加算する形で計算されることが多く、この基準が弁護士報酬の標準的な目安となります。

遺産分割事件や遺留分侵害額請求は解決までに数ヶ月から1年程度の期間を要することが一般的です。

専門家の関与:弁護士と司法書士の役割分担

遺産分割手続きの際には、裁判所へ支払う費用(実費)と、専門家に依頼する場合の費用(報酬)が発生します。特に紛争が裁判所に持ち込まれた場合、弁護士費用が高額になる可能性があるため、費用の構造を正確に理解しておくことが重要です。

弁護士の役割:紛争解決と代理人業務

弁護士は、遺産分割に関する交渉、調停、審判のすべての段階において、相続人の代理人として活動することができます。

実務上、遺産分割調停に臨む人の約8割が弁護士を利用しているというデータがあり、紛争解決においては弁護士の関与が標準的な解決策となっていることが示唆されます。

弁護士を利用する実務上のメリットは多岐にわたります。まず、法律知識に基づいた最適な主張構成と証拠整理を行うことで、有利な主張の実現が可能となります。また、複雑な裁判所提出書類の作成や、相続人調査、相続財産調査などの実務的な負担を大幅に軽減できます。さらに、感情的になりがちな相続人同士の直接的な対立を弁護士が緩和し、調停不成立後の審判も見据えた長期的な戦略を立てることが可能になります。

相続人同士の話し合いが難航している、あるいは感情的な対立の兆しが見えた時点で、早期に弁護士に相談することは、無用な対立を防ぎ、円満かつ迅速な解決へつながる最善の策であるとされています。

司法書士の役割:登記と書類作成サポート

司法書士は、相続人や財産の調査、遺産分割協議書の作成サポート、そして最も重要な相続した不動産の名義変更、いわゆる相続登記手続きを専門的に行うことができます。

遺産に不動産が含まれる場合、相続税の申告という税理士の業務とは別に、名義変更手続きのために司法書士の協力が必須となります。

ただし、司法書士は紛争解決の代理人業務を行うことはできません。遺産分割調停や審判における主張立証活動や代理業務は弁護士の独占業務です。

したがって、専門家への依頼は、紛争の有無によって役割分担が明確になります。紛争が発生し解決が必要な場合は弁護士が主導し、紛争が解決して最終的な合意、すなわち協議書、調停調書、審判書が得られた後、不動産等の名義変更が必要な場合は司法書士が不可欠な役割を果たすことになります。

審判への不服申立(即時抗告)

家庭裁判所の遺産分割審判の内容に納得できない場合、当事者は「即時抗告」という不服申立てを行い、高等裁判所での再審理を求めることができます。即時抗告は2週間という非常に短い期間制限がある重要な手続きです。

即時抗告の期間(告知から2週間以内)

即時抗告ができる期間は2週間の不変期間です(家事事件手続法第86条第1項。「審判に対する即時抗告は、特別の定めがある場合を除き、二週間の不変期間内にしなければならない」)。期間は即時抗告をする者が審判の告知を受けた日から進行し(同条第2項)、初日不算入のため、実務上は告知を受けた日の翌日を1日目として14日間で満了します(家事事件手続法第34条第4項、民事訴訟法第95条第1項、民法第140条)。期限を過ぎると審判は確定し、通常の不服申立てで争うことはできなくなるため、審判書を受け取った時点で必ず日付を確認してください。

注意:審判書が郵送で届いた場合、「告知を受けた日」は通常その到達日です。即時抗告では、審判書を精読して原審裁判官の認定事実や法解釈のどこに不当性があるかを論理的に主張する必要があり、新たな証拠の選定・主張の再構築には相応の時間を要します。2週間の不変期間は土日祝も含めて進行するため、抗告を検討する場合は到達日と期限を確認し、早急に弁護士へ相談してください。

申立先(高等裁判所)と申立書の提出先(原審家庭裁判所)

即時抗告は高等裁判所に対して行う手続きですが、即時抗告状(申立書)は原審の家庭裁判所に提出します。家庭裁判所から事件記録が高等裁判所に送付され、そこで再度の審理が行われる流れです。

項目
内容
申立期間
審判告知日の翌日から2週間以内
申立書の提出先
原審の家庭裁判所
審理を行う裁判所
管轄の高等裁判所
提出書類
抗告状1通(原審判の表示と即時抗告をする旨を記載)、相手方・利害関係参加人の数に応じた写し、抗告理由を裏付ける証拠資料。取消し・変更を求める具体的理由を抗告状に書ききれない場合は、抗告提起後14日以内に抗告理由書を原裁判所へ提出(家事事件手続規則第55条第1項)
必要費用(印紙)
収入印紙1,800円(家事事件手続法別表第2事件)+連絡用郵便切手代(裁判所指定)

高等裁判所での再審理の流れ

高等裁判所では、家庭裁判所が判断した内容の当否を改めて審理します。多くの場合、当事者の主張や提出証拠を踏まえて書面審理が中心ですが、必要に応じて当事者の意見聴取が行われることもあります。

高等裁判所の決定にも不服がある場合は、許可抗告または特別抗告として最高裁判所への申立てが可能なケースもありますが、要件が極めて厳格で実務上認められる例は限定的です。

調停調書・審判書を使った相続登記の流れ

遺産分割調停が成立して「調停調書」が作成された場合、または審判書の告知後に即時抗告期間(2週間)を経て審判が確定し「確定証明書」を取得した場合、これらの書面を添付して不動産の相続登記を申請することができます。協議書と異なり、相続人全員の印鑑証明書が不要になるなど、添付書類が簡略化される点が大きなメリットです。

調停調書の場合(戸籍謄本の取扱い)

遺産分割調停が成立すると、その内容は「調停調書」として作成されます。遺産分割は家事事件手続法別表第二事件にあたり、調停調書に記載された合意内容は確定した家事審判と同一の効力(執行力を含む)を持ちます(家事事件手続法第268条第1項括弧書き)。そのため、調停調書は相続登記の登記原因証明情報として使用できます。

調停手続のなかで家庭裁判所が戸籍等によって相続関係を審査・確認しているため、調停調書に被相続人の死亡年月日・最後の住所・相続関係が明確に記載されている場合、相続登記の際に被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式の添付は原則不要とされています(昭和37年5月31日民事甲第1489号通達)。ただし、登記官は調書の記載内容を実質審査し、代襲相続が発生している・住所のつながりが不明瞭などの場合は、戸籍・除票・戸籍附票等の追加提出を「補正」として求めることがあります。実務上は補正に対応できるよう、関連書類を一通り手元に揃えておくのが定石です。

必要書類
備考
調停調書(謄本可)
家庭裁判所から交付。相続を証する情報として添付する場合は謄本で差し支えありません(登記研究527号174頁)。ただし、すでに法定相続登記がされた不動産について、登記条項のある調書を債務名義として単独申請するケースでは執行力ある正本が必要になります
不動産取得者の住民票
登記名義人となる相続人のもの
固定資産評価証明書
登録免許税算定用
登記申請書
同一管轄・同一原因・同一取得者など一括申請の要件を満たす場合は、複数不動産を1件の申請書でまとめて申請可能(不動産登記令第4条)。管轄や取得者が異なる場合は申請を分ける
戸籍謄本一式
調書の記載が十分であれば原則不要。記載不足の場合は追加提出を求められることあり
印鑑証明書
不要(協議書方式と異なる点)

審判書の場合(確定証明書の添付)

遺産分割審判では、まず「審判書」が当事者に告知(送達)されます。その後、即時抗告がされないまま2週間の不服申立期間が経過すると審判が確定します。確定後、家庭裁判所に申請して「確定証明書」を取得し、審判書と合わせて相続登記に添付します。確定証明書は審判が確定した事実を裁判所が証明する書類で、これがないと相続登記の登記原因証明情報として完結しません。

関連:調停調書・審判書を使った相続登記の詳細手続きは、遺産分割調停の相続登記【調停調書を使った登記手続き】のページで解説しています。

よくある質問(FAQ)

Q1. 遺産分割協議と調停はどう違いますか?
協議は相続人だけで自由に行う話し合いで、合意できなければ成立しません。調停は家庭裁判所で調停委員を通じて事情を整理し、資料提出や解決案の提示を受けながら合意を目指す手続です。実際の期日では当事者を別々に聴く運用が中心ですが、手続説明や成立確認の場面で同席となることもあります。どちらも「当事者の合意」が成立要件である点は共通します。
Q2. 遺産分割調停の申立費用はいくらですか?
家庭裁判所に納める手数料は被相続人1人につき収入印紙1,200円分、これに加えて連絡用の郵便切手代(数千円程度・各家庭裁判所が指定)が必要です。実務上は印紙代以上に「戸籍謄本等の収集費用」がかかり、被相続人の出生から死亡までの連続戸籍を揃えるために実費だけで1万〜3万円を超えることも珍しくありません。弁護士に代理を依頼する場合の費用は事務所ごとに異なりますので、着手金・報酬金・実費・日当の有無を見積書で必ず確認してください。
Q3. 遺産分割調停はどのくらい時間がかかりますか?
調停期日は1か月前後の間隔で重ねられ、解決までに半年〜1年を要するケースが多いです(回数は事案により大きく変わります)。長期化の最大の要因は財産評価の対立よりも、過去の生前贈与(特別受益)や預貯金の使い込み疑い(不当利得)が争点になる場面で、通帳の取り寄せや分析に膨大な時間を費やし、解決まで2〜3年以上に及ぶことも珍しくありません。
Q4. 司法書士は調停に同席(代理人として出席)できますか?
遺産分割調停は家庭裁判所の手続で、司法書士には代理権がありません(司法書士法第3条第1項。認定司法書士の代理権も簡易裁判所・訴額140万円以下の民事事件に限られ、家庭裁判所の家事調停は対象外)。当事者の代理人として期日に出席し、条件交渉や主張立証を行えるのは弁護士のみで、家事事件手続法第22条第1項も手続代理人を原則として弁護士に限定しています。司法書士が担当できるのは裁判所提出書類の作成支援・戸籍等の収集・調停成立後の相続登記です。
Q5. 調停が不成立になったらどうなりますか?
遺産分割調停が不成立に終わった場合、当事者から別途の申立てをしなくても自動的に審判手続へ移行します(家事事件手続法第272条第4項)。同じ家庭裁判所で、裁判官が当事者の主張・提出資料・調停の経過を踏まえて、遺産分割の内容を決定します。
Q6. 遺産分割審判はどうやって決まりますか?
裁判官が、相続人全員から提出された主張書面・証拠・調停の経過を踏まえ、民法の定める法定相続分や寄与分・特別受益などを総合的に判断して遺産分割の方法(誰が何を取得するか)を審判で示します。当事者全員の合意は不要です。審判書の告知後、即時抗告がされずに2週間の不服申立期間が経過すると、審判が確定して結論が固まります。
Q7. 審判に納得できない場合はどうすればよいですか?
審判告知日の翌日から2週間以内(不変期間・家事事件手続法第86条第1項)に「即時抗告」を行うことで、高等裁判所での再審理を求めることができます。即時抗告状は原審の家庭裁判所に提出し、収入印紙1,800円(家事事件手続法別表第2事件)を貼付します。抗告状に取消し・変更を求める具体的理由を書ききれない場合は、抗告提起後14日以内に抗告理由書を原裁判所へ提出します(家事事件手続規則第55条第1項)。期間を過ぎると審判は確定するため、まずは期限を徒過させないことが最優先です。到達日と期限を確認したうえで速やかに弁護士へご相談ください。
Q8. 「調停に代わる審判」とは何ですか?
家事事件手続法第284条に基づき、調停の場で合意成立の見込みがない場合や合意がわずかな食い違いに留まる場合に、家庭裁判所が職権で行う審判のことです。当事者は審判の告知を受けた日から2週間以内に同じ家庭裁判所に異議申立てができ、適法な異議があると審判は効力を失います(通常の遺産分割審判への不服申立=高等裁判所への即時抗告とは手続きが異なります)。
Q9. 調停調書・審判書を使った相続登記の必要書類は?
①調停調書(謄本可・登記研究527号174頁)または審判書+確定証明書、②不動産取得者の住民票、③固定資産評価証明書、④登記申請書が基本セットです。協議書方式と異なり相続人全員の印鑑証明書は不要です。被相続人の戸籍謄本一式は、調書に被相続人の死亡年月日・最後の住所・相続関係が明確に記載されていれば原則不要(昭和37年5月31日民事甲第1489号通達)ですが、登記官が補正を求めた場合に備え、戸籍・除票・戸籍附票等を手元に揃えておくのが実務上安全です。
Q10. 弁護士と司法書士はどう使い分ければよいですか?
費用だけで比較するのではなく、必要な業務で分けて考えます。調停・審判で代理人として主張交渉が必要な場合は弁護士、申立書類の作成支援・戸籍収集・調停成立後の相続登記が中心であれば司法書士が担当します。司法書士の報酬目安は、調停申立書の作成支援が5〜10万円程度、調停成立後の相続登記は不動産の評価額や筆数に応じて7〜15万円程度です。これとは別に、相続登記には登録免許税(固定資産税評価額の0.4%)という実費が必要で、不動産が複数ある場合や評価額が高い場合は実費が報酬を大きく上回ることがあります。弁護士費用は事務所ごとに自由設定のため、依頼前に着手金・報酬金・実費・日当の有無を見積書で確認してください。詳しい比較は遺産分割協議書は誰に依頼?司法書士・弁護士・税理士の比較と選び方のページをご覧ください。
この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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