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相続手続きは司法書士と弁護士どっちに頼むべき?違いをケース別に解説


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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​最終更新日:2026年3月12日
 

「相続手続きは誰に頼めばいいのだろう」「司法書士と弁護士はどう違うのか」――相続の場面でこのような疑問を持つ方は少なくありません。
結論から申し上げると、争いのない相続なら司法書士、紛争に発展している・発展しそうなら弁護士が基本的な目安です。ただし、それぞれが対応できる手続きの範囲や費用は大きく異なります。

このページでは、2008年10月の司法書士登録以来の実務経験をもとに、相続手続きの種類と担当できる専門家の違いを整理してご説明します。

相続で必要になる手続きの全体像

被相続人(亡くなった方)の財産を受け継ぐには、複数の手続きを順を追って進めていく必要があります。まずは代表的な相続手続きの内容を確認しておきましょう。

手続きの種類 概要 主な担当専門家
相続人調査・戸籍収集 誰が相続人かを確定し、証明するための戸籍謄本等の収集 司法書士・弁護士・税理士・行政書士
相続関係説明図の作成 相続人の関係を図にまとめたもの。登記申請時に提出 司法書士・弁護士・税理士・行政書士
遺産分割協議書の作成 相続人全員の合意内容を文書化したもの 司法書士・弁護士・行政書士
相続登記(不動産名義変更) 土地・建物等の名義を相続人へ変更する登記申請 司法書士(専門分野)
預貯金・有価証券の相続手続き 銀行・証券会社での名義変更・払戻手続き 司法書士・弁護士・行政書士
相続税の申告 基礎控除を超える財産がある場合の申告・納税 税理士(専門分野)
遺産分割の代理交渉・調停・訴訟 相続人間で争いが生じた場合の法的解決 弁護士のみ対応可

相続人調査(戸籍収集・相続関係説明図の作成)

相続手続きを進めるには、まず相続人を確定させる必要があります。 ご家族内では「誰が相続人か」はすぐに分かることが多いですが、手続き先の法務局や金融機関に対しては、戸籍謄本等によって客観的に証明しなければなりません。

たとえば「子は兄弟の2名だけ」と思っていたところ、被相続人から聞かされていなかった子が別に存在していた、というケースも実務上まれに見受けられます。 また、兄弟相続(子がなく兄弟姉妹が相続人となるケース)や、複数回の相続が連続した数次相続の場合は、一般の方が相続人を正確に把握するのが難しいことがあります。

相続人を確定・証明するには、被相続人の戸籍謄本(除籍謄本・改製原戸籍)を死亡時から出生まで遡ったもの全てが必要です。 状況によっては、被相続人の親や祖父母の代の戸籍まで収集することもあります。

収集した戸籍をもとに相続関係説明図を作成すると、相続人の関係が一覧で把握しやすくなります。 相続登記の申請時には通常この説明図を法務局に提出し、戸籍謄本等の原本を還付してもらうためにも活用します。

相続人調査は司法書士・弁護士のほか、税理士・行政書士でも基本的に対応可能です。

遺産分割協議書の作成

相続人と遺産の内容が確定したら、相続財産をどのように分配するかの話し合い(遺産分割協議)を相続人全員で行います。 そこで合意した内容を文書にしたものが遺産分割協議書です。

遺産分割協議書には被相続人の情報、誰がどの遺産を取得するかなどを記載し、最後に相続人全員が署名・押印します。 法務局や銀行・証券会社・税務署などに提出するため、第三者が読んでも内容が明確に分かる形で記載することが必要です。 当事者だけが理解できる表現では、各種手続きに使用できない場合があります。

インターネットや書籍にも雛形はありますが、ご自身の事案に合わせた内容に仕上げるには専門知識が必要です。 司法書士・弁護士・行政書士が作成を代行できます。

ご注意:司法書士が遺産分割協議書の作成を代行できるのは、相続人全員の合意が整っている場合に限られます。話し合いがまとまっていない場合や対立が生じている場合は、弁護士への相談が必要です。

相続登記(不動産の名義変更)

相続財産に土地・建物・マンションなどの不動産が含まれる場合は、法務局に対して名義変更の登記申請を行う必要があります。これを相続登記と呼びます。

2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。 相続により不動産の所有権を取得した相続人は、自己のために相続が開始したことを知り、かつ、その不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。なお、遺産分割が後で成立した場合は、その成立日から3年以内に、その内容を反映した登記申請が別途必要です。正当な理由なく義務を怠った場合は10万円以下の過料が科せられるおそれがあります。2024年4月1日以前に発生した相続も義務化の対象であり、未登記のままであれば2027年(令和9年)3月31日が重要な期限となります。

相続登記は司法書士の専門分野です。弁護士も法律上は登記申請を行えますが、実務上は登記手続きを司法書士に委ねるケースが多く、専門的に取り扱う弁護士は少数です。 司法書士に依頼すれば、戸籍謄本等の収集から遺産分割協議書の作成、法務局への申請まで一括して代行してもらうことができます。

相続税の申告

相続財産の評価額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告・納税が必要です。 申告期限は、相続の開始を知った日(通常は被相続人の死亡日)の翌日から10か月以内です。

相続税の申告は税理士の専門分野です。財産評価の方法や各種特例(小規模宅地等の特例など)の適用判断は専門知識が求められるため、早めに税理士へ相談されることをお勧めします。

なお、相続税の申告が必要な案件では、司法書士(相続登記・遺産分割協議書)と税理士(税務申告)が連携して進めることも一般的です。 相続登記と相続税申告の関係については下記もご参照ください。

司法書士に依頼できる相続手続き

相続登記は司法書士の専門分野

相続登記(不動産の名義変更)は司法書士の専門業務です。 本人申請を除き、登記手続の代理は原則として司法書士または弁護士が行います。日常的に不動産の権利登記を専門的に扱っているのは司法書士であり、実務上も登記申請は司法書士に依頼されるケースがほとんどです。

不動産は相続財産の中でも特に重要であることが多く、権利関係の処理を誤ると後々のトラブルにつながるおそれがあります。 司法書士は日常的に不動産の権利登記を扱う専門家ですので、書類の不備なく確実に手続きを完了させることができます。

遺産分割協議書の作成(合意が整っている場合)

相続人全員の合意内容が決まっている場合、その内容を遺産分割協議書として文書化することも司法書士に依頼できます。 専門家が作成した協議書であれば形式の不備を防げるため、法務局や金融機関での各種手続きにもそのまま利用できます。

ただし繰り返しになりますが、合意が取れていない案件や協議が難航しているケースでは、司法書士による対応には限界があります。その場合は次項で説明する弁護士への依頼をご検討ください。

相続放棄・遺言書検認などの家庭裁判所手続き

相続放棄の申述や遺言書の検認申立てなどの家庭裁判所手続については、司法書士に申立書類の作成支援や必要書類収集のサポートを依頼できます。もっとも、家庭裁判所で代理人として手続きを進めるのは原則として弁護士です。書類作成サポートの報酬は事務所・事案によって異なりますが、目安として数万円程度を想定しておくとよいでしょう。

弁護士に依頼すべき相続手続き

相続人間で争いがある場合

相続人同士の話し合いがこじれていたり、感情的な対立が生じている場合は、弁護士への依頼が必要です。 司法書士には特定の相続人を代理して他の相続人と交渉したり、家庭裁判所で調停・審判の手続きを進めたりする権限がありません。 遺産分割協議の代理交渉から調停・審判・訴訟まで一貫して対応できるのは弁護士のみです。 また、相続放棄や遺言書検認申立ての家庭裁判所における手続きの代理も、弁護士のみが行える業務です(司法書士は申立書類の作成サポートまでとなります)。

遺産分割で揉めたときの代理交渉

話し合いによる遺産分割協議がまとまらないと、相続手続きは一切前に進みません。 弁護士が間に入ることで感情的な衝突を避け、公平な視点から解決策を提案してもらうことが期待できます。

弁護士には代理権があるため、依頼者の代理人として相手方と直接交渉し、必要に応じて家庭裁判所での調停・審判手続きまで一貫して任せることができます。 司法書士には認められていない権限です。

遺留分侵害額請求などの法的トラブル

「遺留分」とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の相続取り分のことです。 遺言等によってその遺留分が侵害されていた場合、侵害された相続人は他の相続人に対して遺留分侵害額請求を行えます。

この請求は内容証明郵便の送付に始まり、話し合いがまとまらなければ訴訟へ発展することもある、高度に法律的な手続きです。 遺留分をはじめとする相続絡みの法的トラブルへの対応は、基本的に弁護士の専門領域となります。なお、遺留分侵害額請求は民事事件に位置づけられるため、請求額が140万円以下の場合に限り、法務大臣の認定を受けた認定司法書士が交渉や簡易裁判所での訴訟代理を行える場合もありますが、実務上の多くのケースでは弁護士への依頼が適切です。

費用の目安|司法書士と弁護士の違い

司法書士に依頼する場合の費用

司法書士への相続依頼で最も多いのは相続登記(不動産名義変更)です。 相続登記のみの依頼であれば、戸籍謄本等の収集・遺産分割協議書の作成・法務局申請まで含めた報酬は、事務所・地域・事案の難易度によって大きく異なります。一般的な目安として数万円〜十数万円の範囲で案内している事務所が多いですが、統一された基準があるわけではなく、複雑な案件ではそれを上回ることもあります(登録免許税などの実費は別途かかります)。

また、預貯金や有価証券も含めた相続財産全体の手続きを一括して依頼する「遺産承継業務」としても司法書士に依頼できます。 この場合は複数の手続きの報酬が合算されるため、比較的シンプルな案件でも相応の費用になることが多いです。実際の金額は必ず事前に見積もりを取って確認するようにしましょう。

弁護士に依頼する場合の費用

弁護士への依頼費用は、相談料・着手金・報酬金・実費・日当などの項目に分かれるのが一般的です。 着手金・報酬金の額は事務所・地域・事案の内容によって大きく異なり、統一された基準はありません。交渉や調停を伴う案件では着手金だけで数十万円規模になることも珍しくなく、遺産の額や難易度によってはさらに高額になる場合もあります。

解決後には成果に応じた報酬金も発生します。遺産分割で獲得した経済的利益に対してパーセンテージをかける方式が多く、最終的な総額は依頼内容(書類作成のみか、調停・訴訟まで含むか)によっても大きく変わります。 事前に十分な説明を受け、費用とサービスの範囲を確認してから依頼するようにしましょう。

項目 司法書士の目安 弁護士の目安
相続登記(不動産名義変更) 事務所・地域・事案により異なる(実費別) 対応は可能だが実務上は司法書士に委託するケースが多い
遺産分割協議書の作成 登記依頼と合わせて対応(事務所により異なる) 書類作成のみの場合も事務所により異なる
遺産分割の代理交渉・調停 対応不可 着手金+報酬金(事案・遺産額・難易度により大きく異なる)
相続放棄申述書等の作成サポート 事務所により異なる(書類作成サポートのみ) 申立ての代理は弁護士のみ可能
遺産承継業務(財産全体) 複数手続きの合算(事務所により異なる) 対応可能(費用は事務所による)
上記の金額はいずれも目安であり、事案の内容・財産の規模・事務所の料金規定によって異なります。依頼前に複数の事務所から見積もりを取ることをお勧めします。

ケース別・依頼先の選び方

ケース 適した依頼先 ポイント
相続人全員の合意が取れている 司法書士 費用を抑えやすい。登記から協議書作成まで一括対応
争いがある・紛争になりそう 弁護士 調停・訴訟への移行にも同じ弁護士が対応できる
相続税の申告が必要 税理士+司法書士 税申告は税理士、登記・協議書は司法書士が連携して対応
費用を抑えたい 司法書士(争いのない場合に限る) 紛争を抱えているのに無理に司法書士のみで進めると二重の費用になるおそれ

争いのない相続→司法書士

相続人全員の関係が良好で、遺産の分割内容についても全員が合意している場合は、司法書士への依頼が適していると考えます。 相続登記を中心に、戸籍収集・相続関係説明図・遺産分割協議書の作成までスムーズに対応できます。

「専門家に頼むほどのことでもないかな」と感じる円満な相続ほど、実は手続き漏れや書類不備が起きやすいものです。 司法書士に相談しておくことで、思わぬミスを防ぐことができます。

相続人間で揉めている→弁護士

意見の対立がすでに生じている場合、あるいは今後争いに発展しそうな火種がある場合は、最初から弁護士に依頼することを強くお勧めします。 司法書士に依頼して途中まで進めたとしても、紛争が生じた時点で弁護士に切り替える必要があり、二度手間になってしまいます。 最初から弁護士に依頼していれば、調停・訴訟に発展しても引き続き同じ弁護士が対応できるため、手続きが滞ることがありません。

相続税が発生する→税理士+司法書士

相続税の申告が必要な場合は、税理士への依頼が不可欠です。 相続税の申告期限には余裕をもって動くことが重要であり、申告に先立って司法書士が相続人調査や財産調査を進めておくと、税理士との連携もスムーズに進みます。 司法書士と税理士がそれぞれの専門領域で分担することで、全体の手続きを効率よく完結させることができます。

よくある質問

司法書士と弁護士の両方に同時に依頼することはできますか?
状況によっては両方に依頼することも可能です。ただし、同一の案件を同時に二者へ依頼する必要は基本的にありません。信頼できる司法書士であれば、紛争が生じた際に連携する弁護士に引き継いでくれることもあります。反対に弁護士に依頼した場合でも、不動産登記は司法書士が実際の手続きを担うことが多く、依頼者の側で両者を探し回る必要はほとんどありません。窓口となる専門家を一人決めて、他の士業が必要になった場合は紹介してもらうのが一般的です。
司法書士だけで揉め事の解消はできますか?
基本的にはできません。司法書士は中立的な立場で手続きを進めることはできますが、特定の相続人の代理人として交渉したり、調停・裁判で対応したりする権限がありません。紛争性がある案件を相談した場合でも、弁護士をご案内することになります。
司法書士と弁護士の間で連携してまとめて対応してもらえますか?
はい、可能です。司法書士と弁護士はお互いの業務範囲を補完するかたちで協業することがあります。どちらに依頼されても連携して対応してくれるケースが多いため、最初の相談の際にご確認いただくとよいでしょう。
費用を抑えるには司法書士と弁護士のどちらがいいですか?
争いのないケースに限れば、司法書士の方が安く済む可能性が高いです。ただし、紛争を抱えているにもかかわらず無理に司法書士のみで進めようとすると、解決できないまま時間を浪費し、後から弁護士費用も発生するという二重の出費になりかねません。「安く済ませたいから司法書士一択」と決めつけるより、自分のケースで司法書士だけで十分かを見極めることが大切です。まず司法書士に相談してみて、難しそうであれば弁護士も検討するという流れをお勧めします。
この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士歴18年(2008年10月登録)。
「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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