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親族間売買とは?登記・税金・兄弟間のみなし贈与対策を司法書士が解説


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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作成日:2026年4月24日

親族間売買とは、親子・兄弟姉妹・いとこ・叔父叔母など親族どうしで不動産を売買する取引のことをいいます。相続前の資産整理、共有名義の解消、子世帯の住宅取得、事業承継など、選ばれる動機はさまざまです。一方で、価格を当事者間で柔軟に決められるメリットの裏返しとして、「みなし贈与」課税や住宅ローン審査が通りにくいといったリスクもあり、判断には専門的な配慮が必要になります。本記事では、登記・税金・住宅ローンの3つの視点から、親族間売買の実務を司法書士が整理して解説します。

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親族間売買とは ─ 対象範囲と典型ケース

親族間売買は、所有権移転の原因を「売買」として登記する形式で行われる取引です。売主と買主が親族関係にあるという点だけが、一般の売買と異なります。手続きそのもの(契約・登記・代金決済)は通常の不動産売買と同じ流れですが、親族間という関係性が、税務・金融・法務のそれぞれで特有の論点を生み出します。

民法上「親族」にあたるのは、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族です。実務でよく登場するのは、配偶者間、親子間、兄弟姉妹間、いとこ間、叔父叔母と甥姪の間といったところで、親戚と呼べる範囲の多くが「親族」に含まれます。

対価をともなうかどうかで、同じ親族間の不動産移転でも登記原因はまったく違うものになります。売買・贈与・相続の主な違いを一覧で確認しておきましょう。

登記原因対価主な税金登録免許税
売買あり(金銭のやり取り)譲渡所得税(売主)、不動産取得税(買主)評価額×2.0%
贈与なし贈与税(受贈者)、不動産取得税(受贈者)評価額×2.0%
相続なし(被相続人死亡)相続税の対象財産に含まれる評価額×0.4%

表の税率は「土地・建物の通常ケース」の目安です。実務上は、土地の売買による所有権移転登記は期限付きで1.5%に軽減され、一定の自己居住用住宅については住宅用家屋証明書の添付で0.3%まで下がる場合もあります。登録免許税を見積もる際は、土地と建物を分けて税率を確認してください。

注目したいのは、登録免許税率は似たような水準でも、取引にともなって発生する税金の種類がまったく違うという点です。売買では売主側の譲渡所得税・買主側の不動産取得税が主な論点になり、贈与では受贈者に課される贈与税をどの課税方式(暦年課税・相続時精算課税など)でどう抑えるかがテーマになります。

親族間売買が選ばれる代表的な5ケース

親族間売買が実務で選ばれるのは、主に次の5つの場面です。

  1. 親が住んでいる実家を子が買い取る(親子間売買)。生前に所有関係を整理し、将来の相続時に誰が不動産を承継するかを明確にしておきたい場合に検討されます。時価とかけ離れた価格で売買するとみなし贈与課税のリスクが生じるため、価格設定は慎重に行う必要があります。詳しくは 親子間の名義変更(相続・贈与・売買)のページ も参考にしてください。
  2. 相続後に兄弟姉妹の共有名義を1人に集約する(兄弟間売買)。相続登記で一旦共有になった実家を、長男や同居していた兄弟が単独名義にまとめるパターンです。実家を兄弟で相続した場合の対処法 も合わせてご覧ください。
  3. 共有者の1人だけが持分を売却する(持分の親族内売買)。共有状態のまま放置すると、将来の売却・相続でトラブルが連鎖するため、早めに一本化するニーズがあります(共有名義のデメリットと解消方法)。
  4. 親戚(いとこ・叔父叔母など)の空き家を買い取る。管理に困っている親戚の物件を親族が取得することで、空き家問題の解消と資産承継を同時に進めるパターンです。
  5. 事業承継にともなう不動産移転。同族会社の役員間、経営者と後継者親族の間で、事業用不動産の所有を整理する目的で行われます。

相続が絡むケースの典型パターン(親族間売買 × 相続)

「親族間売買」と「相続」は、一見別テーマに見えますが、実務ではかなりの頻度で交わります。代表的なのは次の3パターンです。

パターンA:相続発生前に、親から子へ売買で所有権を移す。親の生前に不動産を整理しておきたい場合に選ばれる方法です。生前贈与と比較検討するのが一般的で、税負担と登記コストの総額で判断します。

パターンB:相続発生後、兄弟姉妹が共有名義になった不動産を1人の相続人に集約する。法定相続分等で共有登記をしたあと、事情の変化によりあらためて持分を売買で買い取り、単独名義に整理するパターンです。共有を長期化させないための実務的な解決策として選ばれます。

パターンC:代償分割と使い分けるケース。遺産分割で1人の相続人が不動産を取得し、他の相続人に金銭(代償金)を支払う場合は「相続登記+代償金」という形になり、売買登記にはなりません。実質的に兄弟間でお金と不動産が動いても、相続手続きの枠内で処理する点が売買との違いです。

ポイント:相続が絡むケースでは、「相続登記で済ませるのか」「代償分割で処理するのか」「いったん共有にして後日売買するのか」で、かかる税金も手続きコストも大きく変わります。設計段階から司法書士・税理士への相談を入れることで、全体の負担を最適化しやすくなります。

親族間売買のメリットとデメリット

親族間売買を検討する際は、「身内同士だからスムーズ」という楽観的な側面と、「身内同士だからこそ税務上慎重さが求められる」という厳しい側面の両方を理解しておく必要があります。

親族間売買のメリット

  • 仲介手数料が不要。不動産仲介会社を通さずに当事者間で直接取引できるため、通常の売買で発生する仲介手数料(物件価格×3%+6万円+消費税など)を節約できます。
  • 売却価格・引渡時期を柔軟に決められる。市場で買主を探す必要がないため、お互いの都合に合わせて条件を設定できます。
  • 登記原因・税務処理が明確。「売買」という行為自体は税法上整理された取引類型であり、対価・契約書・領収書など証拠書類を揃えて手続きすれば、記録として残しやすいメリットがあります。

親族間売買のデメリット・注意点

  • みなし贈与のリスク。時価と売買価格が大きく乖離していると、その差額が「実質的な贈与」とみなされ、買主に贈与税が課税される可能性があります。親族間売買で最も注意すべきポイントです。
  • 住宅ローン審査が通りにくい。金融機関は資金使途の偽装リスクや担保評価の恣意性を警戒するため、親族間売買に対する審査基準は一般の売買より厳格になります。
  • 譲渡所得税が売主に発生。相続前の親から子への売買では、譲渡益(譲渡価額-取得費-譲渡費用)に対し売主(親)に譲渡所得税が課税されます。相続による名義変更そのものでは譲渡所得税は発生しませんが、相続後に相続人が売却する場合は被相続人の取得費を引き継ぐため、含み益が大きい物件では結局譲渡所得税の論点が出ます。「今売るか、相続を待つか」は両ケースの総負担で比較する必要があります。

【最重要】みなし贈与リスクと時価の考え方

親族間売買で最も慎重に扱うべきテーマが「みなし贈与」です。売買の形をとっていても、税務上は贈与として扱われ、買主に贈与税が課税されるという事態が実際に起こり得ます。

みなし贈与とは ─ 相続税法7条の考え方

相続税法7条は、「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合、その時価と対価との差額に相当する金額について、贈与により取得したものとみなして贈与税を課する」と定めています。つまり、売買契約書と代金のやり取りが形式的にあっても、価格が時価から大きく下にあれば、実質的に贈与とみなされるということです。

ここで問題になるのが、「著しく低い価額」とは具体的にどの水準をいうのか、という判断基準です。国税庁通達や法令に一律の数値基準は示されておらず、個別の事情を総合考慮して判断されることになっています。過去の裁判例や国税不服審判所の裁決でも、物件の種類・取引の経緯・当事者の関係性・金銭授受の実態などを踏まえて、ケースごとに結論が分かれています。

ご注意:インターネット上には「時価の○割までなら大丈夫」といった簡易な数値基準が見られることがありますが、これらは一つの目安に過ぎず、税務当局がその水準を自動的に容認しているわけではありません。案件ごとの個別判断が原則です。税額の試算や贈与税・特例適用の可否判断は税理士に確認し、司法書士は登記原因の選択・必要書類・契約書と登記の整合性を整える役割で連携するのが安全な進め方になります。

「時価」をどう決めるか ─ 鑑定評価を軸にした実務

みなし贈与を回避するうえで重要なのは、売買価格の根拠となる「時価」を客観的に示せるようにしておくことです。実務上、時価の算定に用いられる資料としては次のようなものがあります。

資料特徴実務での位置づけ
不動産鑑定士の鑑定評価書国家資格者による客観的評価。算定根拠が明示される最も信頼性が高く、税務調査でも重視されやすい
不動産仲介会社の査定書実際の市場動向を反映。複数社取得が望ましい市場性の裏付けに有用。鑑定評価との併用が望ましい
周辺売買事例(レインズ等)類似物件の取引実績価格設定の補強資料として有効
公示地価・基準地価国・都道府県公表の指標参考指標。単独で時価と主張するのは不十分
固定資産税評価額市町村が3年ごとに決定時価より低いことが多く、単独では根拠として弱い
相続税路線価公示地価のおおむね8割水準同上。補助指標としての利用にとどめるべき

税務調査などで説明を求められた場面を想定すると、不動産鑑定評価書を中心に据えつつ、仲介会社の査定書・周辺事例などで補強するのが安全な組み立てです。固定資産税評価額や相続税路線価は、市場の実勢価格より低く算出される傾向があり、これらだけを根拠にした売買価格設定は、後から「時価を反映していない」と指摘されるリスクがあります。

みなし贈与リスクを下げるための実務ポイント

  • 価格算定根拠の資料を必ず保管する。鑑定評価書、仲介会社の査定書、類似物件の取引記録などを売買契約書と一緒にファイリングし、登記完了後も長期保管します。
  • 売買契約書に価格決定の経緯を記載。どの資料をもとに価格を決めたかを契約書内または別紙で明確にしておくと、あとで根拠を説明しやすくなります。
  • 代金の授受を銀行振込で行い、記録を残す。現金での受け渡しは税務上「本当に支払ったのか」を疑われる原因になります。振込記録・通帳の写しを必ず保管してください。
  • 事前に税理士と贈与税シミュレーションを行う。売買価格と時価の差額に贈与税が課税された場合の金額を試算してから、価格設定を確定するのが安全です。
  • 一般的な目安ではなく、個別の案件ごとにプロに相談。親族間売買は物件ごと・当事者関係ごとに論点が異なるため、一律の基準では判断できません。
親族間売買は、税務・登記・住宅ローンの3方向から総合判断が必要です。時価の判定や売買契約書の作成は、事前に専門家へご相談ください。

親族間売買でかかる税金

親族間売買では、通常の売買と同じ税金がかかるうえに、親族特有の制約から本来受けられるはずの特例が使えないケースがあります。主な税金を整理すると次のとおりです。

税金負担者計算の基本親族間での注意点
譲渡所得税・住民税売主譲渡益×20.315%(長期)/39.63%(短期)3,000万円特別控除の適用除外に該当することが多い
登録免許税買主固定資産税評価額×2.0%相続(0.4%)と比べ高い
不動産取得税買主固定資産税評価額×4%(土地・住宅は軽減税率3%・令和9年3月31日まで)相続は非課税だが売買は課税される
印紙税契約書(折半が多い)契約金額に応じ200円〜。高額物件では数十万円規模になることも売買契約書に印紙貼付が必要
贈与税(みなし贈与該当時)買主時価と売買価格の差額に対し課税税率は最大55%。親族間売買最大のリスク
消費税個人間の居住用建物は非課税事業用建物・課税事業者の場合は例外

住宅ローン控除は親族間売買で使えるか

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、マイホームの取得で一定の借入をしている場合に、所得税・住民税から一定額を控除できる制度です。親族間売買でも原則は対象になり得るのですが、条件が厳しく設定されています。

具体的には、生計を一にする親族から取得した場合や、取得後も引き続きその親族と生計を一にする予定の場合は、住宅ローン控除の対象外とされます。別々に生計を立てている兄弟間の売買などであれば条件クリアの可能性がありますが、判断は個別事情に左右されるため、事前に所轄税務署または税理士に適用可否を確認することを強くおすすめします。

譲渡所得の3,000万円特別控除の適用除外

マイホームを売却したときに譲渡所得から最大3,000万円を控除できる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」は、配偶者・直系血族・生計を一にする親族などへの売却では適用を受けられません(租税特別措置法35条2項)。

つまり、親が子へ、あるいは同居している兄弟姉妹間でマイホームを売買した場合、売主は3,000万円特別控除を使えず、譲渡益に対してそのまま譲渡所得税が課税されることになります。物件の含み益が大きい場合はかなりの税負担になるため、譲渡所得税のシミュレーションを事前に行ってから売買を決定する必要があります。

親族間売買の登記手続き ─ 流れと必要書類

登記手続き自体は、通常の不動産売買と同じ流れで進みます。親族間だからといって簡略化できる部分はなく、むしろ税務リスクに備えて書類を手厚く揃える姿勢が望まれます。

登記完了までの基本フロー(6ステップ)

  1. 時価調査と売買価格の検討。鑑定評価書・仲介査定書・周辺成約事例などをもとに、第三者に説明できる価格根拠を書面で残しておくことが重要です。「この割合までなら必ず安全」という一律の基準はありませんので、時価より低く設定する場合ほど、事前に税理士の確認を受けておく必要があります。
  2. 売買契約書の作成・印紙貼付。契約金額・引渡時期・支払方法・特約事項を明記します。
  3. 代金の支払いと領収書発行。銀行振込で記録を残し、領収書を発行します。
  4. 必要書類の収集。権利証・印鑑証明書・評価証明書などを揃えます(次項参照)。
  5. 法務局へ所有権移転登記を申請。司法書士が申請書類一式を作成し、管轄法務局へ提出します。
  6. 登記完了・登記識別情報通知の受領。通常は申請から1〜2週間で完了し、買主に登記識別情報通知(新しい権利証に相当)が交付されます。

親族間売買で必要になる書類一覧

当事者必要書類
売主登記識別情報通知または登記済権利証/印鑑証明書(発行3か月以内)/固定資産評価証明書/実印/本人確認書類/住所に変更がある場合は住民票または戸籍附票
買主住民票/本人確認書類/認印(実印でも可)
共通売買契約書/代金領収書/鑑定評価書・査定書等の価格根拠資料

各書類の取得方法・有効期限・紛失時の対応など、売買による名義変更で必要になる書類の詳細は 売買による不動産名義変更の必要書類一覧 で詳しく解説しています。

登記費用の内訳(実例)

参考までに、固定資産税評価額1,500万円の住宅(土地・建物の合計評価額)を親族間で売買した場合の登記費用を試算しておきます(当事務所の売買登記プランを用いた場合・本則税率ベース)。

項目金額(目安)
登録免許税(評価額×2.0%・本則)300,000円
司法書士報酬99,000円
登記事項証明書・評価証明書取得費用ほか2,000〜3,000円
合計約40万円

上記は本則税率(2.0%)で計算した目安です。実際には、土地について1.5%(令和8年3月31日までの軽減)、買主が居住する住宅用家屋の建物部分について0.3%(要件を満たす場合)といった軽減税率が適用されることがあります。要件(床面積50㎡以上、取得後1年以内の居住など)を満たすかどうかは、物件・取得者の状況によって異なりますので、個別に確認が必要です。別途、譲渡所得税・不動産取得税・印紙税などが発生する点にもご注意ください。サービス別のより詳しい費用は 名義変更の費用一覧 および 売買登記サービスのカテゴリページ をご覧ください。

親族間売買と住宅ローン ─ 通りにくい理由と対処

親族間売買では、住宅ローン審査が通りにくいことは実務上広く知られています。親子間・兄弟間で住宅を買い取ろうと思っても、大手都市銀行では取り扱い自体を断られるケースも珍しくありません。

なぜ金融機関は親族間売買に慎重なのか

主な理由は次の3つです。

  • 資金使途の偽装リスク。「住宅取得」の名目で借入し、実際は生活費・借金返済・事業資金に流用されるケースを警戒しています。
  • 担保評価の恣意性。価格が市場相場と大きく乖離している場合、担保としての適正評価が難しくなります。
  • みなし贈与課税リスク。金融機関としては、後日みなし贈与と判定され借主の返済能力に影響が及ぶ事態を避けたい、という意図もあります。

親族間売買で住宅ローンが組めない場合の選択肢

  1. 親族間売買に対応する金融機関を選ぶ。一部の地方銀行・信用金庫・ノンバンク系の金融機関では、条件付きで親族間売買向けのローンを扱っています。複数金融機関への打診が必須です。
  2. 現金での一括取得。最も確実な方法です。ただし買主側にまとまった資金が必要になります。
  3. 親族間での分割払いを設定する。売買契約書に分割払いの条項(残代金の支払時期・利息・期限の利益喪失・遅延損害金など)を明記し、不動産に抵当権を設定したうえで公正証書化しておくことで、金融機関を介さない分割取引が可能になります。利息を無利息または著しく低利とした場合は、その経済的利益が贈与とみなされるおそれがあるため、適正な利率設定と実際の返済実行(入金記録の保管)が不可欠です。譲渡所得税の課税タイミングにも注意が必要です。

住宅ローンの組み替えや債務引受を伴うケースでは、住宅ローン名義変更のページ でも関連する手続きを解説しています。あわせてご確認ください。

【ケース別】兄弟間売買・親戚間売買の実務

親族間売買のなかでも、特に相談が多いのが兄弟間売買親戚(いとこ・叔父叔母)間の売買です。関係性によって、実務での論点が少しずつ変わってきます。

兄弟間売買 ─ 相続後の共有解消パターン

典型的なのは、親から相続した実家を兄弟姉妹3人で共有することになり、長男や同居していた兄弟が他の兄弟の持分を買い取って単独名義に整理するというシーンです。

価格設定では、鑑定評価や複数社の仲介査定をもとに合意形成を図るのが基本です。当事者全員が納得できる根拠資料を用意することで、あとから「安く買い叩かれた」といった兄弟間トラブルや、税務署からのみなし贈与指摘を同時に予防できます。

登記は、売主となる兄弟(持分を手放す側)から買主となる兄弟(単独名義にする側)への「持分全部移転登記」または「持分一部移転登記」として申請します。所有権全体ではなく「持分」を移転する点が通常の売買と異なるだけで、必要書類は基本的に同じです。

譲渡所得税についても注意が必要です。売主側の兄弟には譲渡所得税が発生しますが、前述の3,000万円特別控除は生計別であっても適用要件(居住実態など)を満たさなければ使えないため、事前のシミュレーションが重要になります。

親戚間売買(いとこ・叔父叔母・甥姪)

いとこ・叔父叔母・甥姪などの親戚間売買は、税務上は他人同士の売買に近い扱いがされる場面が多くあります。直系血族や配偶者ではないため、3,000万円特別控除や住宅ローン控除の「生計を一にする親族」要件で不利になりにくく、条件をクリアしやすい傾向です。

一方で、みなし贈与の判定は引き続き個別判断です。親戚間だからといって価格を自由に設定してよいわけではなく、やはり時価との乖離がある場合は贈与認定リスクがあります。鑑定評価や市場査定を根拠にした適正価格の設定という基本方針は変わりません。

「名義を借りていた」ケースの整理

親族間では、過去の事情で「真の所有者」と「登記名義人」が食い違っていることが稀にあります。たとえば、子が自分の資金で購入したものの当時は親名義で登記していた、といったケースです。

このような場合、「売買」以外に「真正な登記名義の回復」「民法646条2項による移転」「代物弁済」という登記原因を使うことも選択肢になります。ただし、これらの特殊な登記をするには、過去の経緯や状況などの立証なども難しくなります。どの登記原因を選ぶかは、過去の資金の流れ・当時の事情を証明する書類の有無によって大きく変わるため、司法書士・税理士との事前協議がほぼ必須です。

親族間売買でよくあるトラブル事例

実務で遭遇する代表的なトラブルを3つご紹介します。いずれも、事前に司法書士・税理士が関与していれば、かなりの部分を回避できたと考えられるケースです。

代金支払いの実態が曖昧で、贈与認定された

売買契約書は作ったが、実際には代金の振込が行われていなかった、あるいは一部しか支払われていなかったというケースです。「払ったことにする」「あとで返してもらう」といった口約束は、税務署が調査で入った際にほぼ確実に否認されます。売買と判定されるためには、代金が売主の口座に実際に振り込まれ、売主の資金として利用できる状態になっていることが求められます。

売買契約書を作らず、他の相続人から実質贈与と主張された

親子間で口約束だけで不動産の売買が行われた結果、親の相続発生後に他の相続人から「実態は贈与であり、特別受益にあたる」と主張され、遺産分割協議が長期化した事例です。契約書・領収書・振込記録といった証拠書類は、税務対策だけでなく将来の相続トラブルを防ぐ意味でも不可欠です。

登記後に時間を置いて、みなし贈与を指摘された

登記完了の数年後、税務調査で価格設定の根拠を問われ、鑑定評価書も査定書も保管しておらず、結果として差額が贈与とみなされたケースです。価格算定の根拠資料は、登記後も長期間保管してください。みなし贈与の指摘は登記から数年経ってから入ることもあり、その時点で資料を紛失していると反証が困難になります。

親族間売買を司法書士に依頼するメリット

親族間売買は、登記・税務・金融の3方向で論点が絡み合う取引です。司法書士に依頼することで、次のようなサポートを受けられます。

  • 売買契約書作成と登記申請のワンストップ対応。司法書士が作成できるのは、登記申請に直接必要となる範囲の契約書類です。特約条項・支払条件・登記義務などを矛盾なく整えた状態で、登記申請まで一貫して進められます。
  • 税理士・不動産鑑定士との連携窓口。譲渡所得税・贈与税のシミュレーションが必要な場合、お客様のご要望に応じて提携の税理士と連携して対応します。
  • 明確な料金体系。当事務所の売買登記プランは、不動産仲介業者ありプラン66,000円〜/不動産名義変更おまかせパック99,000円〜(税込)でご案内しています。追加費用が発生する前に事前にお見積りをお出しします。詳細は 売買登記サービスのカテゴリページ をご覧ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 親族間売買は違法ではないですか?
親族間での売買そのものは合法で、民法・不動産登記法上も認められた通常の取引類型です。ただし、時価と大きく乖離した低額売買を行った場合、相続税法7条により差額部分が贈与税の対象(みなし贈与)と判定される可能性があります。合法性の問題というより、税務上の取扱いに注意が必要なテーマだとご理解ください。
Q. 親族間売買の価格はいくらが適正ですか?
一律の「適正価格」基準は法令に定められておらず、物件ごと・当事者関係ごとの個別判断になります。実務では、不動産鑑定評価書や複数の仲介査定、周辺の取引事例など客観的な根拠資料を組み合わせて価格を設定し、税理士・司法書士と事前に協議する方法が安全です。インターネット上の簡易な目安だけで決めるのは避けてください。
Q. 兄弟間で家を売買する場合、住宅ローンは使えますか?
生計を別にしている兄弟間の売買であれば、条件付きで住宅ローンを利用できる場合があります。ただし金融機関によって取扱い方針が大きく異なり、メガバンクでは対応不可としているところも多いのが実情です。地方銀行・信用金庫・ノンバンクなど、親族間売買に対応する金融機関への打診が前提になります。
Q. 親族間売買で住宅ローン控除は使えますか?
生計を一にする親族からの取得は対象外になります。別々に生計を立てている親族間であれば、他の要件(床面積・居住要件・借入期間など)をすべて満たすことで適用を受けられる可能性がありますが、適用可否は個別事情に左右されます。登記前に所轄税務署または税理士に確認してから進めるのが確実です。
Q. 親子間で売買する場合と、相続を待つ場合ではどちらが有利ですか?
ケースバイケースで、物件の含み益・親の年齢・他の相続財産・相続人の人数などによって有利な選択肢が変わります。売買なら譲渡所得税・登録免許税・不動産取得税、相続なら相続税・登録免許税(0.4%)と、発生する税金の種類も税率も大きく異なります。両シナリオで総額シミュレーションを行ってから判断してください。親子間全般の選択肢は 親子間の名義変更のページ にまとめています。
Q. 売買代金を支払ったことを、どうやって証明すればよいですか?
最も確実なのは銀行振込です。振込記録と通帳のコピーを売買契約書と一緒に保管してください。現金授受は避けるべきですが、どうしても現金で行う場合は、金額・日付・物件所在地を明記した領収書を発行し、当事者双方で保管します。代金支払いの実態がない(あるいは立証できない)と、売買そのものが否認されてしまうおそれがあります。
Q. 親族間売買の登記は自分でできますか?
法律上、登記を本人が申請することは可能です。ただし親族間売買では、みなし贈与リスクの判定・売買契約書の作成・住宅ローン連携・譲渡所得税のシミュレーションなど、登記の外側で考えるべき論点が多くあります。一般の売買以上に専門家の関与が効いてくる取引のため、司法書士・税理士への依頼を強くおすすめします。
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この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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