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不正登記防止申出とは?


《この記事の監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら

最終更新日:2025年12月23日
 

目次 - 不正登記防止申出
不正登記防止申出とは?

不正登記防止申出とは

不正登記防止申出とは、登記識別情報(権利証)を盗み見られたり、登記識別情報が記載された登記識別情報通知や印鑑証明書を盗まれたりしたときに、これを取得した者が登記名義人になりすまして不正な登記がされることを防止するため、法務局に対して申出をする制度です。

この申出をしてから3か月以内に申出に係る登記の申請があったときは、速やかに申出をした者にその旨が通知されます。また、登記官が不正な申請ではないかと疑うときは、申請人について申請の権限があるかどうかの調査(本人確認調査)が行われます。

⚠ 重要な注意点
この制度は登記申請を「止める」制度ではなく、あくまで「気づける」「調査が厳格化される」制度です。通知が来る、登記官の本人確認調査が厳格化されるのが中心であり、申請を物理的にブロックする制度ではありません。
※登記識別情報は、不動産の名義変更をしたときに、法務局から新たな名義人に対して通知されるアラビア数字その他の符号の組合せからなる12桁の符号で、従来の登記済権利証に代わるものです。
【登記識別情報通知とは】権利証とは違う?いつ使う?無くしたら?

不正登記防止申出をすることができる条件

申出人が申出をするに至った経緯及び申出が必要となった理由に対応する措置を採っていることが必要です(不動産登記事務取扱手続準則35条4項)。

具体的な条件の例

  • 印鑑証明書等が盗難された場合:警察等の捜査機関に被害届を提出したこと
  • 第三者が不正に印鑑証明書の交付を受けた場合:交付した市町村長にその印鑑証明書を無効とする手続を依頼したこと
  • 勝手に不動産の取引がされていることを知った場合:警察等の捜査機関又は関係機関への防犯の相談又は告発等をしたこと
緊急時の対応
差し迫った危険がある場合は、まず申出を行い、被害届の受理番号等は後日、登記所から指定された期限までに速やかに報告する運用が見られます(期限は事案・登記所により異なります)。

申出の方法と必要書類

本人出頭の原則

この申出は、原則として登記名義人本人(またはその相続人・法定代理人等)が直接法務局の窓口に出頭して行う必要があります。郵送による申出はできません。

⚠ 委任による代理は原則不可
司法書士などに「申出の手続きそのもの」を完全に代行してもらうことは原則としてできません。これは登記官が直接本人と面談し、本人確認を厳格に行うためです。

ただし、登記名義人等が登記所に出頭できないやむを得ない事情(遠方に居住しているなど)があると認められるときは、委任による代理人が出頭して申出ることができます。
※やむを得ない事情の判断は登記所ごと・事案ごとに異なります。

必要書類

書類詳細
印鑑証明書作成から3ヶ月以内のもの
実印申出書に押印するために必要
本人確認書類運転免許証、マイナンバーカードなど(顔写真付きが望ましい)
被害届等の証明警察の受理番号を控えたメモや、被害届の写しなど
住所変更証明書類登記記録上の住所と現住所が異なる場合は、住民票の写し等
相続証明書類相続人が申出する場合は、相続人であることを証する戸籍謄本等

不正登記防止申出書のひな型

不正登記防止申出書のひな型(1ページ目)不正登記防止申出書のひな型(2ページ目)

不正登記防止申出書の記載例

✅ 手数料は無料
不正登記防止申出の手続き自体に法務局への手数料はかかりません。ただし、印鑑証明書などの取得実費は別途必要です。

申出後の法務局の対応

1
申出書類のつづり込み
登記官は不正登記防止申出書類つづり込み帳を作成し、申出書及び添付書面をつづり込みます。目録には、不動産の所在事項、申出人の氏名、申出年月日が記載されます。
2
本人確認調査の要否を記載
申出が相当と認められる場合、「本人確認の調査を要する旨」が記載されます。
3
登記申請があった場合の通知
3か月以内に当該不動産の登記申請があった場合、申出人に対して適宜の方法(実務的には電話が多い)で通知されます。
4
本人確認調査の実施
本人確認調査の結果、申請権限が確認できない等の場合には、補正・追加資料の求めが行われ、是正されない場合は却下となることがあります。

有効期間と再申出

不正登記防止申出の有効期間は申出から3か月です。

⚠ 自動更新ではありません
3か月が経過すると効力が失われます。危険が続いている場合は、「延長」ではなく改めて申出(再申出)を行う必要があります。3か月が経過する前に再度法務局へ出向いて手続きを行ってください。

よくある質問

勝手に名義変更されたら、所有権を失うのか?

他人が勝手に不動産の登記名義を変更してしまったとしても、その登記名義の変更は実体の伴わない無効な登記です。そのため、勝手に名義変更されたとしても、本当の所有者が所有権を失うわけではありません。

ただし、一度名義を変えられてしまうと、それを元に戻すのは大変です。新しい名義人の協力が得られない場合は、裁判手続きなどが必要になります。

登記識別情報を不正に取得した他人は、簡単に名義変更できるのか?

不動産の登記名義の変更には、登記識別情報の他にも、現在の登記名義人の実印の押印や印鑑証明書等が必要です。

そのため、例えば登記識別情報通知を紛失しただけで直ちに他人が不正に登記名義の変更をするという具体的な危険が発生するわけではありません。

勝手に名義変更すると罪になるか?

勝手に名義変更する行為は犯罪です。登記名義人の委任状を偽造するなどして虚偽の登記を申請し完了させた場合、以下の罪に該当することが考えられます。

  • 有印私文書偽造罪(刑法159条1項)
  • 同行使罪(刑法161条1項)
  • 公正証書原本不実記載等罪(刑法157条1項)
申出の「対象不動産」の範囲は?

基本的には不動産(土地・建物)ごと、管轄の法務局ごとに申出が必要です。

例えば、土地と建物を所有している場合はそれぞれについて、また複数の法務局の管轄にまたがる不動産を所有している場合は各管轄の法務局に対して申出を行う必要があります。

「登記識別情報の失効申出」との違い

不正登記防止申出とセットで検討すべき制度として「登記識別情報の失効申出」があります。

項目不正登記防止申出登記識別情報の失効申出
目的不正な登記申請があった場合に通知を受け、調査を厳格化してもらう登記識別情報(パスワード)そのものを無効化する
申出理由不正登記の「差し迫った危険」が必要理由を問わない(いつでも可能)
有効期間3か月(再申出が必要)恒久的(一度失効すると永久)
申出方法本人出頭が原則(郵送不可)オンラインでも書面でも可能
デメリット3か月ごとに再申出が必要将来売却時等に本人確認情報作成費用(数万円程度)が別途必要になる
失効申出の注意点
登記識別情報は、一度失効させると再発行できません。登記識別情報の効力を失わせても不動産の名義変更や抵当権設定は可能ですが、代替的措置により費用がかかることがあります。

この制度の限界

❌ この制度でできないこと
  • 登記の絶対的な差し止め:この申出は、あくまで登記官に「厳重にチェックしてね」と頼むものであり、裁判所の「仮処分(処分禁止の仮処分)」のように法的に登記をロックする力はありません。
  • 調査の結果、受理されることもある:登記官が厳重に本人確認調査を行った結果、「本人の意思による正当な申請である」と判断された場合は、登記が実行されてしまうリスクはゼロではありません。

「勝手に売買契約を結ばれそうだ」といった、より具体的な危険がある場合は、この制度だけでなく弁護士を通じて裁判所に「処分禁止の仮処分」を申し立てる方が法的な拘束力は強くなります。

実際の事件例(地面師詐欺)

2017年に発生した「積水ハウス地面師詐欺事件」では、大手不動産会社(買主)が土地を購入する際、土地の所有者(売主)に成りすました者にそれを見抜けず、代金60億円余りを支払ってしまいました。

✅ 登記官が見抜いた事例
この件では、東京法務局が本登記申請を却下する方針となり、買主への名義変更(本登記)は完了しませんでした。

登記識別情報の有効性確認方法

登記識別情報が有効かどうかを確認したい場合は、不失効証明を請求する方法があります。

  • 登記識別情報が有効な場合は「証明できません。登記識別情報が通知され、かつ失効していません」との通知が届きます
  • あらかじめ登記識別情報自体を開示する必要はないため、大切な情報が外部に漏れる恐れはありません
  • 手数料は300円です

会社の商業・法人登記(役員変更等)の不正への対応

法人の場合、不正な登記申請がされることを事前に把握しているときは、以下の対応が考えられます。

登録印鑑の変更

まず、登録している会社実印の変更を行うことが効果的です。登録印鑑の変更は、所管の法務局に対し「印鑑(改印)届書」を提出することにより可能です。

仮処分の申立て

法務局から登記申請がなされているという情報提供があった場合、登記申請手続を中断させるためには、民事保全法に基づく仮処分の申立てを行うことが考えられます。

※仮処分の申立てには弁護士への相談・依頼が必要です。
監修者プロフィール - 板垣隼
司法書士 板垣隼
この記事の監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Planやビジネスメディアへの寄稿実績多数。
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