この記事のポイント(結論から先に)
- 戸籍一式=相続人を証明する戸籍の"束"そのもの。法定相続情報一覧図(の写し)=その束を法務局が確認・認証した公的な証明書で、戸籍の束の代わりに使えます(通常1通にまとまり、相続人が多い場合は複数枚になることもあります)。
- 手続き先が複数(銀行・証券・不動産の相続登記など)なら一覧図の負担軽減効果が大きく、1か所だけで終わるなら戸籍一式で足りることも多いです。
- 一覧図の写しの交付手数料は無料。ただし一覧図を作るにも最初の戸籍収集は必要で、ゼロにはなりません。
- 一覧図は生前には作れません(被相続人が亡くなった後のみ)。写し自体に有効期限はありませんが、金融機関によっては発行後3か月以内を求める先もあります。
- 相続税の申告に使うなら、続柄は「子」ではなく実子・養子の別が分かる記載で作成しておくと安全です。
1. そもそも「法定相続情報一覧図」と「戸籍一式」とは?
相続手続きでは「誰が相続人か」を証明する書類が必ず必要になります。その代表が戸籍一式ですが、近年は戸籍の束の代わりに使える法定相続情報一覧図(の写し)という制度が広く利用されています。まずは両者の正体を整理します。
法定相続情報一覧図(の写し)とは
相続関係を家系図のような一覧にまとめ、法務局(登記所)が戸籍一式と照らして内容を確認し、認証文を付けた「写し」を交付してくれる仕組みです。交付手数料は無料で、相続手続に必要な範囲であれば複数通の交付や再交付を受けられます(申出日の翌年から起算して5年間保管され、この間は当初の申出人が再交付を受けられます)。
重要ポイント
相続手続で使うのは、通常「登記官の認証文が付いた一覧図の写し」です。自分で作った一覧図そのものではありません。
詳しくはこちら:【法定相続情報一覧図とは】取得のメリットは?手続き方法は?
戸籍一式とは
相続でいう「戸籍一式」は、次のような"束"を指します(ケースにより増減します)。
- 被相続人:出生から死亡までの戸籍・除籍・改製原戸籍
- 相続人:現在の戸籍(相続関係がわかるもの)
- その他:住民票の除票など(手続先により必要)
詳しくはこちら:相続登記に必要不可欠な戸籍謄本とは
2. 一覧でわかる比較表(使いどころ・手間・提出先)
| 比較項目 | 法定相続情報一覧図(写し) | 戸籍一式 |
|---|---|---|
| 使いどころ | 複数の相続手続を同時並行で進めたいときに強い(銀行・証券・不動産登記など) | どの手続でも基本対応(ただし提出・返却待ちが発生しやすい) |
| 手間 | 最初に一度だけ戸籍収集+一覧図作成+法務局への申出が必要 | 手続先ごとに"戸籍の束"を提出(原本返却待ち/複数部の用意が必要になりやすい) |
| 提出先 | 銀行等で戸籍の代わりに使える例が多い(金融機関側も明記していることがある) | ほぼすべての相続手続で求められる「王道」 |
| 同時進行のしやすさ | 写しを複数通取れば同時に各所へ提出しやすい | 原本が戻るまで次へ進めにくい(郵送手続では特に) |
| 費用 | 写しの交付手数料は無料(※戸籍取得費用は別途) | 戸籍取得費用が発生し、必要部数が増えると負担増 |
| 戻ってくる書類 | 申出時に添付した戸籍類は返却される運用 | 原本返却は手続先次第(時間がかかることも) |
| 保管・再交付 | 申出日の翌年から起算して5年間保管され、期間内は無料で再交付可 | 「再交付」の概念なし(必要なら戸籍を取り直す) |
| 有効期限 | 写し自体に法的な有効期限はない(ただし金融機関により発行後3か月以内を求める先もある) | 戸籍(除籍)自体に法的な有効期限はない |
| 注意点 | すべての手続先が必ず受け付けるとは限らない/追加戸籍を求められることがある | "漏れなく集める"のが難しい(出生から死亡まで等) |
3. 「使いどころ」:どんなときに一覧図が便利?
一覧図が特に効くケース
- 金融機関が複数(銀行A・銀行B・ゆうちょ銀行など)
- 証券会社・投資信託・株式などもある
- 不動産の相続登記も並行して進める
- 相続人が多く、戸籍の束が厚くなる
- 郵送での相続手続が中心(原本のやり取りを減らしたい)
多くの金融機関が、戸籍の代わりに法定相続情報一覧図の写しを受け付けています(詳しくは各金融機関の案内をご確認ください)。ただし個別の事情により、追加の戸籍を求められる場合もあります(後述)。
戸籍一式だけで足りやすいケース
- 手続き先が1か所だけ(例:銀行1行のみ など)
- 相続関係が単純(配偶者+子のみ など)
- 急いで「とにかく1件だけ」終わらせたい
4. 「手間」:どちらが大変?(実務目線)
重要:一覧図でも"最初の戸籍収集"は必要
一覧図は「戸籍収集をゼロにする制度」ではありません。戸籍の束を法務局に一度提出して確認してもらい、以後は写しで回せるようにする制度です。
手間はこう整理できます。
- 戸籍一式のみ:集める→提出→返却待ち→次へ…を繰り返しがち
- 一覧図:最初に戸籍を集め、相続関係を法務局所定の様式で正確に図にして申出します(数次相続・代襲相続では作成が複雑になり、記載に不備があると補正を求められることもあります)。この最初の関門さえ越えれば、以後は"写し"で各所をスムーズに回せます。
5. 「提出先」:どこに出せる?(代表例)
法定相続情報一覧図(写し)を提出できることが多い先
- 銀行・ネット銀行等(多くの金融機関が戸籍の代わりに一覧図の写しを受け付けます。ゆうちょ銀行・三菱UFJ銀行などが代表例です)
- 証券会社・不動産の相続登記など、相続手続一般で利用が進んでいる分野
国税庁からも「利用範囲の拡大」として、相続税の申告書の添付書類に使える(原則)旨の案内が出ています。ただし相続税申告に使えるのは、子の続柄が実子・養子のいずれであるかが分かるように記載された一覧図に限られます(続柄を単に「子」とまとめたものは不可)。
なお、相続税の試算・申告そのものは税理士の業務です。申告が必要な場合は税理士にご相談ください(当センターは戸籍収集・一覧図の作成・申出・相続登記に対応します)。
戸籍一式の提出が求められやすい先
- "写し"の受付可否が不明な先(会社・保険 など)
- 例外処理が多い案件(相続関係が複雑、氏名変更がある など)
- 受付側の内部ルールで「戸籍原本(または原本還付)」が前提の先
実務上の注意
「一覧図が出せても、補足で戸籍を1〜2通追加」を求められることがあります。提出先により扱いが異なるため、事前に確認しておくと安心です。
これは、法定相続情報一覧図が戸籍上の法定相続人を示すもので、相続放棄や遺産分割の結果までは反映しないためです。相続放棄があった場合の相続放棄申述受理証明書、遺産分割をした場合の遺産分割協議書・印鑑証明書などは、一覧図とは別に求められます。
6. 知っておきたい実務ポイント(生前・有効期限・戸籍の返却)
生前に法定相続情報一覧図は作れる?
作れません。法定相続情報一覧図は相続手続のための制度で、被相続人が亡くなった後にしか作成できません。死亡前は法定相続人が確定しないため、そもそも一覧図を作れないからです。生前にできるのは、戸籍を集めておく・相続人の範囲を把握しておくといった準備までです。
一覧図に「有効期限」はある?(金融機関ごとの扱い)
一覧図の写しそのものに法律上の有効期限はありません。内容に変更がなければ、いつ発行されたものでも使えます。ただし提出先の運用は異なるため、金融機関によっては発行後の期間を制限している場合があります。
| 提出先の例 | 有効期限の扱い(発行後の期間制限) |
|---|---|
| ゆうちょ銀行 | 特に期限なし(内容に変更がなければいつのものでも使用可) |
| 三菱UFJ銀行 | 原則期限なし。ただし被相続人名義の借入がある場合は発行日より3か月以内のもの |
| りそな銀行 | 交付日から3か月以内のもの |
このように提出先ごとに扱いが違うため、期限がありそうな先へ出すときは、事前に「発行後いつまでのものが使えるか」を確認してください(金融機関の運用は変更される場合があるため、最新の扱いは各金融機関の案内でご確認ください)。心配なら、写しは必要になる直前にまとめて取得する方法もあります。
申出のとき出した戸籍は返ってくる?(原本還付との関係)
はい。一覧図の申出時に添付した戸除籍謄本等(ここまで述べた戸籍一式)は、確認後に返却される運用です。戸籍一式を各手続先へ個別に提出し、その都度原本還付(コピーを添えて原本を返してもらう手続き)を待つ場合と比べ、法務局に一度預けて写しで回せるのが一覧図の利点です。預金の相続手続きで戸籍をどう扱うかは、預貯金の相続手続きのページもあわせてご覧ください。
7. よくあるQ&A
まとめ
結論
- 提出先が複数なら:法定相続情報一覧図(写し)で"戸籍の束"を繰り返し出す負担を減らす
- 手続きが1件なら:戸籍一式だけで足りる場合も多い
ただし手続先ごとに運用が違うので、追加書類が出る前提で設計するのが安全です。戸籍の収集から一覧図の作成・申出、そのまま相続登記まで一括してご依頼いただけますので、迷ったときはお気軽に無料相談をご利用ください。
