離婚時、「家はあなたに渡す」と話がついていたはずなのに、いざ不動産の名義変更を進めようとすると、元配偶者が協力してくれない。この相談は、司法書士の現場では決して珍しくありません。
この記事では、協力が得られないときに起こるリスクから、説得で解決する現実的な方法、司法書士を間に入れる意味、調停・審判を使った"最終ルート"まで、登記実務の視点で具体的に解説します。
名義変更に応じないまま放置すると起きること
名義が元配偶者のまま、または共有名義のままになっていると、次のような問題が現実に起こります。
売却・担保設定・差押えのリスク
名義人の事情(借金・事業失敗・再婚など)で、家が勝手に動く可能性があります。
共有名義は将来必ず揉めやすい
共有は全員の同意が必要なため、売却・処分が極端に難しくなります。
- 時間が経つほど相手は動かなくなる
生活環境が変わるほど、協力は得にくくなります。 - 離婚=自動で名義が変わるわけではない
行動しなければ、登記は一切変わりません。
まず整理すべき3つの前提(司法書士実務)
協力しない相手と向き合う前に、必ず整理すべきポイントがあります。
① 名義変更の「原因」を確定する
登記では「なぜ名義が移るのか」が重要です。多くは財産分与ですが、状況によっては「売買」「贈与」扱いになることもあり、税金・必要書類・難易度が大きく変わります。
② 住宅ローンの有無
相手が拒否する最大の理由は、ほとんどがここです。
- 名義を渡してもローンが自分に残るのが怖い
- 銀行に知られるのが不安
- 借換えが通るか分からない
この論点は、登記とローンを同時に「安全な順番」で設計するのがコツです。詳しくはこちら
③ 離婚協議書・財産分与契約書の内容
次が曖昧だと、必ず行き詰まります。
- 不動産の特定(地番・家屋番号)
- 費用・税金・ローンの負担
- 登記手続への協力義務・期限
説得で解決するための現実的アプローチ
相手の拒否理由別・対応方法
| 相手の拒否理由 | 有効な対応 |
|---|---|
| お金の問題 | 費用負担を明確化し、具体的な金額と支払い方法を提示 |
| 住宅ローン | 借換え・売却案を提示し、債務から解放されることを説明 |
| 感情的な対立 | 第三者(司法書士)介入で、法的手続きとして進める |
| 面倒・後回し | 期限・作業を可視化し、相手の負担を最小限にする |
相手に「協力するメリット」を見せる
拒否している相手の本音は、次のいずれかです。
- 損をしたくない(お金)
- 責任だけ残るのが怖い(ローン)
- 感情的な対立
- 単純に面倒・後回し
そこで、次のような形で説明すると、動くケースは少なくありません。
- 名義変更が終われば不動産の責任から完全に解放される
- 共有名義のままは将来ずっと連絡が必要
- 手続きは専門家が段取りし、相手の負担は最小限
- 期限を決めて「終わらせる」方が楽
司法書士を間に入れるメリット
当事者同士では感情が絡みます。手続きについても相手への不信感がある場合は、協力的に動いてくれない場合があります。
- 相手の不安(悪用・責任残り)を手続面から解消
- 合意内容を法務局で通る形に整理
- 後で再度協力を貰うようなことがほぼ無い
実務では、司法書士が中立的に関与しただけで合意が進むケースも珍しくありません。
※司法書士はどちらか一方の代理として交渉することはできません。
それでも無理なら:家庭裁判所ルート(調停 → 審判)
当事者だけで話し合いが成立しない場合は、離婚調停を使います。裁判所の関与の元、離婚協議を進めます。
当事者間での合意形成
登記に必要な内容を法的に整理
調停委員を介した合意形成
裁判所の審判書により登記実行
調停条項では、次が明確になっていることが重要です。
- 不動産の特定
- 持分移転の内容
- 登記手続への協力
- 期限・方法
※ 裁判所の調停だからといって完璧な内容とは限りません。登記手続きにそのまま利用できるかの確認が必要です。
最終手段:家庭裁判所の審判
相手が完全に拒否しても、審判など法的に権利が確定する文書があれば、審判書の内容によっては相手方の協力なく、審判書のみで登記できます(※調停の場合も同様です)。
ただし、次の点が分かれ目になります。
- 内容が登記できるレベルか
- 不動産・持分の特定が十分か
この段階こそ、登記実務を知る司法書士の関与が不可欠です。
よくある質問(FAQ)
離婚による名義変更を自分で行う方法
まとめ
元配偶者が名義変更に応じない問題は、感情ではなく「登記で動かせる形」にできるかがすべてです。
当センターでは、最短ルートを見極め、交渉・調停・判決まで見据えた実務対応をご案内しています。無料相談で状況を整理するだけでも、進め方が明確になります。








