取得手順を急いで知りたい方へ
本ページは制度の全体像を詳しく解説しています。すぐに取得方法・必要書類・手数料(書面1,600円/オンライン1,500円)・申請手順をお知りになりたい方は、以下の専用ページが最適です。
「亡くなった親がどこにどんな不動産を持っていたか分からない」という悩みを解消する画期的なインフラです。
窓口・郵送・オンラインの3つの方法
平日 8:30〜17:15
全国から請求可能
手数料が安い
知りたい内容をクリックすると、該当箇所へジャンプできます。
1. なぜ今この制度が必要なのか
日本が抱える「所有者不明土地」問題
日本の不動産制度は今、明治時代以来の大きな転換点を迎えています。その背景にあるのが「所有者不明土地」問題です。
所有者不明土地問題研究会(座長・増田寛也氏)が国土交通省の調査データをもとに行った推計(2017年公表)によると、所有者が直ちに判明しない、または連絡がつかない「所有者不明土地」の総面積は2016年時点で約410万ヘクタールに達し、九州本島の面積に匹敵するとされています。
この問題により、以下のような深刻な影響が出ています:
- 公共事業のための用地買収が進まない
- 災害からの復興事業が遅れる
- 民間企業の土地取引が阻害される
- 管理不全によるゴミの不法投棄や倒壊の危険
問題の根源:相続登記が義務ではなかった
これまで日本では、親が亡くなって不動産を相続しても、名義変更(相続登記)をする義務がありませんでした。手続きの手間や費用を考えて、「いつかやればいい」と放置されることが常態化していたのです。
法務省も、これまで登記記録は土地や建物ごとに作成されており、全国の不動産から特定の人が所有権の登記名義人となっているものを抽出する仕組みが存在しませんでした。その結果、所有権の登記名義人が死亡した場合に、その所有する不動産としてどのようなものがあるかを相続人が把握しきれず、見逃された土地について相続登記がされないまま放置されてしまう事態が少なからず生じていると指摘しています。
相続登記の申請義務化がスタート
NEW 所有不動産記録証明制度の施行
NEW 住所等変更登記の義務化(職権によるスマート変更登記は、所有権の登記に会社法人等番号が登記された法人は令和8年5月15日から、検索用情報の申出をした個人は同年12月中旬以降に順次)
相続登記義務化の詳細については、以下の記事で詳しく解説しています:
相続人が直面する壁
「登記しないと罰則がある」のに、「どこにどんな不動産があるか分からない」という矛盾が発生しています。
親と別居している、遠方の土地を購入していた、原野商法で購入していた…このような場合、相続人は不動産の存在自体を知らないのです。
なお、相続登記の期限は「その不動産を相続で取得したことを知った日」から数えるため、存在を知らない不動産について直ちに義務違反になるわけではありません。ただし、知らないままでは相続登記も遺産分割も進められません。
この矛盾を解決し、国民が無理なく義務を果たせる環境を整備するために創設されたのが、「所有不動産記録証明制度」です。
2. 所有不動産記録証明制度とは
制度の基本概要
一言で言うと:
「特定の人が持っている全国の不動産を、法務局がリスト化して教えてくれる制度」
法務省によれば、令和6年4月1日からの相続登記の義務化に伴い、相続人において被相続人名義の不動産を把握しやすくすることで、相続登記の申請に当たっての当事者の手続的負担を軽減するとともに登記漏れを防止する観点から、登記官において、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産について一覧的にリスト化して証明書として交付する制度とされています。
法的には、改正不動産登記法第119条の2に基づく制度で、以下のことが可能になります:
- ✓ 自分が所有する不動産の一覧を取得できる
- ✓ 相続人が亡くなった方の不動産一覧を取得できる
- ✓ 全国の不動産を一括で検索できる
施行日
令和8年(2026年)2月2日
証明書に記載される内容
所有不動産記録証明書で証明されるのは、登記記録のうち「不動産所在事項」と「不動産番号」です(不動産登記法第119条の2第1項)。証明書には以下の情報が記載されます:
- 請求人の資格・氏名又は名称・住所と、指定した検索条件
- 抽出された各不動産の管轄登記所
- 種別(土地・建物の別)
- 不動産所在事項(登記上の所在と、土地は地番・建物は家屋番号)
- 不動産番号(登記申請用のコードも印字されます)
所有不動産記録証明書の見本

出典:法務省「交付される所有不動産記録証明書の見本」
実際に取得した所有不動産記録証明書の例

実際に法務局で取得した所有不動産記録証明書(個人情報は加工しています)
証明書に記載されるのは不動産所在事項と不動産番号までです。地目・地積、建物の種類・床面積、共有持分、抵当権などの担保権その他の権利関係は記載されません。これらの詳細は、不動産番号をもとに別途、各不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して確認します。
3. 従来の調査方法との違い
これまでの相続実務では、主に以下の方法で不動産を調査していました:
従来の調査方法とその限界
① 固定資産税納税通知書
毎年4月〜6月頃に市区町村から送られてくる通知書です。
- 非課税物件(評価額の低い山林、原野、私道など)が載らない
- 共有物件は代表者にのみ通知される
② 名寄帳(なよせちょう)
市区町村役場で取得できる、その自治体内の不動産一覧表です。
- 「地域限定」:その市区町村内の物件しか載らない
- 全国1,700以上の自治体に個別請求は現実的に不可能
- 現地の役所への出頭または煩雑な郵送請求が必要
圧倒的な違いを比較表で確認
| 比較項目 | 所有不動産記録証明制度 NEW | 名寄帳 | 固定資産税通知書 |
|---|---|---|---|
| 調査範囲 | 日本全国を一括検索 | 請求した市区町村内のみ | 発行元の市区町村内のみ |
| 網羅性 | 所有権の登記がある不動産を検索(氏名・住所等による検索漏れや対象外あり) | 課税台帳上の物件(未登記家屋を含むことがある・範囲は自治体により異なる) | 課税物件のみ(非課税は除外) |
| 共有不動産 | 持分の登記があり、検索条件に合致する共有不動産も対象 | 自治体により異なる | 代表者にのみ通知 |
| 請求先 | 全国どこの法務局でも可 | 各市区町村(分散) | (自動送付) |
| 費用 | 検索条件1件・1通につき1,600円(書面請求) | 300円/通 または無料など | 無料 |
現代社会では、生まれた場所に一生住み続けるとは限りません。地方から都市部への移住、リゾートマンションの購入、親からの遠隔地の相続など、資産は分散する傾向にあります。
従来の名寄帳方式は「場所が分かっている」ことが前提でしたが、新制度は「場所が分からなくても、人から探せる」という点で、調査のパラダイムシフト(劇的な変化)をもたらします。
4. 誰が利用できるのか・必要書類
個人の資産情報は極めて高度なプライバシー情報です。そのため、この制度を利用できる人(請求権者)は法律により厳格に限定されています。
請求できる人
| 請求者 | 説明 |
|---|---|
| 不動産の登記名義人本人 | 「自分の財産目録を作りたい」「終活のために資産整理したい」「認知症になる前に財産管理を家族に任せたい」といったニーズに対応。法人も含まれます。 |
| 登記名義人の相続人 | メインユーザー 被相続人(亡くなった方)の不動産を網羅的に把握し、遺産分割協議の対象を確定 |
| 登記名義人の一般承継人 | 合併により消滅した会社の権利義務を承継した法人など。法人も含まれます。 |
| 代理人 | 法定代理人・財産管理人等:未成年者の親権者・未成年後見人、成年後見人、代理権付与の審判を受けた保佐人・補助人、不在者財産管理人、相続財産管理人・相続財産清算人、破産管財人など 任意代理人:委任を受けた司法書士、弁護士、親族など |
単なる債権者(お金を貸している人)や、隣地の所有者などは、正当な理由があってもこの制度を利用して他人の資産一覧を取得することはできません。
- 相続人は1人で請求できます。他の相続人の同意は不要で、相続人の1人であることが分かる戸籍があれば足ります(子や配偶者であれば、相続登記のように出生から死亡までの戸籍をそろえる必要はありません)。
- 成年後見人は、本人の死亡後は請求できません。相続人から改めて委任を受ければ、その代理人として請求できます。
- 遺言執行者は、遺言の内容によって請求できます。財産を包括的に遺贈する遺言など、執行のために被相続人名義の不動産を把握する必要がある場合が該当し、遺言書の写しと遺言者の死亡を証する書類などで権限を示します。特定の財産だけを遺贈する遺言では、通常は必要とされません。
出典:法務省が登記所向けに示した「所有不動産記録証明書の交付等に関する質疑事項集」(第三版・令和8年9月4日現在)
請求権者の確認ができたら、次は実際の取得手続きに進みましょう。必要書類・手数料・申請手順については、以下の詳細ガイドをご覧ください:
必要な添付書類
請求の際には、以下の書類が必要です。法務省の公式情報に基づく詳細な内容を確認しましょう。
| 請求者の種類 | 必要書類 |
|---|---|
| 所有権の登記名義人 | 以下のいずれか一方: ① 印鑑証明書 ② 本人確認書類の写し(書面請求のみ) 【必要となる場合がある書類】 |
| 相続人その他の一般承継人 | 上記に加えて: ③ 所有権の登記名義人との相続関係・承継関係を証する情報 相続関係を証する戸籍は、「相続人の1人であること」が分かる範囲で足ります(子・配偶者なら被相続人の出生から死亡までの戸籍は不要です。親や兄弟姉妹は、先順位の相続人がいないことの確認に必要になることがあります)。過去の住所・旧姓を証する書類は、戸籍の附票のほか、権利証の写し・固定資産税の納税通知書(課税明細書)の写し・名寄帳も認められます。詳しくは取得方法ページの「必要な添付書類」をご覧ください。 【必要となる場合がある書類】 |
| 上記の代理人 | 上記に加えて: ⑤ 委任状(任意代理人の場合) |
- 原則、原本の提出が必要です。ただし、印鑑証明書およびこの請求のためだけに作成した委任状以外の書類については、原本と併せてコピー(原本と相違がない旨を記載し、請求人または代理人の記名がされたもの)が提出された場合には、手続完了後、原本を返却します。
- 添付書類に不足がある場合には、補完が必要です。一定の期間内に補完されない場合、証明書が交付されないことがあります。
- オンライン請求の場合には、必要書類も全てオンラインで提供する必要があります。
法定相続情報証明制度の活用
相続人が請求する場合、戸籍謄本の束を提出する代わりに、「法定相続情報一覧図の写し」を利用することができます。これは法務局が無料で発行してくれる公的な相続関係図で、一度取得すれば様々な相続手続きで使い回せる便利な制度です。
- 保存期間(申出日の翌年から5年間)内なら無料で何度でも再交付可能
- 戸籍の束を持ち歩く必要がない
- 銀行、証券会社、年金事務所などでも使える
- 相続登記、所有不動産記録証明請求など複数の手続きで同時並行利用が可能
詳しくはこちらの記事をご覧ください:
【法定相続情報一覧図とは】取得のメリットは?手続き方法は?
5. 実際の手続き方法
所有不動産記録証明書の取得方法について、必要書類・手数料・申請手順を詳しく解説した記事をご用意しています:
所有不動産記録証明書の取得方法|必要書類・手数料・申請手順を解説
制度開始初日の実体験:
請求方法
所有不動産記録証明書の請求は、以下の3つの方法で行えます:
| 請求方法 | 特徴・注意点 |
|---|---|
| ① 窓口請求 | 全国どこの法務局・地方法務局(支局・出張所を含む)でも請求可能です。 メリット:その場で書類の不備を確認できる、相談しながら記入できる デメリット:平日の開庁時間(8:30~17:15)に出向く必要がある |
| ② 郵送請求 | 請求書と必要書類、返送用封筒(切手貼付)を同封して法務局に郵送します。 メリット:来庁不要、全国どこからでも請求可能 デメリット:往復の日数がかかる、書類不備の場合は補正に時間を要する |
| ③ オンライン請求 | 登記・供託オンライン申請システムを利用して請求します。 メリット:平日は23時まで・土日祝も18時まで送信できる(年末年始を除く)、手数料が安い、来庁不要 デメリット:電子証明書(マイナンバーカード等)が必要、システムの操作に慣れが必要 ▼ 登記・供託オンライン申請システム ▼ |
請求から交付までにかかる日数は、登記所ごとに異なるため、請求先の登記所にお問合せください。
法務省は、標準的な処理期間として「受付後1週間以内の交付」を想定しています(登記所向けの質疑事項集・令和8年9月時点)。混み合う時期や書類に不備がある場合はこれより長くなることがありますので、余裕を持って請求しましょう。
手数料
本制度は有料のサービスです。手数料は以下の通り設定されています:
| 請求方法 | 手数料(検索条件1件につき、1通あたり) |
|---|---|
| 窓口請求・郵送請求 | 1,600円 (収入印紙で納付) |
| オンライン請求(郵送交付) | 1,500円 |
| オンライン請求(窓口交付) | 1,470円 |
【手数料計算例】
例えば、登記所に請求書を提出する方法(窓口請求)で証明書を請求する場合において、検索条件を4件指定し、証明書の請求通数を1通としたときに納付する手数料額は:
検索条件4件 × 1通 × 1,600円 = 6,400円
オンライン請求を利用すれば、1件あたり100円以上安くなります。複数の検索条件を指定する場合、この差額は大きくなるため、オンラインでの申請が可能な方であればオンライン請求を検討しましょう。
申請書の書き方
法務省所定の「所有不動産記録証明書交付請求書」様式に基づき、記入のポイントを解説します。
- 請求書の内容に不備がある場合には訂正が必要です。一定の期間内に訂正されない場合、証明書が交付されないことがあります。
- 請求書1枚で複数の検索条件を指定することができますが、1つの検索条件欄に、複数の氏名(又は名称)・住所等をまとめて記載することはできません。それぞれの検索条件欄に記載してください。
- 検索対象となる不動産は所有権の登記がされている不動産に限られ、土地や建物の表示に関する登記のみの不動産は検索対象となりません。
- 証明の対象となる不動産が検索結果として抽出されない場合、該当不動産がない旨の証明がされます。この場合も手数料はかかり、返却されません。
- 登記簿がコンピュータ化されていない不動産については、検索結果として抽出されません。
所有不動産記録証明書の交付請求について、制度開始初日に実際に請求した司法書士の体験談をご紹介しています。実際の流れ、必要書類、注意点など、リアルな情報が満載です:
6. 検索の仕組みと注意点
所有不動産記録証明制度の検索システムは、どのように動作するのでしょうか。法務省が公表している情報をもとに、検索の仕組みと限界を正確に理解しましょう。
システムの検索ルール
請求書に記載された検索条件を登記官がシステムに入力し検索を行います。システム上、以下のルールに基づき、所有権の登記名義人として記録されている不動産が抽出されます:
| 検索パターン | 検索ルール |
|---|---|
| 基本検索 (氏名・住所) | ① 氏名または名称の前方一致、かつ、住所の市区町村までが一致している人 ② 氏名または名称の前方一致、かつ、住所の末尾5文字が一致している人 |
| ローマ字氏名検索 (外国人の場合) | ③ ローマ字氏名の完全一致、かつ、住所の市区町村までが一致している人 ④ ローマ字氏名の完全一致、かつ、住所の末尾5文字が一致している人 |
| 会社法人等番号検索 (法人の場合) | ⑤ 会社法人等番号が完全一致している法人 |
このルールに基づいて抽出された不動産から、検索条件と合致するものについて選定し、証明書に記載します(該当する不動産がない場合にはその旨を記載します)。
異体字の扱いと縮退検索
検索条件で指定された氏名または住所の文字によっては、システムにおいて、JIS X 0213(JIS第1~第4水準)の範囲外の文字をIPAが定義した「MJ縮退マップ」及び「登記統一文字縮退マップ」に基づきJIS X 0213の範囲内の文字に変換(縮退)した上で検索します。
検索条件で指定した氏名または住所に異体字(読みが同じでも字形が異なるもの)が含まれていたとしても、縮退される前の複数の異体字を検索することができるので、網羅性が高まります。
例:「高」「髙」「﨑」「崎」などの異体字が自動的に変換されて検索されます。
全ての異体字が変換して検索されるものではありません。特殊な旧字体や俗字については、検索漏れが発生する可能性があります。
検索漏れのリスクと対策
法務省も公表している通り、氏名・住所等で検索する仕様上、検索結果として抽出される不動産の網羅性には限界があります。
検索漏れが発生する主なケース:
- 登記上の住所と検索条件の住所が異なる場合
例:住所変更登記がされていない、住居表示実施前の地番表記、市町村合併による住所変更など - 氏名の表記が異なる場合
例:旧姓での登記、通称名での登記、特殊な異体字など - 登記簿がコンピュータ化されていない不動産
古い登記所や一部の不動産では、紙の登記簿のままの場合があり、これらは検索対象外です
- 複数の検索条件を指定する:過去の住所や旧姓など、思い当たる条件は全て入力しましょう
- 戸籍の附票を取得する:過去の住所履歴を正確に把握できます
- 固定資産税納税通知書や名寄帳と併用する:特定できている市町村については、従来の方法も併用することで確実性が高まります
- 専門家(司法書士)に相談する:複雑な住所変遷や姓の変更がある場合、専門家の知見が有効です
- 検索条件は1件ごとに手数料がかかります。「斉藤」と「齊藤」のようにシステム上は同じ文字(代表文字)に変換される異体字を2件書いた場合も、行政区画の変更前後(A市B町とA郡B町)の住所を2件書いた場合も、2件分として数えられます。
- 1枚の請求書で複数の検索条件を指定するときは、条件ごとに通数を変えることはできません。通数を変えたい場合は請求書を分けます。
- 旧氏(旧姓)を括弧書きで併記して登記されている不動産は、旧氏の方を検索条件にしても抽出されません。併記ではなく旧姓のまま登記されている不動産は、旧姓と当時の住所を検索条件にして探します。
- 検索対象の不動産に相続登記や売買の登記が申請中でも、証明書は発行されます。ただし、証明書は検索時点の登記記録を基準に作成され、まだ反映されていない申請内容は含まれません。所有権移転の登記が処理(校合)された後は、変更前の所有者の氏名・住所では抽出されなくなります。売却や名義変更の直後に調べる場合は注意してください。
- 法人の場合、会社法人等番号が登記記録に記録されている不動産については、番号を検索条件に加えておくと、旧商号・旧本店のまま変更登記がされていなくても番号の一致によって抽出されます。古い登記では番号が記録されていないこともあるため、旧商号・旧本店による検索も併用すると安全です。なお、会社法人等番号を加えても、名称と住所の指定自体は必要です。
出典:法務省が登記所向けに示した「所有不動産記録証明書の交付等に関する質疑事項集」(第三版・令和8年9月4日現在)
スマート変更登記による将来的な改善
検索漏れの最大の原因の一つが、「登記上の住所が現住所と一致していない」ことにあります。引っ越しをしても住所変更登記をしていなければ、検索条件と登記記録の住所が食い違い、不動産が抽出されないのです。
この問題の根本的な解消につながると期待されるのが、令和8年(2026年)4月1日に施行された「スマート変更登記」制度です。
スマート変更登記とは、あらかじめ簡単な手続(検索用情報の申出)をしておくことで、その後の住所や氏名の変更を法務局が職権で登記してくれる仕組みです。費用は無料、押印・電子署名も不要で(司法書士が代理する場合を除く)、Webブラウザ上から手続ができます。
具体的には、法務局が2年に1回程度、住基ネットに照会して住所等の変更の有無を確認し、変更があった方に意思確認通知を送ります(メールアドレスを提供した方にはメール、提供していない方には住基ネットで確認した最新の住所へ封書)。通知が送られてから1か月以内に変更登記を希望する旨を回答した方について、順次変更登記が行われます。令和8年度は、令和8年3月31日までに検索用情報の登録が完了した方のうち住所等に変更があった方に、令和8年12月中旬以降、順次通知が送られます。令和8年4月1日以降に登録が完了した方への通知は令和9年度以降で、時期は未定です。
なお、検索用情報の申出は令和7年(2025年)4月21日から既に受付が開始されています。
スマート変更登記の詳細はこちら:
スマート変更登記とは|住所変更登記義務化の負担を軽減する新制度を解説
スマート変更登記が普及すれば、登記上の住所等が更新されやすくなります(個人は2年に1回程度の照会と本人の回答を経て登記されるため、申出直後や転居直後は旧住所が残ることがあります)。これにより、所有不動産記録証明制度の「住所不一致による検索漏れ」という最大の弱点が徐々に解消されていくことが期待されます。ただし、登記される住所は法務局が住基ネットに照会した時点のものなので、照会の後に引っ越していると、最新ではない途中の住所で登記されることがあります。所有不動産記録証明書を請求するときは、途中の住所も検索条件に入れておくと検索漏れを防ぎやすくなります(検索条件1件ごとに手数料がかかります)。
将来的には、この2つの制度が車の両輪として機能することで、「誰がどの不動産を持っているか」がより正確に把握できる環境が整っていくと考えられます。
7. 賢い活用シナリオ
本制度は、単なる事務手続きの一部ではなく、賢く使うことで資産防衛や家族のトラブル防止に役立ちます。
生前対策:認知症・死亡への備え
本人が元気なうちに自ら請求し、「財産目録」を作成しておく
以下のようなメリットがあります:
- 遺言書の作成:正確な財産目録があれば、遺言書(特に自筆証書遺言)の作成がスムーズになります。遺言で処分方法を定めていない財産が後から見つかり、追加の協議が必要になる事態を減らせます。
- 財産管理の委任:将来、認知症などで判断能力が低下した際、家族信託や成年後見制度を利用する前提として、自分の資産を正確に把握・リスト化しておくことは非常に有益です。
- 相続税対策:全財産を把握することで、相続税の試算や節税対策が可能になります。
相続発生後:「負の遺産」の早期発見と対処
地方の山林や原野など、管理費や固定資産税ばかりかかり、売るに売れない「負の不動産」が発見されることもあります。
所有不動産記録証明制度で早期にこれらを発見できれば、相続放棄(原則として、自己のために相続が開始したことを知った時から3か月以内)の判断材料にできます。調査が間に合わないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てることもできます。
⚠️ 3か月の期間を過ぎてしまうと、原則として放棄ができず、不要な土地を背負い込むことになりかねません。
早期の全容把握は、身を守るためにも不可欠です。
相続土地国庫帰属制度との組み合わせ
「相続放棄はしたくないが、不要な土地だけ手放したい」――こうしたニーズに応えるのが、令和5年(2023年)4月に開始された「相続土地国庫帰属制度」です。
相続または相続人に対する遺贈によって取得した不要な土地を、一定の要件を満たせば国庫(国)に帰属させる(返す)ことができる制度です(共有地は共有者全員で申請します)。
所有不動産記録証明制度との組み合わせにより、以下のような流れが考えられます:
- 所有不動産記録証明書で被相続人の全不動産を把握
- 取得した一覧の中から、管理が困難な土地や活用の見込みがない土地を選定
- 国庫帰属の申請対象となる要件を確認し、申請を検討
相続放棄の場合は全ての財産を放棄する必要がありますが、国庫帰属制度であれば「必要な財産は相続し、不要な土地だけ手放す」という選択が可能になります。
相続土地国庫帰属制度の詳細はこちら:
相続土地国庫帰属制度|不要な土地を手放すための条件・手続き・費用・代替案
遺産分割協議:全財産の正確な把握
相続人間での公平な遺産分割のためには、全財産を正確に把握することが大前提です。
- 「知らなかった不動産」の発覚による協議のやり直しを防止
- 共有不動産の見落としを防止(特に私道の持分など)
- 全国に散らばった不動産を一覧化し、分割方針を検討
- 不動産番号をもとに、各不動産の登記事項証明書を取得する
- 名義・共有持分・担保権・所在/地番/家屋番号を確認する
- 固定資産税の課税明細書や名寄帳と照合し、私道の持分・未登記家屋・古い住所のまま登記された不動産の漏れを点検する
- 物件ごとに、相続による取得を知った時期(期限の起算点)を確認する
- 遺産分割・相続登記へ進む。すぐに決まらない不動産は相続人申告登記を検討する
将来の売却・活用:早めの権利整理
相続後すぐに売却や活用を考えていなくても、将来のために権利関係を整理しておくことは重要です。
- 未分割・未登記のまま次の相続を迎え、権利関係が複雑になるのを防ぐ(放置すると相続人がどんどん増える)
- 共有状態を解消(共有者が増えると処分が困難に)
- 担保権の有無を確認(完済済みの抵当権が残っている場合の抹消)
8. 相続登記義務化との関係
所有不動産記録証明制度は、令和6年4月に施行された「相続登記義務化」とセットで機能する車の両輪です。
義務化の「3年ルール」をクリアするために
相続登記の義務化により、相続人は「不動産の取得を知った日から3年以内」に登記しなければなりません。
正当な理由なくこれを怠れば、10万円以下の過料というペナルティが課される可能性があります。
期限の起算点は、自己のために相続が開始したことと、その不動産の所有権を相続により取得したことを知った日です。証明書によって初めて取得を知る不動産もありますが、既に知っていた不動産の期限が、証明書の取得によって延びることはありません。令和6年(2024年)4月1日より前に取得を知っていた未登記の相続不動産は、原則として令和9年(2027年)3月31日までに相続登記(または相続人申告登記)が必要です。証明書を取得しただけでは、相続登記の義務を履行したことにはなりません。
所有不動産記録証明書で不動産を特定
相続で取得したことを知った時期を確認する
遺産分割協議をまとめ相続登記を申請。間に合わなければ相続人申告登記
相続人申告登記という「期限内の簡易な手続」
もし、リストアップされた不動産について、遺産分割協議が難航して3年以内に誰が相続するか決まらない場合はどうすればよいでしょうか?
「相続人申告登記」という簡易な手続きを利用します。これは「私は相続人の一人です」と法務局に申し出るだけで、とりあえずの登記義務を果たしたことになる制度です。
活用方法:
- 所有不動産記録証明書で物件を特定
- すぐに分割が決まらないものは申告登記を入れておく
- 過料を回避
- 後日、協議がまとまったら正式な相続登記へ
相続人申告登記で履行できるのは基本的な申請義務です。その後に遺産分割で所有権を取得した場合は、原則として分割の日から3年以内に、その内容を踏まえた相続登記が別途必要です。
これが、義務化時代を乗り切るための鉄則となります。
住所変更登記の義務化とスマート変更登記
令和8年(2026年)4月1日からは、相続登記だけでなく、住所・氏名の変更登記も義務化されています。引っ越しや結婚・離婚で住所や氏名が変わった場合、変更日から2年以内に変更登記を申請しなければなりません。
- 正当な理由なく義務に違反した場合は、5万円以下の過料の適用対象となります
- 義務化前(令和8年4月1日より前)の住所変更も対象で、令和10年(2028年)3月末までに変更登記を行う必要があります
この義務化の負担を大幅に軽減する仕組みとして導入されたのが、「スマート変更登記」です。
あらかじめ「検索用情報の申出」という簡単な手続をしておくことで、その後は住所等の変更があるたびにご自身で登記申請をしなくても、法務局が職権で変更登記を行ってくれます。つまり、一度手続をしておけば、以後の住所変更は法務局からの確認に応じることで登記され、ご自身で申請する負担がなくなります(海外に住所がある間は職権による変更登記の対象にならず、ご自身での申請が必要です。海外に住所があるときに申出をした方は、日本に住所を移した後に改めて申出をしない限り対象になりません)。
ただし、法務局から意思確認通知が届いた場合、職権での変更登記を希望するときは、通知が送られてから1か月以内にその旨を回答します。期限までに回答しない場合や変更登記を拒否した場合は、登記官から登記を促す催告を受けることがあります。また、職権の変更登記は法務省が決めた時期に行われ、個別に早めてもらうことはできないため、売却などで急いで住所を変更したい場合は、ご自身で住所変更登記を申請する必要があります。
検索用情報の申出は令和7年(2025年)4月21日から既に受付開始されており、Webブラウザ上で手続が可能です。費用は無料、押印・電子署名も不要です(司法書士が代理する場合を除く)。
スマート変更登記の詳しい解説はこちら:
スマート変更登記とは|住所変更登記義務化の負担を軽減する新制度を解説
法人の場合は個人とは仕組みが異なり、不動産の所有権の登記に会社法人等番号が登記されていれば、商業・法人登記で本店移転や商号変更があったときにその情報が不動産登記システムに連携され、法務局側で変更登記が行われます(令和8年5月15日以降順次。完了までには一定の期間がかかり、意思確認や完了の連絡はありません)。会社法人等番号が登記されていない不動産は対象外で、スマート変更登記を利用するには「会社法人等番号の申出」をして番号を登記する必要があります(申出をしない場合は、変更があるたびにご自身で変更登記を申請します)。また、吸収合併・新設合併・吸収分割・新設分割による変更は対象外です(合併で消滅した会社の名義のままの不動産など)。
9. 専門家(司法書士)に依頼するメリット
本制度は一般の方でも利用可能ですが、ここまで解説してきた通り、「過去の住所の追跡」や「戸籍の収集」、「検索漏れのリスク」など、高度な知識と手間が要求される場面が多々あります。
司法書士に依頼する具体的なメリット
1. 「検索漏れ」を極限まで防ぐ
司法書士は、受任した業務に必要な範囲で職務上請求により戸籍や住民票等を取得し、複雑な住所移転の履歴を正確に読み解くことができます。
一般の方では見落としがちな以下のような点も考慮します:
- 数回前の住所
- 住居表示実施前の地番表記
- 旧住所(合併前の市町村名など)
- 婚姻前の住所
最適な検索条件を設定して請求を行うため、不動産の発見率が格段に高まります。
2. ワンストップでの解決
証明書はあくまで「リスト」です。取得した後には、以下の実務が待っています:
- 詳細な権利調査(登記簿謄本の取得・分析)
- 遺産分割協議書の作成
- 実際の相続登記申請
- 相続人申告登記の検討
- その他の名義変更手続き
司法書士に依頼すれば、証明書の請求から、その後の義務化対応(登記申請)までを一貫して任せることができます。
3. 時間と労力の大幅な節約
| 作業内容 | 自分でやる場合 | 司法書士に依頼 |
|---|---|---|
| 戸籍の収集 | 複数の役所に請求、数週間 | 職務上請求により取得 |
| 住所履歴の調査 | 戸籍の附票を読み解く必要 | 専門知識で正確に把握 |
| 検索条件の設定 | 漏れのリスク大 | 最適な条件で検索 |
| 登記簿の分析 | 専門用語が難解 | 権利関係を正確に把握 |
| 遺産分割協議書作成 | 法的に有効な書類作成が困難 | 確実な書類を作成 |
| 登記申請 | 平日に法務局へ、補正対応も | 全て代行 |
4. コストパフォーマンス
ご自身で役所を回り、不慣れな書類作成に何日も費やす労力を考えれば、専門家に依頼する費用は決して高くありません。
特に以下のようなケースでは、早めの専門家介入が、結果としてトータルのコストと精神的負担を抑えることにつながります:
- 発見された不動産が遠方にある
- 権利関係が複雑(抵当権がついているなど)
- 相続人が多数いる
- 数次相続が発生している
- 義務化の期限が迫っている
5. 安心感と確実性
不動産は人生で最も重要な財産の一つです。
- ✓ 必要な調査・書類作成・申請を専門家が支援
- ✓ 物件漏れのリスク最小化
- ✓ 将来のトラブル防止
- ✓ 過料の回避
- ✓ 相続人間の争いの予防
10. よくある質問(FAQ)
- 固定資産税の納税通知書(課税明細書を含む)の写し、権利証(登記済証)の写し、名寄帳を「変更前の住所を証する書類」として提出する(法務局で認められています)
- これらもない場合は、その住所が記載された郵便物や公共料金の請求書などを提出する
- それもなければ、実印を押した「同一人である旨の上申書」を提出する
- 司法書士に相談して調査方法を検討する
まとめ
令和8年(2026年)2月2日に始まった「所有不動産記録証明制度」は、日本の相続実務を劇的に変える可能性を秘めています。
これまで「分からないから」と放置されていた不動産に光を当て、次世代へ適切に引き継ぐための強力なインフラです。
しかし、制度はあくまで道具です。
法務省が公表している通り、検索の仕組みや限界を正しく理解し、適切に使わなければ効果は半減します。特に「住所不一致」や「異体字の限界」などの特性を理解し、必要に応じて複数の検索条件を指定したり、従来の調査方法と併用することが重要です。
さらに、令和8年4月1日からは住所変更登記の義務化も始まり、法務局が職権で住所等を変更するスマート変更登記も、所有権の登記に会社法人等番号が登記された法人は令和8年5月15日から、検索用情報の申出をした個人は令和8年12月中旬以降に順次行われます。スマート変更登記の普及により、登記上の住所が最新の状態に保たれるようになれば、所有不動産記録証明制度の検索精度も向上し、2つの制度が相乗効果を発揮していくことが期待されます。
また、見つかった不動産をどう扱うか(登記する、売却する、国庫に帰属させる等)の判断も必要になります。特に検索条件の設定や、その後の登記手続きについては、専門家である司法書士のサポートが有効です。
相続登記義務化の時代において、この新制度を正しく理解し活用することが、円満な相続と資産防衛の第一歩となります。
所有不動産記録証明書の取得方法:
所有不動産記録証明書の取得方法|必要書類・手数料・申請手順を解説
司法書士の実体験レポート:
【体験談】所有不動産記録証明書の交付請求!開始初日の流れ・必要書類・注意点
スマート変更登記の解説:
スマート変更登記とは|住所変更登記義務化の負担を軽減する新制度を解説
法務省公式サイト:
所有不動産記録証明制度について
登記・供託オンライン申請システム:
https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/
相続登記義務化について詳しく:
2024年相続登記が義務化|期限3年・過料10万円のポイントと対応策を解説



