なぜ「生まれてから亡くなるまでの戸籍」が必要なのか?
相続手続き(銀行預金の解約や不動産の名義変更)を始めようとすると、必ず「被相続人の生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本」を求められます。
「死亡時の戸籍だけではダメなの?」と思われるかもしれません。
死亡時の戸籍には、現在の配偶者や未婚の子しか載っていないことが多く、「過去に認知した子」や「前の配偶者との間の子(養子含む)」の情報は、過去の戸籍を遡らないと判明しないからです。
相続人を法的に確定させるために、この「連続した戸籍」の収集は避けて通れません。特に、転籍(本籍地の移動)が多い方の場合、5通、10通と集める必要が出てくることもあります。
【最重要】まずは「広域交付」を利用しよう(2024年〜)
これまで戸籍収集は「本籍地のある役所ごと」に請求する必要があり、転籍が多い場合は全国各地に郵送請求をするという苦行でした。しかし、2024年(令和6年)3月1日より「戸籍の広域交付制度」がスタートしました。
広域交付とは?
最寄りの市区町村の窓口で、他の市区町村にある戸籍も含めてまとめて請求・取得できる制度です。
- 1箇所で完結:遠方の本籍地まで行く必要も、郵送する必要もありません
- 遡りが楽:窓口で「相続に使うので、出生から死亡まで全部揃えてください」と伝えれば、職員さんがシステム上で検索して出してくれます
- 直系親族のみ:請求できるのは本人、配偶者、直系尊属(父母など)、直系卑属(子・孫など)のみです。兄弟姉妹の戸籍は広域交付では取れません
- 窓口のみ:郵送請求や代理人(弁護士・司法書士含む)による請求はできません
- 時間がかかる:複雑な場合、発行まで数時間〜後日渡しになることがあります
広域交付が使えない場合の「遡り」収集手順
システムのエラー、兄弟姉妹の相続、あるいは広域交付に対応していない一部の古い戸籍などがある場合は、従来どおり「一つずつ遡って収集」する必要があります。
収集の流れ
最後の本籍地で取得
「どこから来たか(前の本籍地)」が記載されています
届いた戸籍を見る → さらに前の本籍地へ請求...
- 「死亡の記載がある戸籍(除籍)」を取得
まずは、最後の本籍地で戸籍(除籍謄本)を取得します。
- 内容を読み解き「一つ前」へ
取得した戸籍の「従前戸籍(じゅうぜんこせき)」または「入籍事由」という欄を見ます。ここには、「どこから来たか(前の本籍地)」が書かれています。
・転籍の場合:「[前の本籍地]より転籍」と書かれています
・改製(法律の変更)の場合:「平成○年○月○日改製」とあれば、「改製原戸籍」を同じ役所で請求します - 繰り返して「出生」にたどり着く
前の本籍地へ郵送請求 → 届いた戸籍を見る → さらに前の本籍地へ請求... これを出生の記録が出るまで繰り返します。
郵送請求(定額小為替を使用)をする際、請求書の備考欄に「相続手続きのため、被相続人〇〇の出生から死亡まですべての戸籍が必要です。不足分があれば連絡ください」と大きく書いておきましょう。係の人が判断して、その役所にある関連戸籍をセットで出してくれることがあります。
また、小為替も多めに入れておくと、追加の戸籍がある場合の手間が減ります。
複雑なケースの読み解きポイント
転籍や除籍が多い場合、戸籍は非常に読みづらくなります。以下のキーワードに注目してください。
| キーワード | 意味とアクション |
|---|---|
| 転籍 | 本籍地を移動したこと。「従前戸籍」の欄を見て、前の本籍地へ請求します。 |
| 改製 | 法改正で戸籍の様式が変わったこと。同じ役所内に「改製原戸籍」が眠っているので、必ず取得します。 |
| 除籍 | 結婚、死亡、転籍などでその戸籍から誰もいなくなった状態。 |
| 編製 | 新しく戸籍が作られたこと。「昭和○年○月○日 [誰々]につき編製」とあれば、それ以前は親の戸籍に入っていた可能性が高いです。 |
古い文字(変体仮名・くずし字)が読めない時は?
明治・大正時代の戸籍は手書きで、しかも旧字体や独特の癖字で書かれており、判読が極めて困難です。
- 役所に聞く:発行元の役所に電話して「〇〇番地の記載が読めないのですが」と問い合わせて教えて貰える場合があります
- 地名を検索する:ネットで旧町名を検索し、推測します
専門家に依頼すべき「危険なサイン」
以下のような場合は、自力での収集が非常に困難、あるいは間違えるリスクが高いため、司法書士や行政書士への依頼を検討してください。
- 転籍が複数回ある、または全国に散らばっている(広域交付が使えない場合)
- 兄弟姉妹が相続人である(広域交付対象外。親の出生から死亡までの戸籍も必要になり、膨大な量になります)
- 古い戸籍の文字がどうしても読めない
- 養子縁組や認知などの記載があり、家族関係が複雑
まとめ
複雑に見える戸籍収集ですが、現在は「広域交付制度」のおかげで、ハードルは大幅に下がりました。
この3ステップで進めれば、必ずゴール(全ての戸籍収集)にたどり着けます。
まずは身分証明書を持って、近くの市役所・区役所に行ってみましょう。








