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相続で共有名義になった不動産、どう解消する?


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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最終更新日:2026年7月12日

相続で共有名義になった不動産の解消(要点まとめ)

● 解消方法は4つ:①他の相続人から持分を買い取る(持分譲渡)②売却して現金で分ける(換価分割)③遺産分割協議で単独名義にする ④物理的に分ける(現物分割)。

● 費用を抑えやすいのは③遺産分割協議:登録免許税は相続登記の0.4%のみ。持分売買は土地1.5%・建物2%+不動産取得税がかかります。

● 放置は危険:次の相続で共有者が雪だるま式に増加。相続開始から10年で特別受益・寄与分の主張は原則不可になります(民法904条の3)。

● 相続登記は義務:2024年4月に義務化済み。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象(義務化前の古い相続は原則令和9年3月31日まで)。

● 話し合いがまとまらないとき:家庭裁判所の遺産分割調停や共有物分割請求訴訟という手段もあります(代理は弁護士の業務範囲)。

不動産の名義変更とは?相続登記とは?

相続により不動産が兄弟姉妹など複数人の共有名義になってしまい、どう対処すれば良いか悩んでいませんか?

共有名義の不動産は処分や管理に制約が多く、放置すると将来さらに複雑な問題を招きかねません。本記事では司法書士の視点から、共有状態を解消する4つの具体的な方法とそれぞれのメリット・デメリット、そしてトラブル事例や手続きのポイントについて解説します。

共有を解消する方法は、遺産分割がまだ済んでいないか、すでに共有名義で登記済みかによって変わります。まずはご自身の状況を整理しながらお読みください。

📘 関連記事:解消方法を選ぶ判断軸として共有名義のデメリット全体像を把握したい方は「共有名義のデメリット5つ|売却・管理・相続トラブルと避けるべき理由」をご覧ください。共有を避ける分割方法(代償分割・換価分割・現物分割)まで含めて司法書士がまとめています。

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共有名義とは?相続で起こる典型的なパターン

相続における共有名義とは、一つの不動産(例えば土地や家など)を、複数の相続人が共同で所有する状態のことです。

これは、例えば親名義の不動産を兄弟が、法定相続分通りに受け継いだ場合や、遺産分割協議をしたが誰か一人の名義にするのではなく兄弟全員で相続することを決めた場合に起こります。

共有で相続登記をすると、法務局にそれぞれの相続人の「持分割合(所有する権利の割合)」が登記されます。なお、相続登記をするまでの間も法律上は相続人全員の共有(遺産共有)の状態ですが、登記名義は亡くなった方のままです。

この共有状態には注意が必要です。不動産全体を売却したり、形状や用途を大きく変えるリフォームをしたりするには、原則として共有者全員の同意が必要です(民法第251条)。賃貸などの管理に関する事項も持分価格の過半数の同意が必要で、一人の判断では進められません(民法第252条)。

そのため、一人の判断で自由に不動産を扱える単独名義の場合と比べて、手続きが煩雑になったり、意見がまとまらずに活用や処分が難しくなったりする可能性があります。

なぜ相続で「共有名義」が生まれるのか

相続で不動産が共有名義となってしまう背景には、主に遺産分割の進め方や相続人間の事情が関わっています。

被相続人(亡くなった方)が遺言を残さずに亡くなった場合、原則として相続人全員が集まって話し合い(遺産分割協議)を行い、誰がどの遺産を相続するのか、不動産については誰の名義にするのかを決定します。しかし、この話し合いが円滑にまとまらず、特定の相続人一人の名義にすることを決めきれなかったり、あるいは相続人間で意見が対立して協議そのものを行わずに放置してしまったりすると、法律上、不動産は自動的に相続人全員の共有状態となります。

特に、現金や預貯金といった不動産以外の遺産が少ないケースでは、「特定の一人だけが価値のある家を単独で相続するのは不公平だ」といった感情が相続人間で生じやすく、その結果、やむを得ず全員で共有するという形に落ち着くことも少なくありません。こうして、兄弟姉妹やその他の親族間で不動産を共有する形となり、「とりあえず皆で相続した」という状況が生まれます。

しかしながら、このような経緯やメリットを考慮して共有名義を選択した場合でも、その状態には後々多くのリスクが伴うという点に十分注意する必要があります。安易に共有名義にしてしまうと、将来的にその不動産を管理したり、売却などの処分をしようとした際に、思わぬ支障やトラブルに見舞われる可能性が考えられます。

【相続登記は誰に?】相続のときは誰の名義変更にしたらいい?

共有名義の不動産の相続登記まるわかりガイド【2025年版】

共有名義の不動産が抱えるリスク

売却・活用の困難さ

不動産全体の売却には共有者全員の同意が必須で、一人でも反対すれば実行できません(自分の持分だけの売却は可能ですが、買い手が限られ価格も大幅に安くなります)。賃貸も内容によって持分価格の過半数または全員の同意が必要で、迅速な意思決定ができません。資産の現金化や収益化が大幅に制限されます。

管理トラブルの発生

修繕費用や固定資産税の負担割合で意見対立が生じやすくなります。非協力的な共有者がいると適切な維持管理ができず、不動産価値が下落する恐れがあります。

占有問題

特定の共有者が単独で居住するなど不公平な占有が発生することがあります。各共有者には共有物を使用する権利があるため直ちに違法とはいえませんが、持分を超える使用については合意がない限り使用対価(賃料相当額)の請求が問題となり、親族間紛争に発展しやすくなります。

共有名義は共有者間の人間関係悪化を招きやすく、問題を放置するほど事態は複雑化します。相続時には可能な限り単独名義への変更や適切な遺産分割を行うことが重要です。

相続時に共有名義にするメリット・デメリット

共有関係や不動産の管理についての民法改正

共有名義を解消する4つの方法とメリット・デメリット

相続で生じた共有状態を解消するには、主に次の4つの方法があります。いずれも共有者間の合意を前提とする方法で、それぞれ手続きや必要な合意事項、メリット・デメリットが異なります(話し合いがまとまらない場合の調停・訴訟は、後述のよくある質問で解説します)。

相続以外も含めた共有名義を単独名義にする方法については、共有名義の不動産を単独名義に変更する方法をご参照ください。

① 他の相続人から持分を買い取る(持分譲渡)

共有名義不動産の解消方法として、他の共有者から持分を買い取って単独所有にする方法があります。これは共同相続人の一人が他の相続人の持分を金銭で譲り受け、不動産の所有権を集約する手法です。

例えば、兄弟3人で共有している不動産であれば、1人が残り2人の持分を買い取ることで単独所有者となります。家族間の協議で合意が得られれば、裁判所を介さずに話し合いで解決できるケースが多く、比較的短期間での問題解決が可能です。

無償で持分を移す方法には「贈与」と「持分放棄」(民法第255条)がありますが、法的効果や登記手続き、贈与税・不動産取得税の扱いがそれぞれ異なるため、税負担を確認したうえで選ぶ必要があります。

なお、遺産分割協議がまだ済んでいない段階では、持分の売買ではなく、一人が不動産を取得して他の相続人に代償金を支払う「代償分割」(遺産分割の一方法)として整理するのが基本です。

メリット

最大の利点は、愛着のある実家などを手放すことなく手元に残せることです。単独名義になることで自由な利用・処分が可能となり、他の相続人も現金を得られるため公平感を保ちながらスムーズな遺産分割が実現できます。

デメリットと注意点

買い取る側には相応の資金準備が必要です。親族間の持分売買では金融機関の住宅ローンを利用できないケースが多く、原則として自己資金での準備が求められる点が実務上のハードルになります。また、売買による持分移転登記では相続時より高い税率が適用され、土地1.5%(令和11年3月31日までの軽減税率)、建物2%の登録免許税に加え、不動産取得税も発生します(居住用の要件を満たす場合は軽減措置もあり)。適正価格での売買を行わないと贈与と見なされ追加の税負担が生じるリスクもあるため、専門家の助言を得ながら慎重に進める必要があります。

② 不動産を売却し、現金で分ける(換価分割)

共有名義不動産の解消方法として、不動産を売却して得た代金を共有者間で分配する「換価分割」があります。これは共有者全員の合意のもと、物件を第三者に売却し、売却代金を持分割合に応じて分け合う手法です。

例えば、相続した実家を兄弟全員で売りに出し、売却代金を各自の持分に応じて分配するといった形で実行されます。遺産分割協議のなかで換価分割として取り決める方法と、いったん共有で相続登記をしてから全員で売却する方法があり、市場価格での売却により各相続人が持分相当の金額を取得できます。

メリット

最大の利点は、不動産の現金化により公平かつ明快な分配が実現できることです。共有状態そのものが消滅するため、後腐れなく相続問題を清算でき、各相続人は取得した現金を自由に活用できます。また、不動産管理にまつわる煩わしい共有問題からも完全に解放される点は大きなメリットといえます。

デメリットと注意点

売却には共有者全員の同意が絶対条件となるため、一人でも反対者がいれば実行できません。特に思い入れのある実家などでは感情的な反対が生じやすく、合意形成が困難な場合があります。また売却活動には時間を要し、市場状況によっては希望価格での売却が困難なリスクも存在します。さらに現金化により相続税や所得税の特例適用が減るケースもあり、高額資産では税負担増加の可能性も考慮する必要があります。換価分割は効率的な解決策ですが、全員の合意形成と慎重な売却戦略が不可欠な方法です。

③ 遺産分割協議で単独名義にする(相続登記未了または法定相続で登記している場合)

相続登記が未了で不動産名義が被相続人のままの場合、遺産分割協議をして単独名義にする方法があります。これは相続人全員で話し合い、「その不動産は特定の相続人が単独で相続する」という内容の遺産分割協議書を作成する手法です。

具体的な仕組み

最初に共有相続を決めていても、名義変更前であれば協議をやり直して一人に帰属させる合意を結び、改めて単独名義での相続登記が可能です。正式な登記により共有関係が固定化される前なら、協議内容の変更により初期段階で共有状態を回避できます。

遺産分割をしないまま、とりあえず法定相続分で相続登記をした場合も、その後に遺産分割協議を成立させて単独名義に変更することが可能です。

メリット

相続登記が未了であれば登記コストが相続として一度きりで済むため、登録免許税は0.4%のまま抑えられます。遺産分割をせずに法定相続分で登記した後、遺産分割協議がまとまった場合は、令和5年4月以降、所有権更正登記(他の相続人の承諾書が必要)により単独申請・不動産1個につき1,000円の登録免許税で単独名義にできます。一方、いったん遺産分割協議で共有にすると決めて登記した後のやり直しは持分移転登記となり、贈与税などの課税リスクに注意が必要です。持分の売買や贈与といった二重の手続きを避けることで、費用負担と手続きが大幅に簡略化されます。早期に単独名義にしておけば、その後の管理や処分もスムーズに行え、共有によるリスクを事前に回避できる点も大きな利点です。

デメリットと注意点

全相続人の合意が絶対条件となるため、反対者がいると実現できません。不動産を単独取得する人は、他の相続人への代償金支払いが必要になる場合があり、特に不動産が遺産の大半を占める状況では相応の現金補填が求められます。これは結果的に持分買い取りと同様の負担となります。

④ 他の共有者と不動産の分割利用(現物分割)

共有名義不動産の最後の解消方法として、不動産を物理的に分割して各共有者が単独取得する「現物分割」があります。これは広い土地を分筆して相続人同士で分け合ったり、二世帯住宅などの区分可能な建物を物理的にエリア分けして各自が単独所有する形に変更する手法です。

具体的な仕組みとしては、土地の場合は筆割り(分筆)により各相続人が別々の土地として所有します。建物の区分登記には、壁で遮断されている・専用の出入口があるといった構造上・利用上の独立性が必要で、一般的な一戸建てでは事実上困難です(分筆・区分登記の可否の調査は土地家屋調査士の業務範囲です)。

メリット

各共有者が不動産の実物を自分名義で取得できるため、現金ではなく現物で遺産を受け取った満足感が得られます。共有状態が完全に解消され、それぞれが取得した土地・建物を自由に利用処分できるようになります。また売却の必要がないため、愛着のある資産を手放さずに済む点も大きな利点です。

デメリット・課題

最大の問題は、実際には物理的分割が困難な物件が多いことです。典型的な住宅用宅地や一戸建て住宅では適切な分割が難しく、無理に分筆すれば狭小で使い勝手の悪い土地になる恐れがあります。建物分割には大規模な改築や複雑な法的手続きが必要となり、分割案の策定にも共有者全員の合意が求められるため、配分を巡って新たな争いが生じる可能性もあります。さらに分割後の不動産価値が不均等な場合は代償金での調整が必要となり、土地分筆には測量費や登記費用も発生します。これらの高いハードルにより、現物分割は条件が整った限定的なケースでのみ採用される方法といえます。

「共有名義を解消したいけれど、何から手を付ければいいか分からない…」という方へ。当センターの無料相談では、解消方法ごとの登記手続きの流れと費用のお見積りをご案内しています。

共有名義でよくある相続トラブル事例とその対策

共有名義の不動産では、実際に様々なトラブルが発生しています。ここではよくあるケースを3つ取り上げ、その対処法のヒントを解説します。同じような状況に心当たりがある方は、早めに対策を講じましょう。

意見が合わずに不動産が放置されるケース

兄弟間で相続した実家の売却・活用方針が決まらず、結果的に何年も放置されるケースは非常に多く見られます。共有者間で意見調整ができないと、不動産は活用されないまま空き家状態となり、その間も固定資産税や維持費は継続的に発生し続けます。誰も住まない家が徐々に朽ちていくという悪循環に陥り、時間の経過とともに問題はより深刻化していきます。

効果的な対策方法

基本となるのは、共有者同士での改めた話し合いの場の設定です。時間が経つほど状況は悪化するため、早期の対応が重要となります。当事者間での解決が困難な場合は、弁護士等の専門家に現状を相談することが有効です。専門家は公平な視点から具体的な解決策を提案でき、感情的な対立を避けながら建設的な議論を進められます。

それでも意見がまとまらない場合は、遺産分割が済んでいなければ家庭裁判所の遺産分割調停を、すでに遺産分割を経て共有名義になっている場合は共有物分割請求(民事調停・訴訟)を検討することになります。調停手続きでは中立的な調停委員が仲介役となるため、当事者だけでは実現困難だった歩み寄りが期待できます。

また、完全な解決まで時間を要する場合は妥協案の採用も重要です。例えば「いったん不動産を賃貸に出して収益を分配し、売却時期については数年後に再協議する」といった段階的なアプローチにより、当面の活用と将来的な解決への道筋を両立させることができます。

最も重要なのは、不毛な対立により貴重な時間を浪費せず、専門家の知恵も積極的に活用しながら現実的な解決への道筋をつけることです。

相続登記せずに放置→ペナルティの可能性(義務化対応)

亡くなった親名義のまま不動産を放置し、相続登記(名義変更)を行わないまま数年が経過するケースが多く見られます。共有者全員が「そのうち話し合おう」と先延ばしにしている間に、法律上の重大なペナルティリスクが生じる状況となっています。

2024年4月1日から相続登記は義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内に登記しなければ、正当な理由なく怠った場合に10万円以下の過料(行政上の制裁金)の対象となります。義務化前に発生した古い相続も対象で、施行前から取得を知っていた場合は令和9年(2027年)3月31日が期限です(施行後に知った場合はその日から3年以内)。まだ名義変更を行っていない方は早めの対応が必要です。

具体的な対策方法

共有者間で遺産分割協議がまとまっていない場合でも、新設された「相続人申告登記」を活用できます。これは遺産分割が未了でも、相続人が申し出ることで当面の申請義務を履行したものとみなされる制度です。ただし所有権を確定する登記ではないため、その後に遺産分割が成立したときは、不動産を取得した方が成立日から3年以内に改めて相続登記を申請する必要があります。

将来的な共有状態の解消方法については別途検討が必要ですが、まずは名義変更の申請期限を遵守することが最優先となります。司法書士に依頼すれば必要書類の準備から申請手続きまで任せられるため、早めの相談で過料のリスクを抑えることができます。

手続きの複雑さや法的リスクを考慮すると、共有状態の解消策を検討する前に、まず相続登記の義務を果たしておくことも必要です。

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一人が勝手に居住・管理している場合

共有名義の不動産で、相続人の一人だけが他の共有者に無断で住み続けたり、独断でリフォームや賃貸貸し出しなどの管理行為を行ってトラブルになるケースが頻発しています。このような一方的な占有や管理は、他の共有者の権利を侵害する深刻な問題となります。

重要なポイントは、法律上すべての共有者に不動産を使用する権利があることです。一人が勝手に独占している場合、他の共有者はその占有者に対して賃料相当額の支払いを求める権利が認められています。

効果的な解決策

まず占有者に対し、共有財産であることを明確に認識してもらい、公平な取り決めを求めることが基本となります。話し合いで合意が得られれば、「住み続けるなら毎月一定額を他の共有者に支払う」「期限を決めて、買い取るか全体の売却かを協議する」といった具体的なルールを書面で取り決めておくことが重要です。

話し合いによる解決が困難な場合は、調停や法的措置も選択肢となります。弁護士等の専門家に相談することで、適正賃料の算定方法、合意書の作成、さらには法的手続きについて的確なアドバイスを受けることができます。

一人の独占状態を放置することなく、他の共有者の正当な権利を確実に主張していくことが、公平な解決への道筋となります。

共有名義のまま放置した場合のリスク

共有名義放置による将来リスクとその深刻化

「今は特に困っていないから...」という理由で共有名義を放置することは、将来的に深刻なリスクを招く可能性があります。時間の経過とともに問題は拡大し、解決がより困難になるため、早期の対応が不可欠です。

次世代相続による共有者の爆発的増加

共有名義放置の最大のリスクは、共有者数の雪だるま式増加です。現在の共有者のうち誰かが亡くなると、その持分はさらに次の相続人へ受け継がれます。例えば最初は兄妹2人だった共有者が、世代を重ねることで5人、10人と増加し、権利関係が極度に複雑化するケースは珍しくありません。

共有者が増加するほど全員の合意形成は困難となり、当事者同士での話し合いさえ不可能になります。遠縁の相続人が加わると連絡先の把握も困難となり、所在不明者が出現すると売却や各種手続きが完全にストップしてしまいます。最悪の場合、その不動産は有効活用できないまま宙に浮いた状態となり、所有者不明土地問題という社会問題に発展する恐れもあります。

空き家管理と税負担の深刻化

共有名義の不動産が利用されずに放置されると、空き家問題へと発展するリスクが高まります。誰も住んでいない家屋は老朽化が進み、倒壊や害虫発生など周辺環境への悪影響を及ぼします。所有者である共有者全員に維持管理責任があるため、適切な管理を怠れば近隣からの苦情や自治体からの是正指導を受ける可能性があります。

空家等対策特別措置法により「特定空家」や「管理不全空家」として市区町村長の勧告を受けると、固定資産税の住宅用地特例の対象から外れ、土地の課税標準が最大で従来の6倍になります。改善されなければ命令などを経て行政代執行(強制撤去)に至ることもあります。共有者間で責任のなすり合いをしている間にこのような不利益処分を受ければ、全員にとって重大な損失となります。

空き家を放置した場合の具体的なリスクや、売却・管理・活用の選択肢については、こちらの専門コラム「空き家はどうするべきか?放置前に知る選択肢とリスク」が参考になります。

税負担と紛争リスクの拡大

固定資産税や都市計画税は所有者全員が連帯して納める義務があり、誰か一人が滞納すれば延滞金が膨らみ、自治体から他の共有者へ請求されたり、滞納者の預金や共有持分が差し押さえられたりする事態も起こり得ます。税金負担の分担が不明確なまま放置すると「自分ばかり支払って不公平だ」という新たな紛争の火種となります。

さらに時間経過により共有者本人同士の関係悪化や高齢化も深刻なリスクです。意思疎通が困難になると合意形成は一層難しくなり、当事者の判断能力が低下すれば解消手続き自体が進められなくなります。

共有名義の放置は物的リスク(空き家・税負担)と人的リスク(関係悪化・判断不能)の両面で危険を孕んでいます。放置された空き家は資産価値の低下だけでなく、行政からの指導や税負担増加など様々なリスクを招くため、共有者が少ないうちに早めに専門家に相談し、適切な管理・処分対応を取ることが将来的な損失防止につながります。

遺産分割で不利になる「10年ルール」(民法904条の3)

2023年4月施行の改正民法により、相続開始から10年を経過した後の遺産分割では、特別受益(生前贈与の持ち戻し)や寄与分(介護・家業への貢献分)の主張が原則としてできなくなりました(民法第904条の3)。10年経過後は原則どおり法定相続分を基準に分けることになるため、「親の介護を担った分、多く相続したい」といった事情があっても反映されなくなります(10年経過前に家庭裁判所へ遺産分割を請求した場合などの例外があり、相続人全員の合意があれば10年経過後でも柔軟な分割は可能です)。

なお、施行日(2023年4月1日)時点ですでに相続開始から10年が経過しているケースなどには、令和10年(2028年)3月31日までの経過措置が設けられています。いずれにしても、共有状態の解消を先送りするほど遺産分割の選択肢は狭まっていきます。

名義の共有者とトラブルになっているときの解決方法

共有名義の不動産を巡って、共有者間でトラブルが発生することは少なくありません。例えば、名義変更に同意してくれない、連絡が取れない、共有持分の売却を巡って対立している、などが考えられます。

共有者とのトラブルを解決するためには、まず、冷静に話し合いを試みることが重要です。感情的にならず、お互いの意見を尊重し、妥協点を探ることが大切です。

話し合いで解決できない場合は、弁護士に相談することをおすすめします。共有者との交渉や、遺産分割調停・共有物分割訴訟の代理は弁護士の業務範囲です(合意がまとまった後の相続登記・持分移転登記などの登記手続きは司法書士が担当します)。共有者間のトラブルは、早期に解決することが重要です。放置すると、問題が深刻化し、解決が困難になる可能性があります。

共有名義の解消に関するよくある質問(FAQ)

最後に、相続した不動産の共有名義の解消についてよくいただくご質問をまとめました。

Q1. 相続した不動産が共有名義かどうかは、どうすれば確認できますか?

法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、権利部(甲区)の所有者欄を確認します。複数の名義人と「持分2分の1」のような持分割合が記載されていれば共有名義です。登記情報提供サービスを使えばオンラインでも確認できます。

Q2. 共有名義の不動産の固定資産税は誰が払うのですか?

共有者間では持分割合に応じて負担するのが原則ですが、市区町村に対しては共有者全員が連帯して納付する義務を負います(連帯納税義務)。納税通知書は代表者1名に送付されるため、代表者の立て替えが続くと不公平感からトラブルになりやすい点に注意が必要です。

Q3. 自分の共有持分だけを売却することはできますか?

法律上は、自分の持分だけであれば他の共有者の同意なく売却できます。ただし持分のみの買い手は事実上限られ、市場価格より大幅に安くなるうえ、見知らぬ第三者が共有関係に入ることで他の共有者とのトラブルが深刻化しがちです。まずは他の共有者への持分売買や、遺産分割協議(未了の場合)での解消を検討することをおすすめします。

Q4. 共有者の一人が行方不明で連絡が取れない場合はどうすればいいですか?

2023年4月施行の改正民法で、所在等不明共有者の持分を裁判所の決定を得て取得・譲渡できる制度が新設されました(民法第262条の2・第262条の3)。ただし、遺産分割の対象となる相続不動産では、原則として相続開始から10年を経過するまでこの制度は利用できません。このほか、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てて遺産分割協議を進める方法もあります。これらの裁判所手続きの代理は弁護士の業務範囲のため、必要に応じて弁護士にご相談ください。

Q5. 遺産分割はいつまでにしなければいけませんか?

遺産分割協議そのものに法律上の期限はありません。ただし、相続開始から10年を経過すると特別受益や寄与分を考慮した分割の主張が原則できなくなります(民法第904条の3)。また、相続登記には取得を知った日から3年以内という義務があります。共有のまま長期間放置するほど選択肢が狭まるため、早めの話し合いをおすすめします。

Q6. 共有名義の解消にかかる費用はどのくらいですか?

方法によって異なります。遺産分割協議で単独名義にする場合の登録免許税は固定資産税評価額の0.4%(相続登記)、持分の売買では土地1.5%(令和11年3月31日までの軽減税率)・建物2%、贈与では2%で、売買・贈与では別途不動産取得税もかかります。このほか司法書士報酬や戸籍謄本などの実費が必要です。当センターの料金は費用・料金一覧をご覧ください。

Q7. 共有物分割請求訴訟とはどのような手続きですか?

共有者間の話し合いで共有を解消できない場合に、裁判所に分割方法を決めてもらう手続きです(民法第258条)。現物分割・代償金の支払いによる分割(賠償分割)・競売による換価分割のいずれかの方法が採られます。なお、相続人同士の遺産共有の解消は原則として家庭裁判所の遺産分割調停・審判によります(相続開始から10年を経過し、相続人から異議がない場合には共有物分割訴訟でまとめて処理できる例外もあります=民法第258条の2)。いずれも訴訟・審判手続きの代理は弁護士の業務範囲です。

Q8. 認知症の共有者がいる場合、共有名義の解消はできますか?

共有者の一人が認知症などで判断能力を欠く場合、その方は遺産分割協議や売買契約を有効に行うことができません。家庭裁判所で成年後見人を選任してもらい、成年後見人が本人に代わって手続きに参加する必要があります。なお、成年後見人自身も相続人の一人である場合は利益相反となるため、原則として特別代理人の選任が必要です。共有者の高齢化が進む前に解消しておくことが重要な理由の一つです。

▶ 関連記事:兄弟で揉めずに分けるための進め方は、相続した実家・土地を兄弟で分ける手順をご覧ください。

この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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