固定資産評価証明書とは、市区町村が発行する「この土地・建物の評価額はいくらか」を公的に証明する書類です。主な用途は不動産登記(相続登記・贈与登記・売買登記)の登録免許税計算で、相続税申告で評価額を確定する場面でも使われることがあります。
本記事では、取得方法・取得できる人・本人以外が代理取得する手順・名寄帳との違い・名義変更での具体的な使い方まで、不動産登記専門の司法書士がわかりやすく解説します。
固定資産評価証明書とは
固定資産評価証明書とは、土地や建物などの固定資産の評価額を公的に証明する書類です。総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づき、市区町村長(東京23区は都知事)が決定した評価額が記載されています。
不動産の名義変更(相続登記・贈与登記・売買登記など)に伴う登録免許税や、不動産取得税の計算根拠になるため、法務局への登記申請で原則として提出が必要な書類です。
評価証明書に記載される主な情報
記載内容の例
- 所在地:土地の地番、家屋の家屋番号
- 地目・種類:宅地・田・畑/居宅・店舗 など
- 地積・床面積:平方メートル単位
- 評価額(価格):登録免許税の計算基準
- 課税標準額:固定資産税の計算基準(登記用ではない)
- 所有者氏名・住所
名義変更手続きでは、この評価額を使って登録免許税を計算します。納税通知書でも代用できるケースがありますが、非課税の土地(私道・墓地など)は評価証明書でしか確認できないため、登記実務では原則として評価証明書を取得します。
名義変更に必要なその他の書類については不動産名義変更の必要書類・添付書類まとめをご確認ください。
証明書のどこを見ればいい?(評価額 vs 課税標準額)
評価証明書にはたくさんの数字が並んでいますが、登記の計算に使う数字は一つだけです。
「課税標準額」や「相当税額」(これは固定資産税の計算用です)
「価格」または「評価額」
評価額と課税標準額が違う理由は、住宅用地の特例などで課税標準額が評価額より低く設定される場合があるためです。登記の登録免許税は特例前の「評価額(価格)」を基準に計算するので、混同しないよう注意してください。
固定資産評価証明書の取得方法【完全ガイド】
固定資産評価証明書は、不動産が所在する市区町村役場の窓口で取得します。誰が取れるか・どう取るか・いくらかかるかを整理しました。
取得できる人
請求できるのは次の方々です
- 所有者本人:固定資産税の納税義務者
- 相続人:所有者が亡くなった場合、相続人であれば請求可能(戸籍謄本の提示要)
- 借地人・借家人:借りている土地・建物のみ請求可能(賃貸借契約書など対価を支払っていることがわかる書類の提示を求められます)
- 代理人:委任状があれば本人以外でも取得可能
- 破産管財人・相続財産清算人など:法的地位を示す書類で請求可能
第三者が勝手に他人名義の評価証明書を取ることはできません。プライバシー保護のため、請求時には本人確認書類や関係性を示す書類の提示が求められます。
取得場所と4つの請求方法
4つの取得方法
- 市区町村役場の窓口:税務課・資産税課など。手数料を現金払いで即日交付。
- 東京23区は都税事務所:どの都税事務所でも23区内の物件は取得可能。
- 郵送請求:遠方の場合に便利。申請書・本人確認書類の写し・定額小為替・返信用封筒を同封。到着から発行まで1週間程度。
- コンビニ交付:マイナンバーカードがあれば、一部の自治体で発行可能。対応状況は自治体ごとに大きく異なるため、事前に各自治体の公式サイトで必ず確認してください。
オンライン申請(電子申請)の対応状況は自治体ごとに異なり、現状は一部の大規模自治体のみです。原則は窓口か郵送請求と考えておくと確実です。
本人以外が代理取得する場合の委任状
所有者が高齢・遠方・多忙などで本人が役所に行けない場合、委任状を添えることで家族や司法書士が代理取得できます。
委任状に記載する必須項目
- 委任者(所有者本人)の住所・氏名・押印
- 受任者(代理人)の住所・氏名
- 委任事項:「○○市所在の不動産に関する固定資産評価証明書の取得」など具体的に
- 委任する年度(例:令和8年度)
- 作成年月日
⚠️ 法人名義の場合の注意
法人が所有する不動産の評価証明書を代表者以外(従業員など)が取得する場合、委任状に法人の代表者印(登記されている印鑑)を押印したうえで、法人の登記事項証明書の提示が必要な自治体が多数あります。郵送請求の場合はこれに加えて法人の印鑑証明書の提出を求められることもあります。自治体により運用が異なるので、事前に窓口へ確認してください。
必要書類・手数料・有効期限
取得時に必要なもの
- 本人が取得:運転免許証などの本人確認書類
- 相続人が取得:戸籍謄本(所有者の死亡の事実と自身が相続人であることの証明)/除籍謄本/本人確認書類
- 代理人が取得:委任状+代理人の本人確認書類
- 手数料:通常1通300〜400円(自治体により異なる)
- 有効期限:法的な期限はないが、登記申請する年度のものが必要
取得時の3つの重要ポイント
評価証明書を取得するうえで、実務上とくに注意すべき点をまとめました。
「法務局」では取れません
不動産登記だからといって法務局に行っても発行してくれません。評価証明書は「市区町村役場(東京23区は都税事務所)」の資産税課などで発行されます。
「最新年度」のものが必要
固定資産税の評価額は、毎年4月1日に新しい年度に切り替わります。登記申請をする日の属する年度(4月1日〜翌年3月31日)の証明書が必要です。
例:3月31日に申請する場合 → 前年度の証明書
例:4月1日に申請する場合 → 新年度の証明書
年度の判断基準は「法務局への到達日」です。郵送申請の場合、3月末に発送しても4月1日以降に法務局に届けば新年度の評価証明書が必要になり、補正の対象になります。年度替わりの時期は窓口申請か電子申請にするのが安全です。
なお、名義人が亡くなったのが過去の年度でも、手続きするのが令和8年度であれば、令和8年度の評価証明書を用意します。
相続人は「戸籍謄本」を持参
所有者が亡くなっている場合は、その相続人が取得できます。その際、役所の窓口で「所有者が亡くなったこと」と「自分が相続人であること」を証明するため、戸籍謄本・除籍謄本の提示を求められます。
なぜ固定資産評価証明書が必要なのか(用途まとめ)
結論
「登録免許税(とうろくめんきょぜい)」を計算するためです。
法務局で名義変更の手続きをするには、必ず国に税金を納める必要があります。この税金の額は、手数料のように「一律1,000円」と決まっているわけではありません。
「その不動産にどれくらいの価値があるか」によって税額が変わります。その公的な価値(価格)を法務局に証明するために、固定資産評価証明書が必要になるのです。
相続の場面では、相続登記手続きの流れの初期段階で評価証明書を取得します。贈与登記・売買登記でも同様に登録免許税計算のため必要です。
登録免許税の計算イメージ
例えば、相続登記(税率0.4%)を行う場合、計算式は以下のようになります。
登録免許税の計算式
例:評価額が1,000万円の土地を相続する場合
1,000万円 × 0.4% = 4万円
この4万円分を収入印紙または現金で納付することになります。
※実際の計算では、1,000円未満を切り捨てるなどの端数処理があります。また、共有持分の不動産は「評価額 × 持分割合」で按分してから税率を掛けます。
納税通知書(課税明細書)で代用できる?
毎年4月頃に自宅に届く「固定資産税 納税通知書」にも評価額は記載されています。これを使えば証明書代(数百円)が浮くのでは?と思われるかもしれません。
✓ 基本的には使用可能
登記申請には「市区町村長が発行した証明書の原本」の添付が求められますが、納税通知書も市区町村長の名義で発行されているため、基本的には固定資産評価証明書の代わりとして使用可能です。
⚠️ 注意が必要なケース
ただし、非課税の土地など、納税通知書に記載のない不動産については、別途固定資産評価証明書の取得が必要になります。
非課税の例:公衆用道路(私道)、墓地など
また、分筆・合筆したばかりの土地は固定資産評価証明書自体が発行されない場合があります。その場合、法務局の認定に基づき近傍の類似不動産の評価額を基礎として登録免許税を計算する実務(近傍宅地比準)になるため、申請先の法務局相談窓口に事前確認してください。
名寄帳と固定資産評価証明書の違い
「相続の場面では名寄帳も取るほうがいい」とよく言われます。名寄帳と固定資産評価証明書は記載内容が似ていますが、用途と取得できる範囲が大きく異なります。
実務フロー:相続では「名寄帳 → 評価証明書」の順が効率的
1. まず名寄帳を取り、被相続人がその市区町村に持っていた不動産を全件把握する
2. 登記の対象になる不動産だけ、改めて固定資産評価証明書を取得する
こうすると、私道や山林など相続人が知らない物件の登記漏れを防げます。
⚠️ 名寄帳の限界:これだけに頼ると物件漏れが起きる
名寄帳には非課税物件(公衆用道路としての私道など)が掲載されないことがあります。また、共有名義の不動産が筆頭者の名寄帳にしか載らない運用の自治体もあり、被相続人が共有持分のみを持っていた物件が漏れる可能性があります。
重要な物件の見落とし防止のため、名寄帳に加えて被相続人の権利証(登記識別情報通知)・固定資産税納税通知書・登記簿謄本も併せて確認することをおすすめします。
名寄帳の詳しい取り方・活用方法は名寄帳の取得方法と委任状の書き方をご確認ください。
関連する証明書:固定資産公課証明書
固定資産評価証明書に似た証明書に、固定資産公課証明書があります。公課証明書には、評価証明書の内容に加えて「課税標準額」と「年税額(固定資産税・都市計画税)」が記載されています。
主な用途は不動産売買です。買主は「この物件を保有したら年間いくら固定資産税を払うか」を知る必要があるため、売買契約時に公課証明書を取得することが一般的です。
評価額の記載があれば、固定資産評価証明書の代わりに名義変更手続きに利用することも可能です。ただし、市区町村によっては公課証明書に評価額の記載がない場合もあるのでご注意ください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 固定資産評価証明書は誰でも取れますか?本人以外でも取得できますか?
所有者本人のほか、相続人・借地人・借家人・代理人(委任状あり)が取得できます。所有者が亡くなっている場合は、戸籍謄本で相続人であることを示せば取得可能です。第三者が勝手に他人名義の評価証明書を取ることはできません。
Q2. 令和8年度の固定資産評価証明書はいつから取得できますか?
毎年4月1日から新年度の評価証明書が発行されます。3月末までに申請する場合は前年度(令和7年度)のもの、4月1日以降は令和8年度のものを取得してください。年度替わりに登記申請をする場合は、申請日の属する年度の証明書を用意します。
Q3. 名寄帳で固定資産評価証明書の代わりになりますか?
なりません。法務局が登録免許税の計算根拠として求めるのは「価格を証する書面」であり、名寄帳は市区町村の内部管理用資料に過ぎません。登記申請には原則として固定資産評価証明書(または納税通知書の課税明細)が必要です。名寄帳は「相続財産の一覧把握」の用途と割り切って使ってください。
Q4. 相続手続きで固定資産評価証明書が必要になるのはどの時点ですか?
主に2つの場面で必要です。(1)相続登記申請時の登録免許税計算、(2)相続税申告時の評価額確認。相続が発生したら、財産調査の初期段階で評価証明書または名寄帳を取得するのが実務の定番です。
Q5. 固定資産評価証明書はオンラインやコンビニで取得できますか?
マイナンバーカードがあれば、一部の自治体でコンビニ交付に対応しています。対応状況は自治体ごとに大きく異なるため、事前に各自治体の公式サイトで確認してください。オンライン申請は大規模自治体の一部のみ対応で、対応していない自治体では窓口か郵送請求になります。
Q6. 固定資産評価証明書に有効期限はありますか?
法律上の有効期限はありませんが、登記申請には「申請する年度のもの」が必要です。年度は4月1日切替なので、3月末に取得した前年度の証明書で4月以降に申請すると受理されない可能性があります。
Q7. 遠方の市区町村の固定資産評価証明書を取得する方法は?
郵送請求が一般的です。申請書、本人確認書類の写し、定額小為替(手数料分)、返信用封筒(切手貼付)を同封し、不動産所在地の市区町村役場税務課へ郵送します。到着から発行まで1週間程度かかります。
Q8. 固定資産評価証明書と固定資産公課証明書の違いは?
評価証明書は「評価額」が中心、公課証明書は「評価額+年税額(固定資産税)」が記載されます。登記申請には評価証明書で十分ですが、不動産売買では買主が年税額を知るため公課証明書を取得します。
まとめ
固定資産評価証明書は、不動産の名義変更における「費用の根拠」となる最重要書類です。
- 目的:登録免許税を計算するための公的な評価額の証明
- 見る場所:「評価額(価格)」の欄(課税標準額ではない)
- 取得場所:不動産所在地の市区町村役場(東京23区は都税事務所)
- 取得できる人:所有者・相続人・借地人・代理人(委任状あり)
- 費用:1通300〜400円/年度に注意(4月1日切替)
相続登記を司法書士に依頼する場合、固定資産評価証明書の取得代行も業務に含まれるのが一般的です。ご自身で役所に出向く必要がないため、遠方の相続や平日に時間が取れない方にとってもスムーズに進められます。
相続登記の具体的な費用は相続登記の費用プランをご確認ください。
関連:不動産名義変更の必要書類一覧
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