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相続時口座照会制度の使い方と注意点|相続で預金口座が見つからない時の調査方法


《この記事の監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら

最終更新日:2026年2月1日
 

相続財産調査の進め方:相続時口座照会制度と「見えない資産」の探し方

はじめに:相続で「預貯金が把握できない」ケースが増えている

相続のご相談で多いのは、「不動産は分かるが、預貯金がどこにあるか分からない」というケースです。
以前は通帳や取引印鑑が手がかりになりましたが、近年はネット銀行や通帳レスの普及により、目に見える証拠が残りにくい状況が増えています。

こうした状況を踏まえ、口座管理法の施行により、相続時に預貯金口座の所在を横断的に確認できる「相続時口座照会(相続時預貯金口座照会)」が整備されました。相続時口座照会は2025年4月以降、順次利用が進んでいます。これは、預金保険機構を通じて、亡くなった方が持っていた口座の所在を一括で照会できる制度です。ただし、照会できるのはマイナンバーと紐付けされた口座に限られるため、必ずしも全ての口座が見つかるわけではありません。

預貯金の把握が遅れると、手続きが長引くだけではありません。遺産分割協議後に別口座が判明した場合、協議のやり直しが必要になることもあり、結果として親族間の負担が増えます。
また、相続税の申告が必要なケースでは、資料の不足が後日の修正や追加対応につながりやすいため、初動の段階で「調べ方」を整理しておくことが重要です。

相続時口座照会制度(預金保険機構を介した照会)の概要

制度の趣旨と、預金保険機構が果たす役割

従来、口座調査は金融機関ごとに照会する必要があり、候補が多いほど時間も費用もかかりました。
この負担を軽くする仕組みとして、預金保険機構を介して口座の有無を照会する制度が整備され、2024年~2025年にかけて運用が進んでいます。

照会で分かること/分からないこと

この照会で分かるのは、原則として「どの金融機関・どの支店に口座があるか(口座の存在)」です。
一方で、残高は通知されないのが基本です。残高や取引内容を確認するには、判明後に各金融機関で個別手続(残高証明書の請求等)が必要になります。

利用条件(マイナンバーの届出状況等)

実務上の最重要ポイントは、この制度で照会できるのは「被相続人が生前にマイナンバーとの紐付け手続きを行っていた口座」に限られることです。
制度が始まって間もないため、現状では紐付けが未済の口座も多く、「照会したが結果は『該当なし』だった(でも実際には口座があった)」というケースも想定されます。

特に、亡くなった高齢者の方で「全ての口座をマイナンバーに紐付けていた」というケースはまだ少数派です。制度があるからといって、必ず口座が見つかるとは限りません。あくまで「従来調査の補助的な手段」として捉え、過信しないことが大切です。

手数料・対象機関・照会できる期間(一般的な整理)

手数料は1回の申請につき5,060円(税込)です。お申込み時に金融機関へお支払いいただきます。
また、照会できる期間や対象金融機関には範囲・制限があります(例:照会の対象は、被相続人が亡くなられてから10年以内等。)。
デジタル庁が指定する特定金融機関など、照会対象外となる金融機関があります。最新の対象範囲は公式情報で確認してください。

※なお、株式等を調査する「証券保管振替機構(ほふり)」への照会手数料は、これとは別制度で1件あたり6,050円(税込)です。法務局発行の法定相続情報一覧図のコピーを提出した場合は1件 4,950 円(税込)となります。

相続時口座照会制度の利用手順(準備から結果受領まで)

申請できる人(相続人・遺言執行者・代理人等)

一般的には、相続人(法定相続人)、遺言執行者、相続財産清算人等が申請者となります。
遺産整理業務として司法書士などの専門家が代理で申請することも考えられます。

必要書類(法定相続情報一覧図の活用)

必要書類は金融機関での本人確認が前提となるため、不備があると受付が止まります。準備の要点は次のとおりです。

  • 被相続人の死亡が分かる戸籍(除籍等)
  • 相続人であることが分かる戸籍一式
  • 申請者本人の本人確認書類
  • 印鑑(金融機関の指定による)

被相続人の個人番号(マイナンバー)について:
申込み時の提示は原則不要です(預金保険機構が取得します)。
※一方で、氏名・住所・生年月日の突合が厳格で、正しい情報を出しても個人番号を取得できず「該当口座なし」になる可能性があります。

実務では、法定相続情報一覧図があると戸籍束の持参を省力化でき、以後の金融機関手続や登記でも活用できるため、早い段階で取得しておくと手続きが進めやすくなります。

結果通知の見方と、次に行うべき個別手続

照会結果が届いたら、記載された金融機関ごとに個別手続へ進みます。
繰り返しになりますが、通知は「口座の所在」が中心で、残高の確定には残高証明書(死亡日時点)や取引明細の取得が必要です。

口座照会で見つからない資産を探す(遺産調査の実務)

制度の条件により「該当なし」となる場合でも、資産がゼロとは限りません。ここから先は、手がかりを拾う実務になります。

郵便物・書類・粗品など「手がかり」を拾う

  • 金融機関・保険会社・証券会社からの郵便物(未開封を含む)
  • 「満期案内」「取引報告」「各種控除証明書」「配当金関係」
  • カレンダー、タオル、ティッシュ等に印字された金融機関名

郵便物は最も確度が高い手がかりです。一定期間分をまとめて確認します。

通帳・入出金明細から"別口座"を推定する

通帳が見つかった場合は、残高よりも摘要欄や相手先に注目します。
他行からの振込、証券会社への振替、定期的な引落しがあれば、関連口座や投資の存在が推測できます。

スマホ・PC・メールの確認(注意点を含む)

ネット銀行・ネット証券・暗号資産等は、スマホやPC内にしか入口がないことがあります。
ただし、端末の操作はプライバシー・相続人間の合意・端末の契約名義など、配慮すべき点も多い領域です。相続人間で方針をそろえたうえで、次のような確認を行います。

  • 銀行・証券・決済・暗号資産系のアプリ
  • ブラウザの履歴・ブックマーク
  • 受信メールの検索(「取引報告」「約定」「入金」「重要」等の語句)

パスワードが分からない場合の注意点:
ログインIDやパスワードが分からない場合、相続人であっても再発行には戸籍謄本等の郵送手続が必要になり、窓口がある銀行以上に時間がかかることが多いです。ネット銀行は手軽な反面、相続手続は意外とアナログで手間がかかることを認識しておく必要があります。

最終手段:金融機関への個別照会

手がかりが乏しい場合は、居住地・生活圏・勤務先の動線などから候補を立て、金融機関へ個別照会を行います。
高齢の方ほど「生活圏内の金融機関」に集中する傾向があるため、自宅・過去住所の周辺から当たるのが実務的です。

株式・投資信託の有無を調べる(証券保管振替機構)

銀行口座とは別に、株式等の取引があった可能性がある場合は、「証券保管振替機構(通称:ほふり)」へ開示請求を行うのが確実です。

こちらはマイナンバーの紐付けに関わらず、加盟する証券会社を一括で調査できるため、投資の痕跡がある場合は非常に有効な手段となります。実務的には、「株をやっていた気配があるなら、銀行照会より先に『ほふり』へ照会すべき」というケースも多いです。

手数料は1件あたり6,050円(税込)で、郵送での申請が基本となります。

口座が判明した後の手続き(凍結・仮払い・残高証明)

口座の所在が判明したら、次は各金融機関での個別手続きに進みます。ここでは一般的な流れと注意点を解説します。
※銀行預金の相続手続きの詳細については、【保存版】銀行預金の相続手続き|口座凍結後の流れ・必要書類を司法書士が解説もあわせてご覧ください。

口座凍結の基本と引落しへの影響

金融機関が死亡の事実を把握すると、口座は入出金停止(いわゆる凍結)となるのが一般的です。
公共料金等の引落しが止まる可能性があるため、引落口座の変更や支払い方法の切替を早めに検討します。

遺産分割前の払戻し(仮払い制度)の要点

遺産分割が整う前でも、葬儀費用や当面の生活費として、一定の範囲で払戻しを受けられる制度(いわゆる仮払い)が用意されています。
ただし、引き出せる金額には「1つの金融機関につき約150万円まで」等の法的な上限があります。高額な預金全額をすぐに動かせるわけではない点に注意が必要です。

また、金融機関ごとに必要書類の確認があり、戸籍等の準備は避けられません。急ぐ場合ほど、書類の段取りが重要です。

金融機関タイプ別の進め方(一般的な傾向)

  • ゆうちょ:受付窓口は多いが、集中処理で日数を要することがある
  • メガバンク:予約制・専門部署対応が進んでいる一方、書類確認は厳格になりやすい
  • 地銀・信金:支店対応中心で、地域事情に応じた運用がみられる
  • ネット銀行:郵送中心。書類不備があると往復で時間が延びやすい

デジタル遺品(ネット銀行・電子マネー等)の注意点:
ネット銀行やPayPayなどの電子マネーは、発見できても「残高証明書の発行に数ヶ月かかることがある」「少額すぎて手続き費用の方が高くつく」といった状況が起こり得ます。残高が数千円~数万円程度の場合、相続手続のコストと天秤にかけて、放棄する判断も実務では珍しくありません。

相続税の観点:資料のそろえ方と注意点

通帳残高だけでは足りない場面

相続税申告や遺産分割で金額を確定させるには、通帳の見た目の残高だけでは足りないことがあります。
死亡日基準の残高、既経過利息、取引明細(一定期間)など、金融機関が発行する資料で裏付けを取ります。

残高証明書・取引明細・既経過利息

実務では、

  • 死亡日(相続開始日)時点の残高証明書
  • 取引明細(必要期間)
  • 既経過利息の資料(定期預金等)

をセットで検討することが多いです。必要範囲は事案により変わるため、税理士と連携する場面もあります。

司法書士に依頼できること(戸籍収集・預金手続・登記との連携)

戸籍収集と相続関係確定(初動の負担を減らす)

相続手続で最初の壁になるのが、出生から死亡までの戸籍の収集と相続人の確定です。
ここが固まると、預金手続も登記も一気に前へ進みます。

預金手続と相続登記を一体で進めるメリット

預金の手続で用意した戸籍や協議書は、不動産の相続登記でも用いることが多く、原本還付等を踏まえて段取りすると無駄が減ります。
「預金→登記」を別々に動かすより、全体の設計を一本化したほうが、結果として手戻りが少なくなるケースが多いです。

他士業・金融機関サービスとの違い

紛争性がある場合は弁護士の関与が必要になる一方、紛争がなく「手続の交通整理と実行」が中心のケースでは、司法書士が実務に合う場面が多い、という整理になります(費用は事務所・内容により異なります)。

まとめ:いまからできる備え(生前対策)

相続時口座照会制度は、相続人の負担を軽くする可能性がある一方で、条件や対象範囲の制約もあります。
実務としては、制度で照会 → 手がかり調査 → 個別照会(必要な範囲で)という順で進めるのが現実的です。

生前にできる備えとしては、次の3点が効果的です。

  • 主要な取引先(銀行・証券等)を家族に分かる形で残す
  • エンディングノート等に「口座の所在」「連絡先」「端末の管理情報(※取扱い注意)」を整理する
  • 相続が発生したら、早めに専門家へ相談し、調査と手続きを設計する
調査手法良い点注意点向いている場面
相続時口座照会(制度)一度の申請で横断的に当たれる可能性条件次第でヒットしない/残高は分からないまず最初の確認として
金融機関への個別照会その金融機関内は比較的確実候補が多いと手間・費用が増える取引先が絞れるとき
残高証明書の取得税務・分割で金額確定に有用手数料・日数がかかることがある申告・分割の確定局面
証券保管振替機構(ほふり)マイナンバー紐付け不要で証券会社を一括調査できる手数料6,050円(税込)/郵送申請が基本株式等の形跡があるとき
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監修者プロフィール - 板垣隼
司法書士 板垣隼
この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Planやビジネスメディアへの寄稿実績多数。
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