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終活・生前の口座整理と資産整理|相続準備チェックリスト


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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最終更新日:2026年7月10日

この記事の結論(生前・終活の相続準備でやること)

● 相続準備は「節税」より先に「見える化」:まず①口座・資産を一覧化し、②使わない口座を解約・一本化し、③家族が「どこを見れば分かる」状態を作るのが基本です。

● 口座は名義人が亡くなると凍結される:家族が最も困るのは「口座探し」。元気なうちに口座を整理しておくと、相続手続きの手間が大きく減ります。

● 使わない口座は10年放置で「休眠預金」に:解約して1〜3口座にまとめ、残す口座は銀行名・支店・口座種別を一覧化して家族に伝えます(年金受取・引き落とし口座の変更は事前に)。

● ネット銀行・ネット証券は「デジタル終活メモ」が必須:通帳が無い口座・暗号資産・サブスクは、存在自体が家族に伝わらないと"消えた財産"になります。

● 争い予防は「遺言」、判断能力対策は「元気なうち」:分け方を決めるなら遺言、認知症に備えるなら判断能力があるうちが勝負です。

● 司法書士ができること:当センターは相続登記・名義変更・遺言書作成のサポートに対応。相続税の試算は税理士、認知症対策の詳細は各専門家をご案内します。

「親が元気なうちに、何を準備しておけばいいの?」「自分の相続で家族に迷惑をかけたくない」——そんな方に向けて、終活・生前整理でやるべき相続準備を、相続登記・名義変更を年間2,000件超あつかう司法書士がチェックリスト形式で解説します。難しい節税の話の前に、まずは「預金口座の整理」「資産の見える化」「家族への情報共有」という、誰でも今日から始められる3つの準備から見ていきましょう。

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なぜ今「生前の口座整理・資産整理」が必要なのか

相続対策というと「相続税をどう減らすか」を思い浮かべる方が多いですが、実際に家族が困るのは税金よりも「どこに、いくら、どんな財産があるのか分からない」という状態です。財産の全体像が見えないと、相続手続きは何倍にも大変になります。だからこそ、生前整理・終活の第一歩は「財産の見える化」から始めるのが正解です。

名義人が亡くなると、銀行口座は凍結される

銀行は口座名義人の死亡を知った時点で、その口座を凍結します。凍結されると、キャッシュカードや通帳が手元にあっても、原則として預金の引き出し・振込・引き落としができなくなります。公共料金やローンの引き落としも止まってしまうため、家族はまず「凍結された口座から、どうやってお金を出すか」で苦労します。

補足:凍結後も一部は引き出せます(仮払い制度)2019年7月から、遺産分割前でも各相続人が単独で預金の一部を払い戻せる「預貯金の仮払い制度」(民法909条の2)が使えます。金額は「相続開始時の預金額 × 1/3 × その相続人の法定相続分」で、1つの金融機関につき上限150万円まで。ただし戸籍などの書類集めは必要で、口座が多いほど手続きは煩雑になります。凍結後の解約・払い戻しの詳しい流れは 預貯金の相続手続きのページ で解説しています。

家族が一番困るのは「口座探し」

亡くなった後、遺族は故人の預金口座を1つずつ探し出すことから始めなければなりません。通帳やキャッシュカードが見つからない口座、家族も知らないネット銀行の口座があると、「まだどこかに預金が残っているかもしれない」という不安がずっと残ります。銀行ごとに残高証明書や取引履歴を取り寄せる作業は、口座の数だけ発生します。

「元気なうち」「判断能力があるうち」が勝負

口座整理も、遺言も、認知症に備える任意後見や家族信託も、本人の判断能力があるうちにしか始められません。認知症などで判断能力が低下すると、本人名義の口座の解約や、まとまったお金の移動、遺言の作成が難しくなります。「まだ早い」と思っているうちが、実は一番動きやすいタイミングです。

まず結論:生前にやることは、この3つ

細かいことは後回しでかまいません。生前整理・終活の相続準備は、次の3つから始めれば十分です。

やること
目的
難易度
① 預金口座の整理
「口座探し」をなくす。使わない口座を解約し、残す口座を一覧化する
かんたん
② 資産・負債の把握(財産目録)
プラスの財産もマイナスの借金も「1枚」にまとめて見える化する
ふつう
③ 相続人への情報共有
「どこを見れば全部分かる」の場所を家族に伝えておく
かんたん

この3つができているだけで、相続が始まってからの家族の負担は大きく変わります。まずは①の口座整理から、具体的に見ていきましょう。

① 預金口座の整理:終活で一番「効果が大きい」準備

数ある終活のなかでも、預金口座の整理は最も費用がかからず、効果が大きい準備です。順番は「一覧化 → 減らす → 保管場所を決める → デジタル口座をメモ」の4ステップで進めます。

① 口座を"一覧化"する(これが最優先)

まずは今持っている口座を全部書き出します。解約より先に、まず一覧化が鉄則です。「どこに口座があるか」が分かるだけで、家族の負担は大幅に減ります。一覧には、次の項目を記録しておきましょう。

  • 金融機関名・支店名(ゆうちょ・ネット銀行も忘れずに)
  • 口座の種別(普通/定期/貯蓄)
  • 用途(年金受取・生活費・貯蓄・使っていない)
  • 通帳・キャッシュカードの有無と保管場所
  • 「残す/解約する」の区別
ポイント暗証番号そのものは書かず、「どの口座があるか」を記録するのが基本です。暗証番号やネットバンキングのパスワードは別に管理し、保管場所だけ家族に伝えましょう。

② 使っていない口座は"減らす"(解約・一本化)

使っていない口座は、思い切って解約して1〜3口座程度にまとめるのがおすすめです。口座が多いほど、相続のときに家族が銀行を回る回数・取り寄せる書類が増えます。

長く使っていない口座を放置すると、最後の取引から10年以上動きがない預金は「休眠預金」になることがあります(休眠預金等活用法・2018年施行)。休眠預金になっても、取引のあった金融機関の窓口で引き出しはできますが、手続きに手間がかかります。使わない口座は、元気なうちに解約しておくのが安心です。

③ 一本化は"しすぎ"にも注意(ペイオフ)

1口座にまとめすぎる場合の注意点万一その金融機関が破綻した場合、預金保険制度(ペイオフ)で保護されるのは1金融機関につき預金者1人あたり「元本1,000万円+その利息」までです。1,000万円を大きく超える預金を1つの銀行に集める場合は、複数の金融機関に分けることも検討しましょう。「まとめる=1つにする」ではなく、「管理できる数まで減らす」のが目的です。

④ 解約する前に確認すること

解約や一本化を進める前に、次の"引き落とし・受け取り"の付け替えを済ませておきます。ここを忘れると、年金が入らない・公共料金が止まる、といったトラブルになります。

  • 年金の受取口座(先に変更手続きをしてから旧口座を解約)
  • 公共料金・電気/ガス/水道・NHKの引き落とし口座
  • クレジットカード・携帯・保険料の引き落とし口座
  • 家賃・給与・配当・自動送金の入出金設定
  • 定期預金・積立の満期日、外貨・投資信託の有無

⑤ 通帳・キャッシュカード・印鑑の保管場所を決める

意外と多いのが「通帳や印鑑がどこにあるか分からない」という相続トラブルです。通帳・キャッシュカード・銀行印はまとめて1か所に保管し、その場所を信頼できる家族に伝えておきましょう。貸金庫を使っている場合は、貸金庫の存在自体を家族に伝えておくことが大切です(本人死亡後の貸金庫の開扉には相続人全員の関与が必要になることがあります)。

⑥ ネット銀行・ネット証券・電子マネーは「デジタル終活メモ」が必須

ネット銀行・ネット証券・スマホ決済・暗号資産(仮想通貨)・ポイント・サブスクは、通帳が存在しないため、本人が記録を残さないと家族に存在すら伝わりません。「デジタル遺産」は、相続で最も"見つからない財産"になりやすい領域です。次のものは、サービス名だけでも書き出しておきましょう。

  • ネット銀行・ネット証券(サービス名・IDの保管場所)
  • 暗号資産(取引所名)・FX・ポイント・マイル
  • スマホ決済・電子マネー(PayPay・Suica など)
  • 有料サブスク(動画・音楽・アプリ課金)=解約漏れで払い続けるのを防ぐ
  • スマホ・PCのロック解除方法の保管場所
コツパスワードそのものを紙に書くのが不安なら、「このメモとこの手帳を見れば分かる」という"入口の場所"だけを家族に伝えておく方法でも十分に効果があります。

⑦ 金融機関タイプ別の整理のポイント

金融機関の種類によって、整理のときに気をつけたい点が少しずつ違います。

種類
整理のポイント
ゆうちょ銀行
通常貯金・定額/定期貯金など種類が多い。相続時の払い戻しは貯金事務センター経由で時間がかかりやすいため、使わない口座は生前に解約しておくと安心
地方銀行・信用金庫
引っ越し後に残った旧地元の口座は忘れられがち。使っていなければ解約候補。窓口が遠い場合は早めの手続きを
ネット銀行
通帳が無く、ログイン情報が無いと家族が存在に気づけない。サービス名とIDの保管場所を必ず残す(デジタル終活)
証券口座・株式
相続時に相続人側で証券口座の開設が必要になるなど手間が大きい。証券会社名・保有銘柄を一覧化しておく

いずれの金融機関でも、名義人が亡くなった後の解約・払い戻しの流れには共通する部分が多くあります。詳しくは 預貯金の相続手続きのページ をご覧ください。

⑧ 実際の口座解約は、どう進める?

使わない口座の解約は、次の流れで進めます。特別に難しい手続きではありません。

  • まず残高を、残す口座へ移す(振込または引き出し)
  • その口座を「引き落とし・受け取り」に使っている契約がないか最終確認する
  • 通帳・キャッシュカード・届出印・本人確認書類を持って窓口へ(ネット銀行はアプリ/サイトで手続き)
  • 解約が完了したら、口座一覧表を更新しておく

窓口が遠い金融機関は、来店の負担を考えると体力・時間に余裕がある元気なうちに済ませておくのが安心です。

「何から手をつければいいか分からない…」という方へ。相続登記や生前贈与、遺言書の作成について、司法書士がご相談をお受けします。

② 資産・負債の把握:「財産目録」を作ると相続が一気に楽になる

口座の次は、財産全体の"棚卸し"です。プラスの財産だけでなく借金などマイナスの財産も含めて1枚にまとめたものを「財産目録」と呼びます。これがあると、相続人は「何を・どこで・いくら受け継ぐのか」がすぐ分かり、相続放棄すべきかどうかの判断もしやすくなります。

財産目録に入れるべきもの(チェックリスト)

区分
入れるもの
不動産
土地・建物(所在・地番・家屋番号)、マンション、共有持分。固定資産税の納税通知書があると便利
預貯金
銀行・ゆうちょ・ネット銀行(金融機関名・支店・種別)
有価証券
株式・投資信託・国債・ネット証券口座
保険
生命保険・個人年金(保険会社・証券番号・受取人)
その他
自動車・貴金属・ゴルフ会員権・暗号資産・貸付金
マイナスの財産
住宅ローン・借入金・保証債務・未払い税金
ヒント不動産は、市区町村から毎年届く「固定資産税の納税通知書(課税明細書)」を見ると、所有している物件が一覧で分かります。手元に無い場合は、市区町村で「名寄帳(固定資産課税台帳)」を取得すると、その市区町村内の所有不動産をまとめて確認できます。

財産目録(テンプレ例:コピペ用)

次の形式で、Excel やノートに書き出すだけで立派な財産目録になります。

【財産目録】 作成日:  年 月 日 / 本人:
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 不動産
 種類:土地/地番:○○ 評価額:約   円
 種類:建物/家屋番号:○○ 評価額:約   円
■ 預貯金
 ○○銀行 △△支店 普通 残高:約   円
 ゆうちょ銀行 通常貯金 残高:約   円
■ 有価証券
 ○○証券 株式・投信 評価額:約   円
■ 保険
 ○○生命 証券番号○○ 受取人:○○
■ マイナスの財産(借金など)
 住宅ローン(○○銀行) 残高:約   円
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※ 保管場所:通帳=○○/印鑑=○○/保険証券=○○

財産の「金額(評価額)」はどう調べる?

だいたいの金額が分かれば十分です。正確な評価は相続が起きてからでも間に合いますが、当たりをつけておくと相続税がかかりそうかどうかの判断に役立ちます。

財産
金額の調べ方
預貯金
通帳の残高、または銀行で「残高証明書」を取得
不動産
固定資産税の課税明細(納税通知書)や、市区町村の「固定資産評価証明書」の評価額が目安
株式・投資信託
証券会社から届く残高報告書、またはネット証券の口座画面
生命保険
保険証券に記載の金額、または保険会社に確認

「エンディングノート」「財産目録」「遺言書」の違い

似ているようで役割が違います。混同しないように整理しておきましょう。

種類
役割
法的効力
エンディングノート
希望・連絡先・思いなどを自由に書く
なし
財産目録
財産の"一覧"を見える化する
なし
遺言書
「誰に何を相続させるか」を法的に決める
あり

財産の"見える化"はエンディングノートや財産目録で十分ですが、「分け方」を法的に決めたい場合は遺言書が必要です。あとの章で解説します。

不動産の生前整理:名義・権利証・相続登記の準備

預金と並んで、相続で家族が苦労しやすいのが不動産です。生前に次の3点を確認しておくと、相続がぐっとスムーズになります。

① いまの名義(誰の名義になっているか)を確認する

先代(親や祖父母)の名義のまま相続登記がされていない不動産が残っていると、相続のときに何代分もの相続人をたどる必要が出て、手続きが一気に複雑になります。2024年(令和6年)4月から相続登記は義務化され、相続を知った日から3年以内の登記が必要です。過去の相続で名義が変わっていない不動産がないか、この機会に確認しておきましょう。

② 権利証(登記識別情報)の保管場所を決める

不動産の権利証(登記済証・登記識別情報通知)は、紛失しても再発行できません。保管場所を決め、家族に「どこにあるか」を伝えておきましょう。

③ 共有名義・持分を確認する

不動産が兄弟などとの共有になっていると、相続のたびに持分がさらに細かく分かれ、売却や活用がしにくくなります。共有関係がある場合は、生前のうちに整理を検討する価値があります。

当センターの対応当センターは、不動産の相続登記・名義変更を年間2,000件超あつかう司法書士法人です。「名義が古いままの不動産がある」「権利証が見当たらない」といったご相談にも対応しています。

生命保険の見直しも、生前整理の一部

生命保険は「誰が受け取るか(受取人)」がとても重要です。生前に次の点を確認しておきましょう。

  • 受取人が最新か(離婚・死別などで、古い受取人のままになっていないか)
  • 加入している保険を一覧化する(保険会社・証券番号・受取人・保管場所)
  • 保障が重複していないか、不要な保険がないか
知っておきたい:生命保険と相続の関係生命保険金は受取人固有の財産とされ、原則として遺産分割の対象になりません(相続放棄をしても受け取れます)。また、相続税の計算では「500万円 × 法定相続人の数」までが非課税になります。生命保険は、特定の人にお金を残したいときや、納税資金を準備したいときにも役立ちます。

マイナスの財産(借金)の確認と、「相続放棄」という選択肢

財産目録では、プラスの財産だけでなく、借金・住宅ローン・保証債務・未払いの税金といったマイナスの財産も必ず確認します。マイナスがプラスを上回る場合、相続人は「相続放棄」を選ぶことができます。

相続放棄には期限があります相続放棄は、原則として自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内(民法915条)に、家庭裁判所へ申述する必要があります。借金の有無が分からないまま3か月を過ぎると、借金も相続してしまうおそれがあります。

だからこそ、生前に「どこに、いくら借金があるか」を家族が分かる状態にしておくことが、残されたご家族を守ることにつながります。

③ 相続人への情報開示:「どこを見れば全部分かる」を作る

せっかく整理しても、その存在が家族に伝わっていなければ意味がありません。目標は「この1枚(またはこの引き出し)を見れば全部分かる」状態を作ることです。

おすすめの共有方法(現実的で揉めにくい)

  • 財産目録・口座一覧・保管場所メモを1つのファイル(または封筒)にまとめる
  • そのありかを、信頼できる家族に1人以上伝えておく
  • 中身(金額)まで今すぐ全部見せる必要はなく、「いざという時ここを見て」で十分
  • 年に1回、内容を見直す(口座・残高・契約は変わります)

相続人が「誰か」を把握しておくのも予防になる

財産だけでなく、「自分の相続人が誰になるか」を把握しておくことも立派な生前対策です。前妻・前夫との子、認知した子、兄弟姉妹相続などがあると、家族が把握していない相続人が後から現れて手続きが止まることがあります。心配な場合は、戸籍で法定相続人を確認しておくと安心です。

エンディングノートには何を書く?(項目チェックリスト)

財産目録が「お金の見える化」なら、エンディングノートは「お金以外も含めた、家族への引き継ぎメモ」です。法的な効力はありませんが、家族が困りやすい情報をまとめて残しておけます。書店や自治体で配布されているノートを使うと、項目に沿って書けるので便利です。

  • 財産の情報(口座・保険・不動産・デジタル資産の一覧、または財産目録のありか)
  • 連絡してほしい人のリスト(親族・友人・仕事関係)
  • 医療・介護の希望(延命治療をどうするか、介護の場所の希望など)
  • 葬儀・お墓の希望
  • ペットの世話について
  • SNS・スマホ・サブスクの扱い(解約してほしいもの・残してほしいもの)
  • 家族へのメッセージ
注意:エンディングノートに"法的効力"はありませんエンディングノートは自由に書ける反面、「誰に何を相続させる」といった法的な指定はできません。財産の分け方を確実に決めたい場合は、遺言書を併用しましょう(このあとの章で解説します)。

生前整理で「やってはいけない」こと(NG集)

よかれと思ってやった行動が、かえって家族の負担やトラブルの原因になることがあります。次の点には注意しましょう。

避けたいNG行動
  • 預金を全部おろして"タンス預金"にする:盗難・紛失のリスクがあり、使い道が不明だと相続人の間でトラブルのもとになります
  • 名義人以外が勝手に口座からお金を移す:贈与とみなされたり、使い込みを疑われたりする原因になります
  • 本人の判断能力が低下してから慌てて手続きしようとする:解約・遺言・口座の移動が事実上できなくなります
  • 暗証番号やパスワードを通帳に直接書く:盗難時に悪用される恐れがあります。保管場所だけ伝える方式に
  • 完璧に整理したのに、誰にも伝えない:存在が家族に伝わらなければ、整理した意味がなくなってしまいます

争い予防まで踏み込むなら:「遺言」で"交通整理"をする

「見える化」は家族の手間を減らす対策ですが、「誰に何を渡すか」を確実に決めたい・相続人どうしの争いを防ぎたいなら、遺言書が最も有効です。特に次のようなケースでは、遺言を強くおすすめします。

  • 不動産が主な財産で、分けにくい(きれいに分割できない)
  • 特定の子・配偶者に多く残したい/特定の人に残したくない事情がある
  • 子がいない夫婦(放っておくと配偶者と兄弟姉妹の共同相続になる)
  • 内縁のパートナー・世話になった人など、法定相続人以外に残したい
遺言は「公正証書遺言」が安心自筆でも作れますが、形式不備で無効になったり、紛失・改ざんのリスクがあります。公証役場で作る公正証書遺言なら、その心配がありません。自筆で作る場合も、法務局が保管してくれる自筆証書遺言書保管制度を使えば紛失・改ざんを防げます。当センターでは、遺言書の作成サポートに対応しています。

自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらがいい?

項目
自筆証書遺言
公正証書遺言
作り方
自分で全文を手書き(財産目録はパソコン可)
公証役場で公証人が作成
費用
基本ほぼ無料(保管制度の利用は手数料あり)
財産額に応じた公証人手数料がかかる
無効リスク
形式不備で無効になることがある
公証人が関与するため低い
紛失・改ざん
自宅保管だとリスクあり(法務局保管制度で回避可)
原本を公証役場が保管
検認
必要(法務局の保管制度を使えば不要)
不要

確実性を重視するなら公正証書遺言、手軽さを重視するなら法務局の保管制度を使った自筆証書遺言が有力な選択肢です。

公正証書遺言 作成の流れ

  • 財産の内容と「誰に何を渡すか」を決める(財産目録があるとスムーズ)
  • 必要書類を集める(戸籍・不動産の登記事項証明書・固定資産評価証明書・受け取る人の住民票など)
  • 公証役場と内容を打ち合わせる
  • 証人2名の立会いのもと、公証役場で遺言書を作成する

証人や必要書類の準備、公証役場とのやり取りは、司法書士がサポートできます。

遺言でも「遺留分」には配慮を

兄弟姉妹以外の法定相続人(配偶者・子・親)には、「遺留分」という最低限保障された取り分があります。遺言で特定の人に全部渡すような内容にすると、遺留分を侵害された相続人から遺留分侵害額請求を受け、かえって争いになることがあります。「特定の人に多く残したい」場合も、遺留分に配慮した内容にしておくと安心です。

認知症・判断能力の低下に備える:「判断能力があるうち」の選択肢

相続対策とセットで考えたいのが、認知症などで判断能力が低下したときの備えです。判断能力が失われると、本人名義の預金の引き出しや不動産の売却、遺言の作成が事実上できなくなり、家族が「お金があるのに使えない(資産凍結)」状態に陥ることがあります。

これに備える主な制度には、次のようなものがあります。遺言・任意後見・家族信託は、本人の意思や契約が前提となるため、判断能力があるうちに準備する必要があります(成年後見は、判断能力が低下した後に利用する制度です)。

制度
どんなもの
任意後見
判断能力があるうちに、将来サポートしてくれる人を自分で決めて契約しておく(公正証書で作成)
家族信託
財産の管理を信頼できる家族に託しておく仕組み。認知症後も資産を動かしやすい
成年後見(法定)
判断能力が低下した後に、家庭裁判所が支援者を選ぶ制度
当センターの対応範囲についてこれらの制度は、認知症に備える"選択肢"としてご紹介するものです。家族信託の組成設計や成年後見の申立て、税務のご相談は、各分野の専門家(弁護士・税理士・専門の司法書士等)をご案内します。当センターでは、遺言書の作成サポートや、相続が起きた後の相続登記・名義変更に対応しています。

相続税が心配な場合:まず「見える化」→ 必要なら税理士へ

「うちは相続税がかかる?」と気になる方も多いですが、順番としてはまず財産の見える化が先です。財産目録ができていれば、相続税がかかりそうかどうかの当たりがつけやすくなります(基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)。

実際の相続税の試算・申告や、生前贈与を使った節税の設計は税理士の専門分野です。当センターは相続税の計算・申告は行いませんが、生前贈与による不動産の名義変更(贈与登記)や、相続が起きた後の相続税の基礎知識のご案内には対応しています。相続税申告が必要な案件では、提携税理士をご紹介します(関東対応エリアを中心)。それ以外の地域では、お近くの税理士へのご相談をおすすめします。

おひとりさま(独身・子なし)の生前整理で特に大切なこと

独身の方や子どものいない方は、相続手続きをしてくれる家族がいない・少ないため、生前の準備が特に重要になります。次の点を検討しておきましょう。

  • 遺言書を必ず用意する:法定相続人がいない場合、財産は最終的に国のもの(国庫)になります。お世話になった人や団体に残したいなら、遺言が必須です
  • 死後の事務を頼む相手を決めておく:葬儀・住まいの片付け・各種解約などを託す「死後事務委任契約」という方法があります
  • 判断能力の低下に備える:頼れる家族が少ない分、任意後見などの備えがより役立ちます
  • 財産・契約・連絡先の一覧を、信頼できる人や専門家に伝えておく

おひとりさまの生前対策では、遺言・死後事務委任・後見などを組み合わせて考えます。当センターでは遺言書の作成サポートに対応しています(死後事務委任契約や後見の詳細は、各専門家をご案内します)。

「親の生前整理」を、子の立場から手伝うには

「親の口座や財産を整理してほしいけれど、切り出しにくい」という声はとても多いです。親の口座の解約や名義変更は本人しかできませんが、子が手伝えることはたくさんあります

  • 「もしものとき、家族が困らないように」という切り口で、責めずに話す
  • いきなり全部ではなく、まず「口座の一覧づくり」から一緒に始める
  • エンディングノートを一緒に書く(項目に沿って書けるので親も進めやすい)
  • 判断能力があるうちに進める(認知症が進むと、手伝いも難しくなります)
注意子が勝手に親の口座からお金を動かすと、後で他のきょうだいとのトラブルや、贈与の問題になることがあります。あくまで親本人の意思で・親名義のまま整理を進めるのが大切です。

年代別・生前整理のはじめ方(50代・60代・70代〜)

「まだ早い」と思っていても、早く始めるほど選択肢が多く、体力・判断能力にも余裕があります。年代ごとの目安は次のとおりです。

年代
やっておきたいこと
50代
口座・保険・サブスクの棚卸しを始める。使わない口座を解約。デジタル資産(ネット銀行・証券・暗号資産)を記録し始める
60代(退職前後)
退職金の受け皿口座・年金受取口座を確定。口座の一本化を進める。財産目録を作成し、遺言の検討を始める
70代〜
口座整理・財産目録を完成させ、家族に「どこを見れば分かるか」を共有。遺言・任意後見・家族信託など、判断能力があるうちにできる対策を実行する

もちろん、何歳からでも遅すぎることはありません。「気づいたときが始めどき」です。まずはできるところから、一つずつ進めていきましょう。

【保存版】今日からできる生前整理チェックリスト

まずは上から順に、できるところから手をつけてみてください。

  • 持っている銀行口座をすべて書き出した(一覧化)
  • 使っていない口座を解約・一本化した(年金・引き落としの付け替え済み)
  • 通帳・キャッシュカード・印鑑の保管場所を1か所に決めた
  • ネット銀行・ネット証券・暗号資産・サブスクをメモした(デジタル終活)
  • 財産目録(プラス・マイナス両方)を作った
  • 保険・不動産(固定資産税通知書)を確認した
  • 「どこを見れば分かるか」を家族1人以上に伝えた
  • 分け方を決めたいなら遺言書を検討した
  • 認知症対策(任意後見・家族信託)を検討した
  • 年に1回、内容を見直すと決めた

参考:相続が起きた後に、家族がやること(全体像)

生前整理は「相続が起きた後の家族の負担を減らす」ための準備です。実際に相続が起きると、家族は次のような手続きを進めることになります。生前整理ができていると、これらが大幅に楽になります。

目安の期限
やること
7日以内
死亡届の提出
すみやかに
年金の受給停止、健康保険・公共料金などの名義変更・解約
3か月以内
相続放棄・限定承認をするかどうかの判断(借金が多い場合など)
4か月以内
故人の所得税の準確定申告(必要な場合)
10か月以内
相続税の申告・納付(かかる場合)
3年以内
不動産の相続登記(2024年4月から義務化)
期限の定めなし
預貯金の相続手続き(早めがおすすめ)

このうち、当センターがサポートできるのは不動産の相続登記・名義変更預貯金の相続手続きです。相続手続き全体の流れは遺産整理のページでも解説しています。

司法書士に相談すると、何ができる?

生前対策から相続手続きまで、当センター(司法書士法人)がお手伝いできるのは主に登記と遺言の分野です。

場面
当センターの対応
生前(元気なうち)
遺言書の作成サポート/生前贈与による不動産の名義変更(贈与登記)
相続が起きた後
専門家のご案内
相続税=税理士/紛争性のある争い=弁護士/測量=土地家屋調査士(関東対応エリアを中心にご紹介)

「まず何から相談すればいいか分からない」という段階でも大丈夫です。初回のご相談(無料)では、ご事情をお聞きしたうえで、おおまかな手続きの流れ・必要書類・お見積りをご案内します。

お客様の声当センターにお寄せいただいた相続手続きのご感想は、お客様の声のページでご覧いただけます。

よくある質問(Q&A)

Q. 亡くなった人の口座をそのまま(ほったらかしに)しておくとどうなりますか?

口座は凍結されたまま残り、預金を引き出すには相続手続きが必要です。相続手続きをせずに放置しても口座が自動で家族のものになることはなく、長期間放置すると休眠預金になったり、後の相続でさらに手続きが複雑になったりします。名義人が亡くなったら、早めに預貯金の相続手続きを進めるのがおすすめです。

Q. 銀行口座は1つに一本化すべきですか?

「管理できる数(1〜3口座程度)まで減らす」のが目的で、必ずしも1つにする必要はありません。ただし1つの銀行に1,000万円を大きく超える預金を集めると、万一の破綻時にペイオフで保護されるのは元本1,000万円+利息までなので、その場合は複数行に分けることも検討しましょう。

Q. 10年以上放置している口座はどうなりますか?

最後の取引から10年以上動きがない預金は「休眠預金」となり、預金保険機構へ移管されます(休眠預金等活用法)。移管後も、取引のあった金融機関の窓口で引き出しはできますが、手続きに手間がかかります。心当たりのある口座は、元気なうちに解約・整理しておくと安心です。

Q. 亡くなった人の通帳は、いつまでとっておくべきですか?

相続手続きが完了するまでは必ず保管してください。相続税の申告が必要な場合や、遺産分割で入出金の履歴が問題になる場合に備え、手続き完了後も少なくとも5〜10年程度は保管しておくと安心です(相続税の時効や、後日の使途確認に備えるため)。

Q. 生前に預金を全部おろしておけば、手続きは楽になりますか?

おすすめしません。多額の現金を自宅に置くのは盗難・紛失のリスクがあり、使い道が不明だと相続人の間でトラブル(使い込みの疑い)になりがちです。また、名義人以外が引き出すと贈与とみなされる可能性もあります。現金化するより、口座を整理して見える化しておくほうが安全で確実です。

Q. 親の口座を、子が生前に整理してあげることはできますか?

口座の解約や名義変更は原則として名義人本人が行う必要があります。子ができるのは、親と一緒に口座を一覧化したり、手続きに付き添ったりするサポートです。本人の判断能力があるうちに、親子で一緒に進めておくのが理想です。判断能力が低下した後は、任意後見・成年後見などの制度が必要になります。

Q. 財産目録は、決まった書式(様式)で作らないといけませんか?

決まった様式はありません。ノートやExcelで、「何を・どこに・いくら」が分かる形で書けば十分です。大切なのは体裁より「家族が見て分かること」「定期的に更新すること」です。本記事のテンプレ例を参考にしてください。

Q. 家族名義になっている「名義預金」はどうすればいいですか?

配偶者や子の名義でも、実際に管理・入金しているのが本人であれば「名義預金」として本人の相続財産に含まれ、相続税や遺産分割の対象になることがあります。あいまいなお金は、生前のうちに贈与の形を整えるなど、実態と名義を一致させておくとトラブルを防げます。判断に迷う場合は税理士にご相談ください。

Q. 貸金庫を借りています。中身はどうなりますか?

本人が亡くなった後、貸金庫を開けるには相続人全員の関与が必要になることが多く、中身の確認に手間がかかります。まず貸金庫を借りていること自体を家族に伝えておくことが大切です。可能であれば、重要書類は生前に整理しておくと安心です。

Q. 暗号資産やネット証券などの「デジタル遺産」も相続財産になりますか?

はい。暗号資産・ネット証券・電子マネーなど価値のあるものは相続財産となり、相続税の対象にもなります。ただし通帳が無いため、本人が記録を残さないと家族が存在に気づけません。取引所名・サービス名と、ログイン情報の保管場所を必ずメモしておきましょう。

Q. エンディングノートに、遺言のような法的効力はありますか?

ありません。エンディングノートは希望や情報を自由に書けますが、「誰に何を相続させる」といった法的な指定はできません。分け方を確実に決めたい場合は、遺言書を作成する必要があります。

Q. 生前対策の相談は、何から始めればいいですか?

まずは「口座の一覧化」と「財産目録づくり」から始めるのがおすすめです。そのうえで、分け方を決めたいなら遺言、認知症が心配なら任意後見・家族信託を検討します。「うちの場合はどうすれば?」というご相談は、司法書士へお気軽にどうぞ(初回相談無料・全国対応)。

まとめ:相続対策は"節税"より先に「見える化」

生前・終活の相続準備は、難しい節税から始める必要はありません。①口座を整理し、②財産を見える化し、③家族に「どこを見れば分かる」を伝える——この3つができているだけで、残されたご家族の負担は大きく変わります。そのうえで、分け方を決めたいなら遺言、認知症に備えるなら判断能力があるうちの対策を検討しましょう。

「何から手をつければいいか分からない」「うちの場合はどうすれば」という段階でも大丈夫です。当センターでは、遺言書の作成や生前贈与の登記といった生前の対策から、相続が起きた後の相続登記・名義変更・預貯金の相続手続きまで、司法書士がサポートします。相談は無料・全国対応です。

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この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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