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公正証書遺言とは?費用・必要書類・自分で作る流れを司法書士が解説


《この記事の監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら

最終更新日:2026年7月24日
 

【2026年6月24日公布】「デジタル遺言」を新設する改正民法が公布されました(令和8年法律第45号)

パソコン・スマートフォンで作成し法務局で保管する新しい遺言方式「保管証書遺言(通称:デジタル遺言)」を創設する「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が2026年6月17日に成立し、同年6月24日に公布されました。ただし、実際に利用できるのは政令で定める施行日以後(自筆証書遺言の押印廃止などは公布から1年以内、保管証書遺言は公布から3年以内に施行)で、現時点ではまだ利用できません。なお、2025年10月に始まった「公正証書のデジタル化」(本文後述)とは別の制度です。施行日が決まり次第、本ページを更新します。詳しくは「デジタル遺言(保管証書遺言)の仕組みと施行時期」で解説しています。

公正証書遺言とは(要点まとめ)

● 公正証書遺言とは:公証人が遺言者の口述をもとに作成する、最も確実性の高い遺言書です。原本は公証役場で保管され、家庭裁判所の検認は不要です。

● 費用(公証人手数料):財産額と分け方で決まり、目安は数万円〜十数万円。財産総額1億円以下の場合は遺言加算13,000円が加わります。

● 必要書類:印鑑登録証明書・戸籍謄本・不動産の登記事項証明書・固定資産税評価証明書・通帳のコピーなど。

● 期間の目安:必要書類が揃ってから作成当日まで、おおむね2週間〜1か月程度(公証役場の予約状況による)。

● 証人:2名以上の立ち会いが必須(推定相続人・受遺者などはなれません)。司法書士に依頼すれば証人の手配も可能です。

● 病院・自宅でも作成可:公証役場に行けない場合は、公証人の出張制度(所属する法務局の管轄区域内・手数料加算あり)で作成できます。

【目次】
~目次詳細を開くにはこちらをクリック~

公正証書遺言とは

公正証書遺言とは、法律の専門家であり国家公務員に準ずる立場にある公証人が、遺言者本人の口述(口頭での説明)に基づいて作成する公的な遺言書です。

遺言者が公証人の面前で遺言の内容を口頭で伝え、それを聞いた公証人が法的に正確な文章として遺言書を作成します。作成された遺言書の原本は公証役場という公的機関で厳重に保管されるため、偽造・変造・紛失のリスクが事実上ありません。

遺言がない場合、原則として相続人全員での遺産分割協議が必要になります。前婚のお子さまがいる、相続人同士が疎遠、認知症や行方不明の相続人がいる、といった事情があると協議は難航しやすく、いわゆる「争族(そうぞく)」に発展することもあります。こうした事態を未然に防ぎ、大切な家族に財産を確実に引き継ぐ手段として有効なのが公正証書遺言です。

遺言公正証書のサンプル

※遺言公正証書のサンプル画像です。各公証役場によって表紙のデザインは異なります。表紙がなく封筒のみの場合もあります。

公正証書遺言の4つのメリット

公正証書遺言には、主に以下のような大きなメリットがあります。

1. 高い専門性で無効リスクが極めて低い

法務経験を持つ公証人が内容をチェックし、さらに利害関係のない2名以上の証人が立ち会うという厳格な手続きを経て作成されます。そのため、形式不備で無効になるリスクが極めて低く、遺言書としての信頼性が非常に高いものとなります。

2. 紛失や改ざんのリスクがない

原本は公証役場で厳重に保管されるため(2025年10月以降、法務大臣の指定を受けた公証人が作成するものは原則として電子データで保存)、紛失や改ざんの心配がありません。万が一、手元の正本や謄本を紛失した場合でも、公証役場に請求すれば再発行を受けることができます。

3. 家庭裁判所の検認手続きが不要

自宅などで保管していた自筆証書遺言の場合、相続が発生した後に家庭裁判所での「検認」手続きが必要となり、1か月から数か月の期間を要します(法務局の保管制度を利用した場合は検認不要)。公正証書遺言であればこの検認手続きが一切不要で、相続発生後すぐに手続きを進めることができます。

4. 作成時に判断能力が確認される

作成時に公証人が遺言者の意思能力を確認するため、後日「遺言を書いた当時、本人には意思能力がなかったはずだ」という無効主張への有力な反証になります。ただし、認知機能に不安がある場合は公正証書遺言でも遺言能力が争われることがあり、医師の診断書や面談記録を残しておくことも検討します。

さらに、遺言執行者の指定や、相続人への遺留分侵害額請求への配慮など、より詳細な内容を盛り込むことも可能です。このように、自筆証書遺言に比べて安全性が高く確実な遺言方法であり、遺言者とその家族にとって安心できる選択肢と言えるでしょう。

そもそも遺言書とは

遺言とは、人が生前に残した意思表示を、その人の死後に法的な効力を持たせるための手段です。遺言者の死亡後は、原則として遺言書の内容にしたがった効力が発生します。

生前には周囲への気遣いからできなかったことでも、遺言書に記すことで実現できることがあります。故人の希望にしたがった財産分配ができるのも遺言書の大きなメリットです。そして、故人の死後に無用な相続争いが起こることを事前に予防する手段としても、遺言書の存在は非常に大きいと言えるでしょう。

ポイント 遺言書は、生前の本人の意思表示に法的効力を持たせるという大きな力を持っています。その力を活用するためにも、遺言についての基本的な知識を押さえた上で、より充実した遺言書を作成することが重要です。

公正証書遺言と自筆証書遺言の違い

遺言書を作成するにあたり、一般的に比較検討されるのが「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」の二つの方式です。主な違いは、作成に関わる専門家の有無保管場所検認手続きの要否にあります。

自筆証書遺言の特徴とリスク

自筆証書遺言は、遺言者が自らの手で遺言の全文・日付・氏名を書き、押印することで成立する最も簡便な遺言方式です。費用がかからず、他人に内容を知られることなく、自分のペースで作成できるという手軽さがあります。

しかし、この方式には以下のような重大なリスクが伴います。

形式不備による無効リスク

法律の専門知識を持たない遺言者が作成するため、日付の記載が「吉日」となっていたり、加除訂正の方式が民法の規定に沿っていなかったり、署名や押印が欠けていたりするだけで、法的に無効となるケースが後を絶ちません。また、「全財産を妻に任せる」といった曖昧な表現を使った結果、不動産の登記手続きや預貯金の解約を金融機関から拒否されることもあります。

保管上のリスク

自宅の金庫や仏壇などで保管されることが多く、災害による滅失や、本人の死亡後に相続人が遺言書の存在自体を知らないという事態が起こり得ます。さらに深刻なのは、遺言内容に不満を持つ一部の相続人による意図的な隠匿・破棄・改ざんのリスクです。

検認手続きの負担

自筆証書遺言を発見した相続人は、家庭裁判所での検認手続きを経なければなりません。この手続きには膨大な書類の収集が必要で、申し立てから実施まで1か月から数か月かかることもあり、その間は遺言書に基づく預貯金の解約や不動産の名義変更・売却といった手続きを事実上進められません。

また、病気などで手が不自由になり自筆で書けなくなった場合には、そもそも自筆証書遺言を利用することができません。

自筆証書遺言の作り方について詳しくはこちら

自筆証書遺言書保管制度(法務局保管)

自筆証書遺言の弱点を補完する目的で、2020年(令和2年)7月より「自筆証書遺言書保管制度」がスタートしました。法務局(遺言書保管所)が公的に遺言書を保管する仕組みです。

法務局の担当官が形式的な要件(全文の自書・日付・氏名・押印の有無など)を外形的に確認するため、最低限の形式面の不備には気づくことができます(遺言の有効性が保証されるわけではありません)。また、原本は法務局で厳重に保管されるため紛失・改ざんの心配がなく、検認手続きも免除されます。保管手数料は1件につき3,900円と低額です。

⚠ 法務局保管制度の注意点 法務局が行うのはあくまで外形的な「形式要件」のチェックのみです。遺言内容の法的な有効性(遺留分への配慮、財産の特定が正確か、法的解釈で揉める余地がないか等)についてのアドバイスは一切ありません。内容の不備による執行不能のリスクは残ります。

自筆証書遺言書保管制度の使い方について詳しくはこちら

各遺言方式の比較表

比較項目 自筆証書遺言
(自宅等保管)
自筆証書遺言
(法務局保管)
公正証書遺言
作成方法 全文(目録除く)、日付、氏名を自書し押印 全文(目録除く)、日付、氏名を自書し押印 遺言者の口述に基づき公証人が作成
費用の目安 実質無料 3,900円(保管手数料) 数万円〜十数万円以上(財産額に応じる)
証人の立ち会い 不要 不要 2名以上必要
保管場所 任意(自宅・貸金庫など) 法務局(遺言書保管所) 公証役場
紛失・改ざんリスク 極めて高い ない ない
無効になるリスク 高い(形式・実質双方) 低い(実質的要件の不備リスクは残る) 極めて低い
家庭裁判所の検認 必要 不要 不要
自書できない場合 作成不可 作成不可 公証人の筆記により作成可能

自筆証書遺言のルールに不安がある場合や、複雑な家族関係(前妻との子がいる、特定の子に多く残したい等)があり将来の紛争を確実に防ぎたい場合には、専門家の関与のもとで作成される公正証書遺言が強く推奨されます。一方、財産構成がシンプルで費用を最小限に抑えたい場合には、法務局保管制度を活用した自筆証書遺言も有力な選択肢です。

公正証書遺言の作成手順

公正証書遺言は、自分で直接公証役場へ行く方法と、司法書士などの専門家に依頼する方法があります。ここでは自分で直接公証役場へ行く方法の流れを解説します。

第一段階:財産目録の作成と相続人・遺留分の確認

最初に、現在保有する財産を網羅的に洗い出し、「誰に」「どの財産を」「どのような割合で」承継させるかの原案を策定します。不動産・預貯金・有価証券・負債(借入金)も含めて正確に把握する必要があります。同時に、法定相続人を確定させます。

遺留分(いりゅうぶん)について

この段階で極めて重要となるのが「遺留分」という概念です。遺留分とは、一定の法定相続人に対して、遺言の内容にかかわらず法律上最低限保障されている遺産の取得割合を指します。特定の相続人や第三者に「全財産を譲る」と遺言しても、遺留分権利者は侵害された遺留分相当額の金銭を請求(遺留分侵害額請求)できます。

法定相続人の組み合わせ 全体の遺留分割合 各相続人の遺留分(例)
配偶者のみ 2分の1 配偶者:2分の1
配偶者と子 2分の1 配偶者:4分の1、子全員で:4分の1
子のみ 2分の1 子全員で:2分の1
直系尊属(父母等)のみ 3分の1 直系尊属全員で:3分の1
兄弟姉妹のみ なし なし
兄弟姉妹には遺留分がない 兄弟姉妹には遺留分が存在しないため、たとえば「長年介護をしてくれた妻に全財産を相続させる」という遺言を作成した場合、亡夫の兄弟姉妹から財産の分配を要求されることはありません。遺言作成時は、遺留分を事前に計算し、侵害しない範囲で分配するか、侵害額請求に備えて代償金となる生命保険を手配するなどの対策が、死後の紛争を防ぐ鍵となります。

第二段階:必要書類の収集

公正証書遺言を作成するためには、遺言者の身元や財産の裏付けとなる公的な証明書類を収集し、公証役場へ提出する必要があります。

必要書類 対象 取得先・費用目安 備考
印鑑登録証明書
(発行3ヶ月以内)
遺言者本人 市区町村役場(約300円) 顔写真付き身分証で代用可能な場合あり(作成当日の持ち物は公証役場の案内に従ってください)
戸籍謄本 遺言者本人 本籍地の市区町村(450円)
戸籍謄本等 相続人(財産を受け取る親族) 本籍地の市区町村(450円) 遺言者との続柄を証明するために必要
住民票 受遺者(法定相続人以外の人) 市区町村役場(約300円) 友人や内縁の妻などへ遺贈する場合に必要(住所を確認できる他の資料が認められる場合あり)
登記事項証明書
(登記簿謄本)
不動産(土地・建物) 法務局(約600円) 正確な地番や家屋番号の特定に必須
固定資産税評価証明書
または納税通知書
不動産(土地・建物) 市区町村の税務課(約300円) 公証人手数料算定の基準額となる
通帳のコピー等 預貯金・有価証券等 各金融機関 金融機関名、支店名、口座番号が特定できる資料
戸籍の取り寄せについて 本籍地が遠方でも、本人・配偶者・直系親族による請求であれば「広域交付」により最寄りの市区町村窓口で戸籍を取得できる場合があります(2024年3月開始。代理請求や一部の戸籍は対象外のため、その場合は本籍地への郵送請求となり取得まで1〜2週間程度かかることがあります)。相続関係が複雑な場合には、改製原戸籍(750円)や除籍謄本(750円)の取得が必要になるケースもありますので、計画的に収集を進めましょう。

戸籍などの必要書類の収集から司法書士へ依頼する(当センターのサポート内容)

第三段階:公証役場への相談と面談

資料が揃ったら、最寄りの公証役場に連絡し、公証人との事前面談を予約します。面談では関係書類を持参し、「誰に何を相続させたいか」という希望を伝えます。公証人がその希望を法的に問題のない正確な文章(遺言原案)に仕上げていきます。

不動産の表記方法や、指定した相続人が遺言者より先に亡くなった場合に備えた「予備的遺言」の条項なども専門的見地から調整されます。通常、内容が確定するまでにメール・FAX・電話等で複数回のやり取りが発生します。必要書類が揃ってから作成当日までの期間は、公証役場の予約状況や調整の回数にもよりますが、おおむね2週間〜1か月程度が目安です。

⚠ 公証役場の相談には範囲がある 公証人は、遺言者の希望を法的に有効な文案へ整えるための助言を行い、公証業務に関する相談は無料です。ただし、相続税の試算や節税策、相続人間の利害調整、「どの分け方がご家族にとって最適か」といった踏み込んだ提案は公証人の役割ではありません。この部分については、事前に専門家へ相談しておくことが重要です。

第四段階:証人の選定と手配

公正証書遺言の作成には、法律で2名以上の証人の立ち会いが義務付けられています。証人は作成当日に同席し、公証人が正確に遺言を筆記しているかを確認する重要な役割を担います。

ただし、民法第974条の規定により、以下の者は証人になることができません。

  • 未成年者
  • 推定相続人(配偶者や子など)
  • 受遺者(遺言で財産を受け取る第三者)
  • 上記の配偶者および直系血族(親や子)
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記および使用人

親族の多くが排除されるため、利害関係のない友人や知人に依頼することも考えられますが、遺言の内容というプライバシーを知られることへの抵抗から、依頼をためらうケースがほとんどです。

適当な証人が見つからない場合は、公証役場に相談して紹介してもらうことも可能です(証人への日当額は公証役場によって異なります)。司法書士等の専門家に依頼する場合は、証人の手配まで対応してもらえることが多いため、依頼時に人数・費用を確認しましょう。なお、ご自身で証人を手配する場合は、証人予定者の氏名・住所・生年月日・職業を公証役場に伝えます。

第五段階:作成当日の手続き

原案が確定し、作成日時の予約が完了したら、遺言者本人と証人2名が公証役場に出向きます。病気などで外出が困難な場合は、公証人が自宅・病院・介護施設へ出張して作成することも可能です。

1
本人確認と意思確認 遺言者が氏名と生年月日を伝え、公証人が運転免許証や印鑑証明書で本人確認を行います。同時に家族関係や遺言の意図について確認され、遺言能力の有無が判断されます。
2
遺言の口授(こうじゅ) 遺言者が証人2名の前で、遺言の内容を公証人に口頭で伝えます。病気等で発話が困難な場合は、筆談や通訳を介した手続きも法律で認められています。
3
読み聞かせと確認 公証人が公正証書の原本を読み上げ、遺言者と証人が、口授した内容と筆記された内容が一致しているか確認します。
4
署名と押印 遺言者が署名・実印で押印し、続いて証人2名が署名・認印で押印。最後に公証人が法定の方式に従って署名・職印を押すことで公正証書遺言が成立します。
※2025年10月1日以降は、公正証書の電子化に伴い、印鑑による押印に代わり「電子サイン」での手続きが原則となります。詳しくは「【2025年10月〜】公正証書がデジタル化へ」をご確認ください。
5
書類の交付と手数料の支払い 原本は公証役場で保管され、遺言者には「正本」と「謄本」が交付されます。公証人手数料を現金またはクレジットカード(決済する方ご自身の名義のカード)で支払い、全手続きが完了します。※一部の実費や証人への報酬などはクレジットカードが使えず、現金でのお支払いとなる場合があります。

病院・自宅での作成(公証人の出張)

入院中や要介護などで公証役場に出向くことが難しい場合は、公証人に病院・自宅・介護施設まで出張してもらって作成することができます。

  • 出張できるのは、公証人が所属する法務局・地方法務局の管轄区域内(多くは都府県単位。例:東京都内の病院・施設であれば東京都内の公証役場の公証人)に限られます。
  • 費用は、病床で作成する場合、遺言加算を除く基本手数料の50%加算(病床執務加算)に加え、日当(2万円、4時間以内は1万円)と交通費の実費がかかります(各種加算費用参照。適用の有無は公証役場にご確認ください)。
  • 病床での作成では、判断能力の確認のために公証人から医師の診断書の提出を求められることがあります。

原案の調整や書類収集には時間がかかるため、体調が変わる前の早めの準備が重要です。当センターにご依頼いただいた場合は、司法書士と証人が病院・ご自宅へお伺いし、公証人との出張日程の調整までサポートします(関東対応エリアを中心)。

公正証書遺言の作成費用(公証人手数料)

公正証書遺言の作成にかかる「公証人手数料」は、公証人手数料令によって全国一律に定められています。どの公証役場で作成しても基準は同じです。

手数料の算定方式は独特で、遺産の全体額に対して一括で計算するのではなく、「各相続人・受遺者がそれぞれ受け取る財産の価額」ごとに個別に手数料を算出し、全員分を合算する方式です。

公証人手数料の算定テーブル

以下は、令和7年(2025年)10月1日施行の改正公証人手数料令に基づく手数料額です。

目的の価額(受け取る財産額) 手数料額
50万円以下 3,000円
50万円を超え100万円以下 5,000円
100万円を超え200万円以下 7,000円
200万円を超え500万円以下 13,000円
500万円を超え1,000万円以下 20,000円
1,000万円を超え3,000万円以下 26,000円
3,000万円を超え5,000万円以下 33,000円
5,000万円を超え1億円以下 49,000円

財産額が1億円を超える場合は、超過額に応じて段階的に加算されます(1億〜3億円の部分は5,000万円ごとに15,000円、3億〜10億円は同13,000円、10億円超は同9,000円が加算)。

各種加算費用

加算項目 内容
遺言加算 財産総額が1億円以下の場合、基本手数料に13,000円が一律加算
出張加算
(病床執務)
病床で証書を作成する場合(病床執務)は、遺言加算を除く基本手数料が50%加算(1.5倍)。出張にはさらに日当(20,000円、4時間以内10,000円)と交通費実費が別途必要
正本・謄本の
交付手数料
【書面の場合】1枚につき300円
【電子データの場合】1通につき2,500円

手数料のシミュレーション例

計算例:財産総額1億7,000万円の場合 妻に1億円、長男に4,000万円、次男に3,000万円を相続させる場合

・妻の受取分(1億円)→ 49,000円
・長男の受取分(4,000万円)→ 33,000円
・次男の受取分(3,000万円)→ 26,000円
・合計:108,000円

※財産総額が1億円を超えているため遺言加算(13,000円)は不適用。これに正本・謄本の交付費用等を加えた金額が最終的な支払い総額となります。

※実際の手数料については公証役場の正確な計算となりますので、上記とは異なる場合があります。詳しくは公証役場への確認が必要となります。

【2025年10月〜】公正証書がデジタル化へ

これまで紙で作成されるのが当たり前だった公正証書ですが、2025年(令和7年)10月1日以降は、法務大臣の指定を受けた公証人が作成するものについて、原則として電子データで作成・保存されることになります。公正証書遺言も例外ではなく、作成方法や受け取り方が大きく変わります。

補足 保証意思宣明公正証書など、法律上紙での作成が必要な一部の手続きは引き続き紙で作成されます。また、機材の事情などにより電子データでの作成が技術的・物理的に困難な場合は、紙での作成となることがあります(遺言者が紙と電子を自由に選べる制度ではありません)。

印鑑不要!「電子サイン」の導入

ペーパーレス化に伴い、これまでの印鑑による署名・押印は不要となります。代わりに、タッチパネルやペンタブレット上でタッチペンを使って手書きする「電子サイン」を行うだけで手続きが完了するようになります。いわゆる「脱ハンコ」の流れが公正証書にも及ぶことになります。

証書の受け取り方法は3パターン

完成した電子データの公正証書(正本など)は、ご自身の環境に合わせて以下の3つの方法から受け取り方を選ぶことができます。

受取方法 内容 注意点
ダウンロード メールで届くクラウドURLからデータを直接ダウンロード セキュリティ上、アクセスできる回数や期限には制限があります(交付時の案内に従ってください)。ダウンロード後は必ず端末に保存してください
USBメモリ 自前のUSBメモリ等にデータを入れて受け取り USBメモリ等の記録媒体はご自身でご用意ください
紙(従来通り) 電子データを印刷した書面として受け取り これまで通りの方法で受け取ることも可能です

発行・交付の手数料

デジタル化に伴い、証書データの発行・交付にかかる手数料も新たに定められました。

交付形式 手数料
電子データでの発行・交付 1通につき2,500円
紙の書面での発行・交付 用紙1枚あたり300円

Web会議によるリモート作成が可能に

電子データでの作成を前提として、公証役場へ直接出向かなくても手続きができる「ウェブ会議(リモート方式)」も利用可能になります。

パソコンやWebカメラ、タッチペン等の必要機器が揃っていることに加え、本人からの申出があり、公証人がリモートでの本人確認・意思確認が可能と認めた場合に利用できます。遺言では本人の真意と判断能力の確認が特に重要なため、利用の可否は慎重に判断され、対面での作成となる場合もあります。

電子化のメリットまとめ 公正証書の電子化により、「脱ハンコ」「Web会議の活用(公証人が認めた場合)」「データでの受け取り」といったメリットが生まれ、よりスムーズで現代的な手続きへと変わります。ただし、遺言の内容を法的に万全なものにするためには、引き続き司法書士等の専門家のサポートが重要です。

公正証書遺言を司法書士に依頼する意義

公正証書遺言の作成は自分で行うことも可能ですが、必要書類の収集にかかる労力、公証人との専門的な文案調整、証人の手配といったハードルの高さから、司法書士など法律の専門家にサポートを依頼するのが一般的です。

司法書士が関与するメリット

確実な法的効力と紛争予防

司法書士は、単に希望を文章化するだけでなく、将来の遺産分割協議の難航や遺留分侵害額請求トラブルのリスクを多角的に予測します。付言事項(法的効力はないが家族への思いを記すメッセージ)の活用や予備的条項の組み込みなど、紛争を防ぐための実務的なアドバイスを提供します。

煩雑な書類収集の代行

遠方の役所からの戸籍謄本の取り寄せ、登記事項証明書・固定資産税評価証明書の取得など、平日日中に役所へ出向く必要がある書類収集を包括的に代行します。遺言者の時間的・身体的負担は劇的に軽減されます。

証人の手配と守秘義務の遵守

必須となる証人2名について、司法書士自身やその事務所スタッフが守秘義務を厳格に遵守した上で務めるのが一般的です。遺言内容が外部に漏洩する心配がなく、証人探しのストレスから解放されます。

遺言執行者への就任

遺言者の死亡後に、預貯金の解約・払い戻しや不動産の名義変更など、遺言内容を具体的に実現する手続きを行う権限を持つのが「遺言執行者」です。遺言書の中で司法書士を遺言執行者に指定しておけば、残された家族は煩雑な手続きから解放され、第三者である専門家が遺言の内容に沿って迅速に遺産を分配することが可能です。

遺言執行者がいると安心な理由 遺言の内容や金融機関の取扱いによっては、遺言執行者がいないと相続人全員の協力が必要になる手続きがあり、一人でも非協力的な相続人がいると滞ることがあります。遺言執行者がいれば、遺言の執行に必要な権限を持つため、手続きの窓口を一本化してスムーズに進められます。

遺言執行者について詳しくはこちら

専門家ごとの費用相場と特徴

専門家の種類 遺言書作成サポート
報酬相場
遺言執行報酬の相場 特徴
司法書士 10万円〜20万円程度 遺産総額の1〜3%程度 不動産登記の独占業務資格を持つ。遺言作成から死後の相続登記まで一貫して対応可能。
弁護士 20万円〜50万円以上 遺産総額の1〜3%+着手金等 既に深刻な対立がある場合や、訴訟・調停に発展しそうな事案に強みを持つ。
行政書士 5万円〜20万円程度 事務所により異なる 遺言書の文案作成をサポートする書類作成の専門家。不動産の相続登記(登記申請の代理)は業務範囲外のため、不動産を含む場合は別途司法書士への依頼が必要。

専門家に依頼した場合、基本報酬に加えて、必要書類の取得実費(数千円~10,000円程度)などの実費も必要です。なお、専門家報酬は自由化されており、業務範囲や事務所によって大きく異なります。上記はあくまで一般的な目安です。

当センターの公正証書遺言サポート費用(165,000円税込)を見る

司法書士に165,000円(税込)で何を頼めるか(当センターの例)

「司法書士に頼むと、具体的にどこまでやってもらえるのか」を、当センターの公正証書遺言サポート(定額165,000円・税込)を例に整理しました。

内容料金に含まれる?
遺言内容・分け方の相談、遺留分のチェック○ 含まれる
遺言原案(文案)の作成○ 含まれる
戸籍謄本・登記事項証明書・評価証明書などの収集○ 含まれる(取得実費は別)
公証人との文案調整・作成日の予約○ 含まれる
証人2名の立ち会い(守秘義務あり)○ 含まれる(追加費用なし)
作成当日の同席サポート○ 含まれる
公証人手数料× 含まれない(財産額に応じた実費・全国一律の基準)
遺言内容の決定・作成当日のご本人の出席× ご本人にしかできません(代理不可)
遺言執行者への就任(死後の手続きの実行)△ 別途(遺言執行 基本料500,000円+税)
あなたに合った進め方(2つの選択肢)

関東にお住まいで、対面で相談しながら確実に作りたい方
千代田区・東京で公正証書遺言の作成を司法書士に相談する(165,000円税込)

遠方の方・まず費用を抑えたい方
自筆証書遺言+法務局保管制度(3,900円)の使い方を確認する

司法書士に依頼した場合の作成の流れ

司法書士に依頼した場合の公正証書遺言書作成の流れは、大きく3つの段階に分かれます。

1
事前準備 誰に何を相続させるかを具体的に考え、相続人や財産の情報を整理します。財産目録の作成や、本人確認資料(発行後3か月以内の印鑑登録証明書と実印、または運転免許証などの顔写真付き公的身分証明書等。必要書類は公証役場にご確認ください)の準備を行います。この段階から司法書士のサポートを受けることも可能です。
2
司法書士との打ち合わせ 遺言者の意向を丁寧にヒアリングし、法的な問題がないか、遺留分を侵害していないか等を確認。必要に応じて代替案やメリット・デメリットを提案し、納得できるまで修正を重ねます。必要書類の収集も司法書士が代行します。
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公証役場で遺言書作成 司法書士が公証人と事前に内容を調整した上で、遺言者が公証役場に出頭。公証人の面前で遺言内容を確認し、署名・押印します(2025年10月以降、法務大臣の指定を受けた公証人による作成では原則として電子サインで行い、紙で作成する例外的な場合に署名・押印します)。証人2名は司法書士や事務所スタッフが対応するのが一般的です。完成後、原本は公証役場に保管され、正本・謄本が交付されます。
公正証書遺言作成の流れイメージ

2024年相続登記義務化と公正証書遺言の関係

公正証書遺言の作成において特に司法書士が選ばれる最大の理由は、不動産登記に関する高度かつ独占的な専門性を有している点にあります。

相続登記の義務化とは

2024年(令和6年)4月1日より、これまで任意だった不動産の「相続登記(名義変更)」が法律によって完全に義務化されました。この改正の背景には、所有者が亡くなった後も登記が放置され、真の所有者が不明になる「所有者不明土地問題」があります。

改正法により、不動産を相続で取得したことを知った日から原則3年以内に相続登記の申請が必要で、正当な理由なく怠った場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続登記を放置するリスク

過料以上に深刻なのが、登記放置による実務上のリスクです。

  • 名義変更をしなければ、その不動産を売却も担保に入れることも一切できない
  • 「数次相続」が発生し、法定相続人が数十人にまで膨れ上がる可能性がある
  • 全相続人を探し出し、全員の実印・印鑑証明書が必要になる
  • 一人でも認知症・行方不明・協力拒否の場合、手続きが完全に停止する
  • 最終的に家庭裁判所での調停が必要になり、解決まで数年・莫大な費用がかかる

公正証書遺言があれば相続登記が劇的に簡単に

こうした事態を防ぎ、義務化された相続登記をスムーズに完了させる最善策が、公正証書遺言の作成です。

司法書士は、法務局での登記申請が一発で受理されるよう正確な文言を遺言書に反映させます。たとえば、法定相続人に不動産を承継させる場合は「遺贈する」ではなく「相続させる」という文言を用いる必要があります。「遺贈する」とした場合、登記手続きで他の相続人の協力が必要になるなどの不利益が生じ得ます。

公正証書遺言による相続登記のメリット 「この不動産は長男に相続させる」という法的に正確な公正証書遺言があれば、遺言者の死亡後、長男は他の相続人の実印や印鑑証明書を一切集めることなく、遺言書と最低限の戸籍謄本類だけで、単独かつ速やかに相続登記を完了できます。

司法書士に遺言の作成段階から関与を依頼することは、将来の「出口(不動産の名義変更)」まで見据えた一貫したサポートにつながり、残されるご家族への大きな配慮となります。

遺言書がある場合の相続登記の必要書類について、詳しくは以下のページをご覧ください。

遺言書がある場合の相続登記の必要書類

公正証書遺言に関するよくある質問

公正証書遺言は誰でも作れますか?
原則として15歳以上で意思能力を有する方であれば誰でも作成できます。ただし、認知症などで判断能力がない状態の場合は作成できません。成年被後見人の場合は、医師の診断を受け、意思能力が回復していることの確認が必要です。軽度の認知症等で判断能力に波がある場合でも、公証人が医師の診断書や事前面談を通じて「作成時点で遺言能力がある」と判断すれば作成可能です。
公正証書遺言に有効期限はありますか?
法的に有効に成立した遺言書に「有効期限」は存在しません。作成から10年・20年以上経過しても、遺言者が亡くなった時点から効力が発生します。また、遺言公正証書の原本は、遺言者の死亡後50年、証書作成後140年または遺言者の生後170年間、公証役場で保存される取扱いとなっています。
遺言書の内容を変更・書き直しできますか?
いつでも自由に遺言を撤回し、新しい遺言書を作成して書き直すことができます。複数回作成した場合、内容が矛盾する部分は「新しい遺言書が古い遺言書を撤回した」ものとみなされ、常に最新の遺言書が優先されます。なお、公正証書遺言を撤回するために再度公正証書を作成する必要はなく、形式要件を満たした自筆証書遺言で撤回することも法的には可能です。
家族に内緒で作成できますか?
可能です。公正証書遺言を作成した事実や内容は、遺言者の生存中、公証人・証人・依頼した専門家以外に知られることはありません。公証人や司法書士等の専門家には法律上・職務上の厳格な守秘義務があり、推定相続人等からの照会にも回答されません。なお、一般の方に証人を依頼する場合は、秘密を守ってもらえる信頼できる方を選ぶことが大切です。
公正証書遺言はどこで作成できますか?
全国各地の公証役場で作成できます。事前に連絡して予約を取ると良いでしょう。高齢や病気で公証役場に出向くのが難しい場合は、出張サービスを受けることも可能です。公証役場の所在地は、日本公証人連合会のホームページで確認できます。
公証役場一覧|日本公証人連合会
公正証書遺言はどのように保管されますか?
2025年10月以降に法務大臣の指定を受けた公証人が作成する公正証書は、原則として電子データが原本として厳重に保存されます(それ以前に作成された紙の原本は公証役場で保管され、電磁的記録化による二重保存も行われています)。遺言者には作成時に「正本」と「謄本」が交付されます。遺言者の死亡後、相続人は公証役場に謄本等を請求することができます。
公正証書遺言は絶対に無効にならないのですか?
公証人が作成するため形式不備で無効になるリスクは非常に低いですが、絶対に無効にならないわけではありません。遺言者の意思能力が欠如していた場合や、遺言内容が法律に違反する場合などは無効となる可能性があります。リスクを最小限に抑えるためにも、専門家のサポートを受けて作成することが重要です。
遺言内容に異議を唱えられたらどうなりますか?
遺言内容に異議がある場合、まずは家庭裁判所の調停などで話し合い、解決しないときは遺言無効確認訴訟(民事訴訟)で遺言の効力を争うことがあります。遺留分侵害額請求は、相手方への意思表示(内容証明郵便など)によって行い、争いになれば家庭裁判所の調停等を利用できます。遺言が無効と判断されればなかったものとして扱われ、遺留分侵害が認められれば侵害額の支払い義務が生じます。こうした場合は弁護士に相談し、適切な対応をとることが重要です。
証人は誰がなれますか?
未成年者、推定相続人、受遺者、およびこれらの配偶者や直系血族は証人になれません。司法書士等の専門家に依頼する場合は証人の手配まで対応してもらえることが多く、見つからない場合は公証役場で紹介を受けることも可能です(日当額は公証役場・依頼先によって異なります)。
病院や自宅に来てもらって作成できますか?
可能です。遺言者が公証役場に出向けない場合、公証人が病院・自宅・介護施設へ出張して作成できます。出張は公証人が所属する法務局・地方法務局の管轄区域内(多くは都府県単位)に限られます。病床で作成する場合は遺言加算を除く基本手数料の50%が加算され、日当(2万円、4時間以内は1万円)と交通費実費もかかります。判断能力の確認のため、医師の診断書を求められることがあります。

まとめ

公正証書遺言は、遺言者にとって最も安全で確実な遺言方法です。専門家である公証人が作成に関わるため形式不備のリスクは極めて低く、原本は公証役場に保管されるため紛失や改ざんの心配もありません。家庭裁判所の検認手続きも不要で、相続発生後すぐに手続きを進めることができます。

作成には公証人手数料や証人の手配といった一定の費用が伴いますが、相続開始後の紛争予防効果、検認手続きの免除、そして2024年に義務化された相続登記への速やかな移行を考慮すれば、その事前投資の価値は計り知れません。

特に遺産に不動産が含まれている場合や、将来の家族関係に配慮が必要な場合には、遺言作成から死後の相続登記まで一貫して対応できる相続登記の専門家である司法書士への相談が合理的かつ有効です。

遺言書の作成は、単なる財産の分配手続きではなく、残される家族が余計な手続きや争いに巻き込まれることなく前を向いて歩んでいけるための道標です。ご自身の状況や財産背景を踏まえ、公正証書遺言の活用と専門家の支援を検討されることをおすすめいたします。

この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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