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遺言書の書き方|自筆で無効にならない要件・文例を司法書士解説


《この記事の監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら

最終更新日:2026年2月24日
 

「自分で遺言書を書きたい」と思っても、民法の要件を満たしていないと無効になり、不動産の名義変更(相続登記)で使えないケースが多発しています。本記事では、自筆証書遺言の正しい書き方・無効になる典型例・相続登記で使える文例・法務局の保管制度・検認手続きまで、相続登記を専門にする司法書士が見本付きで解説します。公正証書遺言との比較や費用の目安も掲載しています。

自筆証書遺言と不動産の名義変更(相続登記)

次世代への財産の引き継ぎを考える上で、不動産の名義変更(相続登記)は避けて通れない重要な手続きです。遺言の種類の中でも、手軽に作成できる方式として広く知られているのが「自筆証書遺言」です。

自筆証書遺言は、遺言者本人が紙とペンさえあれば、いつでもどこでも自分の意思だけで作成できます。また、自分だけで作成する場合は公証人手数料や証人への日当などの外部費用がかからないため、経済的な負担を最小限に抑えられるというメリットがあります。

しかし、手軽に作成できるがゆえに、法的知識のないまま独自に作成してしまい、致命的な形式不備が生じるケースが非常に多いのも事実です。遺産の中に不動産が含まれている場合、遺言書の記載内容は、相続登記が実務上スムーズに通るかどうかに大きく影響します。

⚠ 遺言書に不備があるとどうなる?

日付の記載漏れがある自筆証書遺言は、方式要件を欠き無効となる可能性が高くなります。不動産の特定が不十分な場合は、登記申請時に補正や追加資料を求められ、内容によっては遺言だけでは名義変更できないこともあります。遺言書が無効と判断されれば、相続人全員による遺産分割協議を改めて行う必要が生じ、遺言者が意図していた財産配分が覆されてしまいます。

本記事では、不動産実務と相続登記に精通する司法書士の視点から、自筆証書遺言の法的要件・無効となる典型事例・正しい文例・法務局の保管制度・死後の検認手続きまで、網羅的に解説いたします。

遺言が有効となるために押さえるべき要件(民法第968条)

自筆証書遺言が法的効力を持つには、民法第968条に定められた要件をすべて満たさなければなりません。これらの要件は、遺言者の死後にその意思の真正を客観的に担保し、偽造や変造を排除するための手続き的保障です。

「全文自書」が原則──財産目録だけはパソコン作成も認められます

最も基本的な要件は、遺言者が遺言書の全文を「自書(自筆で書くこと)」しなければならないという原則です。内容・日付・氏名のすべてを遺言者自身の手で書く必要があります。

⚠ 自筆証書遺言として無効になる作成方法

パソコンやスマートフォンで本文を作成したもの、第三者が代筆したもの、ビデオレターや録音データだけで残したものは、自筆証書遺言としては無効です。自筆証書遺言として残す場合は、本文・日付・氏名を遺言者本人が自書する必要があります。

財産目録に限り自書が不要に(法改正による特例)

民法改正により、遺言書本文に添付する「財産目録」に限り、自書の必要が緩和されました。現在では以下の方法が認められています。

  • パソコン(エクセル・ワード等)で作成した財産一覧表
  • 金融機関の通帳のコピー(口座の特定に足りる情報が確認できる形で整理してください)
  • 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)のコピー
財産目録の注意点

パソコン等で作成した財産目録を添付する場合、すべてのページに遺言者本人の署名と押印が必要です。両面に印刷した場合は、各ページ(各面)ごとに署名押印する運用が安全です。署名押印のないページは、そのページの財産目録としての効力が否定されるおそれがあり、結果として目録に頼った財産の特定ができず、その財産について遺言どおりに手続きできないことがあります。

「吉日」と書くと遺言全体が無効に──日付の正しい書き方

作成日の正確な記載は、遺言能力の有無を判断し、遺言者の最終的な意思を特定するために不可欠です。

記載方法 有効・無効 理由
「令和○年○月○日」 有効 特定の日が明確に識別できる
「西暦○○○○年○月○日」 有効 特定の日が明確に識別できる
「令和○年○月吉日」 無効 特定の日が確定できない

「吉日」のような曖昧な記載は、それだけで遺言書全体が完全に無効となります。手紙や挨拶状ではよく使われる表現ですが、遺言書では絶対に使用しないでください。

複数の遺言書がある場合

生涯にわたり複数の遺言書を作成すること自体は、法律上まったく問題ありません。古い遺言と新しい遺言の内容が矛盾する場合は、その矛盾する部分に限り、最も新しい日付の遺言書が優先されます。日付の正確な記載は、どの遺言を執行すべきかを決定するための絶対的な基準となります。

署名はフルネーム、押印は実印を使うべき理由

遺言書の末尾には、遺言者本人の署名と押印が必須です。

署名について

法律上はペンネームや氏のみでも有効とされる判例はありますが、実務上は戸籍上のフルネームを記載することが不可欠です。法務局で相続登記を行う際、遺言書の署名と戸籍の氏名が一致しないと、同一人物であることを証明する追加書類の提出を求められ、手続きが煩雑になります。

押印について

押印がない自筆証書遺言は、原則として方式要件を欠き無効です。印影が不鮮明な場合も有効性が争われる原因になり得ます。法律上は認印でも有効ですが、市区町村に印鑑登録された「実印」の使用が、司法書士をはじめとする専門家の共通した推奨事項です。実印を使用することで、遺言の真正性を巡る争いが生じた際の証拠力が格段に高まります。押印は鮮明に行うのが安全です。

書き間違えたら、最初から書き直すのが一番確実です

一般ユーザーが最も陥りやすく、無効リスクが最も高いのが文字の書き間違いを修正する場面です。日常的な文書では修正液や二重線で訂正しますが、自筆証書遺言ではこのような簡易な訂正方法は一切認められていません。

民法が定める訂正の方式
  1. 間違えた箇所を二重線で消去し、正しい文言を書き入れる
  2. 訂正箇所に遺言書の押印と同一の印鑑で押印する
  3. 欄外の余白に「本行において○字削除、○字加入」と具体的に付記する
  4. そこに改めて遺言者が署名する

この方式を誤ると、訂正部分の効力が否定され、原文のまま解釈されることがあります。その結果、条項が不明確になれば執行不能の原因にもなります。

✅ 実務上のベストアドバイス

書き間違いが生じた場合は、訂正のルールに従って修正を試みるよりも、新しい用紙を用意して最初から全文を書き直すことが最も安全で確実な方法です。

実務で実際に見てきた「遺言が使えない」典型的なケース

形式的要件をかろうじて満たしているように見えても、内容の不備や作成時の状況によって遺言が無効・執行不能となるケースは数多く存在します。

夫婦連名の遺言は法律上無効です

夫婦や兄弟姉妹が1枚の用紙に連名で遺言を記載する「共同遺言」は、民法第975条により完全に無効です。

この規定の背景には「遺言の撤回の自由を保護する」という重要な法理があります。2名以上が共同で遺言を作成すると、一方が撤回しようとした際に他方の遺言にも影響が及び、撤回の自由が不当に制限されてしまうからです。

✅ 夫婦で同じ内容の遺言を残したい場合

夫と妻がそれぞれ別々の用紙を使い、完全に独立した2通の遺言書として各自が作成する必要があります。

遺言書を偽造・変造した場合のリスク

他人が筆跡を真似て作成した偽造の遺言書や、作成後に第三者が勝手に書き換えた変造遺言書は当然に無効です。さらに、民法の規定により、遺言書を偽造・変造した者、自分に不利な遺言書を破棄・隠匿した者は「相続欠格事由」に該当し、相続権を失う可能性があります

「任せる」「一任する」では名義変更できません

司法書士の実務現場で頻繁に見受けられるのが、曖昧な日常用語を使ったことで名義変更手続きが不可能になるケースです。

よくある曖昧な表現 問題点
「長男に自宅不動産の処分を任せる」 所有権移転の意思なのか、管理の委託なのか判然としない
「財産の管理はすべて妻に一任する」 「一任する」が所有権移転を意味するか不明確

登記実務では、権利の変動は明確な法的根拠に基づいて行われなければなりません。このような解釈の余地を残す遺言書は、登記官から「所有権移転の意思が明確ではない」として申請を拒絶される可能性が極めて高くなります。

不動産の名義変更を確実に実行させるには、「誰に」「何を」「どうする(相続させる・遺贈する等)」を一切の疑義が生じない法律用語で記載しなければなりません。

司法書士が教える遺言書の正しい書き方と文例

自筆証書遺言書のサンプル

遺言書作成では、対象となる財産と受け取る人物を正確に特定することが不可欠です。以下に、実務上頻出する状況を想定した実践的な文例を紹介します。

全財産を配偶者や子供に相続させたいとき

【文例】全財産を配偶者に相続させる場合

遺言者は、遺言者が有するすべての財産を、遺言者の妻・上杉花子(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。

このように記載すれば、自宅不動産・預貯金・有価証券に加え、遺言作成時には存在しなかった将来取得する財産まで、漏れなく承継させることが可能です。

受取人の特定方法

単に「妻に」「花子に」と書くのではなく、続柄(妻)+氏名(上杉花子)+生年月日(昭和○○年○○月○○日生)を記載いただくとより確実です。

「もし先に亡くなったら?」に備える予備的遺言

実務上極めて重要でありながら、一般の方が見落としがちなのが「予備的遺言」です。

「全財産を妻に相続させる」という遺言を作成した場合、万が一、妻が遺言者よりも先に亡くなってしまうと、その条項は効力を失います。そうなると、遺言書があるにもかかわらず、遺産分割協議が必要となってしまいます。

【文例】予備的遺言の記載

ただし、妻花子が遺言者より先又は遺言者と同時に死亡した場合は、その有するすべての財産を、遺言者の長男・上杉一郎(昭和○○年○○月○○日生)に相続させる。

この一文を加えるだけで、不測の事態にも遺言者の意向に沿った承継先が確保されます。

お墓・仏壇の承継と、相続人以外への遺贈

墓地・墓石・仏壇・位牌といった祭祀財産は一般の相続財産とは別扱いで、遺産分割の対象外です。特定の者に承継させたい場合は、遺言で指定できます。

【文例】祭祀承継者の指定

第2条 遺言者は、上杉家の祭祀承継者を長男・上杉一郎(昭和○○年○○月○○日生)に指定し、祖先の祭祀を主宰させる。

相続人以外への財産の承継(遺贈)

相続人となる人に対しては「相続させる」、相続人ではない人(事実婚のパートナー・息子の妻・代襲相続人ではない孫など)や法人・団体に対しては「遺贈する」を使い分けることが重要です。

【文例】法人・団体への寄付

第3条 遺言者は、難病研究に役立てるため、遺言者名義の○○銀行○○支店の定期預金(口座番号○○○○)の全額を、公益財団法人ABC(東京都○○区○○町○丁目○番○号)に遺贈する。

不動産は「住所」ではなく「登記簿の表記」で書いてください

法務局での相続登記を確実に完了させるためには、不動産を登記事項証明書(登記簿謄本)の記載と一言一句違わずに表記するのが理想です。

⚠ 住所表示で書いてはいけません

住所(住居表示)の「〇丁目〇番〇号」ではなく、登記簿上の「所在」「地番」「地目」「地積」(建物の場合は「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」)を正確に記載してください。

遺言執行者を決めておくと手続きがスムーズに進みます

名義変更手続きをスムーズに進めるうえで不可欠なのが「遺言執行者」の指定です。遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為を行う法的権限を持つ人物です。

【文例】遺言執行者の指定

第4条 遺言者は、本遺言の遺言執行者として、長男・上杉一郎(あるいは司法書士〇〇〇〇)を指定する。

遺言執行者の指定がない場合、金融機関では相続人全員の同意書・実印・印鑑証明書の提出を求められるケースが多くあります。法務局で行う相続登記では、遺言が「相続させる」内容であれば受取人が単独で申請できることが多い一方、相続人以外への遺贈や遺言者の住所変更登記が未了のケース等では、相続人全員の協力または遺言執行者の関与が必要になります。遺言執行者を指定しておけば、相続人全員の協力が得られない場面でも執行者が手続きを担い、実務を前に進めやすくなります。

「なぜこの配分にしたのか」を付言事項に残しておく

特定の相続人に財産を集中させる遺言は、他の法定相続人の「遺留分(法律上最低限保障される遺産取得割合)」を侵害する可能性があります。遺留分を侵害する遺言は直ちに無効にはなりませんが、「遺留分侵害額請求」という金銭トラブルに発展する可能性があります。

このリスクを軽減する有効な手段が、遺言書の最後に記載する「付言事項(ふげんじこう)」です。

✅ 付言事項のポイント

付言事項に法的な強制力はありませんが、「なぜこのような財産配分にしたのか」という理由や感謝の気持ちを自らの言葉で綴ることで、他の相続人の感情的な反発を和らげ、遺留分侵害額請求を思いとどまらせる事実上の紛争抑止効果が期待できます。

法務局の保管制度を使えばリスクは大幅に減ります

法務局の遺言書保管制度

自筆証書遺言には、従来から自宅保管に伴う「未発見」「紛失」「偽造・改ざん」という深刻なリスクがありました。この課題を解決するため、2020年(令和2年)7月より「自筆証書遺言書保管制度」が開始されています。

この制度を利用すると、法務局が遺言書を厳重に保管し、保管申請時に形式面(自書・日付・署名押印・目録の署名押印等)のチェックが受けられるため、「形式不備による無効」のリスクが軽減されます。ただし、内容面(不動産の特定の十分性、文言の解釈余地、遺留分問題等)まで担保されるわけではありません。さらに、死後の家庭裁判所での検認手続きが不要になるという大きなメリットもあります。保管手数料は1件わずか3,900円です。

比較項目 自宅保管 保管制度利用 公正証書遺言
形式要件の確認 なし(自己責任) あり(法務局担当官) あり(公証人が作成)
偽造・紛失リスク 極めて高い なし なし
裁判所の検認 必要 不要 不要
死亡後の通知 なし あり(指定者通知等の制度あり) なし(検索制度あり)
主な費用 無料 3,900円 数万円〜十数万円以上

相続が起きた後の流れ──検認から名義変更まで

遺言者が亡くなった後の手続きは、遺言の保管方法によって大きく異なります。この段階での対応を誤ると、手続きの大幅な遅延や法的ペナルティにつながる可能性があります。

まず必要になる家庭裁判所の「検認」手続き

家庭裁判所での検認手続き

自宅等で保管されていた自筆証書遺言を発見した場合、相続人は遅滞なく被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に遺言書を提出し、「検認(けんにん)」の手続きを経なければなりません(民法第1004条)。

検認とは、遺言書の存在と現在の状態(日付・署名の有無・加除訂正の状況など)を裁判所が公式に確認・記録する「証拠保全手続き」です。

よくある誤解

検認は証拠保全が目的であり、「遺言書が有効か無効かを判断する手続きではありません」。検認を経ても、日付が欠落している遺言書が有効になるわけではありません。

⚠ 封印のある遺言書の取り扱い

封印のある遺言書は、家庭裁判所の検認期日に相続人等の立会いのもとでのみ開封できます。自宅で勝手に開封してはいけません。意図的に検認を怠ったり、勝手に開封した場合は5万円以下の過料(行政罰)が科される可能性があります。

なお、法務局の保管制度を利用している場合は、この検認手続きが不要となります。相続人の時間的・精神的負担を大幅に軽減できる点は大きなメリットです。

法務局での登記申請──遺言書の内容が厳しく審査されます

検認(または保管制度利用の場合は遺言書情報証明書の取得)を終えた後、いよいよ不動産の名義変更(相続登記)の手続きに進みます。この段階で、遺言書の記載内容は法務局の登記官に厳格に審査されます。

「相続させる」(相続人への承継)旨が一義的に明確な場合は、その相続人が単独で登記申請できることが多いです。以前は「遺贈」の登記は受遺者と相続人全員の共同申請が原則でしたが、令和5年4月の法改正により、相続人に対する遺贈は単独で登記申請ができるようになりました。一方、相続人以外への遺贈や、遺言者の住所変更登記が未了のケースでは、遺言執行者の関与が登記実務上ほぼ不可欠です。遺言執行者を指定しておけば、相続人全員の協力が得られない場面でも手続きを前に進めやすくなります。

しかし、記載内容に不備があったり解釈の余地が生じると、遺言による単独申請は認められず、相続人全員による遺産分割協議書の提出を求められる可能性があります。連絡が取れない相続人や認知症の相続人がいる場合は、不在者財産管理人や成年後見人の選任など、長期かつ高額な手続きが必要となることがあります。

✅ 専門家による遺言書の重要性

専門家の目で精緻に作成された自筆証書遺言は、こうした実務上のリスクを抑え、残されたご家族の負担を軽減するための有力な選択肢です。

自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらを選ぶべきか

自筆証書遺言の作成を検討する際、必ず比較検討されるのが「公正証書遺言」です。ここでは「費用」「無効リスク」「手続きの煩雑さ」の3つの軸で違いを整理し、最後にどちらを選べばよいかの判断ポイントをまとめます。

自筆証書遺言と公正証書遺言の比較一覧

項目 自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 本文・日付・氏名を自筆(財産目録のみPC可) 公証人が作成・口述筆記
証人の立会い 不要 2人必要
保管場所 自宅/法務局(保管制度) 公証役場(原本)
無効になるリスク 要件不備で無効になる例が多い 方式不備で無効になるリスクは自筆証書遺言より大幅に低い
家庭裁判所の検認 必要(法務局保管分は不要) 不要
費用の目安 0円〜3,900円 数万円〜十数万円+専門家報酬
秘密性 高い(誰にも知られない) 公証人・証人には内容を開示
変更・再作成 比較的容易 都度費用と手間が発生

公正証書遺言の費用の目安(目的の価額別)

公正証書遺言の費用は、公証人手数料令に基づいて目的の価額に応じて手数料が変動します。手数料は「財産を受け取る人ごと」に計算し、それを合算した金額が1通の遺言に対する手数料の基本となります。下表は、1人の受取人が受け取る財産の目的価額に対する手数料の目安です。

目的の価額 公証人手数料
50万円以下 3,000円
50万円超〜100万円以下 5,000円
100万円超〜200万円以下 7,000円
200万円超〜500万円以下 13,000円
500万円超〜1,000万円以下 20,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 26,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 33,000円
5,000万円超〜1億円以下 49,000円
費用の計算ポイント
  • 手数料は受取人ごとに計算して合算します。1通の遺言で2人に相続させる場合は、それぞれの受取額に対応する手数料を合計します
  • 1通の遺言公正証書における目的価額の合計額が1億円以下の場合は、全体加算として遺言加算13,000円が別途かかります
  • このほか、正本・謄本の交付手数料として用紙代数千円が加算されます
  • 総額としては4万円〜10万円程度が実務上の一般的な目安です
  • 司法書士・弁護士に文案作成や証人手配を依頼する場合は、別途10万〜15万円前後の専門家報酬が発生します

こう選べば失敗しない──自筆/公正の判断ポイント

両者の違いを押さえたうえで、どちらを選ぶべきかはご家族の状況と財産の規模・複雑さで判断します。

自筆証書遺言(+保管制度)を選んだほうがよいケース

  • 遺産内容が比較的シンプル(自宅不動産と預貯金など)
  • 家族関係が良好で、相続人間の争いが想定されない
  • 費用を抑えつつ、自身のタイミングで作成・変更したい

公正証書遺言を選んだほうがよいケース

  • 不動産が複数ある/遺産総額が多額で権利関係が複雑
  • 法定相続人以外に財産を遺贈したい
  • 相続人間に潜在的な感情の対立があり、遺言無効確認訴訟が懸念される
  • 高齢・病気で長時間の筆記が困難
✅ 迷ったときの現実的な選択肢

まず自筆証書遺言を作成し、法務局の保管制度を併用してリスクを抑える方法が、費用対効果に優れた現実的な第一歩です。財産の規模が拡大したり、家族構成が複雑になったタイミングで、公正証書遺言に切り替える運用も十分に合理的です。

遺言書の作成を司法書士に任せるメリット

自筆証書遺言は「自分で作成できる」制度ですが、法的要件の複雑さや登記実務の厳格さを考えると、法務と手続きの専門家である司法書士のサポートを受けることが、確実な名義変更を実現する最大の鍵となります。

登記の完了から逆算して遺言書を設計します

司法書士は、遺言書の「入口(作成)」だけでなく、「出口(法務局での相続登記の完了)」までを見据えたコンサルティングを提供します。

インターネット上の無料テンプレートを真似て作成した遺言書は、必ずしも法務局の登記審査を通過する水準に達していません。司法書士は対象不動産の登記事項証明書を事前に取得して、地番・家屋番号まで1文字違わず遺言書に反映させます。登記官が疑義を挟む隙をつくらない文案に仕上げることで、死後に相続人が補正や申請却下で苦労する可能性をつぶし込みます。

司法書士に依頼するメリット

  • 推定相続人の正確な調査(複雑な戸籍謄本の収集と解読)
  • 相続財産の漏れのない調査
  • 遺留分に配慮した最適な財産配分のアドバイス
  • 税理士・行政書士等と連携したワンストップサービス

専門家の報酬と「依頼しなかった場合」のコスト

専門家の種類 報酬の目安 特徴・強み
司法書士 10万円〜20万円 不動産の相続登記に直結。法務局での審査を見据えた精緻な書面作成に圧倒的な強み
弁護士 20万円〜50万円 相続人間で激しい紛争が既に発生している場合や訴訟への発展が不可避な事案に強み
行政書士 5万円〜20万円 比較的簡素で紛争性のない書面の作成に強み。ただし相続登記申請の代理は司法書士・弁護士の職域で、行政書士は登記申請を代理できません

目先の費用を惜しんで不備のある遺言書を残した結果、死後に相続人同士の紛争が生じ、裁判所での調停や訴訟に発展した場合、各相続人がそれぞれ弁護士を雇う費用は事案によっては数百万円規模に達することがあります。加えて、解決までに数年を要する精神的負担相続登記が完了するまで不動産を売却・活用できず機会損失が積み上がる経済的負担も見過ごせません。これらを考えれば、専門家への事前依頼は残されるご家族への配慮であり、合理的な選択肢といえます。

遺言書の書き方に関するよくあるご質問

遺言書は手書きでないとダメですか?

自筆証書遺言は、本文・日付・氏名を自筆で書く必要があります(民法第968条)。パソコンやワープロ、代筆で作成したものは無効です。ただし、2019年の法改正により、不動産や預貯金を一覧にした「財産目録」のみパソコン作成・通帳コピー添付が認められるようになりました(各ページに署名・押印が必要)。全文をパソコンで作成したい場合は、公正証書遺言を選択してください。

遺言書のテンプレート・見本はどこで入手できますか?

法務局のウェブサイトに自筆証書遺言書保管制度の記載例PDFが公開されています。また、本記事の「司法書士が教える遺言書の正しい書き方と文例」セクションにも、相続登記を想定した参考文例を掲載しています。ただしテンプレートをそのまま流用すると、ご家庭の個別事情(相続人の人数・不動産の特定・遺留分への配慮)とズレて後のトラブル要因になりやすいため、作成前に一度、専門家による文案チェックを受けることをおすすめします。

自筆証書遺言と公正証書遺言、費用はいくら違いますか?

自筆証書遺言は自分で書けば0円、法務局保管制度を利用しても3,900円です。一方、公正証書遺言は目的の価額に応じて公証人手数料が変動します。財産3,000万円を1人の相続人に相続させる内容であれば、公証人手数料26,000円+遺言加算13,000円の合計39,000円が基本の目安で、これに正本・謄本の用紙代(数千円)が加算されます。受取人が複数いれば、人数分の手数料を合算するため総額はさらに上がります。司法書士に文案作成や証人手配を依頼する場合は、別途10万〜15万円前後の報酬が発生します。費用だけで見ると自筆が有利ですが、「方式不備で無効になるリスク」「検認の手間」「相続人間の紛争リスク」まで含めて判断してください。

夫婦で1通の遺言書を作ることはできますか?

できません。民法第975条で共同遺言は禁止されています。夫婦であっても、それぞれが別々に遺言書を作成する必要があります。夫婦で遺言を残す場合は、お互いに内容を共有しつつも、それぞれ1通ずつ(合計2通)作成してください。連名で書いた遺言書は、内容がどれほど明確でも無効となり、相続登記にも一切使えません。

遺言書は「書いて終わり」ではありません

自筆証書遺言は、正しく活用すれば、ご家族を無用な争いや複雑な手続きから守る有力な法的手段となります。ただし、作成要件は民法で厳格に定められており、わずかな知識不足が「遺言の無効」や「登記申請の補正・却下」といった深刻な結果を招くことがあります。

近年の法改正により、財産目録のパソコン作成や法務局の保管制度が整備され、自筆証書遺言の利便性と安全性は大きく向上しました。しかし、遺言書の核となる「財産を特定し、権利を移転させる法的文言の正確性」という課題は、制度だけでは解決できません。

円滑な不動産の名義変更につなげるためには、インターネット上の情報やテンプレートだけに頼らず、相続手続きと不動産登記の専門家である司法書士の知見を活用することをおすすめします。専門家による法的チェックと法務局の保管制度を組み合わせることで、自筆証書遺言を、より安全性の高い財産承継の手段へと仕上げることができます。

この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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