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遺産分割調停の相続登記(要点まとめ)
● 調停調書だけで登記できる:戸籍一式・遺産分割協議書・印鑑証明書は原則不要です。
● 単独申請の可否は文言次第:「〜を取得する」という取得条項があれば、他の相続人の協力なしで単独申請できます。
● 提出は謄本でOK:正本ではなく調停調書の謄本で登記申請できます。
● 紛失しても再交付できる:調停をした家庭裁判所へ交付申請します(謄本は用紙1枚150円・保存期間30年)。
● 期限は遺産分割成立から3年:相続登記の申請義務があります(不動産登記法第76条の2第2項)。
遺産分割は、相続人がいったん共有した遺産について、どの財産を誰が取得するかを確定させる手続きです。まず相続人全員の協議で解決を目指し、協議がまとまらない場合は家庭裁判所の調停、調停も成立しなければ審判へと段階的に進むのが一般的です。
| 手続きの種類 | 決定の主体 | 法的性質 | 登記への影響 |
|---|---|---|---|
| 遺産分割協議 | 相続人全員 | 合意に基づく契約 | 遺産分割協議書+印鑑証明書が必要 |
| 遺産分割調停 | 相続人全員の合意(調停委員会が関与) | 調停手続内で成立する合意 | 調停調書が登記原因証明情報となる |
| 遺産分割審判 | 家庭裁判所 | 裁判所による判断 | 審判書+確定証明書が登記原因証明情報となる |
遺産分割協議が整わない場合、相続人は家庭裁判所に調停を申し立てます。調停は、裁判官と調停委員が間に入り、相続人それぞれの主張を調整しながら合意を目指すプロセスです。ここで成立した合意を記録した「調停調書」は、確定した審判と同一の効力を有するため(家事事件手続法第268条第1項)、その後の相続登記において極めて重要な役割を果たすことになります。
遺産分割協議が整わない場合は遺産分割調停となり、さらに遺産分割調停が不調となった場合は遺産分割審判となります。
遺産分割協議や遺産分割調停ではあくまで当事者の話し合いでの解決を図りますが、遺産分割審判は話し合いではなく裁判所が遺産をどのように分けるのかを決めます。審判になった場合の登記手続きの違いは、後述の「調停調書と審判書の違い」で解説します。
遺産分割調停が成立すると、その内容は相続開始の時に遡って効力を生じます(民法第909条)。これは、被相続人が死亡した瞬間から、その不動産は調停で定められた相続人の所有であったとみなされることを意味します。ただし、遺産分割前に相続持分の処分や差押えなど第三者の権利が生じている場合は、その権利を害することはできません(民法第909条ただし書)。
登記実務上、不動産が被相続人名義のままの場合、登記原因は「相続」、原因日付は調停成立日ではなく被相続人の死亡日(相続開始日)となるのが原則です。この遡及効の理解は、数次相続が発生している場合の登記申請順序を検討する上でも不可欠な視点です。
調停が成立したからといって、不動産の名義が自動的に書き換わるわけではありません。不動産を取得した相続人は、管轄の法務局に対して自ら登記申請を行う必要があります。
相続による名義変更(相続登記)の際には、通常、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍などが必要です。これは誰が相続する権利を持っているか(法定相続人か)を確認・証明するためです。
これに対し、遺産分割調停の場合は、既に調停手続きの際に相続人が確認されているため、出生から死亡までの連続戸籍で相続人を証明することは原則省略できます。また、調停調書が遺産分割協議書の代わりになるため、別途遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書を用意することも基本的に不要となります。
| 必要な書類 | 不要になることが多い書類(通常の相続登記との違い) |
|---|---|
| 登記申請書 | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍 |
| 調停調書の謄本 | 遺産分割協議書 |
| 不動産を取得する相続人の住民票 | 相続人全員の印鑑証明書 |
| 固定資産評価証明書(申請年度のもの) | 他の相続人の戸籍謄本・住民票 |
なお、調停調書の記載から被相続人の死亡日や相続関係が確認できない場合や、調書に記載された被相続人の住所・氏名が登記記録上のものと異なる場合は、死亡を証する戸籍や住民票の除票・戸籍の附票などが別途必要になることがあります。登録免許税は通常の相続登記と同じく固定資産税評価額の0.4%です(評価額が100万円以下の土地などは、令和9年(2027年)3月31日までの免税措置(租税特別措置法第84条の2の2)に該当する場合があります)。
登記申請に添付する調停調書は、正本ではなく謄本で差し支えありません。調停成立後、調停をした家庭裁判所に交付申請を行うことで取得でき、申請から1週間程度で自宅に届くのが一般的です(交付までの日数は裁判所や申請方法によって異なります)。
取得条項に基づいて相続登記を単独申請する場合、強制執行を行うわけではないため、執行文の付与も不要です。
相続による権利の移転の登記は、登記権利者(不動産を取得した相続人)が単独で申請できると定められています(不動産登記法第63条第2項)。調停調書は、この相続登記に必要な「登記原因証明情報」として、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書に代わる資料の役割を果たし、相続人の範囲を証明する戸籍一式も原則省略できます。
そのため、通常の遺産分割協議による登記のように他の相続人から書類へ押印してもらう必要は基本的にありません。調停調書で不動産を取得すると決まった相続人が、お一人で相続登記をすることが可能です。
遺産分割調停に基づく登記の最大の特徴は、一定の条件を満たせば「単独申請」が可能であるという点です。ただし、単独申請できるかどうかは調停調書の主文(条項)の文言によって決まります。調停の席で不動産の登記を見据えた文言を確認しておくことが重要です。
| 調書の文言・不動産の状態 | 登記申請の方法 | ポイント |
|---|---|---|
| 取得条項があり、被相続人名義のまま | 取得者が単独で相続登記 | 不動産登記法第63条第2項。執行文は不要 |
| 取得条項があり、法定相続分で登記済み | 取得者が単独で所有権更正登記 | 令和5年3月28日民二第538号通達(令和5年4月1日以降) |
| 給付条項(「〜に対し登記手続をする」) | 権利者が単独で申請できる余地あり | 判決による登記に準ずる扱い。引換給付・条件付きの条項は執行文等が必要となるため、文言の個別確認が必須 |
| 「登記手続きに協力する」等の曖昧な文言 | 単独申請は不可 | 共同申請によるか、条項の修正・別途の手続きが必要になる場合も |
いったん法定相続分どおりの相続登記をした後に遺産分割調停が成立した場合、令和5年4月1日以降は、持分の移転登記ではなく「所有権更正登記」により、不動産を取得した相続人が単独で申請できる扱いとなりました(令和5年3月28日民二第538号通達)。登記原因は「年月日(調停成立日)遺産分割」とし、更正登記で申請できる場合の登録免許税は不動産1個につき1,000円です。
ただし、他の相続人の持分に抵当権や差押えなどの登記が入っている場合は、利害関係人の承諾が必要になるなど、更正登記で進められないことがあります。法定相続分登記後の登記記録の状態を先に確認しましょう。
不動産を取得する代わりに他の相続人に現金を支払う「代償分割」の場合、調書に「代償金の支払いと引き換えに登記手続きをする」という文言(引換給付)が含まれることがあります。
「代償金の支払いと引き換えに登記手続きをする」という引換給付条項になっている場合は、調停調書だけでの単独申請ができず、代償金を支払ったことを証明して裁判所から執行文の付与を受ける必要があるなど、実務上のハードルが上がります。
なお、代償分割でも、不動産の取得条項と代償金の支払条項が別々に定められているだけであれば、相続登記自体は通常どおり単独申請できることがあります。調停成立前に文言を十分に確認しましょう。
調停調書を紛失・破損してしまっても、調停をした家庭裁判所に交付申請をすれば、謄本の再交付(再発行)を受けられます。
調停調書の保存期間は30年と定められており、この期間内であれば再交付の請求が可能です。
しかし、期間を過ぎると廃棄されるため取得不能となるリスクがあります。成立後は速やかに登記手続きに着手することが推奨されます。
調停が不成立となり遺産分割審判で不動産の取得者が決まった場合は、審判書の謄本に加えて「確定証明書」が必要です。審判は告知を受けた日から2週間の即時抗告期間が経過してはじめて確定するためです。確定証明書は審判をした家庭裁判所で取得できます。
これに対し調停は、成立と同時に効力が生じるため確定証明書は不要で、調停調書の謄本のみで登記申請できます。調停・審判それぞれの手続きの流れや費用については、遺産分割の協議・調停・審判の解説ページをご覧ください。
はい、再交付を受けられます。調停をした家庭裁判所に交付申請をすると、調停調書の謄本を再発行してもらえます。手数料は用紙1枚につき150円の収入印紙で、郵送での申請に対応している裁判所もあります。ただし、調停調書の保存期間は30年と定められており、期間経過後は取得できなくなるおそれがあるため、早めの手続きをおすすめします。
調停調書に「申立人○○は、別紙遺産目録記載の不動産を取得する」といった取得条項があり、不動産が被相続人名義のままであれば、不動産を取得した相続人が単独で相続登記を申請できます(不動産登記法第63条第2項)。他の相続人の実印や印鑑証明書は不要です。ただし、調停調書の文言が曖昧な場合は単独申請できないことがあります。
原則不要です。相続人の範囲は調停手続きの中で確認済みのため、通常の相続登記で必要となる被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等の添付は原則不要になります。ただし、調停調書の記載から被相続人の死亡日や相続関係が確認できない場合や、調書に記載された被相続人の住所・氏名が登記記録上のものと異なる場合は、死亡を証する戸籍や住民票の除票・戸籍の附票などが別途必要になることがあります。
調停調書自体に有効期限はなく、成立から年数が経っていても登記に使用できます。ただし、遺産分割によって不動産を取得した相続人には、遺産分割の日から3年以内に相続登記を申請する義務があります(不動産登記法第76条の2第2項)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象となり得るため、調停成立後は速やかに登記することをおすすめします。
遺産分割審判で不動産の取得者が決まった場合は、審判書の謄本に加えて「確定証明書」を添付して相続登記を申請します。審判は告知を受けた日から2週間の即時抗告期間が経過してはじめて確定するため、確定証明書が必要になる点が調停調書との大きな違いです。確定証明書は審判をした家庭裁判所で取得できます。
当センターでは、相続登記の司法書士報酬について66,000円からの3つの料金プランをご用意しています。調停調書による相続登記は戸籍収集が原則不要なため、通常の相続登記より手間が少なく済むケースもあります。物件の数や管轄法務局の数などにより費用が変わりますので、詳しくは料金プランのページをご覧ください。
遺産分割調停による相続登記は、通常の協議による登記と比べて必要書類が簡素化される一方、調停調書の文言によって手続きの難易度が大きく変わります。費用の全体像は相続登記の費用の解説ページで確認できます。調停調書の文言の精査を含め、不明な点がある場合は司法書士などの専門家にご相談ください。
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