相続人の一部が行方不明の場合の相続手続き(要点まとめ)
● 法定相続分どおりの相続登記なら全員参加不要:保存行為として相続人の一人から申請可(不動産登記法第63条第2項)。特定の相続人に集約するには遺産分割協議が必要
● 遺産分割協議が必要なら本人参加が原則:行方不明者を除外した協議書は無効
● 7年の経過を待たずに使える不在者財産管理人:所在不明の相続人に代わり管理人が遺産分割に参加(予納金30〜50万円目安・民法第25条)
● 7年以上の生死不明:失踪宣告で死亡みなし(民法第30条第1項・普通失踪)
● 危難失踪は1年で申立可能:戦災・船舶沈没・震災などの危難遭遇時(民法第30条第2項)
● 認定死亡との違い:認定死亡は官公署認定で戸籍直接記載(戸籍法第89条)、失踪宣告は家裁の審判
● 相続登記義務化(令和6年4月):3年以内の登記義務に間に合わない場合は相続人申告登記で暫定対応可
相続人の中に行方不明・生死不明の方がいると、勝手に遺産分割協議を進めることはできません。本記事では、生死不明7年で申立可能な失踪宣告と、7年の経過を待たずに検討できる不在者財産管理人の使い分けを軸に、認定死亡との違い、相続人の存在が明らかでない場合の相続財産清算人、相続登記義務化への暫定対応まで、司法書士法人を運営する当センターが実務的に整理します。
この記事の構成
- 行方不明者がいると相続が「進まない」理由
- 「行方不明」「不在者」「相続人不明」の違いと制度選択フロー
- 不在者財産管理人と失踪宣告の違い(比較表)
- 不在者財産管理人の手続き
- 失踪宣告の手続き(普通失踪7年・危難失踪1年)
- 認定死亡と失踪宣告の違い
- 相続人の存在が明らかでない・全員相続放棄の場合(相続財産清算人)
- 行方不明者がいる場合の相続登記と義務化への対応
- よくある質問(FAQ)
1. 行方不明者がいると相続が「進まない」理由
相続人が複数いる場合、不動産を誰が取得するかを決めるには、原則として相続人全員の参加と合意による遺産分割協議が必要です(民法第907条)。一人でも欠けると協議は成立しません。ただし、遺言がある場合や、法定相続分どおりの共有登記・相続人申告登記で期限対応を先行する場合は進め方が異なります。
相続人の中に行方不明・生死不明の方がいる場合、次のような問題が発生します。
- 遺産分割協議書を作れない:行方不明者を除外した協議書は無効です。仮に形式上登記が進んだとしても、後日、登記の抹消・更正や損害賠償、刑事責任の問題に発展するおそれがあります。
- 預貯金が凍結されたまま動かせない:解約・全額払戻しには全相続人の関与を求められるのが原則です。ただし葬儀費用や当面の生活費に備え、一定額については遺産分割前の払戻し制度(民法第909条の2)を利用できる場合があります。
- 不動産の名義変更ができない:法定相続分どおりの相続登記なら保存行為として他の相続人が代表して申請できますが、特定の相続人に集約する登記は協議が必要です。
- 相続登記義務化(令和6年4月施行)の3年期限が迫る:放置すると10万円以下の過料の対象となることがあります。
勝手に進めるのはNG:行方不明者の署名押印を偽造した遺産分割協議書を作成し、法務局や金融機関に提出すれば、有印私文書偽造罪・同行使罪(刑法第159条・第161条)に問われ得ます。発覚すれば登記の更正・抹消も避けられません。後述する家庭裁判所の制度(不在者財産管理人/失踪宣告)を必ず利用してください。
2. 「行方不明」「不在者」「相続人不明」の違いと制度選択フロー
「行方不明」「不在者」「相続人不明」は法律上の意味が異なります。まず用語を整理し、ケースごとに使う制度を確認します。
2-1. 用語の違い
不在者
従来の住所地・居所から離れて容易に戻る見込みがない人(民法第25条)。生死は問わない。
生死不明
行方不明のうち、生きているか死亡しているかが客観的に分からない状態。7年以上続けば失踪宣告の対象。
相続人不明
戸籍調査を尽くしても相続人の存在が確認できない、または全員が相続放棄して相続人がいなくなった状態。相続財産清算人の対象。相続人は判明しているが所在不明なだけなら、不在者財産管理人・失踪宣告の対象になる。
2-2. 4象限で見る制度選択フロー
相続人は判明している(所在不明)
不在者財産管理人を選任して遺産分割協議
失踪宣告で死亡みなし→通常の相続手続き
または不在者財産管理人でも可
相続人の存在が不明・全員相続放棄
相続財産清算人(民法第952条)の選任
相続財産清算人の選任
どちらを選ぶかは目的次第:急いで遺産分割や売却を進める必要があり、本人の生存可能性も残る場合は、7年を待たずに使える不在者財産管理人を先に検討します。一方、7年以上生死不明で、戸籍上も死亡として整理しないと相続関係が確定しない場合は、失踪宣告を検討します。行方不明期間だけでなく、誰の相続を進めたいのか・売却予定があるのか・相続税申告に影響するかで変わります。
3. 不在者財産管理人と失踪宣告の違い(比較表)
根拠条文
民法第25条〜第29条
民法第30条〜第32条
対象
所在不明だが生死は問わない
普通失踪:7年以上の生死不明
危難失踪:危難遭遇後1年
効果
本人に代わって管理人が財産を管理・処分(権限外行為許可が必要)
本人を法律上「死亡」したものとみなす(戸籍にも記載)
所要期間
選任まで概ね3〜6か月
権限外行為許可は追加1〜2か月
公示催告期間3か月以上(普通失踪)。調査・審判確定・戸籍反映まで含めると実務上8か月〜1年程度
費用目安
予納金30〜50万円(事案により50〜100万円)+申立費用
司法書士報酬は別途
官報公告費+申立費用(数万円)
予納金は通常不要
相続への影響
本人の権利は存続。管理人が代理参加
行方不明者が子・兄弟姉妹など代襲対象の続柄で、みなし死亡日が被相続人の死亡前なら代襲相続、死亡後なら数次相続(行方不明者の相続人が協議に加わる)。前後関係で協議の相手が変わる
向くケース
急ぎ遺産分割を進めたい/生存の可能性が残る
生死不明7年以上が経過/戸籍を整理したい
4. 不在者財産管理人の手続き
4-1. 制度の概要と選任要件(民法第25条)
不在者財産管理人は、従来の住所・居所を去り、容易に戻る見込みのない「不在者」の財産を保全・管理するために、家庭裁判所が選任する管理人です。利害関係人(相続人・債権者など)または検察官が申立てます。
選任の主なポイントは次のとおりです。
- 本人が従来の住所・居所を去って容易に戻る見込みがないこと
- 本人の財産管理人が定められていないこと
- 利害関係人または検察官による申立があること
- 遺産分割が目的の場合、他の相続人は利害関係人にあたるため、公平性の観点から管理人には選ばれないのが原則。実務では弁護士・司法書士などの第三者専門家が選任されることが多い
4-2. 選任手続きの費用と予納金
申立は不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所に行います。費用は次の目安です。
- 申立手数料:収入印紙800円
- 連絡用郵便切手:3,000〜5,000円程度(家裁により異なる)
- 予納金:30〜50万円程度(事案によっては50〜100万円のことも。財産規模・管理期間・候補者の有無により増減)
- 司法書士に書類作成を依頼する場合の報酬:別途
予納金は必ず求められるものではなく、不在者の財産から管理人報酬や管理費用を賄えない見込みがある場合に、家庭裁判所から納付を求められます。申立人がいったん立て替え、不在者に十分な預貯金があればそこから報酬が支払われて返還されることもあります。ただし不在者の財産が不動産のみの場合や管理期間が長期化する場合は、予納金が報酬として費消され、返還されないリスクもあります。申立前に不在者名義の預貯金・不動産の有無をできる範囲で確認しておくことが大切です。
4-3. 権限外行為の許可(民法第28条)
不在者財産管理人の権限は「保存行為・利用行為・改良行為」に限られます。遺産分割協議への参加・不動産の売却など本人の財産を処分する行為は権限外行為にあたるため、改めて家庭裁判所に権限外行為許可の申立が必要です。
許可申立では、不在者の法定相続分を確保した遺産分割案(協議書案)を添付する必要があります。不在者に不利な内容(例:本人取得分ゼロ)は許可されません。
4-4. 管理人が参加する遺産分割協議
家庭裁判所から権限外行為許可が出ると、管理人は不在者の代理人として遺産分割協議に参加できます。具体的な流れは次のとおりです。
- 他の相続人が遺産分割協議書案を作成(不在者の法定相続分を確保)
- 管理人が内容を確認し、家庭裁判所に権限外行為許可を申立
- 許可審判が出たら、管理人が「不在者○○の不在者財産管理人」として協議書に署名押印(管理人選任審判書・権限外行為許可審判書・管理人の印鑑証明書を添付)
- 不動産は協議内容に従って相続登記、預貯金は解約・分配
- 不在者の取得分は管理人が引き続き管理(本人が現れたら引渡し)
5. 失踪宣告の手続き(普通失踪7年・危難失踪1年)
5-1. 普通失踪と危難失踪(民法第30条)
失踪宣告は、生死不明の人について家庭裁判所の審判で「死亡したものとみなす」制度です。種類は2つあります。
普通失踪
生死が7年以上明らかでない
7年の期間が満了した時
危難失踪
戦争・船舶沈没・震災などの危難に遭遇し、その危難が去った後1年以上生死不明
その危難が去った時
5-2. 死亡時期の確定(民法第31条)
失踪宣告が確定すると、その時点でみなしの死亡時期が法律上確定します。普通失踪なら生死不明から7年が経過した時、危難失踪なら危難が去った時です。
注意点として、失踪宣告の審判確定日とみなし死亡日は別です。たとえば2026年に審判が確定しても、生死不明が2010年から続いていれば、死亡日は2017年(7年経過時点)と扱われ、その日に開始した相続手続きが必要になります。行方不明者が子や兄弟姉妹など代襲相続の対象となる続柄の場合、みなし死亡日が被相続人の死亡より前なら子・甥姪などが代襲相続人に、後なら行方不明者本人の相続人が関わる数次相続になります(配偶者・直系尊属に代襲相続はありません)。協議の相手が変わるため、生死不明時期の特定が出発点です。
5-3. 申立手続きと費用
申立先は不在者の従来の住所地・居所地を管轄する家庭裁判所です。利害関係人(配偶者・推定相続人・受遺者など)が申立人となります。
- 申立手数料:収入印紙800円
- 官報公告料:5,000円前後(実費は裁判所の指示後に納付)
- 連絡用郵便切手:数千円
- 司法書士に書類作成を依頼する場合の報酬:別途
公示催告期間は普通失踪で3か月以上、危難失踪で1か月以上です(家事事件手続法第148条第3項)。調査・審判確定・戸籍反映まで含めると、手続全体では8か月〜1年程度かかることがあります。
5-4. 取消しの影響(民法第32条)
失踪宣告後に本人が生きて戻ってきた、または別の死亡時期が判明した場合、本人または利害関係人の請求により失踪宣告は取り消されます。ただし取消しによる影響は、関係者保護のため次のように制限されます。
- 取消しの効果は遡及するが、取消し前に善意でなされた行為の効力は維持される(第32条第1項但書)
- 本人は、取消し時点で現に利益を受けている限度で財産の返還を請求できる(同条第2項)
- 取消し前に行われた売買などは、取引当事者がいずれも本人の生存等を知らなかった場合に限り、取消しによって当然には覆りません(相続人側が本人の生存を知って処分した場合は保護されない可能性があります)
不在者財産管理人や失踪宣告の手続きは数か月〜1年を要する一方、被相続人の相続税の申告期限(相続人が被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月)は待ってくれません。協議が間に合わないときは、いったん未分割のまま法定相続分で申告・納税し、分割確定後に更正の請求・修正申告で精算します(小規模宅地等の特例・配偶者の税額軽減は「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出が前提)。相続税が見込まれる場合は、早い段階で税理士にご相談ください。
6. 認定死亡と失踪宣告の違い
「行方不明者を法律上死亡したものとして扱う」制度には、失踪宣告のほかに認定死亡(戸籍法第89条)があります。両者は混同されがちですが、根拠・手続き・効果が異なります。
判断者
取調べをした官庁・公署(警察・海上保安庁など)
家庭裁判所
対象状況
水難・火災・震災などで死亡が確実視されるが遺体が発見されない場合
通常の生死不明は7年以上(普通失踪)。危難遭遇後1年以上は危難失踪
戸籍への記載
取調べをした官庁・公署の報告で直接戸籍に死亡記載
審判確定後の届出で死亡(みなし)記載
法律上の効果
死亡の推定(反証可能)
死亡とみなす(取消手続が必要)
認定死亡は遺体が発見されないが死亡が確実視される場合の救済措置です。単に連絡が取れない・行方不明という場合には適用されず、失踪宣告か不在者財産管理人を検討することになります。
7. 相続人の存在が明らかでない・全員相続放棄の場合(相続財産清算人)
これまで説明したのは「相続人が判明していて、その一部が行方不明」のケースでした。これに対して戸籍調査を尽くしても相続人の存在が明らかでない、または全員が相続放棄して相続人がいなくなった場合は、別の制度を使います。
令和5年4月の民法改正で名称が変更され、現在は相続財産清算人(旧名称:相続財産管理人)と呼びます(民法第952条)。
- 選任手続き:利害関係人または検察官が、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所に申立
- 役割:相続財産を清算し、債権者・受遺者への弁済、特別縁故者への財産分与、最終的に残余を国庫帰属させる
- 権限外行為:相続財産清算人が不動産を売却するなどは家庭裁判所の許可が必要
- 所要期間:令和5年4月改正で公告手続が一本化され、最短でも6か月程度(財産内容・換価の状況により長期化。特別縁故者への分与がある場合はさらに数か月)
「所在不明」と「存在不明」を取り違えないこと:相続人は判明していて、その一部または全員が所在不明なだけなら、各相続人について不在者財産管理人または失踪宣告を選びます。戸籍調査を尽くしても相続人の存在が確認できない・全員が相続放棄したなら、相続財産清算人が必要です。
8. 行方不明者がいる場合の相続登記と義務化への対応
8-1. 法定相続分どおりの相続登記は単独で申請できる
法定相続分どおりに共有名義で相続登記する場合は、保存行為として相続人の一人から単独で申請できます(不動産登記法第63条第2項)。行方不明者がいても、他の相続人が代表して全員分(行方不明者の持分も含む)を申請可能です。なお、ここでの登記は「相続による所有権移転登記」であり、未登記不動産に初めて行う「所有権保存登記」とは別のものです。
「とりあえず共有登記」は二度手間になりやすい:法定相続分での共有登記は義務化期限への暫定対応にはなりますが、最終解決とは限りません。いったん共有名義にすると、後日その不動産を売却する際に結局行方不明者の持分を動かすため不在者財産管理人の選任が必要になり、登録免許税(固定資産評価額の0.4%)も二度手間になります。売却予定がある不動産では、登録免許税のかからない相続人申告登記で期限対応を済ませ、並行して不在者財産管理人等の手続きを進めるのが実務的です。
共有登記は法定相続分どおりの場合に限られ、特定の相続人に集約する遺産分割は別途協議が必要です。
8-2. 通常と必要書類の違い
不在者財産管理人または失踪宣告を経由する場合、通常の相続登記に加えて次の書類が必要です。
不在者財産管理人を経由
管理人選任の家裁審判書謄本/権限外行為許可の審判書謄本/管理人の印鑑証明書/管理人を含む遺産分割協議書
失踪宣告を経由
失踪宣告の審判書謄本+確定証明書/失踪宣告後の戸籍(死亡記載)/みなし死亡日を踏まえた相続関係説明図
8-3. 相続登記義務化(令和6年4月)と相続人申告登記での暫定対応
2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化され、相続および所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記する義務があります(不動産登記法第76条の2)。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象です。
とはいえ、不在者財産管理人や失踪宣告の手続きは数か月〜1年以上かかるため、3年期限に間に合わないケースもあります。行方不明者がいて遺産分割が物理的に進められない事情は、登記義務違反の「正当な理由」(不動産登記法第164条第1項)にあたると主張できる余地があります。ただし令和5年9月12日民二第927号通達が「正当な理由」として明示的に例示しているのは、相続人が極めて多数で戸籍収集に時間を要する場合などであり、「行方不明者がいる」こと自体は列挙されていません。認められるかは個別判断となるため、放置リスクを避ける意味でも、まず相続人申告登記(不動産登記法第76条の3)で義務を履行し、並行して不在者財産管理人等の手続きを進めるのが安全です。
- 相続人申告登記は、申出人が登記名義人の相続人であることを確認できる戸除籍謄本等を添付して申し出る制度
- 登録免許税はかからないが、権利関係を確定・公示する登記ではない
- そのため、売却や遺産分割完了後の名義変更には別途、本来の相続登記が必要
古い相続も義務化の対象:施行日(令和6年4月1日)前に発生していた相続も対象で、令和9年(2027年)3月31日か、相続の開始と所有権取得を知った日から3年のいずれか遅い日までに登記または相続人申告登記が必要です。古い相続ほど早めにご相談ください。
9. よくある質問(FAQ)
- Q1. 失踪宣告は何年で申立てできますか?
- 普通失踪は生死不明が7年以上経過している場合に申立可能です(民法第30条第1項)。戦争・船舶沈没・震災など特定の危難に遭遇した場合は、危難が去ってから1年経過で危難失踪の申立ができます(同条第2項)。
- Q2. 不在者財産管理人を選任するのに予納金はいくら必要ですか?
- 家庭裁判所により異なりますが、30〜50万円程度が目安です。申立人がいったん立て替えますが、不在者に預貯金等の資産があれば、そこから管理人報酬を支払うよう求めることで立替金が返還されるケースが多くなります。手続き完了後に使われなかった分は返還されます。
- Q3. 不在者財産管理人と失踪宣告はどちらを選ぶべきですか?
- 分岐点は「戸籍上の死亡記載が必要か」だけではありません。7年要件を満たしているか、相続関係を確定させたいのか、早期に遺産分割・売却を進めたいのか、みなし死亡日によって相続人が入れ替わるのかを確認します。短期的に遺産分割を進めるなら不在者財産管理人、長期の生死不明で相続関係そのものを整理するなら失踪宣告、という切り分けが基本です。後日の生存発覚トラブルを避けるため、まず不在者財産管理人を先行させることも多くあります。具体的な選択は司法書士にご相談ください。
- Q4. 法定相続分どおりの相続登記なら行方不明者がいてもできますか?
- はい、可能です。保存行為として相続人の一人から全員分の共有持分の相続登記を申請できます(不動産登記法第63条第2項)。ただし、特定の相続人に集約する遺産分割の場合は、行方不明者を除いて協議できないため、不在者財産管理人や失踪宣告の手続きが別途必要です。
- Q5. 認定死亡と失踪宣告の違いは何ですか?
- 認定死亡は水難・火災などで死亡が確実視されるが遺体が発見されない場合に、官公署の報告で戸籍に死亡記載される制度(戸籍法第89条)です。一方失踪宣告は、生死不明が7年以上続いた場合などに家庭裁判所が「死亡したとみなす」審判をする制度(民法第30条)です。判断者・対象状況・効果(推定/みなす)が異なります。
- Q6. 失踪宣告が確定した場合、死亡日はいつになりますか?
- 普通失踪なら生死不明が始まってから7年が経過した時点、危難失踪なら危難が去った時点が法律上の死亡みなし日です(民法第31条)。審判の確定日と死亡みなし日は別物で、相続開始日もみなし日になります。このみなし死亡日が被相続人の死亡前か後かで、代襲相続か数次相続かが変わります。
- Q7. 失踪宣告後に本人が生きて戻ってきた場合どうなりますか?
- 本人または利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪宣告を取り消します。ただし取消し前に善意でなされた行為(相続による財産処分など)の効力は維持され、本人は現に利益を受けている限度で財産の返還を請求できます(民法第32条)。
- Q8. 相続人が全員所在不明の場合はどうしたらよいですか?
- まず戸籍調査で相続人が誰かを確定します。相続人が判明しているが所在不明であれば、各相続人について不在者財産管理人や失踪宣告を検討します。戸籍調査を尽くしても相続人の存在が明らかでない場合や、全員が相続放棄した場合は、相続財産清算人(旧称:相続財産管理人。民法第952条)の選任を申立てます。
- Q9. 相続登記の義務化(令和6年4月)と行方不明者の関係は?
- 相続登記は相続を知った日から3年以内に行う義務があります(不動産登記法第76条の2)。不在者財産管理人や失踪宣告の手続きで3年期限に間に合わない場合は、相続人申告登記(同法第76条の3)を活用すれば義務を一時的に履行したとみなされます。後日、本来の相続登記をする必要があります。なお、遺産分割が進められない事情を義務違反の「正当な理由」として主張できる余地はありますが、令和5年9月12日民二第927号通達に明示列挙された例ではないため、個別判断となります。
- Q10. 司法書士に依頼する場合の費用相場は?
- 裁判所への申立書類作成の報酬は10〜15万円程度が目安です。ただし実際に遺産分割を成立させるには別途、権限外行為許可申請のサポートが必要となり、追加報酬が生じるのが一般的です。これに加えて裁判所に納める実費(予納金・印紙代)や、完了後の相続登記費用(登録免許税・報酬)が必要です。当センターでは初回相談を無料で承っておりますので、総額の目安はご相談時にお伝えします。