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この記事の結論(原本還付のポイント)
● 原本還付とは:相続登記で法務局に出した戸籍や遺産分割協議書などの「原本」を、登記の完了後に返してもらう手続きです(不動産登記規則第55条)。コピーに「原本と相違ありません」と付記して原本と一緒に出すのが基本です。
● 返してもらえる書類:戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍、遺産分割協議書、相続人全員の印鑑証明書、住民票(除票)、固定資産評価証明書、法定相続情報一覧図の写し、遺言書など。その登記申請のためだけに作った委任状は返してもらえません。
● やり方:返してほしい原本を全ページ等倍でコピー → コピーの余白に「原本と相違ありません」と書いて記名押印 → 複数枚はつづり目に契印→ 原本とセットで申請時に提出。
● 戸籍のコピーは説明図で省ける:申請書に「相続関係説明図」を添付すると、戸籍・除籍・改製原戸籍はコピーの添付を省いて原本還付できます(法務局公式Q&A・情報番号1307)。省けるのは戸籍だけで、協議書・印鑑証明書・住民票などは別途コピーが必要です。
● 返却の時期:原本は登記の完了後(申請から概ね1〜2週間後が目安)に返ってきます。原本還付の希望とコピーは申請時に出す必要があり、後から請求することはできません。
相続登記の準備で多くの方が不安になるのが、「せっかく集めた戸籍の原本を法務局に提出したら、戻ってこないのでは?」という点です。結論からいえば、相続登記には提出した原本を返してもらう「原本還付(げんぽんかんぷ)」という手続きがあります。この記事では、原本還付の仕組み・やり方(奥書と契印)・返してもらえる書類とできない書類・戸籍のコピーを省くコツ・原本が返ってくる時期まで、司法書士がわかりやすく解説します。
原本還付とは、登記の申請で提出する戸籍謄本などについて、法務局が原本の代わりに写し(コピー)を保管する形にして、原本は返してもらう仕組みです(不動産登記規則第55条)。相続手続きは登記だけで終わらず、預貯金の解約や保険金の請求などで同じ戸籍一式を何度も使う場面が多いもの。相続登記の時点で原本還付を設計しておくことが、書類を取り直す手間と費用を減らす近道になります。
ポイントはシンプルです。
① 返してほしい書類のコピーを用意し、② コピーに「原本と相違ありません」と付記して記名押印し、③ 原本と一緒に提出する。これで、登記の完了後に原本が返ってきます。
大まかな判定軸はひとつです。「その登記申請のためだけに作成した書類」は還付できず、それ以外は原則として還付できます。(ただし印鑑証明書だけは、何のために添付するものかで扱いが分かれます。下の注記をご覧ください。)
| 書類の種類 | 備考 |
|---|---|
| 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本(戸籍一式) | 預貯金の解約や他の手続きでも使うため、原本還付が特に重要。相続関係説明図の添付でコピーを省けます(後述)。 |
| 遺産分割協議書 | 金融機関などでも提示を求められることが多い。コピー+奥書を添付します。 |
| 相続人全員の印鑑証明書 (遺産分割協議書に添付したもの) | 相続登記で協議書に添付する印鑑証明書は原本還付できます(下の注記を参照)。 |
| 住民票・住民票の除票 | 複数の相続手続きで求められることが多い書類です。 |
| 固定資産評価証明書 | 還付自体は可能ですが、他の相続手続きで使うことはほとんどないため、原本還付を求めずそのまま提出する(提出し切り)ことも多い書類です。 |
| 法定相続情報一覧図の写し | これを提出すれば戸籍一式の提出を省ける場面があります(遺産分割協議書・印鑑証明書などは別途必要。後述)。 |
| 遺言書(自筆証書遺言・公正証書遺言・法務局保管の遺言書情報証明書など) | 貴重な書類のため還付を受けておくと安心です。自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済みのものを使います(公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言は検認不要)。 |
印鑑証明書について:不動産登記規則第55条第1項ただし書きでは、一部の「印鑑に関する証明書」は原本還付できないと定められています。これは登記義務者の申請意思を確認するために添付する印鑑証明書などを指し、相続を原因とする相続登記(相続人による申請)では通常登場しません。遺産分割協議書に押した実印を確認するために添付する相続人の印鑑証明書は、原本還付できます。印鑑証明書は「何のために添付するものか」で扱いが分かれる、と押さえておくと確実です。
⚠ その登記申請のためだけに作成した書類は、原本還付の対象外です。
代表例が委任状です。その登記申請のためだけに作成した委任状は返却されません(不動産登記規則第55条第1項ただし書き)。また登記申請書は法務局に保管され、返ってきません。相続関係説明図そのものは、戸籍のコピーの代わりに法務局が保管するため提出後は戻りません。
【相続登記の必要書類一覧】添付書類まとめ・各証明書の詳細はこちら
原本還付の基本手順は、次の4ステップです。コピーの取り方(等倍・全ページ・片面)と、複数枚の綴じ方・契印まであわせて押さえておきましょう。
戸籍一式・住民票(除票)・遺産分割協議書など、登記後の預貯金の解約や他の手続きでも使う書類を中心に、返してほしい原本を揃えます。
返してほしい原本を全ページ、原寸大(等倍)で、文字が鮮明に読める形でコピーします。戸籍・遺産分割協議書とも一部のページだけでなく全ページが必要です。照合しやすいよう片面でそろえると無難で、両面に記載がある原本は表裏それぞれをコピーします。
コピーの余白に「原本と相違ありません」と記載し、申請人(依頼した場合は代理人)が記名押印します。押印は登記申請書に使う印と同じで構わず、実印でなくても差し支えありません。
コピーが複数枚になるときはホチキスで綴じ、ページのつづり目(見開き)にまたがるように契印を押します。このコピーを原本とセットにして、登記の申請時に一緒に提出します。
コピーの取り方のルール
① 一部のページだけでなく全ページをコピーする(戸籍・遺産分割協議書とも)/② 等倍(原寸大)でコピーする/③ 片面でそろえると照合しやすく無難(両面原本は表裏それぞれ)/④ 文字がかすれず読める濃さで。
契印は登記申請書に押したものと同じ印で構いません(実印である必要はなく、認印でも差し支えありません)。契印の位置や箇所数について法令上の明確な定めはなく、つづり目にまたがって押すという実務運用によります。枚数が多いときは、袋とじ(製本テープなどで製本)にして帯と紙の境目に1か所だけ契印を押す方法もあり、押し漏れを防げます。パンチ穴を開けて綴じる方式は避ける運用が一般的です。
奥書とは、コピー(謄本)に付ける「原本証明」のことです。コピーの余白に「原本と相違ありません」と書いて、記名押印します。記名押印するのは申請人本人で、司法書士に依頼した場合は代理人が行います。押印は登記申請書に使う印と同じで構わず、実印でなくても差し支えありません。
📝 記載例(奥書)
当センターに相続登記をご依頼いただいた場合は、この奥書・契印や原本還付の手続きも、代理人としてまとめて対応します。
戸籍が数十枚に及ぶと、コピー・記名押印・契印だけで大変な手間になります。この負担を大きく減らせるのが相続関係説明図です。
相続登記の申請書に「相続関係説明図」を添付すると、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍については、コピーを付けなくても原本を返してもらえます(法務局公式Q&A・情報番号1307)。相続関係説明図が戸籍のコピーの代わりとして扱われるためで、戸籍が大量になる相続で特に有効です。
ただし、この省略が使えるのは戸籍(戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍)だけです。遺産分割協議書・印鑑証明書・住民票・固定資産評価証明書などは、相続関係説明図では代替できず、別途コピー+奥書が必要な点に注意してください。相続関係説明図には「被相続人の氏名・生年月日・死亡日・最後の住所・最後の本籍」「相続人全員の氏名・続柄・生年月日」などを、戸籍や住民票(除票)の記載どおりに正確に書きます(1日違い・漢字違いも補正の原因になります)。登記簿上の住所と最後の住所が異なる場合は、住所のつながりを示す書類が別途必要になることもあります。数次相続(相続が続けて発生したケース)や代襲相続では、図の構造が複雑になりやすい点にも注意が必要です。
原本は、登記の調査が完了した後(=登記が完了したタイミング)に返却されます(不動産登記規則第55条第3項)。実務では、申請から概ね1〜2週間後の登記完了時が目安です。
⚠ 原本還付の希望とコピーは「申請時」に出す必要があります。
登記が完了した後に「やっぱり原本を返してほしい」と後から請求することはできません。戸籍などを他の手続きでも使う予定がある場合は、申請の段階で忘れずに原本還付を申し出てください。
受け取り方法は2通りです。① 登記完了後に法務局の窓口で受け取る、② 郵送で受け取る(申請書に「送付の方法により還付を希望する」旨を記載し、宛名を書いた返信用封筒に簡易書留分の郵券〔切手〕を貼るか、対面で受け取れるレターパックプラス(赤)を同封します)。必要な郵券の額など細部は事案によって運用差があるため、最終的には申請先の法務局の案内に従ってください。なお登記識別情報通知書を郵送で受け取る場合は、別途、本人限定受取郵便などの指定が必要になることがあります。
なお、オンライン申請(特例方式)でも原本還付は可能です。この場合、添付書面は書面で、申請の受付日から2日以内(初日は数えず、土日祝を除く)に法務局へ持参または郵送で到達させる必要があります。郵送のときは到着日を確認できる方法を選ぶと安全です(詳しい運用は登記・供託オンライン申請システムの案内をご確認ください)。
→ 戸籍・遺産分割協議書とも全ページのコピーが必要です。足りないと原本還付を受けられません。
→ 原本還付の要件を満たせず、原本が戻らない原因になります。
→ 書類がバラ扱いになり、補正になりやすい典型です。
→ 説明図で省けるのは戸籍だけ。住民票・遺産分割協議書などはコピー+奥書が必要です。
→ 原本還付は申請時に申し出る必要があり、後からの請求はできません。
相続関係説明図と似たものに、法定相続情報一覧図があります。こちらは登記官の認証(証明)が入るため、金融機関などでの手続きがスムーズになりやすく、戸籍一式の提出じたいを省ける点が異なります。
Q. 相続登記の「原本還付」とは何ですか?
A. 原本還付とは、相続登記の申請で法務局に提出した書類の「原本」を、登記の完了後に返してもらう手続きです。提出書類は原則そのままでは戻ってきませんが、原本のコピー(謄本)に「原本と相違ありません」と付記して一緒に提出しておくと、登記官が原本とコピーを照合したうえで原本だけを返してくれます(不動産登記規則第55条)。戸籍謄本や印鑑証明書など、預貯金の解約や他の不動産の登記でも使い回したい書類を、取り直さずに済ませるための制度です。
Q. 原本還付のやり方(手順)を教えてください。
A. 基本の流れは4ステップです。①返してほしい原本を全ページ等倍でコピーする、②コピーの余白に「原本と相違ありません」と書いて申請人(依頼した場合は代理人)が記名押印する、③コピーが複数枚になるときはホチキスで綴じ、ページのつづり目に契印を押す、④そのコピーを原本とセットで登記申請時に提出する。コピーと原本還付の希望は必ず申請時に一緒に提出してください。登記完了後に後から請求することはできません。
Q. コピーは全ページ必要ですか?片面・等倍でよいですか?
A. 戸籍や遺産分割協議書は一部のページだけでなく全ページのコピーが必要です。コピーは原寸大(等倍)で、文字が鮮明に読める濃さで取ります。照合しやすいよう片面でそろえると無難ですが、原本が両面に記載されている場合は表裏それぞれをコピーしてください。複数枚になるときはホチキスで綴じ、つづり目にまたがるように契印を押して一体性を示します。
Q. 「原本と相違ありません」はどこに書き、誰が押印しますか?実印は必要ですか?
A. コピーの余白に「原本と相違ありません」(「この写しは、原本と相違ありません。」でも可)と記載します。記名押印するのは申請人本人で、司法書士に依頼した場合は代理人が行います。押印は登記申請書に使ったものと同じ印で構いません。実印である必要はなく、認印でも差し支えありません。
Q. 原本還付できる書類・できない書類は何ですか?
A. 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍、遺産分割協議書、遺産分割協議書に添付した相続人全員の印鑑証明書、住民票(除票)、固定資産評価証明書、法定相続情報一覧図の写し、遺言書などは原本還付できます。一方、その登記申請のためだけに作成した委任状は原本還付できません(不動産登記規則第55条第1項ただし書き)。判定の目安は「その登記申請のためだけに作った書類かどうか」です。
Q. 相続関係説明図を出せば戸籍のコピーは不要になりますか?
A. はい。相続登記の申請書に「相続関係説明図」を添付すると、戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍については通常必要となるコピーの添付を省いて原本還付を請求できます(法務局公式Q&A・情報番号1307)。戸籍が大量になる相続で特に有効です。ただしこの省略が使えるのは戸籍だけで、遺産分割協議書・印鑑証明書・住民票・評価証明書は別途コピー+奥書が必要です。また相続関係説明図そのものは返却されません。相続関係説明図の書き方は専用ページで詳しく解説しています。
Q. 原本はいつ、どうやって返ってきますか?郵送も可能ですか?
A. 原本は登記の完了後に返却されます(不動産登記規則第55条第3項)。実務では申請から概ね1〜2週間後の登記完了時が目安です。受け取りは、登記完了後に法務局の窓口で受け取る方法と、郵送で受け取る方法があります。郵送を希望する場合は、申請書に「送付の方法により還付を希望する」旨を記載し、宛名を書いた返信用封筒に簡易書留分の郵券(切手)を貼るか、対面で受け取れるレターパックプラス(赤)を同封します。必要な郵券の額など細部は事案により運用差があるため、申請先の法務局の案内に従ってください。
Q. 登記の申請後に、あとから原本還付を請求できますか?
A. できません。原本還付の希望と、原本のコピー(「原本と相違ありません」の奥書付き)は、必ず登記申請時に一緒に提出する必要があります。申請後や登記完了後に「やっぱり原本を返してほしい」と後から請求することはできないため、戸籍などを他の手続きでも使う予定がある場合は、申請の段階で忘れずに原本還付を申し出てください。
まとめ
原本還付と相続関係説明図を上手に活用することで、相続登記のあとに続く預貯金の解約や保険の請求もスムーズに進められます。特に戸籍が多い相続では、相続関係説明図を添付して戸籍のコピーを省くだけで、作業の負担を大きく軽減できます。
コピーの取り方や奥書・契印に不安がある場合や、原本還付までまとめて任せたい場合は、相続登記の料金プランをご確認のうえ、無料相談をご利用ください。当センターは相続登記のご依頼にあたり、原本還付の手続きも代理人として対応します。
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