2026年3月31日、「不動産登記規則の一部を改正する省令」(法務省令第二十三号)が官報(号外第75号)にて公布されました。
この改正により、所有権の保存・移転等の登記で新たに所有権の登記名義人となる自然人は、2026年10月5日から、検索用情報として「国籍等」を申し出ることが必要になりました。
以下では、改正省令の要点と、登記実務のどこがどう変わるのかを申請場面に絞って整理します。
【2026年9月7日追記】2026年9月4日付で法務省民事局長通達(法務省民二第872号)と「国籍等の申出に関する質疑事項集」が発出され、国籍等を証する書類の具体例、申出を欠いた場合の取扱い(補正)、重国籍や帰化など国籍等に変更があった場合の取扱いが確定しました。本ページは通達の内容を反映しています。
「不動産登記規則の一部を改正する省令」(法務省令第二十三号)が2026年3月31日付の官報にて公布されました。国籍等の提供義務化に関する規定の施行日は2026年10月5日です。
なお、住所・氏名変更登記の義務化は2026年4月1日から先行して施行されています。法務局が職権で住所等の変更登記をする「スマート変更登記」の開始時期は、「3. 改正の背景と経緯」をご覧ください。
1. 登記申請時の「国籍等」提供の義務化
これまで不動産登記において、所有者の国籍情報は必須ではありませんでしたが、2026年10月5日からは、所有権の保存・移転・更正等の登記を申請し、所有権の登記名義人となる自然人について、検索用情報として「国籍等」の申出が求められるようになりました。日本人・外国人の区別なく対象となります。
なお、今回の不動産登記規則の改正は自然人を対象としたものです。法人に関する届出強化は、重要土地等調査法施行規則・国土利用計画法施行規則など別制度として整備されています(法人の不動産登記実務については法人識別事項の提供もご参照ください)。
「国籍等」の範囲
改正省令では「国籍の属する国」のほか、出入国管理及び難民認定法第2条第5号ロに規定する地域を含む用語として定義されています。同号ロの地域として政令で定められているのは、「台湾」または「ヨルダン川西岸地区及びガザ地区」です。国名は外務省ホームページの「国・地域」に掲げられているものによります。
制度の概要
- 対象となる登記: ①所有権の保存・移転の登記/②合体による登記等(法第49条第1項後段により併せて申請する所有権の登記があるときに限る)/③所有権の更正の登記(その登記によって所有権の登記名義人となる者があるときに限る)。規則第158条の39第1項はこの3類型を掲げています
- 対象者: 上記の登記により新たに所有権の登記名義人となる自然人のうち、その登記の申請人である方(日本人・外国人を問わず。規則第158条の39第1項の括弧書きにより、名義人となる方が申請人でない場合は対象外です)
- 過去に申出をした方も対象: 以前に検索用情報を申し出たことがある方でも、別の不動産を取得する場合や、既に共有している不動産について他の共有者の持分を取得する場合には、その所有権移転登記の申請時に改めて検索用情報(国籍等を含む)を申し出る必要があります(法務省「検索用情報の申出に関するQ&A」)
- 海外居住者への拡大: これまで検索用情報の申出は「国内に住所を有する者」に限定されていましたが、今回の改正でこの要件が削除されました
- 手続きの変更点:
- 登記申請時に「検索用情報」として「国籍等」を申請情報の内容として申し出る
- 国籍等を証する市町村長等の公務員が職務上作成した情報(ない場合はそれに代わる情報)の提供が必要
- 申し出た国籍等が本人のものであることを登記官が確認できる事項を申請情報の内容とした場合は、証明情報の提供は不要
- 施行日: 2026年10月5日
- 法的根拠: 不動産登記規則第158条の38、第158条の39及び第158条の40の改正(法務省令第二十三号)
電子申請では、所定の電子証明書を提供することで証明情報の提供に代えられる制度がありますが、これで代替できるのは氏名の振り仮名(第2号)と出生の年月日(第4号)を証する情報に限られ、「国籍等」(第6号)は含まれません(規則第158条の39第3項)。なお、国籍等の証明情報を書面で提出しなければならないという定めはありません。2026年9月4日付の法務省通達(民二第872号)により、旅券の写し等を提供するときは申出人がその写しに「原本に相違ない」旨を証明すれば足り、原本還付の手続きは不要とされています(有効期限を過ぎた旅券は国籍等を証する情報として使えません)。
改正の狙い
今回の改正は、主に「外国人による不動産保有の実態把握」と「相続登記の円滑化」という2つの側面から制度設計されています。
- 実態把握: 国土の適切な利用・管理の観点から、外国人による不動産保有の実態を把握する
- 相続登記の円滑化: 所有権の登記名義人が死亡した場合に適用される準拠法はその者の国籍によって定まるため、あらかじめ国籍等を把握しておくことが、相続登記をより適正かつ円滑に実施することにも資する
提出された国籍等の情報は、「検索用情報管理ファイル」という登記所内部のシステムに記録されます。第三者が閲覧可能な「登記事項証明書(登記簿)」には記載されません。登記官は、国籍等を確認したとき、その国籍等と登記記録を特定するために必要な事項を検索用情報管理ファイルに記録します。
検索用情報管理ファイルの記録は永久に保存されます(規則第158条の38第3項)。登記と同時に申し出た国籍等は登記の申請書に記載されますが、申請人以外の第三者が申請書の閲覧を請求しても、出生の年月日・電子メールアドレス・国籍等は原則として「正当な理由」が認められず、閲覧できないようマスキングされます(申請人本人による閲覧には制限がありません)。登記申請を伴わない単独申出の申出書は登記簿の附属書類に当たらないため、閲覧請求の対象になりません。ご自身の記録内容を確認したい場合は、個人情報保護法に基づく開示請求(法務大臣宛て)によります。
2. 実務上のフローと留意点
登記申請時の手続き(2026年10月5日以降)
所有権の保存・移転登記等の申請書において、従来の検索用情報(第一号〜第五号)に加え、「国籍等」(第六号)を申請情報の内容として申し出ます。海外在住の方も対象です。書面申請の記載方法は、法務省が公表している令和8年10月5日以降に所有権移転登記を申請する場合の申請書記載例(PDF)が参考になります(登記申請を伴わない単独申出の申出書様式とは別のものです)。
国籍等を証する市町村長等の公務員が職務上作成した情報を提供します。
- 日本国籍の方 → 本籍地が記載された住民票の写し、戸籍の附票の写し、戸籍謄本、旅券(パスポート)の写しなど。住民票の本籍欄が「省略」と表示されていても、本籍欄そのものが表示されていれば日本国籍の証明として足ります。相続登記では、相続人であることを証する戸籍謄本(抄本)で足り、法定相続情報一覧図の写しでも差し支えありません
- 外国籍の方 → 国籍(地域)が記載された住民票の写し、旅券(パスポート)の写し、在留カードの写し、特別永住者証明書の写しなど。旅券は国籍等が記載されたページを含む写し、在留カード・特別永住者証明書は裏面を除く写しが必要で、日本語以外で書かれた部分には訳文を付けます。有効期限を過ぎた旅券は使えません
- 登記申請に添付する住民票の写しなどの住所を証する情報で国籍等も確認できる場合は、その書類で兼ねることができ、国籍等の証明のために別の書類を追加で取得する必要はありません(法務省の案内)
- 公務員が職務上作成した情報がない場合は、それに代わる情報。海外在住の日本人が公証人作成の宣誓供述書等を住所の証明に使う場合、そこに国籍の記載がなければ、旅券の写しや戸籍謄本等を国籍等を証する情報として別途提供します
- 旅券・在留カード・特別永住者証明書などをコピーして提供する場合は、申出人本人がその写しに「原本に相違ない」旨を証明します(申請代理人による証明では補正を求められます)。市町村が交付する「住民票の写し」は交付された書類そのものを提供するもので、この原本証明とは区別してください。委任状に国籍が書かれていても、委任状は国籍を証明する書類ではないため証明情報の省略はできません
※1 申し出た国籍等が本人のものであることを登記官が確認できる事項を申請情報の内容とした場合は、国籍等の証明情報の提供そのものが不要です(規則第158条の39第2項ただし書)。
※2 これとは別のルールとして、電子申請で電子証明書の提供により代替できるのは氏名の振り仮名・出生の年月日を証する情報に限られ、国籍等を証する情報は代替できません(同条第3項)。
※3 日本に住所があり日本国籍の方が、住所を証する情報として住民票コードを提供し、登記官が住基ネット情報で日本国籍を確認できた場合は、国籍等の証明情報の提供は不要です(同条第2項ただし書の具体例として通達が示したもの)。外国籍として申し出る場合は住民票コードでは国籍等を確認できないため、証明情報の提供が必要です。
申請書と証明情報を登記所に提出します。登記官は、同時申出に係る申請に基づく登記をしたときに、職権で検索用情報(氏名/氏名の振り仮名〔外国籍の方は原則としてローマ字氏名〕/住所/出生の年月日/電子メールアドレス/国籍等)および登記記録を特定するために必要な事項を検索用情報管理ファイルに記録します(規則第158条の39第5項)。
国籍等の記載や証明書類が不足していた場合(補正の扱い)
- 申請情報に国籍等の記載がない場合や、「国籍等の情報は提供しない」と記載して申請した場合でも、登記所はまず補正を求めます(期間の目安は国内居住者でおおむね1週間、国外居住者でおおむね2週間とされていますが、登記官の裁量によります)。
- 国籍等の補正に応じないことだけを理由に、登記申請が却下されることはありません。補正がされないときは、登記官が添付書類から判明する国籍等を検索用情報管理ファイルに記録し、判明しないときは「日本以外」または「国籍不明」として記録します。
- 「日本以外」「国籍不明」は登記所側の便宜的な記録区分であり、申請書にこれらを記載して申し出ることはできません。
- 申請用総合ソフトの「その他事項」欄に国籍等を入力した場合は、所定の項目への入力と「その他事項」欄の記載の削除について補正を求められます。
- 国籍等に限らず、検索用情報の申出そのものについても、2026年10月5日以降は、申請書に「検索用情報の申出はしない」と記載した場合でも、登記官からまず申出を促されます。促しに応じない場合も登記申請は却下されず、申請書の余白にその旨が記載されたうえで登記が実行されます(法務省「検索用情報の申出に関する質疑事項集」(令和8年9月16日現在)問11)。
- 登記申請を伴わない単独申出(後述)は扱いが異なり、補正に応じないと申出自体が却下され、検索用情報管理ファイルへの記録もされません。
- 登記所側のシステム改修は施行日以降に完了する予定で、それまでの間に申し出た国籍等は移行期間の運用により登記所側で保持され、改修後にファイルへ移されます(申請者側の追加手続きは示されていません)。
出典:法務省民二第872号通達(令和8年9月4日)第2の2(1)ク・第4、国籍等の申出に関する質疑事項集 問6〜問13、検索用情報の申出に関する質疑事項集(令和8年9月16日現在)問11、令和8年9月4日付 法務省民事局総務課登記情報センター室及び民事第二課事務連絡 記2・記3(移行期間の取扱い)
まず確認しておきたいのは、国籍等を裏付ける書類を早めに揃えられるかどうかです。特に海外在住者が関わる案件では、領事館等での書類取得に時間がかかりやすく、確認事項が増える分、登記完了までの期間にも余裕を見ておく必要があります。
東京司法書士会のパブリックコメント意見書でも指摘されている通り、検索用情報の確認作業が増えることで登記事務処理日数が延びる可能性があります。売買決済と同日の申請や海外居住者が関わる相続登記では、書類不備による補正や審査の遅れが引渡しや後続手続きの日程に直結するため、申請前に原本の写し・訳文の内容を確認しておくことが重要です。
外国籍の買主がいる売買では、決済直前に証明書類の不足が判明しないよう、どの書類(旅券・在留カード・特別永住者証明書・住民票)を使うか、有効期限、日本語訳文の要否を決済準備の段階で確認しておきます。国籍等の補正が生じると、登記完了までの日程にも影響します。
既に登記名義人となっている方へ
現在既に不動産の所有権登記名義人となっている方は、直ちに義務が発生するわけではありません。ただし、将来の相続登記をスムーズに進める観点から、国籍等を含む検索用情報の任意申出(改正後の規則第158条の40)が有効な備えとなります。海外在住の方も申出が可能です。ただし、海外在住の方は検索用情報を申し出ても職権による住所等変更登記(スマート変更登記)の対象にはならず、氏名や住所に変更があった場合は変更の日から2年以内(2026年4月1日より前の変更で登記していないものは2028年3月31日まで)にご自身で変更登記を申請する必要があります(法務省の案内)。
また、帰化・国籍離脱・国籍選択などで国籍等に変更があった場合も、変更後の国籍等を証する情報を添えて単独申出をすれば、変更後の国籍等が記録されます(変更前の国籍等を証する情報は不要です)。帰化許可を申請中で官報公告がまだの段階で登記を申請する場合は、帰化前の国籍等を申し出ます。公告後は、変更後の国籍等を記録するために単独申出をすることが望ましいとされています(義務として定められたものではありません)。
単独申出の方法と費用:単独申出は、オンライン(Webブラウザで手続できる「かんたん登記・供託申請」)または申出書を管轄登記所に提出(持参・郵送)する方法で行います。申出そのものに登録免許税などの費用はかかりません(住民票の写し等の取得費や郵送料、専門家に依頼する場合の報酬は別途です)。管轄の異なる複数の不動産についてまとめて申し出る場合は、そのうちいずれかの不動産の所在地を管轄する登記所に一括して申し出ることができます(規則第158条の40第3項)。メールアドレスをお持ちでない方は「なし」と記載して申し出ることができますが、ご家族や代理人のメールアドレスを代わりに記載することはできません(法務省Q&A)。
3. 改正の背景と経緯
今回の改正は、安全保障の観点からの土地所有実態の透明化に加え、2024年4月に開始された「相続登記の義務化」を実効性のあるものにする狙いがあります。所有権の登記名義人が死亡した際、その国籍によって適用される準拠法が異なるため、あらかじめ国籍等を把握しておくことが、相続登記をより適正かつ円滑に実施することにも資するとされています。
2026年4月1日からは住所・氏名変更登記の義務化(正当な理由なく怠った場合は5万円以下の過料の適用対象)も施行されています。登記官が職権で住所等の変更登記をするスマート変更登記は、不動産の所有権の登記に会社法人等番号が登記されている法人については2026年5月15日から、検索用情報の申出をしている個人については2026年12月中旬以降に順次行われます。住所変更登記の義務化、職権変更制度、所有不動産記録証明制度、そして今回の国籍等の追加と、2026年は登記実務の前提が立て続けに変わる年です。
経緯と今後の予定
4. よくある質問(FAQ)
所有者様・実務担当者の方へ
2026年9月4日付の法務省通達と質疑事項集により、添付書類の具体例、補正の扱い、重国籍・国籍変更時の取扱いが確定しました。法務省のウェブサイトでも、国籍等の申出についての案内と申出書の様式が公開されています。
2026年4月の住所・氏名変更登記の義務化に続き、2026年10月5日から国籍等の提供義務化が施行されています。売買や相続の登記を予定している方は、まず国籍等の証明にどの書類を使うかを確認してください。日本国籍の方は、相続登記では相続人であることを証する戸籍謄本(抄本)で足り、売買などでは本籍地の記載された住民票の写し・戸籍の附票の写し・旅券の写しなどが候補です。住民票コードの提供により証明書類が不要になる場合もあります。海外在住のご家族が関わる相続案件では、書類の取得方法や訳文の要否も含め、取得にかかる期間を見込んだスケジュール調整が欠かせません。
当センターでは、相続・贈与・売買などの所有権の登記に伴う国籍等の申出について、申出の対象者に当たるか、どの証明書類を使えるかを確認したうえで登記申請を進めます。海外在住の方や外国籍の方が関係する登記では、書類を取得する前の段階でご相談ください。
免責事項: 本ページの情報は2026年3月31日に公布された法務省令第二十三号、2026年9月4日付法務省民二第872号通達、同日付の「国籍等の申出に関する質疑事項集」および法務省ウェブサイトの案内に基づくものです。登記所のシステム改修の状況等により運用の細部が変わる可能性があります。実際の手続きについては、法務省・法務局の最新情報をご確認ください。
参考資料
- 「不動産登記規則の一部を改正する省令」(法務省令第二十三号、2026年3月31日公布、国籍等に関する規定は同年10月5日施行)
- 法務省「不動産登記規則の一部を改正する省令案」パブリックコメント
意見募集結果ページ(e-Gov・案件番号300080342・結果公示2026年3月31日) - 法務省民事局長通達「不動産登記規則の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いについて」(令和8年9月4日付法務省民二第872号・法務省公開PDF)、「国籍等の申出に関する質疑事項集」(令和8年9月4日現在)および「不動産登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う不動産登記事務の取扱いに係る留意点について」(令和8年9月4日付 法務省民事局総務課登記情報センター室及び民事第二課事務連絡)
- 法務省「検索用情報の申出書」様式
検索用情報の申出書(PDF) - 法務省「検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係)」
法務省ページ(令和8年9月7日更新・国籍等の案内と申出書の記載例・様式)
