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不動産登記の「国籍等」提供義務化|2026年10月施行の要点整理


《この記事の監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら

最終更新日:2026年4月1日
 

【2026年10月5日施行】不動産登記における「国籍等」の提供義務化について

2026年3月31日、「不動産登記規則の一部を改正する省令」(法務省令第二十三号)が官報(号外第75号)にて公布されました。

この改正により、所有権の保存・移転等の登記で新たに所有権の登記名義人となる自然人は、2026年10月5日以降、検索用情報として「国籍等」を申し出ることが必要になります。

以下では、改正省令の要点と、登記実務のどこがどう変わるのかを申請場面に絞って整理します。

2026年3月31日公布・10月5日施行

「不動産登記規則の一部を改正する省令」(法務省令第二十三号)が2026年3月31日付の官報にて公布されました。国籍等の提供義務化に関する規定の施行日は2026年10月5日です。

なお、住所・氏名変更登記の義務化やスマート変更登記などは2026年4月1日から先行して施行されています。

1. 登記申請時の「国籍等」提供の義務化

これまで不動産登記において、所有者の国籍情報は必須ではありませんでした。2026年10月5日以降は、所有権の保存・移転・更正等の登記を申請し、所有権の登記名義人となる自然人について、検索用情報として「国籍等」の申出が求められます。日本人・外国人の区別なく対象となります。

なお、今回の不動産登記規則の改正は自然人を対象としたものです。法人に関する届出強化は、重要土地等調査法施行規則・国土利用計画法施行規則など別制度として整備されています(詳しくは法人の届出強化に関するページをご参照ください)。

「国籍等」の範囲

改正省令では「国籍の属する国」のほか、出入国管理及び難民認定法第2条第5号ロに規定する地域(台湾等)を含む概念として定義されています。「国籍」ではなく「国籍等」とされているのは、国家として承認されていない地域の出身者についても適切に記録するための配慮に基づくものです。

制度の概要

  • 対象となる登記: 所有権の保存・移転の登記、合体による登記、所有権の更正の登記など
  • 対象者: 上記の登記で所有権の登記名義人となる自然人(日本人・外国人を問わず)
  • 海外居住者への拡大: これまで検索用情報の申出は「国内に住所を有する者」に限定されていましたが、今回の改正でこの要件が削除されました
  • 手続きの変更点:
    • 登記申請時に「検索用情報」として「国籍等」を申請情報の内容として申し出る
    • 国籍等を証する市町村長等の公務員が職務上作成した情報(ない場合はそれに代わる情報)の提供が必要
    • 申し出た国籍等が本人のものであることを登記官が確認できる事項を申請情報の内容とした場合は、証明情報の提供は不要
  • 施行日: 2026年10月5日
  • 法的根拠: 不動産登記規則第158条の38、第158条の39及び第158条の40の改正(法務省令第二十三号)
⚠️ 電子証明書による代替はできません

電子申請において、特定の電子証明書を提供することで一部の証明情報の提供を省略できる制度がありますが、「国籍等」を証明する情報については、電子証明書による省略が認められず、書面等による証明情報の提供が必要です。電子申請を利用される場合もこの点にご注意ください。

改正の狙い

今回の改正は、主に「外国人による不動産保有の実態把握」と「相続登記の円滑化」という2つの側面から制度設計されています。

  • 実態把握: 国土の適切な利用・管理の観点から、外国人による不動産保有の実態を正確に把握する
  • 相続登記の円滑化: 所有権の登記名義人が死亡した場合に適用される準拠法はその者の国籍によって定まるため、あらかじめ国籍等を把握しておくことで、遺産分割後の登記手続きが迅速化される
プライバシーへの配慮

提出された国籍等の情報は、「検索用情報管理ファイル」という登記所内部のシステムに記録されます。第三者が閲覧可能な「登記事項証明書(登記簿)」には記載されません。登記官は、国籍等を確認したとき、その国籍等と登記記録を特定するために必要な事項を検索用情報管理ファイルに記録します。

2. 実務上のフローと留意点

登記申請時の手続き(2026年10月5日以降)

STEP 1
登記申請書の作成

所有権の保存・移転登記等の申請書において、従来の検索用情報(第一号〜第五号)に加え、「国籍等」(第六号)を申請情報の内容として申し出ます。海外在住の方も対象です。

STEP 2
証明情報の準備

国籍等を証する市町村長等の公務員が職務上作成した情報を提供します。

  • 日本国籍の方 → 戸籍謄本(本籍地の都道府県が確認できるもの)、パスポート、住民票(本籍記載のもの)など
  • 外国籍の方 → パスポート、住民票(国籍記載のもの)など
  • 公務員が職務上作成した情報がない場合は、それに代わる情報

※ 申し出た国籍等が本人のものであることを登記官が確認できる事項を申請情報の内容とした場合は、証明情報の提供は不要です。ただし、電子証明書による省略はできません。

STEP 3
登記所への申請・記録

申請書と証明情報を登記所に提出。登記官が国籍等を確認した後、国籍等と登記記録を特定するために必要な事項を検索用情報管理ファイルに記録します。

まず確認しておきたいのは、国籍等を裏付ける書類を早めに揃えられるかどうかです。特に海外在住者が関わる案件では、領事館等での書類取得に時間がかかりやすく、確認事項が増える分、登記完了までの期間にも余裕を見ておく必要があります。

東京司法書士会のパブリックコメント意見書でも指摘されている通り、検索用情報の確認作業が増えることで登記事務処理日数が延びる可能性は否定できません。大都市圏での申請では、決済日や取引スケジュールとの兼ね合いに注意が必要です。

買主が外国人である取引では、国籍等の証明書類の準備状況を契約段階から確認しておくことが、取引を円滑に進めるための鍵となります。

既に登記名義人となっている方へ

現在既に不動産の所有権登記名義人となっている方は、直ちに義務が発生するわけではありません。ただし、将来の相続登記をスムーズに進める観点から、国籍等を含む検索用情報の任意申出(改正後の規則第158条の40)が有効な備えとなります。海外在住の方も申出が可能です。

3. 改正の背景と経緯

今回の改正は、安全保障の観点からの土地所有実態の透明化に加え、2024年4月に開始された「相続登記の義務化」を実効性のあるものにする狙いがあります。所有権の登記名義人が死亡した際、その国籍によって適用される準拠法が異なるため、あらかじめ国籍等を把握しておくことで、遺産分割後の登記手続きが迅速化されます。

2026年4月1日からは住所・氏名変更登記の義務化(正当な理由なく怠った場合は5万円以下の過料)やスマート変更登記(登記官による職権での住所等変更登記)も施行されています。住所変更登記の義務化、職権変更制度、所有不動産記録証明制度、そして今回の国籍等の追加と、2026年は登記実務の前提が立て続けに変わる年です。

経緯と今後の予定

2025年11月4日
関係閣僚会議にて内閣総理大臣指示 — 不動産取引における国籍把握の仕組み整備等
2025年12月16日
法務省が不動産登記時の国籍情報提供義務化の方針を公表
2025年12月23日
パブリックコメント(意見募集)開始
2026年3月31日
改正省令の公布 — 官報(号外第75号)にて法務省令第二十三号を公布
2026年4月1日
関連制度の施行 — 住所・氏名変更登記義務化、スマート変更登記の開始
2026年10月5日
国籍等の提供義務化の施行 — 検索用情報への国籍等の追加、国内住所要件の撤廃
2027年度以降
不動産ベース・レジストリとの連携を含む運用整備が検討される見込み

4. よくある質問(FAQ)

Q1. 日本国籍でも申告は必要ですか?
日本国籍の方も対象です。所有権の保存・移転・更正等で新たに登記名義人となる場合、日本人・外国人を問わず国籍等の申出が求められます。制度の実効性を確保するため、全申請者が対象とされています。
Q2. 国籍等の情報は登記簿謄本に記載されますか?
登記事項証明書には載りません。国籍等の情報は「検索用情報管理ファイル」という登記所内部のシステムにのみ記録され、第三者が閲覧できる登記事項証明書(登記簿謄本)には反映されない仕組みです。
Q3. 既に不動産を所有している場合も手続きが必要ですか?
新たな登記申請を行わない限り、直ちに義務が発生するわけではありません。ただし、将来の相続登記の円滑化のため、任意で国籍等を含む検索用情報を申し出ておくことが有効な備えとなります。
Q4. 「国籍等」とは何ですか?
国籍の属する国に加え、出入国管理及び難民認定法第2条第5号ロに規定する地域を含む概念です。国家として承認されていない地域の出身者についても適切に記録するために、「国籍」ではなく「国籍等」と定義されています。
Q5. 二重国籍の場合はどうなりますか?
複数の国籍を有する場合の具体的な取扱いは、今後の通達等で示される見込みです。日本の法律上は、日本国籍と外国籍を有する場合は日本国民として扱われることが多いですが、届出方法の詳細は運用指針の公表をお待ちください。
Q6. 国籍等の情報を提供しない場合、登記はどうなりますか?
国籍等は検索用情報の必須項目となるため、提供しない場合は登記申請が受理されない可能性があります。
Q7. 電子証明書で国籍等の証明を省略できますか?
できません。国籍等の証明については、電子署名とは別に公的な証明情報の提供が求められます。電子申請であっても、国籍等に関しては書面等による提供が必要です。
Q8. 相続登記では誰の国籍等を届け出るのですか?
新制度上の申出対象は、新たに所有権の登記名義人となる相続人側の国籍等です。もっとも、外国人被相続人の相続登記では、別途、被相続人の本国法に関する資料の検討が必要になる場合があります。
Q9. 法人が不動産を取得する場合は?
今回の不動産登記規則改正における国籍等の申出義務は自然人が対象です。法人については、2026年4月1日から施行されている重要土地等調査法施行規則・国土利用計画法施行規則の改正により、代表者・役員の国籍等や議決権構造に関する届出が強化されています。
Q10. 海外在住でも国籍等の申出はできますか?
海外在住でも申出は可能です。今回の改正で「国内に住所を有する」という従来の要件が削除されたため、海外在住の所有権の登記名義人も対象に含まれます。

所有者様・実務担当者の方へ

現時点で確定しているのは、10月5日以降の登記申請で国籍等の申出項目が追加される点と、海外在住者の申出も可能になる点です。添付書類や運用の細部は、今後の通達・書式公表を待つ必要があります。

2026年4月の変更登記義務化に続き、10月からは国籍等の提供義務化が控えています。売買や相続をご検討中の方は、本籍地記載の住民票や戸籍謄本の手配をお早めに確認されることをお勧めします。海外在住のご家族が関わる相続案件では、書類取得にかかる期間も見込んだスケジュール調整が欠かせません。

当事務所では、新制度へのスムーズな移行をサポートするため、最新の運用指針に基づいたアドバイスを提供しております。具体的な手続きやご不明な点については、お早めにご相談ください。

免責事項: 本ページの情報は2026年3月31日に公布された法務省令第二十三号および関連する公的資料に基づくものです。添付書類の具体的な取扱い等は、今後の通達により示される部分があります。実際の手続きについては、法務省・法務局の最新情報をご確認ください。

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板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Planやビジネスメディアへの寄稿実績多数。
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