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不動産の遺贈とは|相続との違い・必要書類・単独申請改正(令和5年4月1日)


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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最終更新日:2026年6月1日

不動産の遺贈とは(要点まとめ)

● 遺贈の定義:遺言で財産を譲り渡すこと(民法第964条)。受遺者は相続人でも第三者でも可。

● 包括遺贈と特定遺贈:割合指定(包括)か特定財産指定(特定)か。包括受遺者は相続人と同一の地位(民法第990条)。

● 令和5年4月1日改正:相続人への遺贈は単独申請可能に(改正不動産登記法第63条第3項・法務省民二第538号通達)。

● 登録免許税:受遺者が相続人なら0.4%、相続人以外なら2.0%(登録免許税法別表第1)。

● 相続と遺贈の併存ケース:必ず遺贈の登記を先に申請(相続登記は持分全部の移転が原則のため)。

● 必要書類:遺言書(公正証書なら正本/法務局保管制度なら遺言書情報証明書/それ以外は検認済証明書付き原本)・遺言者の戸籍類(出生〜死亡)・住民票除票・受遺者の住民票・固定資産評価証明書。共同申請かつ執行者がいないときは登記済権利証(または登記識別情報)と相続人全員の印鑑証明書も必要。

● 遺言執行者がいると簡素化:第三者への遺贈でも受遺者と執行者の2名だけで申請可能(相続人の協力不要)。

遺言で不動産を譲り渡す「遺贈」と、法定相続による「相続」が同じ案件で併存することは少なくありません。本記事では、不動産の遺贈の基本(包括遺贈特定遺贈の違い、相続との違い)、令和5年4月1日施行の改正不動産登記法第63条第3項で導入された相続人への遺贈の単独申請、必要書類、登録免許税、併存ケースの登記順序、遺言執行者の役割、よくあるご質問まで、司法書士が実務目線で徹底解説します。

不動産の「遺贈」とは(民法第964条)

遺贈とは、遺言によって自分の財産を特定の人に無償で譲り渡すことをいいます。根拠条文は民法第964条で「遺言者は、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができる」と定められています。

不動産を遺贈する場合、その所有権を移転するために「遺贈」を登記原因とする所有権移転登記を申請する必要があります。これは「相続」を原因とする相続登記とは別の手続きで、必要書類・税率・申請方式が異なります。

「相続させる」遺言と「遺贈する」遺言は別物です。遺言書に「Aに●●不動産を相続させる」と書かれている場合は特定財産承継遺言となり、登記原因は「相続」になります。一方「Aに●●不動産を遺贈する」と書かれている場合は登記原因が「遺贈」になり、本記事で扱う手続きが必要になります。文言ひとつで手続きと税率が大きく変わるため、遺言書を作成する段階で司法書士にご相談いただくことをおすすめします。

受遺者の範囲(相続人でも第三者でも可)

遺贈を受ける人を受遺者といい、相続人であっても第三者(友人・内縁の配偶者・お世話になった方・公益法人など)であっても構いません。ただし、受遺者が相続人か第三者かによって、登記の申請方式と登録免許税の税率が大きく変わります。詳細は後述の各セクションでご説明します。

遺留分への注意:配偶者・子・直系尊属など遺留分を持つ相続人がいる場合、遺贈の内容によっては受遺者が遺留分侵害額請求(民法第1046条)を受けることがあります。特に第三者へ不動産を遺贈する遺言では、登記だけでなく遺留分への備え(金銭での代償など)も併せて検討してください。

遺贈の効力発生時期

遺贈の効力は遺言者の死亡時に発生します(民法第985条第1項)。ただし、受遺者が遺言者より先に死亡していた場合、その遺贈は原則として効力を生じません(民法第994条第1項)。そのため、実務では遺言で予備的に「Aが先に死亡した場合はBに遺贈する」と定めておくことがあります。

包括遺贈と特定遺贈の違い

民法第964条は遺贈を包括遺贈特定遺贈の2類型に分けています。どちらに該当するかで権利義務の承継範囲・遺産分割協議への参加・債務承継の有無などが大きく変わります。

項目
包括遺贈/特定遺贈の違い
定義
包括遺贈:「全財産を」「財産の3分の1を」のように割合で指定する遺贈。
特定遺贈:「●●市●●町の土地を」のように特定の財産を指定する遺贈。
権利義務の承継
包括:相続人と同一の地位(民法第990条)→ プラスもマイナスも割合承継。
特定:指定された財産のみ承継(債務は原則承継しない)。
遺産分割協議への参加
包括:参加する(相続人と同一の地位のため)。
特定:原則参加しない(特定の物だけが対象)。
相続放棄/遺贈放棄
包括:相続放棄と同じ手続き(家庭裁判所への申述・3か月以内)。
特定:いつでも放棄可(遺言執行者または相続人に対する意思表示で可)。ただし他の相続人から催告(民法第987条)を受け、相当期間内に意思表示しないと承認したとみなされます。
登記原因
両方とも「年月日遺贈
登録免許税
受遺者が相続人なら0.4%、相続人以外なら2.0%(後述)

包括遺贈で起こりがちなトラブル

包括受遺者は相続人と同じ地位を持つため、借金などの「負の遺産」も指定された割合で背負うことになります。「全財産の○割」という言葉に飛びついた後、知らされていない借金まで引き継ぎ、自分の私財で返済する事態になりかねません。そのため、包括遺贈を放棄する場合は相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければならないという、非常に重い期限が課されています(民法第990条・第915条準用)。

また、包括受遺者は遺産分割協議に必ず参加させる必要があります。相続人と第三者の包括受遺者が混在しているケースでは、協議のまとめ役の選定や連絡調整が複雑になり、登記までに時間がかかる原因となります。包括受遺者がいる場合は、最初の段階で司法書士に全体設計を相談しておくことが重要です。

遺贈と相続の違い(登記原因・税率・申請方式)

「遺贈」と「相続」は実務上、登記原因・申請方式・必要書類・登録免許税の4つの観点で違いがあります。下表で整理します。

比較項目
相続/遺贈の違い
登記原因
相続:「年月日相続
遺贈:「年月日遺贈
申請方式
相続:登記権利者の単独申請(不動産登記法第63条第2項)
遺贈(相続人):令和5年4月1日以降は単独申請可能(同法第63条第3項)
遺贈(相続人以外):登記権利者と登記義務者の共同申請が必須
登記義務者
相続:不要
遺贈(共同申請の場合):遺言執行者または相続人全員
登録免許税
相続:固定資産税評価額の0.4%(登録免許税法別表第1・1号(2)イ)
遺贈(相続人):0.4%(相続と同一扱い)
遺贈(相続人以外):2.0%(その他の原因による所有権移転・同表1号(2)ハ)
取得者の範囲
相続:法定相続人のみ
遺贈:相続人でも第三者でも可
義務化の対象
相続:義務(取得を知った日から3年以内)
相続人への遺贈:義務の対象(不動産登記法第76条の2・通達令和5年9月12日民二第927号)
第三者への遺贈:直接の義務対象ではないが、放置は法的リスク大

受遺者が相続人の場合は、遺贈による所有権移転登記も相続登記の義務化(不動産登記法第76条の2)の対象に含まれます。相続および所有権の取得を知った日から3年以内に登記する義務があり、正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象となります。古い相続は令和9年(2027年)3月31日が期限です。

遺贈による所有権移転登記の手続き(令和5年4月1日改正対応)

遺贈の登記手続きは、令和5年4月1日施行の改正不動産登記法によって大きく変わりました。相続人への遺贈は単独申請が可能になった一方、相続人以外(第三者)への遺贈は従前どおり共同申請が原則で、遺言執行者がいない場合は相続人全員の協力が必要になります。改正で簡素化されたのは「相続人に対する遺贈」に限られる点に注意が必要です。

令和5年4月1日改正のポイント(不動産登記法第63条第3項)

改正前は、遺贈による所有権移転登記は受遺者(登記権利者)と相続人全員(登記義務者)の共同申請が原則で、相続人の中に協力しない方がいると登記が止まる致命的な問題がありました。改正後は「相続人に対する遺贈に限り、登記権利者(受遺者)が単独で申請できる」と定められ、相続人全員から実印・印鑑証明書を集める必要がなくなりました(法務省民二第538号通達・令和5年3月28日)。

改正適用範囲のポイント

  • 受遺者が相続人のとき → 単独申請可(改正法)
  • 受遺者が相続人以外(第三者)のとき → 従前どおり共同申請必須
  • 令和5年4月1日より前の遺贈も、施行日以降の登記申請であれば単独申請可(経過措置・通達)

申請手順(5ステップ)

  1. ステップ1:遺言書の確認・検認
    自筆証書遺言(法務局の保管制度を利用していないもの)の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要です(民法第1004条)。公正証書遺言・法務局保管制度利用の自筆証書遺言は検認不要。
  2. ステップ2:戸籍類・登記情報の収集
    遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本(除籍・改製原戸籍含む)、住民票除票(または戸籍の附票)、固定資産評価証明書を取得します。物件の特定や申請書作成のため登記事項証明書または登記情報も確認します。単独申請を行う相続人受遺者は、自分が法定相続人であることを戸籍で完全に証明する必要があり、収集範囲が広くなるため、古い除籍謄本などで挫折しやすい場面では司法書士の活用が有効です。
  3. ステップ3:登記原因証明情報の作成
    「年月日(死亡日)遺贈」を原因とする登記原因証明情報を作成。受遺者が相続人の単独申請のときは、相続人の地位を証する戸籍類が登記原因証明情報の一部となります。
  4. ステップ4:登録免許税の納付
    固定資産税評価額に応じた登録免許税を計算(相続人は0.4%・相続人以外は2.0%)。収入印紙を申請書に貼付するか、オンライン納付。
  5. ステップ5:法務局へ申請
    不動産所在地を管轄する法務局に申請。オンライン・窓口・郵送のいずれも可能。完了まで通常1〜2週間。

共同申請が必要なケース(相続人以外への遺贈)

受遺者が相続人以外の第三者の場合は、改正後も共同申請が原則です。共同申請では、相続人全員の印鑑証明書・実印に加え、亡くなった方が保管していた「登記済権利証」または「登記識別情報」の提出が必須となります。もしこれらを紛失している場合は、司法書士による「本人確認情報」の作成等の特別な手続きが必要になり、別途数万円の費用と時間が追加でかかる点に注意してください。

遺言で遺言執行者を指定しておけば、受遺者と遺言執行者の2名で申請でき、相続人全員の印鑑証明書を集める必要がなくなります(後述H2-8参照)。ただし権利証または登記識別情報の提出は依然として必要です。

遺贈登記の必要書類

遺贈による所有権移転登記に必要な書類は、受遺者が相続人か相続人以外かで異なります。下表で整理します。

書類
相続人への遺贈/第三者への遺贈で共通/個別
遺言書
公正証書遺言は正本または謄本法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は「遺言書情報証明書」(原本ではない)/保管制度を利用していない自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済証明書付きの遺言書原本
遺言者の戸籍類
出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍。住民票除票(または戸籍の附票)も必要。
受遺者の住民票
所有権の取得者として記載するため必要。
固定資産評価証明書
登録免許税の計算根拠(申請年度のもの)。
登記原因証明情報
「年月日遺贈」を原因とする情報。単独申請の場合は受遺者(または司法書士)が作成。
相続人を証する戸籍類
(相続人への遺贈の単独申請)
受遺者が相続人であることを証明するため、被相続人の出生〜死亡までの戸籍類で法定相続人の順位内にいることを示します。
登記済権利証または登記識別情報
(共同申請のとき)
第三者への遺贈で共同申請する場合は被相続人保管の権利証が必須。紛失時は司法書士による本人確認情報の作成(別途数万円程度)が必要。
遺言執行者の選任審判書
(家庭裁判所選任の場合)
遺言執行者が家庭裁判所で選任された場合は選任審判書を添付。なお、遺言執行者がいない場合でも、相続人全員が登記義務者として協力できれば相続人全員との共同申請で進められます(必ず選任が必要なわけではありません)。
相続人全員の印鑑証明書
(共同申請・執行者なしの場合)
相続人全員から印鑑証明書(発行から3か月以内)と実印を集める必要あり。執行者がいる共同申請では原則として相続人全員の印鑑証明書は不要です。
登記事項証明書または登記情報
物件の所在・地番・家屋番号・現在の登記名義を確認するために取得。申請書作成上は必須ですが、添付書類として法務局に提出するものではない場合があります。
委任状
司法書士に依頼する場合は委任状を作成。

受遺者が相続人で単独申請する場合は、相続人全員の印鑑証明書を集める必要がなくなります。これが令和5年4月1日改正の最大のメリットです。一方、受遺者が相続人以外で遺言執行者がいない場合は、相続人全員から印鑑証明書と協力を取り付ける必要があり、相続人の中に非協力者がいると登記が止まります。このリスクを避けるため、遺言書作成時に必ず遺言執行者を指定しておくことが実務上の鉄則です。

相続と遺贈が併存する場合の登記順序

同一の不動産について被相続人名義の所有権または持分の一部を遺贈し、残りを相続で移転するケースでは、原則として遺贈による一部移転登記を先に申請します。これが本記事の元タイトル「相続と遺贈が併存している場合の不動産登記の順序」で取り上げてきた論点です。なお、遺贈対象と相続対象が別不動産である場合など、必ずこの順序になるわけではないため、登記原因と対象持分を案件ごとに整理して確認します。

順序ルールの根拠

例えば、亡くなった方が甲不動産の2分の1をXに遺贈し、2分の1を相続人Aに相続させる旨の遺言を残した場合、登記手続きは次の順序で行います。

  1. Xへの所有権一部移転登記(原因:遺贈)を先に申請
  2. 続いてAへの持分全部移転登記(原因:相続)を申請

相続登記では、被相続人が登記名義上有していた所有権または持分を、相続を原因として承継者へ移転します。そのため、同一持分の一部を第三者への遺贈で切り出す必要がある場合は、先に遺贈による一部移転登記を入れ、その後に残った持分について相続登記を申請する流れになります。

順序を間違えた場合のリスク:もし誤って先に相続人への相続登記を申請してしまうと、取下げ処理などが必要になり、修正するのに手間がかかります。

包括遺贈で相続人以外が遺産分割協議に参加する場合

包括受遺者は相続人と同一の地位を持つため、遺産分割協議に参加します(民法第990条)。相続人と第三者の包括受遺者で協議する場合や、相続人以外の包括受遺者間で協議する場合があり、それぞれ遺産分割協議で最終的な不動産の帰属を決めることが可能です。

ただし、登記手続きについては相続人と相続人以外で必要書類・申請方式が異なり、登記に関して明確な根拠規定がないグレーゾーンの論点もあります。専門性が高いため、詳細情報を提示して司法書士にご相談いただくことを強くおすすめします。

不動産の相続登記をしないまま放置すると、10万円以下の過料が科される可能性があります(不動産登記法第164条第1項)。過去の相続も対象で、古い相続は令和9年(2027年)3月31日が期限です。住所等変更登記の義務化(令和8年4月1日施行)も同時並行で進んでいますのでご注意ください。

遺贈にかかる登録免許税・税金

遺贈による所有権移転登記には、登録免許税が課されます。税率は受遺者が相続人か第三者かで大きく異なります。さらに、遺贈で取得した財産は相続税の課税対象(贈与税ではありません)になり、受遺者の属性や遺贈の種類によっては不動産取得税も問題になります。税務全体の見通しが重要です。

登録免許税

受遺者の種別
税率/計算式
受遺者が相続人
固定資産税評価額 × 0.4%(相続と同一扱い)
受遺者が相続人以外(第三者)
固定資産税評価額 × 2.0%(登録免許税法別表第1・1号(2)ハ「その他の原因による所有権移転」)

例:固定資産税評価額3,000万円の不動産を遺贈する場合、相続人なら12万円、相続人以外なら60万円の登録免許税がかかります。同じ不動産でも受遺者の属性で5倍の差がつく点に注意が必要です。

相続税

遺贈で取得した財産は、相続税の課税価格に含まれます。ただし相続税は基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合に申告・納税が必要になります。また、受遺者が被相続人の配偶者または一親等の血族(子・親)等に当たらない場合は、相続税額の2割加算が問題になります(相続税法第18条)。なお、相続税の試算・申告は税理士業務範囲のため、税理士にご相談ください。

不動産取得税

不動産取得税は、相続による取得は非課税です(地方税法第73条の7第1号)。遺贈による取得は次のように扱われます。

  • 包括遺贈:非課税(地方税法第73条の7第1号により相続に含めて扱う)
  • 被相続人から相続人に対する特定遺贈:非課税(同号により相続に含めて扱う)
  • 相続人以外への特定遺贈原則課税。税率は本則4%ですが、土地・住宅については令和9年(2027年)3月31日まで3%に軽減されています(地方税法附則)。

第三者への特定遺贈では数十万円〜数百万円の不動産取得税が発生することがあります。遺言作成時にこの税負担を考慮するかどうかが重要なポイントです。

遺言執行者の役割と権限

遺言執行者は、遺言の内容を実現する役割を担う人です。遺言書で指定するか、相続開始後に家庭裁判所に申し立てて選任します(民法第1010条)。遺贈の登記実務において、遺言執行者の存在は手続きを劇的に簡素化します。

遺言執行者の権限(民法第1012条)

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為をする権利義務を有します。具体的には次の権限を持ちます。

  • 遺贈の履行(不動産の引渡し・名義変更)
  • 受遺者への所有権移転登記の申請
  • 遺言で指定された預貯金の払戻し・分配
  • 相続人の調査・遺産の調査
  • 遺言で指定された認知・相続人廃除の手続き

遺言執行者がいると手続きはこう変わる

受遺者が相続人以外の第三者で遺贈登記を申請する場合、本来は相続人全員と受遺者の共同申請が必要です。しかし遺言執行者がいる場合は、遺言執行者が登記義務者として、受遺者と共同で登記申請を行います。遺言執行者は相続人一人ひとりの任意代理人ではなく、遺言の内容を実現するための民法上の権限(民法第1012条)に基づいて手続きを進めるため、相続人の中に非協力者がいても登記を進められます。

遺言執行者を司法書士に依頼するメリット

  • 不動産登記の専門家として、申請書類の精度が高い
  • 受遺者・相続人との登記関連の連絡調整に対応
  • 遺言作成段階から関与しておけば、登記実務の観点で遺言文言を最適化できる

※ 銀行口座解約・有価証券名義変更などの相続手続全般は、遺言執行者の有無や各金融機関の運用によって対応範囲が異なります。当センターでは登記実務を中心にご案内し、その他は個別に確認します。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 受遺者が相続人であれば、令和5年4月1日改正で本当に単独申請できますか?

はい、令和5年4月1日施行の改正不動産登記法第63条第3項により、相続人に対する遺贈による所有権移転登記は登記権利者(受遺者)が単独で申請できます。法務省民二第538号(令和5年3月28日)通達でも明記されています。施行日前の遺贈であっても、施行日以降に登記申請するなら単独申請可能です。

Q2. 「相続させる」と「遺贈する」は遺言書で書き分ける必要がありますか?

はい、文言ひとつで法的性質と税率・手続きが大きく変わるため必ず書き分ける必要があります。「相続させる」は特定財産承継遺言となり登記原因が「相続」(単独申請・登録免許税0.4%)、「遺贈する」は遺贈となり登記原因が「遺贈」(相続人なら単独申請可・税率0.4%/相続人以外なら共同申請・税率2.0%)になります。遺言書作成時は必ず司法書士・弁護士・公証人に確認してください。

Q3. 第三者(相続人以外)への遺贈はどうやって登記しますか?

第三者への遺贈は改正後も共同申請が原則です。受遺者と相続人全員(または遺言執行者)が共同で申請します。相続人全員から印鑑証明書・実印付き登記原因証明情報を集める必要があり、相続人の中に協力しない方がいると手続きが止まります。遺言書作成時に遺言執行者を指定しておけば、受遺者と遺言執行者の2名だけで申請でき、相続人の協力は不要です。

Q4. 相続人への遺贈の登録免許税はなぜ0.4%なのですか?

登録免許税法別表第1の1号(2)イでは「相続による所有権移転」が0.4%とされており、受遺者が相続人の場合は実質的に相続と同一の扱いとされるため0.4%が適用されます。一方、受遺者が相続人以外の場合は同表1号(2)ハ「その他の原因による所有権移転」となり2.0%です。具体的には固定資産税評価額に税率を乗じて計算します。

Q5. 包括遺贈と特定遺贈の違いは何ですか?

包括遺贈は「全財産を」「3分の1を」のように割合で指定する遺贈で、受遺者は相続人と同一の地位を持ち(民法第990条)、債務も割合で承継し、遺産分割協議にも参加します。特定遺贈は「●●市●●町の土地を」のように特定の財産を指定する遺贈で、債務は原則承継せず、遺産分割協議にも参加しません。放棄の方法も異なります(包括は家裁申述・3か月以内、特定はいつでも意思表示で可)。

Q6. 相続と遺贈が併存している場合、どちらを先に登記すべきですか?

遺贈の登記を先に申請します。これは相続を原因とする登記が所有権や持分の「全部」を移転させる必要があり、「一部」の移転ができないというルールがあるためです。遺贈で先に持分を切り出し、残った相続人持分を相続登記で移すという順序になります。

Q7. 遺贈は相続放棄した相続人も受け取れますか?

原則として受け取れます。相続放棄は「相続人としての地位」を放棄するだけで、「受遺者としての地位」までは放棄しないためです。ただし、遺言書の文言が「相続させる」になっている場合(特定財産承継遺言)は、相続放棄により取得できなくなります。「遺贈する」と書かれた特定遺贈であれば、相続放棄後も受け取れます。

Q8. 自筆証書遺言で遺贈する場合は検認が必要ですか?

はい、法務局の保管制度を利用していない自筆証書遺言は家庭裁判所での検認が必要です(民法第1004条)。検認手続きには1〜2か月かかります。公正証書遺言、または法務局の自筆証書遺言保管制度を利用したものは検認不要です。スムーズな登記のためには、公正証書遺言または保管制度の利用をおすすめします。

Q9. 遺言執行者を指定していない場合はどうすればよいですか?

家庭裁判所に遺言執行者選任の申立てができます(民法第1010条)。利害関係人(相続人・受遺者など)が申し立てる必要があります。選任申立てから審判まで通常1〜2か月。選任を受けた遺言執行者が受遺者と共同で登記申請できるようになります。特に相続人以外への遺贈で相続人の協力が得られない場合は、この方法が実質的な解決策になります。

Q10. 遺贈の登記を司法書士に依頼すると費用はいくらかかりますか?

受遺者が相続人で単独申請できる場合は、相続登記の標準料金プラン(66,000円〜)または通常プラン(99,000円〜)と同等の費用感です。一方、第三者への遺贈で共同申請となる場合は、相続人全員との連絡調整や本人確認情報の作成(権利証紛失時)などの工数が加算されるのが一般的で、フルサポートプラン(297,000円〜)の対象になることがあります。事案によって工数が大きく変動するため、詳細は相続登記の費用ページをご覧いただくか、初回無料相談にてお見積りをご案内します。

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遺贈による不動産名義変更は、令和5年4月1日改正で単独申請が可能になり手続きの選択肢が広がった一方、受遺者が相続人か第三者かによって申請方式・税率・必要書類が大きく異なる複雑な分野です。

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この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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