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生前贈与の7年持ち戻し(要点まとめ)
● いつから:2026年中に開始した相続はこれまでどおり3年。2027年1月以降に開始する相続から段階的に延び、2031年以降は完全に7年になります。
● 対象:110万円以下の暦年贈与も加算対象(対象になるのは相続や遺贈などで財産を取得した人)。贈与税がゼロでも、贈与時の価額が相続税の計算に足し戻されます。
● 100万円控除:相続開始前3年より前(延長4年分)の贈与は、合計100万円まで加算されません。
● 相続時精算課税:年110万円の基礎控除が新設。110万円以下は相続時に加算されず、申告も原則不要です(初年度の届出は必須・一度選ぶと暦年課税に戻れません)。
● 不動産の注意:持分贈与は登録免許税2%+不動産取得税がかかり「コスト倒れ」のリスクも。税額と登記コストをセットで設計することが重要です。
「生前贈与=暦年贈与が基本」という常識が、2024年改正で大きく変わりました。
相続時精算課税に年110万円の基礎控除が新設される一方で、暦年贈与の持ち戻し期間が3年から7年へ段階的に延長されています。
本記事では、税額の細かい計算ではなく、不動産の名義(持分)を動かすと何が起きるかを中心に、司法書士の実務目線から一般の方向けに整理します(個別の評価・税額の試算や申告は税理士にご確認ください)。
この改正はすでに施行済みで、2026年7月現在も同じ枠組みです。今年(2026年)中に開始した相続では加算期間はこれまでどおり3年ですが、2027年以降に開始する相続から、加算期間が段階的に延びていきます。
正式には「令和5年度税制改正」で決まり、2024年(令和6年)1月1日以後の贈与から適用されている改正です。大きく分けて2つの柱があります。
この2つの改正により、「どちらの制度を選ぶべきか」「不動産の生前贈与は本当に得なのか」という判断が、以前より複雑になっています。
ざっくり言うと、「贈与の時は税負担を抑え、最終的に相続時にまとめて精算する」考え方の制度です。
司法書士としての警告ポイント
「選択後に暦年課税へ戻せない」というのが、最大の"取り返しのつかないポイント"です。税理士と一緒に制度選択を設計することを強く推奨します。
「2,500万円」+「毎年110万円」を"併用"できる
相続時精算課税は、従来からの特別控除2,500万円(毎年ではなく特定贈与者ごとの累計の限度額で、適用には期限内の贈与税申告が必要)に加えて、改正後は毎年110万円の基礎控除が適用されます。
110万円以下なら「贈与税の申告が不要」になるケース
令和6年中(以後)に、特定贈与者からの贈与合計が110万円以下なら、その年分の贈与税申告は不要、という整理が示されています。
ただし、初めて相続時精算課税を選ぶ年は「選択届出書」の提出が必要です(申告書が不要でも、届出書を単独提出する扱い)。届出書は最初の贈与を受けた年の翌年2月1日〜3月15日に提出し、期限を過ぎるとその年の贈与に相続時精算課税を適用できません。
※同じ年に複数の贈与者から相続時精算課税で贈与を受けた場合、110万円の基礎控除は贈与額(課税価格)に応じて按分されます。
「申告しなくていい=何もしなくていい」ではありません。最初の年の届出が抜けると、その年の贈与に制度を適用できず設計が崩れます。
相続時精算課税で贈与した土地・建物が、相続までに災害で大きな被害を受けた場合、一定要件で相続税の課税価格に加算する価額を減額できます(被災価額を控除)。
不動産は"物理的に価値が落ちるリスク"がある資産で、この特例はそのリスクを制度上ケアするものです。万一に備えて、写真・修繕見積書・罹災証明書・保険金の支払資料などを保管しておくと、申請時に慌てずに済みます。
参考:国税庁「相続時精算課税適用者が特定贈与者から贈与により取得した土地又は建物に係る災害損失の額がある場合の相続税の課税の特例について」
相続や遺贈などで財産を取得した人が、被相続人から一定期間内に受けた暦年贈与は、相続税の計算上「相続財産に加算(持ち戻し)」されます。
そして2024改正で、この「一定期間」が相続開始前7年以内へ段階的に延長されました。
国税庁の整理では、相続開始日により加算対象期間が変わります。
「今すぐ7年全部が一律適用」というより、"相続開始日ベースで段階的に広がる"ので、年表での理解が必須です。
相続開始(死亡)の年ごとに、加算対象となる暦年贈与の期間を整理すると次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.4161の区分を年別に展開)。
| 相続開始の年 | 加算対象となる贈与 | 加算期間の目安 | 100万円控除 |
|---|---|---|---|
| 2026年(今年) | 相続開始前3年以内の贈与 | 3年 | なし |
| 2027年 | 2024年1月1日〜死亡日の贈与 | 最長約3〜4年 | あり※ |
| 2028年 | 2024年1月1日〜死亡日の贈与 | 最長約4〜5年 | あり |
| 2029年 | 2024年1月1日〜死亡日の贈与 | 最長約5〜6年 | あり |
| 2030年 | 2024年1月1日〜死亡日の贈与 | 最長約6〜7年 | あり |
| 2031年以降 | 相続開始前7年以内の贈与 | 7年 | あり |
※100万円控除(相続開始前3年より前の贈与について総額100万円まで加算しない取扱い)は、相続開始日が2027年1月2日以後の場合に適用されます。2027年1月1日ちょうどに相続が開始した場合は、加算対象が2024年1月1日以降=ちょうど3年分となり、3年を超える部分がないためです。
2023年12月31日以前の贈与は、2027年以降に開始する相続では加算対象になりません(加算対象期間の起点が2024年1月1日のため)。一方、2026年中に開始した相続は「相続開始前3年以内」で判定するため、2023年の贈与が加算されることはあり得ます。
暦年贈与の持ち戻しは、贈与税がかかったかどうかに関係なく加算されます。
つまり、基礎控除110万円以下の贈与財産も加算されると明記されています。
※なお、贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)の適用部分や、住宅取得等資金の非課税の適用部分など、加算の対象にならない財産もあります。
これが不動産対策で痛い理由は、後述の「コスト倒れ」問題に直結します。
相続開始日が2027年1月2日以後の場合、相続開始前3年を超える部分(いわゆる延長された4年間)の贈与については、その贈与時の価額の合計から総額100万円を控除して加算する取扱いがあります(国税庁タックスアンサーNo.4161)。
ただし"不動産の名義変更"は税以外のコストが大きいので、100万円控除があっても「やったのに得してない」ケースが現実に出ます。
不動産を丸ごと一気に贈与すると、税以前に「登記・費用・実務」の壁が出ます。そこで現実的に検討されやすいのが、持分を小分けにして移す(持分贈与)です。
例:贈与税評価(概算)3,000万円の不動産の場合
110万円 ÷ 3,000万円 = 約3.67%
→ 毎年「約3.67%」ずつ持分移転を進めるイメージ(概算)
※実際の評価は路線価等の税評価で動くので、割合の確定は税理士にご確認ください。
※登記する持分は「10分の1」のような分数で特定します。また、登録免許税は贈与税の評価額ではなく、原則として固定資産税評価額(固定資産課税台帳の価格)に移転する持分を乗じた額をもとに計算します。
「毎年110万円分を10年間贈与する」と最初に一括で約束するのはNGです。各年の独立した贈与ではなく「定期金に関する権利」の贈与として、まとめて贈与税が課されるおそれがあります。毎年、その都度贈与契約を結び、契約書を作成してから登記するのが安全です。
持分贈与を"実体に合わせて"進めるなら、通常はその都度、持分移転登記をします。このとき、贈与による所有権移転は登録免許税が原則1,000分の20(2%)です。当センターの具体的な登記費用は贈与登記の費用(料金プラン)をご覧ください。
相続(0.4%)に比べて贈与(2%)は登記コストが重い、というのが実務のリアルです。だからこそ「税の得」と「登記・取得税等のコスト」を必ず見比べます。
なお、相続の場合、一定の土地の相続登記には登録免許税の免税措置もあります。相続まで待った場合の登記費用の目安は相続登記の費用ページで確認できます。
相続直前に不動産贈与をすると、持ち戻しで相続税の計算上は"手元にあった前提"になりやすい一方、名義を動かしたことで—
結果:節税のつもりが"手続き費用だけ増えた"という、いわゆるコスト倒れが起こり得ます。
| 項目 | 相続時精算課税(改正後) | 暦年贈与(改正後) |
|---|---|---|
| 年間の基礎控除 | 110万円(新設) | 110万円(従来通り) |
| 持ち戻し期間 | 110万円超の部分は相続時に加算 (110万円以下は加算されない) | 3年→7年へ段階的延長 (110万円以下も加算対象) |
| 特別控除 | 2,500万円(併用可能) | なし |
| 制度の撤回 | 不可(一度選択すると戻せない) | - |
| 災害時の特例 | あり(被災価額を控除可能) | なし |
| 初年度の手続き | 選択届出書の提出必須 | 110万円超の場合のみ申告 |
暦年贈与の持ち戻しが広がる中で、相続時精算課税の年110万円基礎控除が「小分け移転」と相性が良くなりました。
ここは税理士の出番(評価・税額シミュレーション)ですが、司法書士としては「登記を何回やるか/共有がどう増えるか」が設計の肝になります。
贈与税額の概算は贈与税シミュレーションで試算できます。また、「そもそも生前贈与と相続のどちらで渡すのが得か」という入口の比較は生前贈与と相続はどっちが得?で詳しく解説しています。
持ち戻し(加算)は、相続・遺贈等で財産を取得した人が、被相続人から受けた暦年贈与について加算する仕組みです。
このため、典型的には「相続で何も受けない孫」は持ち戻しの網から外れる場面があります(※ただし設計次第)。
「孫に贈与すれば安全」と短絡すると、遺言設計や相続人関係で前提が崩れます。ここは税理士・司法書士の同時設計が安全です。
贈与税の基本的な仕組み(税率・計算方法・特例の全体像)は贈与税の解説ページにまとめています。
贈与による名義変更の必要書類の一覧は生前贈与の不動産名義変更の必要書類で確認できます。
2024年の贈与税制改正は、「税の選択肢」だけでなく、不動産の名義をどう安全に動かすか(持分設計・登記・ローン・将来売却)をセットで考える局面が増えました。
7年持ち戻しの本質は、「生前贈与の効果が薄れた」だけではなく、不動産の名義変更を伴う場合に"費用と手間が先に確定する"点です。やり方次第で、相続時精算課税(110万円控除)や別の組み立てが有利になることもありますが、制度選択には戻れないものもあります。
「遺言で残すか、生前贈与で渡すか」という入口から迷っている方は、遺言と生前贈与の比較ガイドも参考にしてください。
生前贈与による不動産名義変更の手続きに不安のある方は、以下のリンクをクリックしてください。
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司法書士法人 不動産名義変更手続センター
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