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死後事務委任契約の要点(この記事のまとめ)
● どんな契約か:葬儀・納骨、役所への届出、公共料金や賃貸の解約、遺品整理といった「亡くなった後の実務」を、生前のうちに第三者へ委任しておく契約です。遺言では実現できない事実行為をカバーします。
● 費用は3層で考える:①契約時の費用(契約書作成報酬5万〜15万円+公証人手数料約6,500円〜)②死後の執行報酬 ③実費・預託金(葬儀費用30万〜130万円程度ほか)。依頼先の公表料金では総額50万〜150万円程度が一般的です。
● 公正証書の手数料は2025年10月に引き下げ:改正公証人手数料令により、死後事務委任契約は別表額の10分の5に。報酬の定めがなければ6,500円で、契約単体なら公証役場への支払いは1万円前後です。
● 費用の原資の設計が最大の要点:金融機関へ死亡を伝えると口座は止まります。預託金の準備と、遺言書での解約・払戻し権限の定めをセットで設計します。
● カバーできない領域:財産の分配・相続登記・相続放棄の判断は死後事務委任契約の範囲外です。また任意後見契約だけでは死後事務を任せられません(民法873条の2は成年後見人のみが対象)。
● 当センターの対応:死後事務委任契約は、関東対応エリア(主に東京・埼玉・千葉・神奈川)で、公正証書遺言とセットでのご相談をお受けしています(規定料金はなく個別のお見積り)。不動産の名義変更・相続登記は全国対応です。
「自分が亡くなった後、葬儀は誰が手配するのだろう」「賃貸住宅の解約や公共料金の停止を頼める人がいない」——こうしたご相談が増えています。
身寄りのない方だけでなく、ご家族がいても「手続きの負担をかけたくない」「葬儀や納骨は自分の希望どおりにしてほしい」という理由で、生前に手配しておく方が多くなりました。
亡くなった後に必要な手続きを、生前のうちに信頼できる相手へ託しておく仕組みが死後事務委任契約です。費用の内訳を中心に、何をどこまで頼めるのか、頼めないことは何かを整理します。
死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に必要となる様々な手続きや事務を、生前のうちに信頼できる第三者(受任者)に委託しておく契約のことです。
委任者(ご本人)が生きているうちに、司法書士や弁護士などの専門家、あるいは信頼できる知人との間で契約を結び、死後に発生する事務の内容、権限の範囲、そして必要な費用について取り決めておきます。
「死後事務」とは、法律上の厳密な用語ではありませんが、実務上は人が亡くなった後に発生する、相続(遺産承継)以外の諸手続き全般を指します。
具体的には次のような業務が含まれます。
これらは亡くなった本人が行うことは物理的に不可能であり、また遺言書に書いたとしても、遺言の法的効力が及ばない「事実行為」が多いため、遺言だけではカバーしきれない領域となります。
「身寄りのない方が使うもの」と思われがちですが、実際にご検討されるのは次のような方です。
判断能力があるうちにしか契約できません
死後事務委任契約は、ご本人が契約内容を理解し判断できる状態(意思能力があること)を前提とする契約です。認知症などで判断能力が低下してからでは、契約しても後から無効を主張されるおそれがあります。「まだ早い」と思えるうちが、実は適切な時期です。
民法第653条第1号は、委任が「委任者又は受任者の死亡」によって終了すると定めています。この原則に従えば、本人が亡くなった時点で委任契約は終了することになります。
しかし、この規定は任意規定(当事者の合意で変更できる規定)と解されており、「本契約は委任者の死亡によっては終了しない」という合意によって、死後も契約の効力を持続させることができます。
この点について最高裁判所は、自己の死後の事務を含めた委任契約が成立した場合には、当然に「委任者の死亡によっても契約を終了させない旨の合意」を含む趣旨であり、民法第653条はそのような合意の効力を否定するものではない、と判断しています(最高裁平成4年9月22日判決・金融法務事情1358号55頁)。つまり特約は契約成立の絶対条件ではありませんが、後日の紛争を防ぐため、契約書に明記しておくのが実務の通例です。
判例が認めた範囲には限界があります
最高裁が認めたのは「死後の事務を委任する契約が、委任者の死亡によって当然には終了しない」という点までです。どのような内容でも合意さえあれば死後に実現できると判断したわけではありません。
とくに、財産の処分を第三者に委ねる内容は、遺言で定められる事項が法律上限られていることとの関係で問題になり得ます。また、委任事務の処理期間が長期にわたる契約は、相続人の負担が過重だとして争われるおそれがあります。委任事務の範囲・費用の上限・処理期間をできるだけ具体的に定めておくことが、実務上の要点です。
死後事務委任契約の費用は、①契約書の作成など初期の費用 ②死後に事務を実行する受任者の報酬 ③葬儀・納骨・遺品整理などで第三者へ支払う実費の3つに分かれます。この3つを混ぜて考えると総額の見通しが立たなくなるため、順に見ていきます。
※よく混同されますが、「預託金」は費用の種類ではありません。②と③の支払原資を、生前にあらかじめ確保しておくためのお金の預け方を指します。②③と預託金を足し合わせて計算すると二重に数えることになります。
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 契約書作成報酬 | 5万円〜15万円 | 司法書士・弁護士などへの報酬。委任する事務の範囲や複雑さにより変動します |
| 公証人手数料 | 約6,500円〜 | 基本手数料6,500円に、正本・謄本の発行手数料などが加わります(詳細は下記) |
費用の説明で見落とされがちなのが、2025年(令和7年)10月1日に、公証人手数料令が約20年ぶりに改正されたという点です。この改正では、目的の価額が200万円を超える公正証書の手数料が引き上げられた一方で、養育費や死後事務委任に関する公正証書の手数料は引き下げられました(令和7年政令第263号)。
日本公証人連合会の公表資料によると、死後事務委任契約の公正証書の手数料は、公証人手数料令9条別表の手数料額の10分の5とされています。報酬の定めがない場合は目的の価額を算定できないため500万円とみなされ(同令16条)、別表の1万3,000円の半額にあたる6,500円が基本手数料となります。
報酬の定めがある場合の計算方法
報酬の定めがある場合は、報酬額の2倍が「目的の価額」となり、これに対応する別表の手数料額の2分の1が手数料になります。
たとえば報酬50万円なら、目的の価額100万円 → 別表5,000円 → その2分の1で2,500円。報酬300万円なら、目的の価額600万円 → 別表2万円 → その2分の1で1万円です。
「手数料が報酬額の2倍になる」という意味ではありませんのでご注意ください。死後事務委任契約単体であれば、公証人手数料が1万円を大きく超えることは通常ありません。
これに加えて、公正証書の正本・謄本の発行手数料がかかります。紙での発行は用紙1枚につき300円、電子データでの発行は1件につき2,500円です。また、証書を紙に出力した枚数が一定枚数を超えると、超える1枚ごとに300円が加算されます。死後事務委任契約だけを作成するのであれば、公証役場に支払う費用は合計1万円前後に収まるのが通常です。
ただし、遺言公正証書(財産の総額が1億円以下の場合は1万3,000円の遺言加算があります)や任意後見契約(1契約につき1万3,000円)と同時に作成する場合は、それぞれの手数料が別個に算定されて合算されます。セットで作成する場合に合計が2万円〜3万円台になるのは、このためです。
手続きを実際に実行したことに対する報酬です。司法書士の報酬は、2003年(平成15年)の報酬基準の撤廃により、各事務所が自由に定めることになっています。日本司法書士会連合会が公表している報酬アンケート(直近は2024年3月実施)にも死後事務委任契約や財産管理業務の項目はなく、この分野に公的に定められた相場は存在しません。
以下は、死後事務を取り扱う事務所が公表している料金を参照した一例です(参照時点:2026年8月)。業界の統一基準ではなく、相場を示すものでもありません。税込・税別の別、基本報酬に含まれる業務の範囲、預託金を含むかどうかは事務所ごとに異なります。
| 業務内容 | 報酬の目安 |
|---|---|
| 基本報酬(受任者報酬) | 10万円〜 |
| 葬儀・納骨・永代供養の執行 | 10万円〜20万円 |
| 役所・公共料金等の手続き | 5,000円〜/1件 |
| 遺品整理・住居明渡しの手配と立会い | 5万円〜10万円+時間給 |
| デジタル遺品の整理 | 2万円〜5万円 |
| ペットの引渡し | 5万円〜 |
※上記は公表料金の一例であり、依頼先・委任する事務の範囲によって大きく変わります。実際の金額は必ず個別のお見積りでご確認ください。
実際に葬儀社や遺品整理業者などへ支払うための費用です。これらは実費であり、司法書士の報酬ではありません。この実費と②の報酬を賄うために生前に預けるお金が「預託金」です。
| 項目 | 目安金額 |
|---|---|
| 葬儀費用 | 30万円〜130万円程度 |
| 永代供養・納骨にかかる費用 | 10万円〜50万円 |
| 遺品整理費用 | 10万円〜50万円 |
| 未払医療費・施設利用料 | 病院・施設へ残高を確認して算出 |
| 家屋の解体費(必要な場合) | 現地調査に基づく個別見積り |
葬儀費用については、経済産業省「特定サービス産業動態統計調査(葬祭業)」で、調査対象企業の売上高を取扱件数で割った値が2024年で約122万円でした(2019年 約134万円 → 2021年 約113万円と推移)。ただしこれは調査対象企業の平均売上単価であり、葬儀の形式ごとの相場を示すものではありません。直葬(火葬のみ)であれば30万円前後に収まることもあります。預託額は統計値ではなく、ご希望の形式と地域を葬儀社に伝えて取得した個別見積りをもとに決めます。
※葬祭単価の統計は調査対象企業の売上をもとにしたもので、宗教者へのお礼などは含まれていません。なお同調査は2024年12月分をもって終了しています。※葬儀費用以外の金額は、各事業者の公表価格を参照した例であり、公的な統計に基づく相場ではありません(参照時点:2026年8月)。地域・物件の状況・依頼先により大きく変動しますので、個別に見積りを取得してください。
| 依頼先 | 費用の傾向 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 司法書士・行政書士 | 公表料金では総額50万円〜150万円程度の例が多く見られます | 取扱いの有無と対応範囲は事務所ごとに異なります。不動産登記は司法書士、税務申告は税理士、紛争対応は弁護士と、法定の業務範囲に応じて別途の依頼が必要になる場合があります |
| 弁護士 | 報酬はやや高めの傾向 | 親族間で争いが予想される場合や、複雑な利害関係がある場合 |
| 民間の身元保証会社・一般社団法人 | 生前にまとまった預託金(100万円〜200万円)を預けるプランが多い | 身元保証や生活支援もあわせて必要な場合。ただし後述のトラブルに注意が必要です |
| 親族・知人 | 報酬なし〜謝礼程度 | 信頼できる方がいる場合。ただし手続きの負担は重く、受け手側の負担も考慮が必要です |
死後事務委任契約でもっとも設計を誤りやすいのが、「その費用をどこから支払うのか」という点です。契約内容が立派でも、支払いの原資が確保されていなければ実務は止まります。
金融機関に死亡の連絡をすると、原則として口座の入出金が停止されます。ゆうちょ銀行は公式サイトで「お申し出いただいた貯金口座は、停止設定を行います。」「相続による調査で判明した口座も、停止設定を行います。」と案内しており、申し出た口座だけでなく、相続手続きの調査で判明した他の口座も停止されます。
そのため、「葬儀費用や遺品整理費用は死後に口座から出せばいい」と考えていると、必要なタイミングで資金を動かせなくなる可能性があります。凍結された口座を解除する手順については「相続による口座凍結の解除方法」で詳しく解説しています。
必要な費用を生前に引き出し、受任者に預けておく方法です。死亡直後の支払原資を確保しやすいため、実務ではこれが基本になります。ただし、預けておけば必ず守られるというものではありません。
一方で、受任者に多額の金銭を長期間預けることになるため、受任者による横領や使い込みのリスクはゼロではありません。預ける際は、次の3点を必ず確認してください。
「分別管理の預り金口座」と「信託」は別のものです
司法書士事務所が用いる「預り金口座」は、自己の財産と区分して管理する分別預金であり、信託銀行・信託会社を相手方とする信託法上の信託契約とは異なります。また、家族信託で使われる「信託口口座」とも別のものです。
国が公表する「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)は、預託金について信託契約による保全が望ましいとしたうえで、分別預金などの方法では必ずしも倒産隔離が効かず、破綻時に十分な資金の還付を受けられない可能性があると注意を促しています。「安全な口座」と一括りにせず、どちらの方法なのかを確認してください。
※司法書士は、依頼者からお預かりした金銭を自己の金銭と区別し、預り金であることを明確にして管理することを、日本司法書士会連合会の定める行為規範で求められています。ただしこれは自主規範であり法律・政令ではありません。分別管理をしていることと、受任者が破綻したときに資金が保全されることは別の問題です。
預貯金を費用に充てる道筋をはっきりさせるには、遺言書との組み合わせが有効です。
遺言執行者の権限は、遺言の内容によって定まります(民法第1012条第1項)。そのため実務では、遺言書に預貯金の解約・払戻しの権限を明記したうえで、死後事務の受任者を遺言執行者にも指定しておく設計をとります。ただし、遺言執行者に指定しておけば支払いが保証されるわけではありません。遺言書と死後事務委任契約の費用負担の定めを整合させ、取引先の金融機関が求める書類も事前に確認しておく必要があります。当センターが死後事務委任契約をお受けする際に公正証書遺言とのセットを前提としているのも、この資金の流れを契約段階で固めておくためです。
※特定の預貯金を特定の相続人に相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)がある場合には、民法第1014条第3項により、遺言執行者は法律上当然にその預貯金の払戻しを請求できます(2019年7月1日施行)。ただし解約の申入れまでできるのは「その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る」とされており、この規定は預貯金を遺贈した場合には適用がありません。適用範囲が限られるからこそ、遺言書に権限を書いておくことが実務上の定石になっています。なお、遺言執行者が払い戻した預貯金は相続財産ですので、死後事務の費用に充てるには、遺言書と死後事務委任契約の双方で費用負担の定めを整合させておく必要があります。
「預貯金の仮払い制度」は死後事務の受任者には使えません
相続人がいる場合には、遺産分割の前でも預貯金の一部を単独で引き出せる「遺産分割前の預貯金の払戻し制度」(民法第909条の2・2019年7月1日施行)があります。引き出せる額は「相続開始時の預貯金債権の額 × 3分の1 × その相続人の法定相続分」で、同一の金融機関からは150万円が上限です。
ただしこの制度を行使できるのは共同相続人本人であり、死後事務委任契約の受任者が直接請求できる制度ではありません。相続人がいらっしゃらない方(おひとりさま)も利用できません。だからこそ、死後事務の費用は預託金であらかじめ確保しておく必要があります。
また、この制度で払い戻した分は後の遺産分割で「一部の分割によりこれを取得したもの」とみなされて精算されます。加えて、払い戻した預貯金の使い道には注意が必要です。被相続人の生前の借入金の返済や私的な費消に充てると相続財産の処分にあたり、相続放棄ができなくなるおそれがあります(法定単純承認・民法第921条第1号)。なお、引き出した預貯金から社会通念上相当な範囲の葬儀費用を支払う行為については、相続財産の処分にはあたらないと判断した裁判例があります。相続放棄を検討されている方がいる場合は、支出の目的について事前に確認してください。制度の詳細は「預貯金の仮払い制度」をご覧ください。
預託金は数十万円から数百万円になるため、「その現金を今は用意できない」という方もいらっしゃいます。その場合の選択肢を整理します。
※なお、埋葬・火葬を行う方がいないとき、または判明しないときは、死亡地の市町村長が埋葬または火葬を行うこととされています(墓地、埋葬等に関する法律第9条第1項)。これは最終的な公的セーフティネットであり、ご希望の葬送を実現する手段ではありません。
死後事務委任契約の対象となる業務は多岐にわたり、委任者のライフスタイルや資産状況、ご希望に応じて個別に設計できます。ただし何でも契約で決められるわけではありません。法令、公序良俗、第三者との契約や利用規約、相続人の権利に反しない範囲に限られます。
死亡届の「届出人」になれる人は法律で決まっています
死亡届の届出人になれるのは、親族・同居者・家主・地主・家屋または土地の管理人のほか、後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者です(戸籍法第87条)。この列挙に「死後事務委任契約の受任者」は挙げられていません。
もっとも、記入済みの届書を窓口へ持参する方は届出人でなくても差し支えありません。また2025年10月以降、死亡した場所がご本人の居所であり、その居所への立入りを委任等で認められている場合には、死後事務委任契約の受任者を戸籍法第87条第1項第3号の「家屋管理人」として届出資格を認める取扱いを案内する自治体が出ています。取扱いは自治体により異なりますので、契約設計の段階で対象の市区町村にご確認ください。
年金の手続きは「原則不要」の場合があります
年金を受けていた方が亡くなったときの「年金受給権者死亡届(報告書)」は、厚生年金保険は10日以内、国民年金は14日以内が期限です。ただし日本年金機構にマイナンバーが収録されている方については、この死亡届は原則として不要です。
一方で、亡くなった月分までの未支給年金がある場合は、生計を同じくしていたご遺族による請求が別途必要で、こちらはマイナンバーが収録されていても省略できません(様式は「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」)。なお、障害基礎年金・遺族基礎年金のみを受けていた方の提出先は市区町村役場です。
届出が遅れて亡くなった日の翌日以後の年金を受け取ってしまうと、後日返還を求められます。手続きの詳細は「年金受給者が死亡したら?未支給年金・遺族年金の届出期限と必要書類」で解説しています。
※健康保険については、従来の健康保険証が2024年12月2日以降新たに発行されなくなり、有効期限も2025年12月1日で終了しています。現在返還を求められることがあるのは「資格確認書」です(「資格情報のお知らせ」の取扱いは保険者により異なります)。※運転免許証は、亡くなった方の免許証をご家族が返納する義務はありません(各都道府県警)。更新連絡などの通知を止めたい場合に手続きを行うものです。※年金手帳は2022年(令和4年)3月31日で廃止され、基礎年金番号通知書に切り替わっています。年金の死亡届に添付するのは年金証書です。
葬儀を行うと受け取れる給付があります
要件を満たす方が葬祭・埋葬を行った場合、加入していた医療保険から給付を受けられることがあります。請求できる方や必要な要件は制度ごとに決まっており、葬儀を行えば必ず受け取れるものではありません。見落とされやすい手続きですので、契約時に確認しておきます。
※ここでいう「埋葬料」は健康保険からの給付(5万円)であり、上の実費表に挙げた「永代供養・納骨にかかる費用」とは別のものです。※ほかにも受け取れる給付がある場合があります。「人が亡くなった際にもらえる給付金まとめ」で一覧にしています。
まずは各サービスの生前設定を使ってください
デジタル遺品の対策として「IDとパスワードを受任者に預けておく」方法が紹介されることがありますが、多くのサービスは利用規約でアカウントを本人限りのものと定めており、第三者がログインすることを禁じています。ログイン情報を預けても、規約違反となって使えないことがあります。
第一に検討すべきは、主要サービスが用意している生前設定です。Facebookの「追悼アカウント管理人」、Googleの「アカウント無効化管理ツール」、Appleの「故人アカウント管理連絡先」など、あらかじめご本人が指定しておけば、死後に指定された方が定められた範囲で手続きできます。
死後事務委任契約は、これらの生前設定を補完する位置づけで設計します。一部のサービスは、遺言書や委任状など権限を証明する書類による削除リクエストも受け付けています。どのアカウントをどう扱ってほしいかを一覧にして契約書に添付し、契約とあわせて各サービスの生前設定も済ませておくのが確実です。
「相続の対象になるもの」は、契約があるだけでは処分できません
ここで挙げた業務のうち、賃借権・室内の家財・持ち家・ペットは、原則として相続の対象です。死後事務委任契約を結んでいるというだけで、受任者が当然に解約・廃棄・解体・譲渡できるわけではありません。
とくに賃貸住宅については、賃貸借契約の解除と残置物の処理をそれぞれ専用の条項として設計し、廃棄しない物・換価する物・処理を始める時期まで具体的に定めておく必要があります(国も、賃貸借の解除と残置物処理を別の委任として設計するモデル契約条項を示しています)。持ち家の解体やペットの引渡しも、相続人など処分の権限を持つ方の確認と、引受先の事前承諾が別途必要です。
実務でもっとも紛争になりやすいのが、この賃貸解約と遺品整理です。受任者が善意で家財の廃棄を進めた結果、後から現れた相続人から「貴金属や重要書類を勝手に処分された」と追及される例があります。また、相続人の方が受任者と一緒に遺品の処分に関わると、相続財産を処分したとみなされて相続放棄ができなくなることもあります(法定単純承認)。
契約書に処分の権限を書くだけでは足りません。着手前に相続人の有無と意向を調べ、貴重品の目録を作り、現場の写真を残したうえで作業を始めるのが実務の鉄則です。
死後事務委任契約は便利な制度ですが、万能ではありません。とくに重要なのは、相続財産の分配や処分は死後事務委任契約の範囲外であるという点です。
死後事務委任契約だけではできないこと
相続人が相続放棄を検討している場合、遺品整理や未払費用の精算をどこまで受任者が行うかが相続人側の判断に影響する可能性があります。契約設計の段階で、費用は預託金から支出することを明記し、相続人が判明した時点で速やかに連絡する条項を入れておくことをお勧めします。
これらの手続きには、それぞれ期限があります。全体像は「相続手続きの期限一覧【早見表】」および「人が亡くなった後の手続き完全チェックリスト」でご確認いただけます。相続放棄については「相続放棄完全ガイド」で詳しく解説しています。
死後事務委任契約を理解するには、遺言書・任意後見契約・身元保証サービスとの違いを知っておくことが重要です。
| 比較項目 | 遺言書 | 死後事務委任契約 |
|---|---|---|
| 主な目的 | 財産の承継・分配(誰に何を渡すか) | 事務手続きの実行(誰に何をしてもらうか) |
| 法的根拠 | 民法(厳格な要式行為) | 委任・準委任契約(民法第643条・第656条)+死亡によっても終了しない旨の合意 |
| 対象事項 | 遺産分割方法の指定、遺贈、認知など | 葬儀、埋葬、役所手続き、遺品整理など |
| 強制力 | 財産事項には強い法的効力がある | 契約内容として受任者に履行義務が生じる |
| 葬儀の指定 | 葬儀の方法そのものは「付言事項」となり法的拘束力は弱い(ただし祭祀主宰者の指定は別。下記参照) | 契約事項として拘束力を持つ |
| 即時性 | 自筆証書遺言は家庭裁判所の検認に時間がかかる(公正証書遺言と法務局に保管した自筆証書遺言は検認不要) | 死亡直後から速やかに業務を開始できる |
遺言書は「財産」に関する指定には強力ですが、葬儀の方法や遺品整理といった「事実行為」については付言事項として希望を書くに留まり、相続人がそれに従う法的な義務はありません。
一方、死後事務委任契約は、葬儀や納骨のご希望を受任者の契約上の義務として具体化できる点に意味があります。財産の行き先は遺言書で、実際の手続きは死後事務委任契約で。それぞれ単独でも機能しますが、費用の支払いや残余財産の扱いまで整えるなら併用が有効です。遺言書の作り方は「公正証書遺言とは?自分で進める流れや司法書士への依頼方法」で解説しています。
「祭祀主宰者の指定」だけは遺言でも法的な効力を持ちます
お墓・仏壇・系譜(祭具など)は、通常の相続財産とは別に、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。そして被相続人が祭祀主宰者を指定していれば、その方が承継します(民法第897条第1項ただし書)。この指定は「付言事項」ではなく法的な効力を持ちます。
祭祀主宰者は、実務上ご遺骨の帰属や納骨先の決定に深く関わります。納骨・改葬まで死後事務でご希望どおりに進めたい場合は、祭祀主宰者を誰にするかを遺言書で定めておくと、受任者との役割関係がはっきりします。
※死後事務は、葬儀社との契約締結や解約の意思表示といった「法律行為」の委託(民法第643条の委任)と、遺品整理や供養の手配といった「法律行為でない事務」の委託(同第656条の準委任)の両方の性質をあわせ持ちます。
| 比較項目 | 任意後見契約 | 死後事務委任契約 |
|---|---|---|
| 活動時期 | 家庭裁判所が任意後見監督人を選任した時〜死亡時まで | 死亡後〜手続き完了まで |
| 終了事由 | 本人の死亡により終了 | 本人の死亡により開始 |
| 主な業務 | 財産管理、身上監護(契約行為) | 葬儀、埋葬、死後手続き |
| 死後事務 | 原則として行えない(応急処分・事務管理による限定的な対応にとどまる) | 契約で定めた範囲で可能 |
任意後見契約は委任契約ですので、本人が亡くなった時点で終了します(民法第653条第1号)。
よくある誤解:「任意後見人なら家庭裁判所の許可を得て死後事務ができる」は誤りです
2016年(平成28年)10月13日に施行された改正で新設された死後事務の規定(民法第873条の2)は、成年後見(法定後見)のみを対象としており、法務省も「保佐、補助、任意後見及び未成年後見には適用されません」と明示しています。
したがって、任意後見人が家庭裁判所の許可を得て火葬・埋葬の契約を締結する、という制度は存在しません。任意後見人にできるのは、急迫の事情がある場合の応急処分(民法第654条)や事務管理(民法第697条)に基づく限定的な対応にとどまります。
だからこそ、死後事務委任契約をあわせて締結しておくことで、亡くなった後の空白期間を作らずに事務を引き継ぐことができます。
※すでに成年後見人・保佐人が就いている方が亡くなった場合の相続手続きについては「成年後見人・保佐人がいる相続の遺産分割協議」をご覧ください。
近年増えているのが、身元保証・生活支援・死後事務をパッケージで提供する民間の「高齢者等終身サポート事業」です。死後事務委任契約と混同されやすいため、違いを整理します。
| 比較項目 | 死後事務委任契約(専門職) | 身元保証・終身サポートサービス |
|---|---|---|
| 対象時期 | 死亡後の事務が中心 | 生前の身元保証・入院手続き・生活支援から死後事務まで |
| 契約形態 | 委任・準委任契約(個別に設計) | 事業者が定めたパッケージ契約が多い |
| 費用 | 事務の範囲に応じて個別に算定 | 生前にまとまった預託金を預ける方式が多い(100万円〜200万円) |
| 規律 | 受任者が士業の場合は各士業の規律に服する | 国のガイドラインはあるが法的拘束力・罰則はなく、認証制度も未設置 |
入院時の身元保証や生前の見守りまで必要な場合は、こうしたサービスが選択肢になります。ただし後述のとおり、契約金額が高額になりやすく、解約時の返金をめぐるトラブルが実際に発生しています。
任意後見契約には、契約締結時から受任者に財産管理等の事務を委託し、判断能力が低下した後は任意後見契約に切り替える「移行型」と呼ばれる形態があります。実務では、この移行型に見守り契約と死後事務委任契約を組み合わせ、次のような切れ目のない体制をつくることが一般的です。
死後事務委任契約は委任・準委任契約であり、当事者の合意だけで成立する不要式契約です。公正証書にすることは法律上の要件ではなく、私文書の契約書でも契約自体は有効に成立します。
もっとも実務上は、公正証書での作成を強くお勧めしています。死後事務の受任者が手続きを行う相手方は、市区町村役場、金融機関、病院、葬儀社、不動産管理会社など多岐にわたります。公証人が本人の意思と本人確認を行った公文書であれば、受任者の権限を示す際の説得力が大きく異なります。ただし、公正証書にしたからといって、手続先に対応を強制できたり、法令上認められていない権限が受任者に与えられたりするわけではありません。各手続先が求める書類や届出資格は別途確認が必要です。
公正証書のメリットと、知っておくべき保存期間
ただし、公証役場に原本が保管される期間は公証人法施行規則第70条で原則20年とされています。遺言公正証書は「特別の事由」にあたるとして長期保存の取扱いがなされていますが、死後事務委任契約について同様の取扱いは公表されていません。これは原本の保存期間であって、契約の有効期間ではありません。20年が過ぎたことだけを理由に契約が失効したり、結び直しが必要になったりするわけではありません。交付を受けた正本・謄本をご本人と受任者の双方で確実に保管し、住所・財産・ご希望・受任者の状況が変わったときに内容を見直します。
万一、正本・謄本を紛失した場合は、原本が保存されている期間内であれば、作成した公証役場に謄本の交付を請求できます(手数料は紙1枚300円、電子データ1件2,500円)。取扱いは公証役場にご確認ください。
ご相談から公正証書の作成までは、1〜2か月程度かかることが一般的です。ご希望の聞き取り、相続人の確認、契約内容の設計、公証役場との事前打ち合わせと日程調整が必要になるためです。お急ぎの事情がある場合は、最初にお伝えください。
公正証書遺言と違い、証人の立会いは通常必要ありません
証人2人以上の立会いが必要なのは公正証書遺言で、これは民法第969条第1項第1号が定める遺言の方式です。死後事務委任契約の公正証書に、証人は通常必要ありません。
本人確認は、印鑑登録証明書と実印、または運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等と認印で行います。ただし、嘱託人が目の不自由な方や文字を読み書きできない方である場合には、公証人法第30条により立会人が必要です。
死後事務委任契約のトラブルで最も多いのが、契約時には想定していなかった相続人が後から現れるケースです。
ご自身では「身寄りがない」と考えていても、法律上の相続人が存在することは珍しくありません。たとえば次のような場合です。
相続人がいる場合、その方には遺留分や遺産分割の権利があり、預託金の残金や遺産の行方に利害を持ちます。誰が相続人になるのかを契約前に確定させておくと、死後の紛争リスクは大きく下がります。
相続人調査は生前にできます
ご自身の出生から現在までの戸籍を取り寄せれば、法律上の相続人を確定できます。2024年3月からは戸籍の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できるようになりました。
当センターは相続手続きに伴う戸籍収集を日常的に行っています。この相続人調査は、死後事務委任契約のご相談かどうかにかかわらず、全国どちらの方からでもお受けできます。調査の結果を踏まえて、遺言書と死後事務委任契約の設計を決めるのが確実な順序です。
広域交付の使い方は「戸籍謄本を本籍地以外で取る方法|広域交付の必要書類と注意点」で解説しています。
見落とされがちですが、死後事務は受任者がご本人の死亡を知らなければ何も始まりません。とくにおひとりで暮らしている方の場合、発見が遅れると、賃貸住宅の原状回復費用が膨らんだり、ご希望の葬送が間に合わなくなったりします。契約とあわせて、次の備えをしておきます。
死後事務委任契約は、契約から実際に効力を発揮するまでに10年、20年と時間が空くことがあります。その間に受任者が先に亡くなったり、事務所を廃業したりする可能性は現実にあります。
このとき問題になるのが預けてある預託金です。分別管理が徹底されていないと、受任者自身の相続財産と混ざってしまい、必要なときに動かせなくなるおそれがあります。死後事務を行う人が不在になるだけでなく、資金まで止まるという二重の事故になりかねません。
相続人が現れ、「勝手なことをするな」「費用が高すぎる」と主張したり、契約の解除を求めたりするケースがあります。
契約書に「本契約は、委任者の死亡によっても終了せず、委任者の地位を承継した相続人は本契約を解除することができない」旨の特約条項を明記するのが基本の対策です。裁判例(東京高裁平成21年12月21日判決・判例タイムズ1328号134頁)も、死後事務委任契約には、契約内容が不明確・実現困難であったり相続人の負担が過重であるなど「契約を履行させることが不合理と認められる特段の事情」がない限り、相続人による解除を許さない合意が含まれると判断しています。
裏を返せば、委任事務の内容があいまいだったり、費用が過大で相続人の負担が重すぎる契約は、解除されたり契約の有効性そのものを争われたりする余地が残ります。だからこそ、委任事務の範囲・費用の上限・処理期間を具体的に定めておくことが重要です。あわせて、生前に推定相続人へ契約の存在と内容を説明しておく、または遺言書の中で死後事務を委任している旨に触れておくと、無用な争いを避けやすくなります。
身元保証や死後事務を含む契約をめぐるトラブル相談が増えています。
東京都は2026年1月7日、東京都消費者被害救済委員会に「高齢者等終身サポート契約に係る紛争」の解決を付託したことを公表しました。都内の消費生活センターに寄せられた相談は2023年度に前年度比約1.7倍と急増し、2024年度は149件、平均契約金額は225万円に達しています。相談者の年齢は、2021年度以降いずれの年度も高齢者(60歳以上)が7割〜8割を占めています。
付託された事案では、契約金額約190万円の身元保証等サービス契約・死後事務委任契約について、「契約から1年以内の解約は契約金の5割しか返金せず、5年経過後は返還しない」という条項が問題とされました。ほとんどのサービスが提供されていない段階での解約であることから、この条項は消費者契約法第9条第1項第1号の「平均的な損害の額を超える部分」にあたり無効ではないか、という点が争点となっています。
また、この事案ではクーリング・オフ期間が過ぎた後に事業者から遺言書の作成を求められ、その段階で初めて「遺言執行者を事業者にする必要がある」「遺言執行者に高額な報酬を支払う必要がある」と説明されたという経緯が申立人から主張されています。
国民生活センターも2025年5月29日の「見守り新鮮情報」(第511号)で、身元保証・生活支援・葬送支援をまとめて約190万円で契約したものの、「190万円以外にお金はいらない」と説明されていたのにサービス利用のたびに追加請求され、解約時には半額しか返金されないと言われた、という80歳代の相談事例を紹介しています。
事業者型サービスを利用する際の確認事項
なお、2024年(令和6年)6月には、内閣官房を中心に内閣府・金融庁・消費者庁・総務省・法務省・厚生労働省・経済産業省・国土交通省の9府省庁が「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」を策定しました。30項目のチェックリストが付いており、国民生活センターも消費者が契約前の確認に活用することを勧めています。
※このガイドラインは事業者が自主的に運営を点検するためのもので、法的な拘束力や罰則を伴うものではありません。国が事業者を審査して認証する制度も、2026年8月時点では設けられていません(ガイドライン自体が「優良な事業者を認定する仕組みの創設等について、検討する」段階と位置づけています)。「ガイドライン準拠」という表示があっても、それだけで安全性が担保されるわけではない点にご注意ください。
死後事務委任契約の受任者には、親族・知人のほか、司法書士・行政書士・弁護士などの専門職、民間の身元保証会社や一般社団法人がなれます。どこに頼むかで、対応できる範囲と費用が変わります。
| 依頼先 | 強み | 注意点 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 死後事務から相続登記まで一貫して対応できる。法務局への登記申請の代理権を持つ | 事務所により死後事務を取り扱っていない場合がある |
| 行政書士 | 書類作成や許認可に強い | 不動産の登記申請を代理する権限はない |
| 弁護士 | 紛争性のある案件に対応できる | 報酬はやや高めの傾向 |
| 民間事業者・一般社団法人 | 身元保証や生活支援まで幅広く対応 | 預託金が高額になりやすく、解約時の返金トラブルの相談が増えている |
死後事務の対象にご自宅(持ち家)が含まれる場合、遺品整理が終わった後、その不動産は相続人のものとなります。この際、不動産の名義を故人から相続人へ変更する相続登記が必要です。
行政書士は書類作成の代理はできますが、法務局への登記申請の代理権を持っていません。一方、司法書士は登記申請の代理を扱う専門家です。ただし死後事務委任契約から相続登記の代理権が自動的に生じるわけではありません。相続登記は別の依頼として、相続人または申請権限を持つ遺言執行者から改めて委任を受け、相続関係と登記原因を確認したうえで申請します。同じ司法書士が担当できる場合は情報の引継ぎがスムーズですが、利益相反などにより受任できないこともあります。相続登記そのものの手続き・費用・必要書類は「相続登記とは?手続き・費用・必要書類【義務化対応】」で解説しています。
2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化され、相続により不動産を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつその不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を負います。正当な理由なく怠った場合は10万円以下の過料の対象です。なお、令和9年(2027年)3月31日は、施行日より前に開始していた相続についての経過措置上の期限であり、これから発生する相続に適用される期限ではありません(詳しくは「相続登記の義務化|あなたの期限は?」)。死後事務と相続登記を同じ司法書士が担当できれば、この期限の管理まで見通して準備できます。
ご自宅が空き家になる場合は、その後の管理・売却まで見据えた準備が必要です。「空き家相続の手続きと流れ」もあわせてご覧ください。
当センターは、次の条件で死後事務委任契約のご相談をお受けしています。
関東対応エリア以外にお住まいの方については、死後事務委任契約のご依頼をお受けできません。お住まいの都道府県の司法書士会や、地域包括支援センターにご相談ください。不動産の名義変更・相続登記のご依頼は全国どちらからでもお受けしています。
Q. 家族がいても死後事務委任契約は必要ですか?
必須ではありませんが、「家族に負担をかけたくない」「自分の希望どおりに進めたい」「遠方に住んでいる家族に代わって手続きを任せたい」という場合に有効です。とくに、葬儀の形式やデジタル遺品の処理など具体的なご希望がある場合は、契約しておくことをお勧めします。
Q. 死後事務委任契約の費用は総額でいくらかかりますか?
費用は「①契約時の費用」「②死後事務の執行報酬」「③実費(預託金)」の3層に分かれます。①は契約書作成報酬5万円〜15万円と公証人手数料約6,500円〜、②は委任する事務の範囲により変動し、③は葬儀費用30万円〜130万円程度をはじめとする実際の支払いです。②と③を合わせた総額は、公表料金では50万円〜150万円程度の例が多く見られます。ただし司法書士の報酬には公的に定められた相場がなく、委任する範囲で大きく変わるため、必ず個別のお見積りでご確認ください。
Q. 公正証書にする場合、公証役場にはいくら払いますか?
2025年(令和7年)10月1日施行の改正公証人手数料令により、死後事務委任契約の公正証書の手数料は公証人手数料令9条別表の額の10分の5となりました。報酬の定めがない場合は目的の価額が算定不能として500万円とみなされ、別表1万3,000円の半額にあたる6,500円が基本手数料です。これに正本・謄本の発行手数料(紙は1枚300円、電子データは1件2,500円)が加わり、死後事務委任契約単体なら合計1万円前後に収まるのが通常です。遺言公正証書や任意後見契約と同時に作成する場合は、それぞれの手数料が別途加算されます。
Q. 口座から葬儀費用を払ってもらえますか?
金融機関へ死亡を連絡した後は口座の入出金が停止されるため、そのままでは支払いができなくなる可能性があります。遺産分割前の預貯金の払戻し制度(民法第909条の2)もありますが、これを行使できるのは共同相続人本人で、死後事務の受任者は利用できません。そのため、必要な費用を生前に引き出して受任者に預けておく「預託金」の方式が基本になります。あわせて、遺言書に預貯金の解約・払戻しの権限を定め、死後事務の受任者を遺言執行者にも指定しておくと、資金の流れが確実になります。
Q. 公正証書にするべきですか?証人は必要ですか?
死後事務委任契約は当事者の合意だけで成立する契約で、公正証書にすることは法律上の要件ではありません。ただし、役所・金融機関・病院・葬儀社などに受任者の権限を示す場面が多いため、実務では公正証書での作成を強くお勧めしています。証人については、証人2人以上の立会いが必要なのは公正証書遺言(民法第969条)であり、死後事務委任契約の公正証書に証人は通常必要ありません。
Q. 任意後見契約を結んでいれば、死後事務も任せられますか?
任せられません。任意後見契約は本人の死亡により終了します(民法第653条第1号)。成年後見人には死後事務の権限を認める規定(民法第873条の2)がありますが、法務省が明示しているとおりこの規定は成年後見のみを対象としており、保佐・補助・任意後見・未成年後見には適用されません。任意後見人にできるのは応急処分(民法第654条)や事務管理(民法第697条)による限定的な対応にとどまるため、死後事務委任契約を別途締結しておく必要があります。
Q. 契約後に内容を変更できますか?
変更できます。住居の変更、家族関係の変化、ご希望の変更などがあれば、契約内容を見直すことができます。また、ご本人はご存命中であればいつでも契約を解除できます(民法第651条第1項)。一度契約したら縛られるということはありません。なお、公証役場に原本が保管される期間は原則20年ですが、これは原本の保存期間であって契約の有効期間ではありません。20年が過ぎたことだけを理由に結び直す必要はありません。ご事情が変わったときに見直すことをお勧めします。
Q. 遺言書と死後事務委任契約、どちらを優先すべきですか?
どちらが優先という関係ではなく、役割が違います。遺言書は財産を誰に渡すかを決めるもの、死後事務委任契約は葬儀や解約などの手続きを誰に実行してもらうかを決めるものです。死後事務の費用を預貯金から支払う設計も遺言書と組み合わせて初めて確実になるため、両方を組み合わせるのが基本です。
Q. 相続人から契約を解除されることはありませんか?
契約書に「委任者の死亡によっても終了せず、相続人は解除できない」旨の特約を入れておくのが基本の対策です。裁判例も、契約内容が不明確・実現困難であったり相続人の負担が過重であるなど「不合理と認められる特段の事情」がない限り、相続人による解除を許さない合意が含まれると判断しています(東京高裁平成21年12月21日判決)。逆に言えば、委任事務があいまいだったり費用が過大な契約は争われる余地が残ります。範囲・費用の上限・処理期間を具体的に定めておくことが最大の予防策です。
Q. 全国どこでも依頼できますか?
当センターの死後事務委任契約のご相談は、関東対応エリア(主に東京・埼玉・千葉・神奈川)に限らせていただいています。死後事務ではご遺体のお引き取りや葬儀・遺品整理への立会いなど現地対応が必ず発生するためです。また、公正証書遺言とセットでの締結を前提とし、規定の料金はなく、お受けできるかどうかを含めてご事情を個別にお伺いしたうえでご案内しています。エリア外の方はお住まいの都道府県の司法書士会にご相談ください。なお、不動産の名義変更・相続登記のご依頼は全国どちらからでもお受けしています。
死後事務委任契約は、単なる事務代行の契約ではありません。人生の最期まで自らの意思を貫き、遺される方への負担と無用な争いを防ぐための準備です。
重要なポイントの再確認
とくに不動産をお持ちの方にとっては、死後の事務処理と相続登記は切り離せません。相続登記の期限は、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内です。死後事務と相続登記を同じ司法書士が担当できれば、相続人の方が期限に間に合わせやすくなります。
死後事務委任契約を結ぶには、契約の内容と費用を理解して意思表示できることが前提になります。判断能力が低下した後は新たな契約を結ぶことが難しくなるため、受任者・委任する事務・支払いの原資を具体的に検討できる段階で準備を始めるのが現実的です。
当センターでは、関東対応エリア(主に東京・埼玉・千葉・神奈川)にお住まいの方について、公正証書遺言とセットでの死後事務委任契約のご相談を無料でお受けしています。規定の料金はなく、費用は委任する事務の範囲によって変わります。お受けできるかどうかを含めて個別にご案内しますので、まずはご事情をお聞かせください。
相続が発生した後の不動産の名義変更・相続登記、および預貯金・株式などの相続手続きについては、全国どちらからでもご相談いただけます。後者については「司法書士の遺産整理代行|預貯金・不動産・株式の手続き範囲と依頼の流れ」で対応範囲と流れをご案内しています。
また、ご存命のうちにできる準備については「終活・生前の口座整理と資産整理|相続準備チェックリスト」もお役立てください。
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