最初に確認すべきこと:会社の規定を徹底チェック
住宅手当は法律で統一されている制度ではなく、支給条件は会社によってまったく異なります。名義変更を進める前に、必ず就業規則や手当の規定を細部まで確認しましょう。
確認すべき主なポイント
| 確認項目 | 詳細 |
|---|---|
| 対象物件の範囲 | 「家屋(建物)」のみでよいのか、「土地」も自分名義である必要があるのか。土地は評価額が高いため、土地も必要な場合は費用が大幅に増える可能性があります。 |
| 居住の有無 | 実際にそこに住んでいる必要があるかどうか。居住要件のある場合は多くの会社では住民票の提出が求められます。名義だけ変えて実際には住んでいない場合、不正受給とみなされるリスクがあります。 |
| 所有権の割合 | 100%自分の名義でなければならないのか、1%でも持分があれば対象になるのか。一部の持分だけの移転で済めば、費用を大幅に抑えられる可能性があります。 |
| 手当の期間と総額 | 名義変更にかかる費用を、何ヶ月(何年)の手当で回収できるか。月数千円〜1万円程度の手当の場合、名義変更の税負担が大きいと本末転倒になることがあります。 |
| 提出書類 | 一般的には登記事項証明書(登記簿謄本)の提出が求められます。 |
先にこれらの条件を確認しないと、名義変更しても手当が出ない、または不正受給とみなされる可能性があります。特に「実際に住んでいること」が条件の場合は要注意です。
親から子への名義変更:3つの方法
親名義の不動産を子へ移す方法は、主に以下の3つがあります。それぞれメリットとデメリット、税金面での違いがあります。
1) 贈与(タダでもらう)
最も一般的な方法ですが、対価を支払わずに名義を移すため、財産の移転として以下の税金がかかります。
- 贈与税:年間110万円(基礎控除)を超える価値の贈与を受けた場合に課税されます。不動産は評価額が高額なため、多額の贈与税が発生するケースがあります。
- 不動産取得税:不動産を取得したことに対してかかる地方税です。
- 登録免許税:固定資産税評価額の2%がかかります。
2) 売買(親から買い取る)
親子間で売買契約を結び、対価を支払って取得する方法です。
- 売買代金を実際に支払う必要があります(形だけの売買は危険)
- 適正な価格(時価)で取引しないと、差額分が「贈与」とみなされるリスクがあります
- 親側に譲渡所得税が発生する可能性があります
- 登録免許税は固定資産税評価額の2%程度
3) 相続(親が亡くなった後に移す)
生前に手当目的で急ぐ場合には不向きですが、費用面では最も軽くなりやすい方法です。
- 登録免許税は固定資産税評価額の0.4%(贈与・売買より低い)
- 相続税の基礎控除があるため、税負担が軽減される可能性が高い
会社の規定で「建物だけでよい」「持分の一部でもよい」という場合、以下の方法で税金を大幅に抑えられる可能性があります。
- 土地は評価額が高いため、建物だけを名義変更する
- 持分の数パーセントだけを移転する(例:1%だけ贈与)
ただし、将来の相続や売却への影響も考慮する必要があります。
名義変更にかかる費用と税金
「名義だけ変える」と思われがちですが、実際には以下のコストが発生します。ここを見落とすと「手当をもらっても赤字」になる可能性があります。
| 費用項目 | 内容 |
|---|---|
| 登録免許税 | 法務局で登記を書き換える際にかかる国税。固定資産税評価額の一定割合がかかります(贈与・売買は2%程度、相続は0.4%)。 |
| 贈与税 | 年間110万円(基礎控除)を超える価値の贈与を受けた場合にかかる税金。不動産は高額なため、多額になるケースがあります。申告が必要になることもあります。 |
| 不動産取得税 | 不動産を取得したことに対してかかる地方税。贈与・売買で基本的に課税されます(住宅の軽減措置が使える場合もあります)。 |
| 譲渡所得税 | 売買の場合、親側に発生する可能性があります(取得時期や価格によります)。 |
| 司法書士報酬 | 登記手続きを専門家に依頼する場合の代行手数料(5〜10万円程度が目安)。 |
「手当総額(何年もらえるか)」と「名義変更コスト」の比較は必ず行いましょう。住宅手当が月数千円〜1万円程度の場合、移転する財産の評価額によっては、何年受給しても元が取れないケースもあります。
「家屋だけ」vs「土地も含む」の判断
会社規定で「家屋だけで対象」とされる場合もありますが、実務上は以下の点に注意が必要です。
不動産の登記上の扱い
- 不動産は登記上、土地と建物は別物(別々に名義がある)
- 建物だけ自分名義にしても、土地が親名義のままだと土地を使う権利関係(使用貸借・賃貸借など)が曖昧になりやすい
- 将来、相続や売却のときに揉めやすくなる可能性がある
「住宅手当の条件を満たすためだけに、最小限の名義変更をしたい」という希望は多いですが、将来のトラブルまで含めて設計するのが安全です。目先の手当だけでなく、将来の相続・売却のしやすさも天秤にかけて判断しましょう。
「持分の一部だけ移転」という選択肢
会社規定が「一部でも自己名義ならOK」という場合、土地や建物の持分の一部(例:1%)だけ移転する方法も検討されます。
持分移転のメリット
- 移転する財産の評価額が小さくなるため、税金を抑えられる可能性がある
- 会社の条件を満たす最小限のコストで済む
持分移転のデメリットとリスク
- 持分が少なくても、評価額が高ければ税負担が意外と大きいことがある
- 将来、親が亡くなった後の相続で持分が細かく分かれて権利関係が複雑化しやすい
- 売却や担保設定など、重要な処分に共有者全員の関与が必要になる
- 共有状態が長期化すると、権利関係が世代を超えて複雑になるリスクがある
名義変更の手続きの流れ
贈与または売買による名義変更の一般的な流れは以下のとおりです。
- 会社規定の確認
家屋だけでよいか、土地も必要か、持分割合は何%必要か、居住要件はあるかなどを確認します。 - 対象不動産の確認
法務局で現在の「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、現在の所有者、面積、評価額などを確認します。 - 移転方法の選定
贈与、売買、持分移転、建物のみなど、最適な方法を選択します。税理士や司法書士に相談することをお勧めします。 - 必要書類の収集
当事者の本人確認書類、印鑑証明書、固定資産評価証明書(または課税明細書)、権利証(登記識別情報)、その他ケースに応じた書類 - 契約書作成
贈与契約書または売買契約書を作成します。 - 法務局へ登記申請
必要書類を揃えて法務局へ所有権移転登記を申請します。 - 登記完了後の手続き
登記完了後、新しい登記事項証明書を取得し、会社へ提出(自己名義になったことの証明)します。必要に応じて贈与税の申告(翌年2月1日〜3月15日)、不動産取得税の対応(都道府県から納税通知が来る)を行います。
会社へ「自己名義になった」ことを証明する方法
多くの会社では、手当申請・更新時に登記事項証明書(登記簿謄本)の提出が求められます。この書類があれば、名義(所有者)が確認できます。
名義変更前にも対象の土地建物を確認するために登記事項証明書を取得し、完了後も提出・確認用に再取得するのが実務的です。法務局へ行って手数料を払えば誰でも取得可能です。
参考:【登記事項証明書】登記簿謄本とは?(種類、記載内容、取得先を解説)
よくある落とし穴と注意点
住宅ローンが残っている場合
実家に親の住宅ローンが残っている場合、勝手に名義を変えることは銀行との契約違反になる可能性が高いです。金融機関の承諾や、場合によってはローンの一括返済が求められることがあります。
家族(兄弟姉妹)との調整
今、特定の子どもに名義を移してしまうと、将来親が亡くなった際の「相続」で、他の兄弟姉妹とトラブルになる可能性があります。事前に家族で話し合い、理解を得ておくことが重要です。
「形だけの売買」のリスク
親子間で実際にはお金のやり取りがない「形だけの売買」や、相場より著しく安い価格での売買は、税務上「贈与」と認定されるリスクがあります。差額分に贈与税が課税される可能性があります。
会社規定違反のリスク
名義変更が手当目的であっても、規定上の条件を満たしていない場合(例:実際には居住していない)、支給停止や返還を求められることがあります。「どういう状態ならOKか」を規定で確認してから進めるのが安全です。
居住実態の確認
多くの会社では、住宅手当の条件に「本人が居住していること(住民票があること)」を掲げています。実家に住んでいないのに名義だけ変えて受給した場合、不正受給とみなされるリスクがあります。
迷った時の相談先
| 相談内容 | 相談先 |
|---|---|
| 会社の規定確認 | 勤務先の総務部・人事部 |
| 税金の計算・節税方法 | 税理士または税務署(無料相談窓口もあります) |
| 登記の手続き | 司法書士(登記の専門家) |
まとめ:先に「会社条件」→次に「最適な移転方法」を設計
住宅手当のための名義変更は、会社の条件確認がスタートです。そのうえで、贈与・売買・持分移転などを検討しますが、実務上は以下の点まで含めて判断することが重要です。
- 税金負担:手当の総額とコストのバランス
- 将来の相続:他の相続人との公平性、トラブル防止
- 共有リスク:持分移転の場合の将来的な処分の難しさ
- 居住実態:不正受給とみなされないか
- 住宅ローンの有無:金融機関の承諾が必要か
「家屋だけでよいのか」「土地も必要か」「持分は何%必要か」が分かれば、最小コストで条件を満たす設計も可能になります。ただし、目先の手当だけでなく、将来のリスクまで考慮した総合的な判断が求められます。
住宅手当を受給するための名義変更は、税金、登記、家族関係など多岐にわたる要素を考慮する必要があります。判断に迷う場合は、司法書士や税理士などの専門家に相談することで、最適な方法を見つけることができます。







