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不動産の時効取得とは?要件・手続き・費用


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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最終更新日:2026年6月10日

土地の時効取得(要点まとめ)

① 定義:他人の土地・建物を一定の要件で長期間占有することで、所有権を取得できる民法上の制度(民法162条)

② 要件1:所有の意思があり、平穏かつ公然と占有していること

③ 要件2:占有期間は原則20年。占有開始時に他人の所有物だと知らず、過失もない(善意無過失)場合は10年に短縮(民法162条1項・2項)

④ 手続き:時効の利益を受ける意思を相手方に伝え(時効の援用)、所有権移転登記を申請。登記名義人(または相続人)が応じないケースが多く、その場合は裁判で判決を得て単独申請

⑤ 費用:登録免許税は固定資産評価額の2.0%+司法書士報酬。取得不動産の時価は一時所得として課税(特別控除50万円・1/2課税後の所得税)。個別税額は税理士に確認

時効取得とは?

所有権の時効取得とは、一定期間、他人の物について一定の要件を満たす占有をした者が、その物の所有権を取得することをいいます(民法162条)。

「占有」とは、自己のためにする意思をもって物を所持することをいいます(民法180条)。一般には、これを「事実上支配している状態」とされます。

例えば、他人の建物を自分の物であると信じて、そこに住み続けた場合、一定の要件を満たせば、その建物の所有権を取得することができます。

占有者が時効によりその建物の所有権を取得すると、真実の所有者はその建物の所有権を失います。

このような時効制度が正当化される根拠は、一般的に次のような理由によるとされています。

  • 占有者が長年占有してきたという事実状態を尊重する必要がある
  • 占有者に対して自分の権利を主張しなかった真実の所有者を保護する必要はない

【重要】 時効取得は占有者側の主張だけで簡単に認められるものではありません。通常は裁判手続等が必要で、裁判で認められるかどうかは状況や証拠等によります。

時効取得により不動産の取得をご検討されている場合は、弁護士へ相談されることをお勧めいたします。

時効取得の要件・時効取得するには?

時効取得の要件は、次のとおりです(民法162条)。

  • 所有の意思があること
  • 平穏かつ公然と占有したこと
  • 一定期間占有したこと

1. 所有の意思があること

「所有の意思」とは、所有者として物を排他的に支配しようとする意思をいいます。所有の意思がなければ、いくら占有を継続しても所有権を時効取得することはありません。

所有の意思があるかどうかは、占有取得の原因である事実によって外形的・客観的に判断されます。

【所有の意思が認められない場合】

例えば、賃借人が、建物の賃貸借契約に基づき、長年その建物に住み続けることによりその建物を占有しているとします。しかし、その占有取得の原因となった賃貸借契約は建物を借りる契約であり、建物の所有権を取得する契約ではありません。

そのため、賃借人には所有の意思は認められず、その建物を時効取得することはできません。

【所有の意思が認められる場合】

例えば、建物を購入し、その建物に住み続けることによりその建物を占有しているが、何らかの事情によりその売買契約が無効であったとします。

その占有取得の原因となった売買契約は、買主が建物の所有権を取得するという契約であるため、買主には所有の意思が認められ、その他の要件を満たせば、その建物を時効取得することができます。

ポイント: 所有の意思があるかどうかは、占有者が内心でどう思っているかではなく、占有取得の原因である事実によって外形的・客観的に判断されます。

2. 平穏かつ公然と占有したこと

「平穏」とは、占有するために暴行や脅迫といった行為を用いていないということをいいます。「公然」とは、占有していることを隠したりしないことをいいます。

占有は、平穏と公然の両方を満たしている必要があります。

3. 一定期間占有したこと

条件 必要な占有期間
善意無過失の場合 10年
それ以外の場合 20年

「善意無過失」とは、自己に所有権があるものと信じ、かつ、そのように信じるにつき過失がないことをいいます。

この善意・無過失は、占有の始めにおいて問題となり、その後に悪意(自己に所有権がないことを知っていること)となっても、時効期間に影響を与えません。

※手続きは別途必要

上記の要件を満たした場合でも、自動的に所有権を取得できるわけではありません。時効により所有権を取得するためには、時効を「援用」する必要があります(民法145条)。

時効の援用とは、時効による利益を受ける旨の意思表示のことです。具体的には、時効を援用する旨を記載した書面を相手方に送る方法等が考えられます。

法的要件は上記のとおりですが、実際に不動産の名義を変える手続きについては、時効取得者が一人で勝手にできるものではありません。不動産登記をするには、形式上の所有者である相手方の協力が必要で、協力してもらえない場合は裁判手続きが必要となります。

時効取得により所有権移転登記するには?

時効取得した不動産の名義変更(所有権移転登記)は、相手方(登記名義人)が協力すれば共同で申請できますが、協力が得られない場合は、登記名義人に「所有権移転登記手続をせよ」と命じる確定判決を得て、取得した方が単独で申請します(不動産登記法63条1項)。

訴訟で勝っても自動的に名義が変わるわけではなく、判決確定後に法務局へ登記申請する必要があります。このとき、判決書(判決正本)や確定証明書などが添付書類となります。

時効取得では相手方の協力が得られないケースが多く、相手方が行方不明・死亡して相続人が多数いるような場合も含め、民事裁判で時効取得を認めてもらう必要が生じます。

時効取得は誰に相談したら良い?

時効取得は特殊な手続きのため、ご自身で手続きするのは難易度が高いと考えます。

状況 相談先
現在の所有者と話し合い・確認も済み、名義変更手続きに現所有者の協力も得られる場合 司法書士
現所有者の協力が得られない場合(基本的に裁判手続きになります) 弁護士

ご参考までに、弁護士法人アクロピース様のWebサイトをご紹介させていただきます。

相続した不動産について時効取得は認められるか?

不動産の所有者が亡くなると、その不動産は相続人の共有になります(民法898条)。

共有状態となったその不動産について遺産分割協議がされないまま、相続人のうちの一人が、その不動産を時効取得に必要な期間占有し続けたとしても、当然に時効取得が認められるわけではありません。上述のとおり、時効取得するためには、占有者が「所有の意思」を有していることが必要です。

しかし、不動産を占有している相続人は、他に相続人がいることを知っているのが通常であり、あくまで自己の持分権に基づいて占有しているに過ぎないため、「所有の意思」が認められず、時効取得をすることができないケースが多いと考えられます。

判例による「所有の意思」が認められる事情

判例によると、以下のような事情がある場合に、共同相続人の一人の占有に「所有の意思」が認められるとしています(最判昭和47年9月8日民集26巻7号1348頁)。

  • 自分が単独で相続したものと信じて疑わない
  • 相続開始とともに相続財産を現実に占有した
  • 不動産の管理、使用を単独で行って収益を独占している
  • 固定資産税等の公租公課を負担している
  • 他の相続人がなんら関心を持たず、異議も述べなかった

時効取得と税金

時効取得した不動産には、主に4つの税金がかかります。①所得税・住民税(一時所得として、土地の時価から特別控除50万円などを差し引いた額の2分の1に課税)、②登録免許税(名義変更登記で固定資産税評価額の2.0%)、③不動産取得税④固定資産税です。それぞれの内容を以下で解説します。

所得税(一時所得)

不動産を時効取得すると一時所得として、所得税の課税対象となります。

時効取得した不動産の財産の時価(援用時)が経済的利益となり、不動産を時効取得するために直接要した金額や特別控除額を控除して、一時所得の金額を算出します。この一時所得の金額をさらに2分の1にした金額が課税対象となります。

所得税の他、住民税も課税されます。

参考:土地等の財産を時効の援用により取得したとき(国税庁HP)

時効取得の名義変更費用はいくらかかる?(登録免許税・司法書士報酬)

時効取得による名義変更(所有権移転登記)の費用は、登録免許税(固定資産税評価額の2.0%)+司法書士報酬が基本です。たとえば評価額1,000万円の土地なら登録免許税は約20万円で、これに登記を司法書士に依頼した場合の報酬が加わります。時効取得の登録免許税は、相続(税率0.4%)と異なり、売買などと同じ2.0%(1000分の20)が適用される点に注意が必要です。

相手方の協力が得られず裁判(訴訟)で時効取得を認めてもらう場合は、別途、訴訟費用(印紙代など)や弁護士費用などがかかります。総額は事案によって変わるため、登記事項証明書や固定資産評価証明書などを確認のうえお見積りします。

参考:【費用・手数料】不動産名義変更にはいくらかかる?(税金に注意!)

不動産取得税・固定資産税

土地・建物等の不動産を時効取得すると不動産取得税が課税されます。取得後は固定資産税も課税対象となります。

まとめ

不動産の時効取得は、一定の要件を満たせば他人の不動産の所有権を取得できる制度ですが、実務上は慎重な検討が必要です。

時効取得が認められるためには、所有の意思があること、平穏かつ公然と占有したこと、一定期間(善意無過失なら10年、それ以外は20年)占有したことという3つの要件を満たす必要があります。

時効取得は占有者の主張だけで認められるものではなく、通常は裁判手続きが必要となります。

また、不動産を時効取得した場合、所得税(一時所得)、登録免許税、不動産取得税、固定資産税などの税金が課税されることも忘れてはいけません。

時効取得をご検討の場合は、まずは弁護士に相談して時効取得の可能性を確認されることをお勧めいたします。

この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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