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住宅に接する道路には、国や自治体が管理する「公道」のほかに、個人や法人が所有する「私道」があります。私道の中には、登記簿の地目が「公衆用道路」となっているものがあります。さらに、現況や利用状況から「公共の用に供する道路」として固定資産税が非課税になっている土地は、納税通知書だけでは把握しにくく、相続時にその存在を見落としてしまうケースが少なくありません。
しかし、私道・公衆用道路も他の不動産と同様に所有者の死亡後は相続財産となり、相続登記(名義変更)の対象となります。2024年4月から相続登記が義務化されたことで、私道の登記漏れは過料の対象にもなり得ます。
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普段何気なく通行している道路ですが、法律の世界ではその性質によって扱いが全く異なります。最も基本的な分類は、所有者が誰であるかという点です。
| 道路の種類 | 所有者 | 管理者 | 相続の対象 |
|---|---|---|---|
| 公道(国道・市道など) | 国・都道府県・市区町村 | 各行政機関 | 対象外 |
| 私道 | 個人・法人 | 所有者 | 対象 |
登記簿上の所有者が「隣近所の人」や「不動産会社」になっている場合、それは私道です。公道であれば個人名義になることは通常ありませんので、相続登記の対象にもなりません。
「公衆用道路」とは、登記簿の地目欄に記載される区分の一つで、一般交通の用に供する道路を指します。公道・私道という所有関係の区分とは別の概念で、私有地の道路が「公衆用道路」と登記されていることもあります。名称に「公衆」とあっても所有権はあくまで所有者にあるため、個人名義であれば所有者が亡くなったときに相続財産となり、相続登記が必要になります。
登記簿には「地目」という土地の用途が記載されていますが、実態が道路であっても登記上は「宅地」のままというケースがあります。
家を建てるには、原則として、建築基準法上の「道路」に2メートル以上接している必要があります(接道義務・建築基準法第43条第1項)。ここでいう「道路」は、原則として幅員4メートル以上のものを指します(同法第42条第1項。特定行政庁が指定する区域では6メートル)。なお、この規制がかかるのは都市計画区域・準都市計画区域内です。私道であっても、以下のような指定を受けている場合があります。
これらの私道には、道路内に建築物や擁壁を建てられないという制限がかかります(建築基準法第44条第1項)。また、私道を廃止・変更すると接する敷地が接道義務に反することになる場合、特定行政庁がその廃止・変更を禁止し、または制限することができます(同法第45条第1項)。
一方で、建築基準法上の道路に指定されていることと、誰が通行できるかは別の問題です。最高裁は、位置指定を受けた私道を公衆が通行できるのは指定に伴う反射的な利益にすぎず、通行を妨害されても敷地の所有者に対する妨害排除の請求権を持たないのが原則としたうえで、その私道の通行に日常生活上不可欠の利益を有する方については、例外的に妨害の排除などを求める権利を認めています(最高裁平成9年12月18日判決)。通行や掘削をめぐる問題は、通行地役権の有無や承諾書の取り交わしなど、個別の権利関係の確認が必要になります。
「道路なんだから税金はかからないだろう」という思い込みは危険です。私道であっても、個人の資産である以上、原則として固定資産税・都市計画税の課税対象となります。
ただし、公共性が高いと判断されれば「非課税」になります。ここで注意したいのは、「公共の用に供する道路」に当たるかどうかの認定基準や手続は自治体によって異なる点です。非課税申告書の提出を求める自治体もあるため、課税されている私道がある場合は、所在地の市区町村の固定資産税担当課にご確認ください。
自治体によって基準は異なりますが、一般的には以下の要件が目安となります。
| 道路のタイプ | 非課税の可能性 | 認定の目安 |
|---|---|---|
| 通り抜け道路 | 高い | 両端が公道に接しており、不特定多数が自由に利用できる |
| 行き止まり私道 | 条件付き | 複数の世帯が利用しているなど、自治体の定める要件を満たす場合 |
| 専属利用の私道 | 低い | 特定の1軒のみが利用する通路(実質的な敷地) |
もし「地目が公衆用道路なのに課税されている」「実態は道路なのに宅地として課税されている」場合は、市町村(東京23区は都税事務所)に固定資産税の非課税申告を行うことを検討しましょう。
非課税がどの年度から適用されるか、過年度分の訂正や還付を受けられるかは、自治体や課税の経緯によって異なります。課税されている私道に気づいた場合は、対象となる年度を含めて固定資産税担当課にご確認ください。
私道の相続税評価は、道路の形状ではなくその私道が誰の通行の用に供されているかで決まります(財産評価基本通達24)。
不特定多数の方の通行の用に供されている私道は、その価額を評価しません(評価額ゼロ)。公道から公道へ通り抜けできる私道が典型例ですが、国税庁は、行き止まりの私道であっても、その私道を通って不特定多数の方が集会所・地域センター・公園などの公共施設や商店街に出入りしている場合や、公共バスの転回場・停留所が設けられている場合も、これに当たるとしています。道路の幅員の大小によって区別するものではありません。
上記のような公共性が認められず、専ら特定の方の通行の用に供されている私道は、その宅地が私道でないものとして評価した価額の30%相当額で評価します。
なお、隣接する宅地への通路として専用利用している路地状敷地(いわゆる旗竿地の「竿」にあたる部分)は、私道としては評価せず、その宅地と合わせて1画地の宅地として評価します。
私道であることだけを理由に「小規模宅地等の特例」の対象外になるわけではありません。国税庁は質疑応答事例で、被相続人の居住用宅地の維持・効用を果たすために必要不可欠な共有私道について、その共有持分も被相続人の居住用宅地として特例の対象となるとしています(租税特別措置法第69条の4第1項)。
ただし、私道であれば常に対象になるという意味ではなく、居住用または事業用の宅地の維持・効用にとって必要不可欠かどうかが判断の軸になります。相続税の課税価格の計算や特例の適用の可否は税理士の業務範囲ですので、具体的な判断は税理士または所轄の税務署にご確認ください。当センターでは、私道持分を含む相続登記の手続きに対応しています。
私道は土地の一部であり、所有者が亡くなると相続財産になります。私道の持分を相続登記しないまま放置すると、将来の売却や融資、通行・掘削に関する権利関係の確認で手続きが止まることがあるため、自宅の敷地とあわせて名義変更しておくことが大切です。
相続登記は他の不動産と同じ流れで行います。必要書類は、遺産分割・遺言・法定相続のどの方法で登記するかによって異なります。遺産分割協議によって取得する場合の主な書類は以下のとおりです。
公衆用道路(私道)の場合、固定資産税が非課税であるため評価額が記載されないことが多くあります。この場合は、まず管轄の法務局に課税価格の算定方法を確認します。法務局が指定する近傍類似の土地の評価証明書などを求められることがありますが、具体的な手続は法務局や自治体によって異なります。
相続登記で最も多いミスが、「自宅の土地だけ名義変更して、私道の持ち分を忘れる」ことです。親の私道が相続対象かどうかを確実に調べるには、以下の方法を組み合わせて確認することが重要です。
市区町村役場で名寄帳(個人名義の不動産一覧)を取得し、非課税の私道が含まれていないかチェックします。課税されていない私道は通常の納税通知書に載らないため、名寄帳は所有する不動産を確認するうえで有力な資料です。ただし次に述べるとおり、自治体によっては非課税の土地が名寄帳に記載されないことがあるため、権利証・公図・登記事項証明書と突き合わせて確認します。
被相続人が土地を購入した際の権利証を確認し、地目に「公衆用道路」と記載されていないか確認します。古い権利証には複数の土地(筆)が記載されていることがあるため、すべての筆を確認し漏れがないようにしましょう。
法務局で公図を入手し、自宅の周辺に不自然に細長い「無番地」や「別筆」がないか確認します。これらが私道である可能性があります。地番から登記簿を取り寄せ、共有名義になっていないかも確認しましょう。
いずれの方法も、放置されがちな私道の登記漏れを防ぐための重要な手段です。特に名寄帳の確認は、課税されていない物件も含めて把握できる可能性が高いため、必ず行うことをお勧めします。ただし自治体によっては非課税の土地が名寄帳に載らないため、公図や権利証との突合も欠かせません。複数の方法を組み合わせることで、より確実に私道の存在を把握できます。
上記書類を揃えたら、管轄の法務局に「所有権移転登記(相続)」の申請を行います。遺産分割協議で取得者を決める場合は、相続人全員の実印の押印と印鑑証明書が必要です。なお、私道を共有している他の共有者(隣近所の方など)の同意や印鑑証明書は不要で、被相続人の持分についてのみ相続人側だけで登記を申請できます。
共有私道がある場合は、遺産分割協議で持分を誰が取得するか決めた上で、「持分全部移転」の登記申請書を作成して提出します。司法書士に依頼すれば、書類作成から申請までサポートを受けられます。
私道を複数人で共有している場合、被相続人の持分も相続財産に含まれます。共有持分を相続する相続人は、遺産分割協議などで取得者を定めた上で、所有権移転登記を行います。
全持分を相続人の一人に移す場合でも、複数名で相続する場合でも「持分全部移転」の申請となります。この登記は相続人側だけで申請でき、私道の他の共有者の同意や印鑑証明書は不要です(遺産分割協議で取得者を決める場合に必要なのは、相続人全員の実印と印鑑証明書です)。
登記を放置すると、相続が進むたびに共有者が増えて協議が難航し、最悪の場合いつまでも登記できない事態になり得ます。取得したらすぐに名義変更することが大切です。
私道持分の登記をしないまま放置すると、売却や住宅ローンの審査の際に権利関係の確認が滞ったり、水道・ガス工事の掘削について誰の承諾を得ればよいかが定まらなかったりします。なお、相続登記をしていないこと自体が、ただちに接道義務違反になるわけではありません。再建築できるかどうかは、前面道路が建築基準法上の道路に当たるか、必要な長さだけ接しているかなどを別途確認します。
私道を近隣数軒で共有している場合、補修費用の分担や、放置された車両の撤去などで揉めることがあります。可能であれば、共有者間のルール(管理規約)を定めておくのが理想的です。
2024年(令和6年)4月1日より、相続した不動産の名義変更は義務化されました。相続人は、相続の開始と不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記する義務があり、正当な理由なくこれを怠ると10万円以下の過料の対象となります。
義務化の対象は土地・建物などすべての不動産であり、もちろん私道・公衆用道路も含まれます。税通知書に出ないからと安心せず、相続財産に含まれているか必ず確認しましょう。
登録免許税は原則として不動産の価額の0.4%ですが、価額が100万円以下の土地は令和9年(2027年)3月31日まで免税となります。
私道の問題は、登記(司法書士)、測量や境界(土地家屋調査士)、紛争(弁護士)、税金(税理士)と、分野によって担当する専門家が分かれます。当センターが対応するのは、私道の相続登記をはじめとする登記実務です。測量・境界の確定、共有者との紛争、相続税の申告といった論点は、それぞれ土地家屋調査士・弁護士・税理士にご相談ください。
私道は「地味な存在」と思われがちですが、一度トラブルになると解決に多大な時間と費用がかかります。特に相続登記が義務化された今、私道の登記漏れは過料のリスクにもつながります。
これらの確認を怠ると、将来的に再建築不可、売却困難、近隣トラブルなど、様々な問題が発生する可能性があります。相続が発生した際には、建物や宅地だけでなく、私道・公衆用道路の存在も必ず確認し、早めに相続登記を完了させることが重要です。
私道の持分は納税通知書だけでは見つからないことがあり、相続登記のあとに漏れが判明する案件もあります。自宅の敷地と私道をまとめて登記するには、権利証・名寄帳・公図などを突き合わせ、対象となる筆と持分を確認したうえで申請することが重要です。私道持分の特定や相続登記については、当センターにお気軽にご相談ください。
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