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不動産の名義変更をする際、「登記原因証明情報」という書類が必要になります。この記事では、登記原因証明情報とは何か、なぜ必要なのか、どのように作成すればよいのかを、年間2,000件超のご相談実績がある司法書士法人が分かりやすく解説します。2つの形式の使い分け/売買・贈与・相続・財産分与・抵当権抹消の書式・記載例/印鑑のルール/自分で作成する5ステップ/よくある質問まで、自分で手続きする方にも、専門家に依頼する方にも必要な情報をまとめてご案内します。
● 定義:不動産の所有権移転登記などで「なぜ名義を変えるのか」を証明する書類。不動産登記法 第61条で添付が義務付けられています(2004年改正・2005年3月7日施行の現行法で導入)。
● 2つの形式:①既存文書活用型(売買契約書・贈与契約書をそのまま使う)/②報告形式(登記用に簡潔な書面を新規作成)。売買・財産分与などでは、金額・個人情報を法務局に出さずに済む報告形式で対応するのが実務上の通例です。
● 必要な原因:売買・贈与・相続・財産分与・抵当権抹消など、所有権や担保権が動くほぼすべての登記で必要です(所有権保存登記など一部の例外を除く)。
● 押印ルール:登記原因証明情報は登記義務者の押印は必須(権利者の押印は無くても可)。押印する印鑑については指定がないので、実印以外でもOKです。
● 自分で作成する手順:①登記事項証明書で物件を確認 → ②原因と日付を決定 → ③形式(既存文書活用 or 報告形式)を選択 → ④必要事項を記載 → ⑤署名押印・整合性確認のうえ登記申請書と一緒に法務局へ提出(具体的な作成手順は、後述の「自分で作成する5ステップ」で詳しく解説しています)。
登記原因証明情報(とうきげんいんしょうめいじょうほう)とは、不動産の名義変更(所有権移転登記)を申請する際に提出が求められる書類の一つです。簡単に言えば、「なぜ名義を変えることになったのか」という原因(売買や相続など)と、実際に権利が移転した事実を証明するための情報をまとめた書面です。
不動産登記法(法律)でも権利に関する登記を申請するときは、その原因を証明する情報を提供しなければならないと定められており、名義変更の真実性を保証するために必要となっています(不動産登記法 第61条「権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない」)。
登記原因証明情報には「どのような理由で所有者が変わったのか」を示す内容が書かれます。たとえば不動産を贈与した場合は贈与契約にその内容が書かれていますし、相続で名義変更する場合は故人が亡くなった事実や相続人との法的関係性が理由になります。
こうした名義変更の理由と事実を証明するための書類が登記原因証明情報なのです。
登記原因証明情報が必要とされるのは、不動産の権利が移動するときです。名義変更の申請時にこの書類を提出することで、登記官(法務局の担当者)に対して「本当に正当な原因で権利が移りましたよ」と説明・証明する役割を果たします。
これにより、不動産登記簿の内容が正しく信頼できるものとなり、将来その不動産を取引する第三者も安心できるようになります。
基本的には所有者名義が変わるあらゆるケースです。代表的なのは以下のような場合です。
これらのケースでは必ず登記原因証明情報を用意して提出する必要があります。逆に言えば、「所有権保存登記」のように権利の新規設定で誰からも権利を受け継がないケース(不動産登記令第7条第3項により例外)など、特殊な場合を除いて基本的に登記原因証明情報は欠かせません。
一般の名義変更手続きでは、「なぜ名義が変わるのか」を証明する書類が常に必要になると覚えておきましょう。
⚠️ 相続登記・住所等変更登記の義務化(最新法改正)
2024年4月1日から相続登記が義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象となる可能性があります(不動産登記法第76条の2、第164条第1項)。さらに2026年4月1日から、所有権登記名義人の氏名・住所変更登記も既に義務化されています(同法第76条の5、第164条第2項)。住所・氏名等の変更が生じた日から2年以内に申請しないと5万円以下の過料の対象となります(令和8年4月1日より前に変更があった場合は経過措置の対象となるため、個別に期限を確認してください)。所有権移転登記の前提として住所変更登記等が必要なケースは、義務化との関係でも早めに動く必要があります。
登記原因証明情報は、ほとんどの場合、当事者または代理人(司法書士等)が作成する書面です。ただし相続では戸籍類一式と遺産分割協議書、抵当権抹消では金融機関発行の解除証書類、というように、第三者から取得する書類がそのまま登記原因証明情報の構成要素になるケースもあります。
法務局公式サイト「不動産登記の申請書様式について」にWord・PDFのひな形が無料公開されていますので、まずはこの公式書式を入手し、必要事項を当てはめていきます。シンプルな贈与・財産分与であれば公式ひな形で対応可能ですが、実務上は原因日付の確定(特に売買の代金完済日)・物件表示の登記簿との完全一致・確認文言の文型でつまずく方が多く、添付書類との突合せまで含めると、初めて作成する方には決して軽い作業ではありません。提出前に管轄法務局の事前相談窓口に持ち込むか、司法書士に確認を受けることを推奨します。
内容に不備があると登記申請がスムーズにいかないため注意が必要です。特に売買や贈与の場合は登記義務者(名義を手放す側)の署名または記名押印が求められるなど形式も決まっています。
多くの場合、名義変更の手続きを専門家(司法書士)に依頼すると、司法書士がこの書類を代わりに作成してくれます。司法書士に依頼した場合は自分で用意する必要はなく、書類不備の心配も少ないでしょう。
書類の作成自体はご自身でも可能ですが、記載ミスによる補正・取下げや、完了後の登記識別情報(権利証)の管理ミスを防ぐため、多くのケースで司法書士が作成を代行しています。「自分でも作れる」ことと「自分で作ってリスクなく登記が通る」ことの間には大きな開きがあります。原因日付の確定や添付書類の整合確認に少しでも迷いがあれば、最初の段階で司法書士に依頼するほうが、結果として時間も総コストも抑えられるケースがほとんどです。
登記原因証明情報の内容は、名義変更の原因(ケース)ごとに異なります。以下に代表的なケースと、それぞれどんな書類が「原因証明」として使われるかを紹介します。
不動産名義変更に必要な書類は手続きの内容によって異なります。相続・贈与・離婚・売買など、ケースごとに準備すべき書類が変わってきます。例えば、相続なら戸籍や遺産分割協議書、贈与なら贈与契約書、離婚なら財産分与契約書、売買なら売買契約書、といったように原因に応じた書類が登記原因証明情報となります。
ご覧のように、名義変更の原因に応じて証明に使う書類が異なるのがポイントです。それぞれのケースで、「何をもって権利が移ったと証明するか」を考え、適切な書類を用意しましょう。
もし該当する契約書がない場合でも、必要事項を盛り込んだ書面を作成すれば対応可能です。不安な場合は、法務局が公開している報告形式の雛形PDFなどを利用して作成することもできます。
登記原因証明情報には大きく分けて2つの形式があります。実務では使い分けが重要なので、それぞれの特徴と使いどころを正確に理解しておきましょう。
既存文書活用型とは、当事者間で既に作成された売買契約書・贈与契約書・財産分与契約書・遺産分割協議書などを、そのまま登記原因証明情報として法務局に提出する方式です。既存契約書の中に「登記原因証明情報の必要事項(原因・当事者・不動産表示・移転事実)」が記載されていれば、追加で書面を作る必要はありません。
メリット:書類を新たに作る手間が省ける。契約書は当事者間の取引の根本書類なので、最も信頼性が高い。
デメリット:売買代金や個別契約条件(違約金条項・解除条件・特約事項など)の個人情報や金銭情報が登記申請とともに法務局に提出され、法務局に残ります。
報告形式とは、登記申請のために登記原因証明情報を新規に作成する方式です。当事者間の契約書(売買契約書など)とは別に、登記に必要な事項だけをまとめた書面を作ります。
メリット:①売買金額・支払条件・違約金条項などの余分な情報を記載せずに済むので、個人情報や金銭情報の開示リスクを最小限にできる/②書式が簡潔で内容が一目で分かるため、法務局の審査がスムーズで補正が出にくい/③契約書原本を当事者の手元に残せる(原本還付の手続きが不要)。
デメリット:当事者全員が新たに署名押印する手間がある(特に郵送・遠隔で集める場合は時間がかかる)。
● 売買・財産分与・抵当権設定 → 報告形式で対応するのが通例:当事者の意向で金額や条件を法務局に出したくないため、契約書とは別建てで報告形式を作成する方法が広く採られています。
● 相続 → 報告形式は利用できない。戸籍謄本や遺産分割協議書をそのまま使用:遺産分割協議書は相続人全員の実印+印鑑証明書が揃った書面なので、これ自体が登記原因証明情報として機能します。
● 抵当権抹消 → 金融機関発行の弁済証書・解除証書を使用:金融機関が発行する解除証書がそのまま登記原因証明情報になります。
ここからは、最もよく検索される原因別の書式・記載例を5パターンに分けてご案内します。各記載例はあくまで基本形なので、個別事案では司法書士と相談しながら必要な修正を加えてください。
売買の場合のポイントは、「契約の成立日」と「代金支払日(=所有権移転日)」を明記することです。多くの売買契約では「代金完済の時に所有権が移転する」と特約が定められているため、登記の原因日付は「所有権が実際に移転した日」、つまり代金完済日となります。
贈与の場合のポイントは、「贈与契約日=所有権移転日」とするのが一般的だということです(贈与契約は諾成契約なので、契約成立日に効力が生じます)。不動産贈与では贈与税の確認が必要ですが、評価額や適用できる特例(基礎控除110万円・相続時精算課税・配偶者控除・住宅取得等資金贈与の特例等)によって申告の要否・税額が変わります。登記と並行して税理士または税務署に確認しておくと安全です(贈与税の試算は税理士業務範囲のため、別途、税理士にご相談ください)。
相続による所有権移転登記(相続登記)は、報告形式の登記原因証明情報を作るのではなく、戸籍謄本一式と遺産分割協議書(または遺言書)の組み合わせを登記原因証明情報として法務局に提出するのが実務の通例です。
法定相続情報一覧図の位置づけ:法定相続情報一覧図は、被相続人と相続人の関係を示す戸籍類の代替として利用できる書類です。ただし、誰が不動産を取得するかを証明する書類ではありません。遺産分割による相続登記では、法定相続情報一覧図だけでは足りず、遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書が別途必要です(詳細は法定相続情報一覧図の取り方|法務局で無料・記載例付きで司法書士解説を参照)。
兄弟姉妹相続では、被相続人本人の戸籍類に加え、被相続人の直系尊属(父母・祖父母)が全員死亡していることを証明する戸籍と、兄弟姉妹全員の現在戸籍を揃える必要があります。直系尊属の戸籍は明治・大正期まで遡るケースもあり、改製原戸籍の判読・転籍の追跡が困難で、戸籍収集だけで2〜3か月かかることも珍しくありません。代襲相続(甥・姪が相続人になるケース)が絡むとさらに範囲が広がります。
遺言による相続登記では、遺言の種類に応じて提出書類が異なります。公正証書遺言は正本または謄本(原本は公証役場に保管されるため取得不可)、自宅保管の自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済証明書付きのもの、法務局保管の自筆証書遺言は遺言書情報証明書を使用します(法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は検認不要)。
実務でよくある相続の「落とし穴」を3点挙げておきます。①数次相続:相続登記を放置しているうちに相続人がさらに死亡し、二次・三次の相続が発生するケース。関係者が10名以上に膨らみ、遺産分割協議が事実上不可能になることもあります。②相続放棄:相続放棄者がいる場合は家庭裁判所発行の「相続放棄申述受理証明書」が必要で、戸籍からは放棄の事実が分からないため見落としに注意が必要です。③協議不調:遺産分割がまとまらない場合は、「相続人申告登記」をすることで義務化期限(3年)に対応する方法があります(不動産登記法第76条の3/義務を履行したものとみなされる制度)。事案によっては法定相続分での相続登記を先行させ、後日協議成立後に所有権更正登記をする方法もありますが、関係者の人数や今後の売却予定を踏まえて慎重に選択する必要があります。
財産分与登記のポイントは、「離婚が成立していること」と「財産分与の合意があること」の2点を必ず原因に含めることです。離婚が成立する前に名義移転をすると、贈与税の課税リスクが大きくなります。離婚後に登記するのが安全です。
住宅ローンを完済して抵当権を抹消する登記では、金融機関が発行する解除証書・弁済証書などが登記原因証明情報になります。これとは別に、抵当権設定契約証書(または登記識別情報)、金融機関の委任状、会社法人等番号などが、それぞれ別の添付情報として必要となります。金融機関から完済時に届く書類は、どれが「登記原因を証する書面」で、どれが「権利証相当」「委任状」「資格証明情報」に当たるかを区別して扱います。
報告形式の登記原因証明情報を作成・提出する際には、以下のような一般的なポイントに注意しましょう。
これらの情報が欠けていると受理されない恐れがあるため、漏れがないよう注意しましょう。
土地や建物の所在や地番、家屋番号などの物件の表示は、必ず登記簿どおり正確に記載します。登記簿謄本(登記事項証明書)を見ながら、一字一句間違えないように写してください。ここに誤りがあると、登記官がどの不動産のことか特定できず手戻りになってしまいます。
特に売買契約書に所有権移転の特約(代金の支払いが条件)がある場合はその旨も記載しておく必要があります。単に「売買契約を結んだ」というだけでなく、「代金の支払いが完了し、その結果所有権が移転した」といった事実まできちんと書きます。
権利が実際に動いたタイミングをはっきり示すことで、登記官にとっても内容が明確になります。売買や贈与の場合は「いつ契約が成立し、いつ権利が実際に移転したか」という事実関係を具体的に記載しましょう。
報告形式の登記原因証明情報では、少なくとも登記義務者(権利を失う側:売買なら売主、贈与なら贈与者、財産分与なら元の所有者)が登記原因の内容を確認し、署名または押印する形を取ります。実務では、登記義務者の記名押印欄を設ける書式が多く使われます。
これは登記原因証明情報そのものについての要件で、申請書または司法書士への委任状に必要な実印・印鑑証明書とは別の話です(実印・印鑑証明書のルールはH2「印鑑の使い分け」を参照)。相続の場合は、遺産分割協議書に相続人全員の実印押印・印鑑証明書添付が必要です。
⚠️ 義務者の表示は登記簿と完全一致/住所等変更登記の義務化に注意
義務者(売主・贈与者など)の氏名・住所は、現在の登記簿上の登記名義人の表示と完全一致させる必要があります。登記後に住所や氏名が変わっている場合は、先に住所変更登記または氏名変更登記を申請してから所有権移転登記を申請します。所有権登記名義人の住所・氏名等の変更登記は、2026年4月1日から既に義務化されており、変更の日から2年以内に申請しないと5万円以下の過料の対象となります(不動産登記法第76条の5、第164条第2項。令和8年4月1日より前に変更があったケースは経過措置の対象となるため、個別に期限を確認してください)。所有権移転登記の前提として、早めに整えておきましょう。
契約書原本を登記原因証明情報として提出する場合は、写しに「原本と相違ありません」と記載して記名押印し、原本還付の手続きを取ることで、原本自体は返却を受けることができます。ただし、原本還付しても写しは提出書類として法務局に残ります。
そのため、売買代金や細かな特約を提出書類に残したくない場合は、契約書とは別に報告形式の登記原因証明情報(必要事項だけを書いた書面)を新規作成して提出するのが実務上一般的です。報告形式で作成した書面は契約書のプライベートな情報を含まないので、提出書類に金額・違約金条項などが残らないというメリットがあります。
自分で提出する際は、どちらの形式にするか検討し、契約書の内容を見られても問題ないかどうかも考慮すると良いでしょう。
登記原因証明情報は登記申請書と一緒に法務局へ提出します。提出前に、他の添付書類との内容に矛盾がないか確認しましょう。
申請書に記載した登記原因(日付や事由)と、この証明情報の内容が一致していることも重要なチェックポイントです。書類間の整合性が取れていないと、補正を求められる原因になります。
要は、決められた事項を正確に書き、当事者が確認・署名した書類であれば問題ありません。不安な場合はひな形を活用したり、過去の例を調べたりして、漏れがないよう準備しましょう。
不動産登記の押印・印鑑証明書のルールは、主に申請書(または司法書士への委任状)に関するものです。登記原因証明情報そのものへの押印と、申請書・委任状への押印は法令上の位置づけが異なります。ケースごとに整理しておきましょう。
報告形式の登記原因証明情報では、少なくとも登記義務者が登記原因の内容を確認し、署名または押印する形を取ります。法令上は「署名若しくは押印」で足りるとされていますが、実務上は本人意思確認のために実印を求めることも多くあります。権利者(買主・受贈者など)も記名押印欄を設ける書式が一般的ですが、法的に必須な要素は「権利を失う側(義務者)の意思確認が取れる書面になっていること」です。
実印と印鑑証明書が法令上問題になる中心は、申請書または司法書士への委任状の押印です。登記義務者は申請書(または委任状)に実印を押印し、作成後3か月以内の印鑑証明書を添付する必要があります(不動産登記令第16条第2項・第3項、第18条第2項・第3項)。実印は市区町村役場に登録された印鑑で、印鑑証明書とセットで本人の意思を担保します。
登記権利者(権利を得る側)は、申請書への押印も原則として認印で問題ありません。印鑑証明書も不要です。これは、権利を得る側の意思確認は登記原因の事実関係から明らかであるため、実印まで求める必要がないという考え方によります。
ただし、相続登記の場合の遺産分割協議書は別格です。遺産分割協議書は相続人全員が「自分の取得分」と「他の相続人の取得分」を相互に確認する性質の書類なので、相続人全員が実印で押印し、全員分の印鑑証明書を添付する必要があります。
法人が登記義務者となる場合、申請書または委任状には原則として法務局届出印(代表者印・会社実印)を押印します。代表者の資格証明情報については平成27年(2015年)11月2日以降、印鑑証明書については令和2年(2020年)3月30日以降、申請情報に会社法人等番号を記載することでいずれも添付省略が可能となっています(不動産登記令第7条第1項第1号イ、不動産登記規則第48条第1号等)。もっとも、案件や申請方法によって確認事項が変わるため、申請前に管轄法務局または司法書士に確認するのが安全です。
売買・贈与・財産分与などで登記義務者が申請書または委任状に添付する印鑑証明書は、作成後3か月以内のものが必要です(不動産登記令第16条第3項・第18条第3項)。複数の登記を続けて申請する場合は、同時申請・原本還付・申請時期によって使い回せることもあるため、取得前に申請スケジュールを確認しておくと無駄が出ません。一方、相続登記で遺産分割協議書に添付する相続人の印鑑証明書には、登記実務上この3か月制限はありません(古いものでも有効)。両者を混同しないように注意してください。
以下は、売買・贈与・財産分与などで報告形式の登記原因証明情報を作成する場合の流れです。相続登記では、報告形式の書面を作るよりも、戸籍類・遺産分割協議書・遺言書などで相続関係と取得者を証明するのが通常で、本5ステップとは流れが大きく異なります(H2-6③の相続セクションを参照)。
まず、対象不動産の最新の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。法務局窓口なら1通600円、オンライン請求で送付を受ける場合は520円、オンライン請求後に窓口で受け取る場合は490円です(令和7年4月1日改定後の手数料)。登記事項証明書に記載された所在・地番・地目・地積(土地)/所在・家屋番号・種類・構造・床面積(建物)をそのままメモしておきます。住居表示と地番は異なるので注意してください。
「なぜ名義を変えるのか」を明確にし、その日付を確定します。原因と日付は登記簿に永久に記録される重要情報なので、正確に決めましょう(売買は代金完済日/贈与は贈与契約成立日/相続は被相続人の死亡日/財産分与は離婚成立後の財産分与合意日)。
既存の契約書(売買契約書・贈与契約書・離婚協議書など)に登記原因証明情報として必要な事項がすべて含まれているか確認します。含まれていれば既存文書活用型、含まれていない/契約条件を法務局に出したくない場合は報告形式で新規作成します。売買・財産分与の登記実務では、契約条件や金額を法務局に提出したくないという当事者の意向から、報告形式で新規作成する方法が広く採られています。
報告形式の場合は、本記事H2-6「原因別の書式・記載例」のひな形を参考に、次の事項を漏れなく記載します。①登記の目的(所有権移転等)/②登記の原因(日付+原因)/③当事者(権利者・義務者の氏名と住所)/④不動産の表示(登記事項証明書どおり)/⑤登記の原因となる事実又は法律行為(経緯を時系列で)/⑥確認文言「上記のとおり相違ありません」/⑦作成日と当事者の署名押印欄。
報告形式では、義務者が登記原因の内容を確認し署名または押印する。実務上は権利者・義務者双方の記名押印欄を設けることが多い。申請書・委任状については義務者は実印+印鑑証明書(作成後3か月以内)、権利者は認印で可。法人は法務局届出印+資格証明情報。
提出前に他の添付書類との整合性を確認します。問題がなければ、登記申請書・登記原因証明情報・印鑑証明書・住民票・固定資産評価証明書などをセットにして、不動産所在地を管轄する法務局へ提出します。補正の指示なく登記が完了するまで、通常2〜3週間程度が目安です(管轄法務局・繁忙期により1週間〜1か月以上の幅があります)。完了後は登記識別情報通知(権利証)が法務局から交付されます。
法務局公式サイト「不動産登記の申請書様式について」では、報告形式の登記原因証明情報を含む各種登記申請書のひな形がWord・PDFで無料公開されています。自分で作成する方は、まずこのページの公式ひな形をベースにすると、書式の安全性が格段に上がります。
「登記原因証明情報」は、似た名前の他の書類と混同されることがよくあります。特に「登記識別情報通知(権利証)」と「登記事項証明書(登記簿謄本)」は名称が似ていますが、まったく別の書類です。違いを整理しておきましょう。
つまり、登記原因証明情報は「登記を申請するときに法務局に出す書類」、登記識別情報通知(権利証)は「登記が完了したときに法務局から登記名義人へ通知される本人確認用の情報」という違いです。所有者であることは登記記録(登記事項証明書)で確認しますが、登記識別情報は将来の不動産売却・贈与・担保設定の際に、登記名義人本人が申請に関与していることを確認する資料として使われます。
登記事項証明書は、登記原因証明情報を作成するときに「不動産の表示を確認するための資料」として参照する書類です。両者は使い道が違うので混同しないようにしましょう。
登記原因証明情報は、不動産名義変更の申請に必要な書類の一つに過ぎません。他にも様々な書類を用意する必要がありますので、抜け漏れのないようチェックしましょう。以下は共同申請による所有権移転登記の必要書類です(贈与・離婚・売買等)。
必要書類は登記の種類と原因によって異なります。たとえば抵当権抹消では固定資産評価証明書は通常不要ですし、相続登記でも法定相続分での申請か遺産分割協議か、住所証明情報の要否などで必要書類は変わります。
このように、名義変更登記には登記原因証明情報以外にも多数の添付書類が求められます。提出後に書類の不備が見つかると、平日に法務局へ足を運び「補正(修正)」を行う必要があります。特に原本還付を希望する場合は、コピーの取り方や契印(割印)の仕方に独自のルールがあるため、細心の注意を払って準備してください。
ここまで、登記原因証明情報について概要から作成のポイントまで説明してきました。内容をまとめると、「不動産の名義変更時になぜ権利が動いたかを証明する重要書類」であり、「名義変更の原因に応じて適切な書類を作成・提出する必要がある」ということです。
初めて手続きをする方にとっては、書式や必要事項の確認など少しハードルが高いかもしれません。もし書類作成に不安がある場合は、無理せず専門家(司法書士)の力を借りることをおすすめします。
司法書士に依頼すれば、登記原因証明情報を含め必要書類の大半を司法書士側で用意してくれる場合もあり、依頼者自身で集めたり作成したりする負担が大きく軽減されます。実際、登記申請を司法書士に依頼した場合には司法書士が登記原因証明情報を作成してくれるので、自分で用意する必要はありません。
当センターの実務感覚では、特に次の4ケースは自分で進めるリスクが大きく、初期段階で司法書士に相談する判断が結果として時間とコストを抑えることが多いと感じます。①相続人が4名以上または兄弟姉妹相続のケース/②被相続人の戸籍が明治・大正期まで遡るケース/③数次相続が発生しているケース/④複数の不動産・複数の管轄法務局にまたがるケース。これらに該当する場合は、書類作成に着手する前に一度ご相談ください。当センターでは、相続登記・贈与登記・財産分与登記・売買登記について、登記原因証明情報の作成から登記申請までの司法書士業務をサポートします(贈与税など税務判断が必要な場合は、必要に応じて税理士への相談をご案内します)。
登記原因証明情報は、いったん受け付けられて登記が完了すると、登記簿の「原因」欄として永続的に公示されます。原因日付の誤り・当事者表示の不一致は、後日の売却・融資・相続局面で「権利の根っこ」をめぐる紛争の火種となりやすいため、最初の登記の段階で正確に整えておく価値は非常に大きい部分です。判断に迷う場面があれば、書類作成に着手する前に司法書士へご相談ください。
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