登記原因証明情報とは|書式・記載例・報告形式を司法書士が完全解説


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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最終更新日:2026年5月20日

不動産の名義変更をする際、「登記原因証明情報」という書類が必要になります。この記事では、登記原因証明情報とは何か、なぜ必要なのか、どのように作成すればよいのかを、年間2,000件超のご相談実績がある司法書士法人が分かりやすく解説します。2つの形式の使い分け/売買・贈与・相続・財産分与・抵当権抹消の書式・記載例/印鑑のルール/自分で作成する5ステップ/よくある質問まで、自分で手続きする方にも、専門家に依頼する方にも必要な情報をまとめてご案内します。

この記事の要点(先に結論だけ知りたい方へ)

● 定義:不動産の所有権移転登記などで「なぜ名義を変えるのか」を証明する書類。不動産登記法 第61条で添付が義務付けられています(2004年改正・2005年3月7日施行の現行法で導入)。

● 2つの形式:①既存文書活用型(売買契約書・贈与契約書をそのまま使う)/②報告形式(登記用に簡潔な書面を新規作成)。売買・財産分与などでは、金額・個人情報を法務局に出さずに済む報告形式で対応するのが実務上の通例です。

● 必要な原因:売買・贈与・相続・財産分与・抵当権抹消など、所有権や担保権が動くほぼすべての登記で必要です(所有権保存登記など一部の例外を除く)。

● 押印ルール:登記原因証明情報は登記義務者の押印は必須(権利者の押印は無くても可)。押印する印鑑については指定がないので、実印以外でもOKです。

● 自分で作成する手順:①登記事項証明書で物件を確認 → ②原因と日付を決定 → ③形式(既存文書活用 or 報告形式)を選択 → ④必要事項を記載 → ⑤署名押印・整合性確認のうえ登記申請書と一緒に法務局へ提出(具体的な作成手順は、後述の「自分で作成する5ステップ」で詳しく解説しています)。

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目次
  1. 登記原因証明情報とは?
  2. なぜ必要なの?どんなときに使うの?
  3. 誰が作るの?自分でできる?
  4. 登記原因証明情報のよくあるパターン(相続・贈与・売買など)
  5. 2つの形式 ―「既存文書活用型」と「報告形式」の違いと比較
  6. 原因別の書式・記載例(売買・贈与・相続・財産分与・抵当権抹消)
  7. 書き方のポイントと注意点(一般的なアドバイス)
  8. 印鑑の使い分け ― 実印・認印・会社実印
  9. 自分で作成する5ステップ
  10. 他の書類との違い(登記識別情報・登記事項証明書・印鑑証明書)
  11. 登記手続きに必要なほかの書類もあわせて確認しよう
  12. よくある質問(FAQ)
  13. まとめ:迷ったら専門家に相談を

登記原因証明情報とは?

登記原因証明情報(とうきげんいんしょうめいじょうほう)とは、不動産の名義変更(所有権移転登記)を申請する際に提出が求められる書類の一つです。簡単に言えば、「なぜ名義を変えることになったのか」という原因(売買や相続など)と、実際に権利が移転した事実を証明するための情報をまとめた書面です。

不動産登記法(法律)でも権利に関する登記を申請するときは、その原因を証明する情報を提供しなければならないと定められており、名義変更の真実性を保証するために必要となっています(不動産登記法 第61条「権利に関する登記を申請する場合には、申請人は、法令に別段の定めがある場合を除き、その申請情報と併せて登記原因を証する情報を提供しなければならない」)。

わかりやすく言うと

登記原因証明情報には「どのような理由で所有者が変わったのか」を示す内容が書かれます。たとえば不動産を贈与した場合は贈与契約にその内容が書かれていますし、相続で名義変更する場合は故人が亡くなった事実や相続人との法的関係性が理由になります。

こうした名義変更の理由と事実を証明するための書類が登記原因証明情報なのです。

なぜ必要なの?どんなときに使うの?

登記原因証明情報が必要とされるのは、不動産の権利が移動するときです。名義変更の申請時にこの書類を提出することで、登記官(法務局の担当者)に対して「本当に正当な原因で権利が移りましたよ」と説明・証明する役割を果たします。

これにより、不動産登記簿の内容が正しく信頼できるものとなり、将来その不動産を取引する第三者も安心できるようになります。

具体的にどんな場面で必要になるか

基本的には所有者名義が変わるあらゆるケースです。代表的なのは以下のような場合です。

✅ 登記原因証明情報が必要なケース

  • 相続による名義変更:不動産の所有者が亡くなり、相続人へ名義を移す場合(相続登記)
  • 贈与による名義変更:親から子へ無償で不動産を譲る場合(生前贈与)
  • 離婚に伴う名義変更:離婚の際に夫名義の不動産を妻に移転する場合(財産分与)
  • 売買による名義変更:不動産を第三者に売却し、買主に名義を移す場合(不動産取引)
  • 抵当権の抹消:住宅ローンを完済して抵当権を抹消する場合

これらのケースでは必ず登記原因証明情報を用意して提出する必要があります。逆に言えば、「所有権保存登記」のように権利の新規設定で誰からも権利を受け継がないケース(不動産登記令第7条第3項により例外)など、特殊な場合を除いて基本的に登記原因証明情報は欠かせません。

一般の名義変更手続きでは、「なぜ名義が変わるのか」を証明する書類が常に必要になると覚えておきましょう。

⚠️ 相続登記・住所等変更登記の義務化(最新法改正)
2024年4月1日から相続登記が義務化されており、不動産の取得を知った日から3年以内に申請しないと10万円以下の過料の対象となる可能性があります(不動産登記法第76条の2、第164条第1項)。さらに2026年4月1日から、所有権登記名義人の氏名・住所変更登記も既に義務化されています(同法第76条の5、第164条第2項)。住所・氏名等の変更が生じた日から2年以内に申請しないと5万円以下の過料の対象となります(令和8年4月1日より前に変更があった場合は経過措置の対象となるため、個別に期限を確認してください)。所有権移転登記の前提として住所変更登記等が必要なケースは、義務化との関係でも早めに動く必要があります。

誰が作るの?自分でできる?

登記原因証明情報は、ほとんどの場合、当事者または代理人(司法書士等)が作成する書面です。ただし相続では戸籍類一式と遺産分割協議書、抵当権抹消では金融機関発行の解除証書類、というように、第三者から取得する書類がそのまま登記原因証明情報の構成要素になるケースもあります。

自分で作成する場合

法務局公式サイト「不動産登記の申請書様式について」にWord・PDFのひな形が無料公開されていますので、まずはこの公式書式を入手し、必要事項を当てはめていきます。シンプルな贈与・財産分与であれば公式ひな形で対応可能ですが、実務上は原因日付の確定(特に売買の代金完済日)・物件表示の登記簿との完全一致・確認文言の文型でつまずく方が多く、添付書類との突合せまで含めると、初めて作成する方には決して軽い作業ではありません。提出前に管轄法務局の事前相談窓口に持ち込むか、司法書士に確認を受けることを推奨します。

⚠️ 注意が必要なポイント

内容に不備があると登記申請がスムーズにいかないため注意が必要です。特に売買や贈与の場合は登記義務者(名義を手放す側)の署名または記名押印が求められるなど形式も決まっています。

専門家に依頼する場合

多くの場合、名義変更の手続きを専門家(司法書士)に依頼すると、司法書士がこの書類を代わりに作成してくれます。司法書士に依頼した場合は自分で用意する必要はなく、書類不備の心配も少ないでしょう。

実務上の傾向

書類の作成自体はご自身でも可能ですが、記載ミスによる補正・取下げや、完了後の登記識別情報(権利証)の管理ミスを防ぐため、多くのケースで司法書士が作成を代行しています。「自分でも作れる」ことと「自分で作ってリスクなく登記が通る」ことの間には大きな開きがあります。原因日付の確定や添付書類の整合確認に少しでも迷いがあれば、最初の段階で司法書士に依頼するほうが、結果として時間も総コストも抑えられるケースがほとんどです。

登記原因証明情報のよくあるパターン(相続・贈与・売買など)

登記原因証明情報の内容は、名義変更の原因(ケース)ごとに異なります。以下に代表的なケースと、それぞれどんな書類が「原因証明」として使われるかを紹介します。

不動産名義変更に必要な書類は手続きの内容によって異なります。相続・贈与・離婚・売買など、ケースごとに準備すべき書類が変わってきます。例えば、相続なら戸籍や遺産分割協議書、贈与なら贈与契約書、離婚なら財産分与契約書、売買なら売買契約書、といったように原因に応じた書類が登記原因証明情報となります。

ケース
必要な書類
内容・ポイント
相続
・戸籍謄本
・相続関係説明図
・遺産分割協議書
故人から相続人への権利移転を証明する書類を提出します。相続関係を証明するために被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要となります。具体的には相続関係説明図(家族関係を示す図)や戸籍謄本、また「遺産分割協議書」がこれに当たります。遺産分割協議書を使う場合は、法定相続人全員が内容に合意し実印を押したもの(印鑑証明書の添付も必要)を用意します。これらの書類により、「誰が亡くなり、誰がその不動産を相続することになったか」を証明します。
贈与
・贈与契約書
贈与契約書が典型的な登記原因証明情報になります。たとえば親から子へ不動産を贈与する際に作成した契約書があれば、その契約書(またはその写しに贈与者が署名押印したもの)を提出します。契約書がない場合でも、いつ誰から誰にどの不動産を贈与したかを記載し、贈与者(譲渡人)が署名押印した書面を作成すれば代用可能です。
離婚
(財産分与)
・戸籍謄本
・財産分与契約書
(離婚協議書)
財産分与契約書(離婚協議書のうち不動産の分与に関する部分)が登記原因証明情報となります。離婚の合意内容として不動産の名義を夫から妻に移すことを記載し、双方が署名押印した契約書を用意します。協議離婚の届出前に財産分与の協議が成立した場合には、離婚日が原因日となるので、離婚日の記載のある戸籍謄本が必要となります。契約書がなければ、離婚の際に不動産を譲渡する合意があったことを示す書面(譲渡人・譲受人双方署名)を別途作成する形になります。
売買
・不動産売買契約書
不動産の売買契約書のコピーに売主が署名押印したものを提出すれば、登記原因証明情報となります。口頭での売買で契約書が存在しない場合は、売主・買主、取引日、物件情報などを記載し、「○年○月○日に代金支払いが完了し、所有権が移転した」ことを売主が確認した書面を作成して提出します(このように契約書以外に改めて作成するものを報告形式の登記原因証明情報といいます)。
抵当権抹消
・解除証書
・弁済証書
(金融機関発行)
抵当権抹消では、金融機関から交付される解除証書・弁済証書などが登記原因証明情報になります。これとは別に、抵当権設定契約証書または登記識別情報、金融機関の委任状、会社法人等番号等の情報が添付情報として必要になります(書類によって添付の種別が異なります)。金融機関から届いた書類は一式で保管し、どの書類がどの添付情報に当たるかを確認して申請します。完済から長期間放置すると金融機関側の書類保管期限が切れることがあるので、受け取り後は速やかに抹消登記を申請するのが安全です。

ご覧のように、名義変更の原因に応じて証明に使う書類が異なるのがポイントです。それぞれのケースで、「何をもって権利が移ったと証明するか」を考え、適切な書類を用意しましょう。

もし該当する契約書がない場合でも、必要事項を盛り込んだ書面を作成すれば対応可能です。不安な場合は、法務局が公開している報告形式の雛形PDFなどを利用して作成することもできます。

2つの形式 ―「既存文書活用型」と「報告形式」の違いと比較

登記原因証明情報には大きく分けて2つの形式があります。実務では使い分けが重要なので、それぞれの特徴と使いどころを正確に理解しておきましょう。

① 既存文書活用型(売買契約書・贈与契約書をそのまま提出)

既存文書活用型とは、当事者間で既に作成された売買契約書・贈与契約書・財産分与契約書・遺産分割協議書などを、そのまま登記原因証明情報として法務局に提出する方式です。既存契約書の中に「登記原因証明情報の必要事項(原因・当事者・不動産表示・移転事実)」が記載されていれば、追加で書面を作る必要はありません。

メリット:書類を新たに作る手間が省ける。契約書は当事者間の取引の根本書類なので、最も信頼性が高い。
デメリット:売買代金や個別契約条件(違約金条項・解除条件・特約事項など)の個人情報や金銭情報が登記申請とともに法務局に提出され、法務局に残ります。

② 報告形式(登記用に新規作成)

報告形式とは、登記申請のために登記原因証明情報を新規に作成する方式です。当事者間の契約書(売買契約書など)とは別に、登記に必要な事項だけをまとめた書面を作ります。

メリット:①売買金額・支払条件・違約金条項などの余分な情報を記載せずに済むので、個人情報や金銭情報の開示リスクを最小限にできる/②書式が簡潔で内容が一目で分かるため、法務局の審査がスムーズで補正が出にくい/③契約書原本を当事者の手元に残せる(原本還付の手続きが不要)。
デメリット:当事者全員が新たに署名押印する手間がある(特に郵送・遠隔で集める場合は時間がかかる)。

2形式の比較表

比較項目
既存文書活用型
報告形式
作成の手間
不要(既存契約書を流用)
必要(新規作成)
金額・条件の開示
あり(契約書全文が法務局へ)
なし(最小限の情報のみ)
原本還付の必要性
必要(契約書原本を取り戻すため)
不要(提出書面は登記専用)
補正リスク
契約条件と登記内容に齟齬があるとリスク高
登記用に簡潔・整合性高い/補正リスク低
司法書士実務
△(相続・遺産分割協議書はそのまま使うのが一般的)
◎(売買・財産分与は報告形式で対応するのが通例)

どちらを選ぶべき?実務の判断基準

● 売買・財産分与・抵当権設定 → 報告形式で対応するのが通例:当事者の意向で金額や条件を法務局に出したくないため、契約書とは別建てで報告形式を作成する方法が広く採られています。

● 相続 → 報告形式は利用できない。戸籍謄本や遺産分割協議書をそのまま使用:遺産分割協議書は相続人全員の実印+印鑑証明書が揃った書面なので、これ自体が登記原因証明情報として機能します。

● 抵当権抹消 → 金融機関発行の弁済証書・解除証書を使用:金融機関が発行する解除証書がそのまま登記原因証明情報になります。

原因別の書式・記載例(売買・贈与・相続・財産分与・抵当権抹消)

ここからは、最もよく検索される原因別の書式・記載例を5パターンに分けてご案内します。各記載例はあくまで基本形なので、個別事案では司法書士と相談しながら必要な修正を加えてください。

① 売買の場合の書式・記載例(報告形式)

記載例:売買(報告形式)登記原因証明情報 1.登記申請情報の要項  (1) 登記の目的:所有権移転  (2) 登記の原因:令和8年5月20日売買  (3) 当 事 者      権利者 東京都新宿区○○一丁目1番1号 甲 野 太 郎      義務者 東京都中央区○○二丁目2番2号 乙 山 花 子  (4) 不 動 産:別紙不動産目録のとおり 2.登記の原因となる事実又は法律行為  (1)売買契約     乙山花子は、甲野太郎に対し、令和8年5月20日、本件不動産を売った。  (2)所有権移転時期の特約     (1)の売買契約には、本件不動産の所有権は売買代金の支払いが完了した時に甲野太郎に移転する旨の所有権移転時期に関する特約が付されている。  (3)代金の支払     甲野太郎は、乙山花子に対し、令和8年5月20日、売買代金全額を支払い、甲野太郎は、これを受領した。  (4)所有権の移転     よって、本件不動産の所有権は、同日、乙山花子から甲野太郎に移転した。  上記のとおり相違ありません。  令和8年5月20日   権利者 東京都新宿区○○一丁目1番1号 甲 野 太 郎 ㊞   義務者 東京都中央区○○二丁目2番2号 乙 山 花 子 ㊞

売買の場合のポイントは、「契約の成立日」と「代金支払日(=所有権移転日)」を明記することです。多くの売買契約では「代金完済の時に所有権が移転する」と特約が定められているため、登記の原因日付は「所有権が実際に移転した日」、つまり代金完済日となります。

② 贈与の場合の書式・記載例(報告形式)

記載例:贈与(報告形式)登記原因証明情報 1.登記申請情報の要項  (1) 登記の目的:所有権移転  (2) 登記の原因:令和8年5月20日贈与  (3) 当 事 者      権利者 東京都新宿区○○一丁目1番1号 甲 野 太 郎(子)      義務者 東京都中央区○○二丁目2番2号 甲 野 一 郎(父)  (4) 不 動 産:別紙不動産目録のとおり 2.登記の原因となる事実又は法律行為  (1)甲野一郎は、甲野太郎に対し、令和8年5月20日、本件不動産を贈与し、甲野太郎はこれを受諾した。  (2)よって、本件不動産の所有権は、同日、甲野一郎から甲野太郎に移転した。  上記のとおり相違ありません。  令和8年5月20日   権利者 東京都新宿区○○一丁目1番1号 甲 野 太 郎 ㊞   義務者 東京都中央区○○二丁目2番2号 甲 野 一 郎 ㊞

贈与の場合のポイントは、「贈与契約日=所有権移転日」とするのが一般的だということです(贈与契約は諾成契約なので、契約成立日に効力が生じます)。不動産贈与では贈与税の確認が必要ですが、評価額や適用できる特例(基礎控除110万円・相続時精算課税・配偶者控除・住宅取得等資金贈与の特例等)によって申告の要否・税額が変わります。登記と並行して税理士または税務署に確認しておくと安全です(贈与税の試算は税理士業務範囲のため、別途、税理士にご相談ください)。

③ 相続の場合の書式・記載例(遺産分割協議書)

相続による所有権移転登記(相続登記)は、報告形式の登記原因証明情報を作るのではなく、戸籍謄本一式と遺産分割協議書(または遺言書)の組み合わせを登記原因証明情報として法務局に提出するのが実務の通例です。

法定相続情報一覧図の位置づけ:法定相続情報一覧図は、被相続人と相続人の関係を示す戸籍類の代替として利用できる書類です。ただし、誰が不動産を取得するかを証明する書類ではありません。遺産分割による相続登記では、法定相続情報一覧図だけでは足りず、遺産分割協議書と相続人の印鑑証明書が別途必要です(詳細は法定相続情報一覧図の取り方|法務局で無料・記載例付きで司法書士解説を参照)。

兄弟姉妹相続では、被相続人本人の戸籍類に加え、被相続人の直系尊属(父母・祖父母)が全員死亡していることを証明する戸籍と、兄弟姉妹全員の現在戸籍を揃える必要があります。直系尊属の戸籍は明治・大正期まで遡るケースもあり、改製原戸籍の判読・転籍の追跡が困難で、戸籍収集だけで2〜3か月かかることも珍しくありません。代襲相続(甥・姪が相続人になるケース)が絡むとさらに範囲が広がります。

記載例:遺産分割協議書(相続)の抜粋遺産分割協議書 被相続人  甲 野 太 郎(令和8年3月15日死亡) 本  籍  東京都新宿区○○一丁目1番 最後の住所 東京都新宿区○○一丁目1番1号 上記被相続人の遺産について、共同相続人全員で協議の結果、次のとおり分割することに合意した。 1.次の不動産は、相続人 甲 野 一 郎が相続する。  (別紙不動産目録のとおり) 2.本協議書に記載のない遺産が後日発見された場合は、別途協議する。  上記のとおり相違なく合意した。  令和8年5月20日   相続人 東京都新宿区○○一丁目1番1号 甲 野 一 郎 ㊞(実印)   相続人 東京都中央区○○二丁目2番2号 甲 野 二 郎 ㊞(実印)   相続人 東京都渋谷区○○三丁目3番3号 甲 野 三 郎 ㊞(実印)

遺言による相続登記では、遺言の種類に応じて提出書類が異なります。公正証書遺言は正本または謄本(原本は公証役場に保管されるため取得不可)、自宅保管の自筆証書遺言は家庭裁判所の検認済証明書付きのもの法務局保管の自筆証書遺言は遺言書情報証明書を使用します(法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は検認不要)。

実務でよくある相続の「落とし穴」を3点挙げておきます。①数次相続:相続登記を放置しているうちに相続人がさらに死亡し、二次・三次の相続が発生するケース。関係者が10名以上に膨らみ、遺産分割協議が事実上不可能になることもあります。②相続放棄:相続放棄者がいる場合は家庭裁判所発行の「相続放棄申述受理証明書」が必要で、戸籍からは放棄の事実が分からないため見落としに注意が必要です。③協議不調:遺産分割がまとまらない場合は、「相続人申告登記」をすることで義務化期限(3年)に対応する方法があります(不動産登記法第76条の3/義務を履行したものとみなされる制度)。事案によっては法定相続分での相続登記を先行させ、後日協議成立後に所有権更正登記をする方法もありますが、関係者の人数や今後の売却予定を踏まえて慎重に選択する必要があります。

④ 財産分与(離婚)の場合の書式・記載例(報告形式)

記載例:財産分与(報告形式)登記原因証明情報 1.登記申請情報の要項  (1) 登記の目的:所有権移転  (2) 登記の原因:令和8年4月10日財産分与  (3) 当 事 者      権利者 東京都新宿区○○一丁目1番1号 甲 野 花 子      義務者 東京都中央区○○二丁目2番2号 甲 野 一 郎  (4) 不 動 産:別紙不動産目録のとおり 2.登記の原因となる事実又は法律行為  (1)協議離婚     甲野花子と甲野一郎とは、令和8年4月10日、協議により離婚した。  (2)財産分与     甲野花子と甲野一郎は、令和8年4月10日、甲野一郎が、甲野花子に対し、本件不動産を分与する旨の協議を成立させた。  (3)よって、本件不動産の所有権は、同日、甲野一郎から甲野花子に移転した。  上記のとおり相違ありません。  令和8年4月10日   権利者 東京都新宿区○○一丁目1番1号 甲 野 花 子 ㊞   義務者 東京都中央区○○二丁目2番2号 甲 野 一 郎 ㊞

財産分与登記のポイントは、「離婚が成立していること」と「財産分与の合意があること」の2点を必ず原因に含めることです。離婚が成立する前に名義移転をすると、贈与税の課税リスクが大きくなります。離婚後に登記するのが安全です。

⑤ 抵当権抹消の場合の書式・記載例

住宅ローンを完済して抵当権を抹消する登記では、金融機関が発行する解除証書・弁済証書などが登記原因証明情報になります。これとは別に、抵当権設定契約証書(または登記識別情報)、金融機関の委任状、会社法人等番号などが、それぞれ別の添付情報として必要となります。金融機関から完済時に届く書類は、どれが「登記原因を証する書面」で、どれが「権利証相当」「委任状」「資格証明情報」に当たるかを区別して扱います。

関連記事:抵当権抹消登記の手続き・必要書類・費用の詳細は、抵当権抹消登記の必要書類・費用・手続き|司法書士が解説でまとめています。
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書き方のポイントと注意点(一般的なアドバイス)

報告形式の登記原因証明情報を作成・提出する際には、以下のような一般的なポイントに注意しましょう。

✅ 記載必須項目チェックリスト

  • 登記の目的:例「所有権移転」
  • 登記原因:例「令和○年○月○日 贈与」「令和○年○月○日 相続」など日付と事由
  • 当事者の氏名:権利を得る人(甲)と権利を失う人(乙)
  • 対象不動産の表示:所在地や地番など登記簿通りの記載
  • 権利移転の事実:いつ契約が成立し、いつ権利が実際に移転したか
  • 確認文言:「上記のとおり相違ありません」と明記し当事者双方(少なくとも登記義務者)が署名または記名押印

これらの情報が欠けていると受理されない恐れがあるため、漏れがないよう注意しましょう。

① 不動産の表示は正確に

土地や建物の所在や地番、家屋番号などの物件の表示は、必ず登記簿どおり正確に記載します。登記簿謄本(登記事項証明書)を見ながら、一字一句間違えないように写してください。ここに誤りがあると、登記官がどの不動産のことか特定できず手戻りになってしまいます。

② 権利が移転した事実を明確に

特に売買契約書に所有権移転の特約(代金の支払いが条件)がある場合はその旨も記載しておく必要があります。単に「売買契約を結んだ」というだけでなく、「代金の支払いが完了し、その結果所有権が移転した」といった事実まできちんと書きます。

権利が実際に動いたタイミングをはっきり示すことで、登記官にとっても内容が明確になります。売買や贈与の場合は「いつ契約が成立し、いつ権利が実際に移転したか」という事実関係を具体的に記載しましょう。

③ 当事者の署名・押印を忘れずに

⚠️ 重要:登記義務者の意思確認が取れる体裁を整える

報告形式の登記原因証明情報では、少なくとも登記義務者(権利を失う側:売買なら売主、贈与なら贈与者、財産分与なら元の所有者)が登記原因の内容を確認し、署名または押印する形を取ります。実務では、登記義務者の記名押印欄を設ける書式が多く使われます。

これは登記原因証明情報そのものについての要件で、申請書または司法書士への委任状に必要な実印・印鑑証明書とは別の話です(実印・印鑑証明書のルールはH2「印鑑の使い分け」を参照)。相続の場合は、遺産分割協議書に相続人全員の実印押印・印鑑証明書添付が必要です。

⚠️ 義務者の表示は登記簿と完全一致/住所等変更登記の義務化に注意
義務者(売主・贈与者など)の氏名・住所は、現在の登記簿上の登記名義人の表示と完全一致させる必要があります。登記後に住所や氏名が変わっている場合は、先に住所変更登記または氏名変更登記を申請してから所有権移転登記を申請します。所有権登記名義人の住所・氏名等の変更登記は、2026年4月1日から既に義務化されており、変更の日から2年以内に申請しないと5万円以下の過料の対象となります(不動産登記法第76条の5、第164条第2項。令和8年4月1日より前に変更があったケースは経過措置の対象となるため、個別に期限を確認してください)。所有権移転登記の前提として、早めに整えておきましょう。

④ 契約書の原本還付と報告形式の使い分け

契約書原本を登記原因証明情報として提出する場合は、写しに「原本と相違ありません」と記載して記名押印し、原本還付の手続きを取ることで、原本自体は返却を受けることができます。ただし、原本還付しても写しは提出書類として法務局に残ります。

そのため、売買代金や細かな特約を提出書類に残したくない場合は、契約書とは別に報告形式の登記原因証明情報(必要事項だけを書いた書面)を新規作成して提出するのが実務上一般的です。報告形式で作成した書面は契約書のプライベートな情報を含まないので、提出書類に金額・違約金条項などが残らないというメリットがあります。

自分で提出する際は、どちらの形式にするか検討し、契約書の内容を見られても問題ないかどうかも考慮すると良いでしょう。

⑤ 提出タイミングと他の書類との整合

登記原因証明情報は登記申請書と一緒に法務局へ提出します。提出前に、他の添付書類との内容に矛盾がないか確認しましょう。

申請書に記載した登記原因(日付や事由)と、この証明情報の内容が一致していることも重要なチェックポイントです。書類間の整合性が取れていないと、補正を求められる原因になります。

ポイントまとめ

要は、決められた事項を正確に書き、当事者が確認・署名した書類であれば問題ありません。不安な場合はひな形を活用したり、過去の例を調べたりして、漏れがないよう準備しましょう。

印鑑の使い分け ― 実印・認印・会社実印

不動産登記の押印・印鑑証明書のルールは、主に申請書(または司法書士への委任状)に関するものです。登記原因証明情報そのものへの押印と、申請書・委任状への押印は法令上の位置づけが異なります。ケースごとに整理しておきましょう。

登記原因証明情報そのものへの押印

報告形式の登記原因証明情報では、少なくとも登記義務者が登記原因の内容を確認し、署名または押印する形を取ります。法令上は「署名若しくは押印」で足りるとされていますが、実務上は本人意思確認のために実印を求めることも多くあります。権利者(買主・受贈者など)も記名押印欄を設ける書式が一般的ですが、法的に必須な要素は「権利を失う側(義務者)の意思確認が取れる書面になっていること」です。

申請書・司法書士への委任状は実印+印鑑証明書(3か月以内)

実印と印鑑証明書が法令上問題になる中心は、申請書または司法書士への委任状の押印です。登記義務者は申請書(または委任状)に実印を押印し、作成後3か月以内の印鑑証明書を添付する必要があります(不動産登記令第16条第2項・第3項、第18条第2項・第3項)。実印は市区町村役場に登録された印鑑で、印鑑証明書とセットで本人の意思を担保します。

権利者(買主・受贈者・相続人)は認印でも可

登記権利者(権利を得る側)は、申請書への押印も原則として認印で問題ありません。印鑑証明書も不要です。これは、権利を得る側の意思確認は登記原因の事実関係から明らかであるため、実印まで求める必要がないという考え方によります。

ただし、相続登記の場合の遺産分割協議書は別格です。遺産分割協議書は相続人全員が「自分の取得分」と「他の相続人の取得分」を相互に確認する性質の書類なので、相続人全員が実印で押印し、全員分の印鑑証明書を添付する必要があります。

法人の場合は法務局届出印+資格証明情報

法人が登記義務者となる場合、申請書または委任状には原則として法務局届出印(代表者印・会社実印)を押印します。代表者の資格証明情報については平成27年(2015年)11月2日以降、印鑑証明書については令和2年(2020年)3月30日以降、申請情報に会社法人等番号を記載することでいずれも添付省略が可能となっています(不動産登記令第7条第1項第1号イ、不動産登記規則第48条第1号等)。もっとも、案件や申請方法によって確認事項が変わるため、申請前に管轄法務局または司法書士に確認するのが安全です。

印鑑証明書の使い回しに関する実務(注意:相続登記は別ルール)

売買・贈与・財産分与などで登記義務者が申請書または委任状に添付する印鑑証明書は、作成後3か月以内のものが必要です(不動産登記令第16条第3項・第18条第3項)。複数の登記を続けて申請する場合は、同時申請・原本還付・申請時期によって使い回せることもあるため、取得前に申請スケジュールを確認しておくと無駄が出ません。一方、相続登記で遺産分割協議書に添付する相続人の印鑑証明書には、登記実務上この3か月制限はありません(古いものでも有効)。両者を混同しないように注意してください。

自分で作成する5ステップ

以下は、売買・贈与・財産分与などで報告形式の登記原因証明情報を作成する場合の流れです。相続登記では、報告形式の書面を作るよりも、戸籍類・遺産分割協議書・遺言書などで相続関係と取得者を証明するのが通常で、本5ステップとは流れが大きく異なります(H2-6③の相続セクションを参照)。

STEP 1登記事項証明書を取得して不動産の表示を確認

まず、対象不動産の最新の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得します。法務局窓口なら1通600円、オンライン請求で送付を受ける場合は520円、オンライン請求後に窓口で受け取る場合は490円です(令和7年4月1日改定後の手数料)。登記事項証明書に記載された所在・地番・地目・地積(土地)/所在・家屋番号・種類・構造・床面積(建物)をそのままメモしておきます。住居表示と地番は異なるので注意してください。

関連登記事項証明書の取得方法|法務局窓口・オンラインの違いを司法書士が解説

STEP 2登記の原因と日付を決定する

「なぜ名義を変えるのか」を明確にし、その日付を確定します。原因と日付は登記簿に永久に記録される重要情報なので、正確に決めましょう(売買は代金完済日/贈与は贈与契約成立日/相続は被相続人の死亡日/財産分与は離婚成立後の財産分与合意日)。

STEP 3形式を選択する(既存文書活用型 or 報告形式)

既存の契約書(売買契約書・贈与契約書・離婚協議書など)に登記原因証明情報として必要な事項がすべて含まれているか確認します。含まれていれば既存文書活用型、含まれていない/契約条件を法務局に出したくない場合は報告形式で新規作成します。売買・財産分与の登記実務では、契約条件や金額を法務局に提出したくないという当事者の意向から、報告形式で新規作成する方法が広く採られています。

STEP 4必要事項を記載する

報告形式の場合は、本記事H2-6「原因別の書式・記載例」のひな形を参考に、次の事項を漏れなく記載します。①登記の目的(所有権移転等)/②登記の原因(日付+原因)/③当事者(権利者・義務者の氏名と住所)/④不動産の表示(登記事項証明書どおり)/⑤登記の原因となる事実又は法律行為(経緯を時系列で)/⑥確認文言「上記のとおり相違ありません」/⑦作成日と当事者の署名押印欄。

STEP 5署名押印・整合性チェック・法務局へ提出

報告形式では、義務者が登記原因の内容を確認し署名または押印する。実務上は権利者・義務者双方の記名押印欄を設けることが多い。申請書・委任状については義務者は実印+印鑑証明書(作成後3か月以内)、権利者は認印で可。法人は法務局届出印+資格証明情報。

提出前に他の添付書類との整合性を確認します。問題がなければ、登記申請書・登記原因証明情報・印鑑証明書・住民票・固定資産評価証明書などをセットにして、不動産所在地を管轄する法務局へ提出します。補正の指示なく登記が完了するまで、通常2〜3週間程度が目安です(管轄法務局・繁忙期により1週間〜1か月以上の幅があります)。完了後は登記識別情報通知(権利証)が法務局から交付されます。

法務局公式書式の活用

法務局公式サイト「不動産登記の申請書様式について」では、報告形式の登記原因証明情報を含む各種登記申請書のひな形がWord・PDFで無料公開されています。自分で作成する方は、まずこのページの公式ひな形をベースにすると、書式の安全性が格段に上がります。

他の書類との違い(登記識別情報・登記事項証明書・印鑑証明書)

「登記原因証明情報」は、似た名前の他の書類と混同されることがよくあります。特に「登記識別情報通知(権利証)」「登記事項証明書(登記簿謄本)」は名称が似ていますが、まったく別の書類です。違いを整理しておきましょう。

登記原因証明情報 vs 登記識別情報通知(権利証)の違い

比較項目
登記原因証明情報
登記識別情報通知(権利証)
作成者
当事者または代理人(司法書士等)
法務局(登記完了後に登記名義人へ通知)
役割
登記の原因となった事実を証明
登記名義人本人からの申請であることを確認するための本人確認用情報
使う場面
所有権移転や担保権設定の申請時
将来、別の登記をする際の本人確認
紛失時の影響
再作成は可能(ただし登記義務者の署名押印が再度必要なため、相手方が死亡・連絡不能だと困難)
再発行不可(事前通知・本人確認情報で代替)

つまり、登記原因証明情報は「登記を申請するときに法務局に出す書類」登記識別情報通知(権利証)は「登記が完了したときに法務局から登記名義人へ通知される本人確認用の情報」という違いです。所有者であることは登記記録(登記事項証明書)で確認しますが、登記識別情報は将来の不動産売却・贈与・担保設定の際に、登記名義人本人が申請に関与していることを確認する資料として使われます。

関連記事:登記識別情報の取扱い・紛失時の対応・本人確認情報による代替方法は、登記識別情報通知とは|紛失時の対応・本人確認情報を司法書士が解説でまとめています。

登記原因証明情報 vs 登記事項証明書(登記簿謄本)の違い

比較項目
登記原因証明情報
登記事項証明書(登記簿謄本)
入手方法
当事者が作成
法務局窓口・オンラインで取得(誰でも取得可)
役割
これから登記する原因を証明
現時点の登記簿の内容を証明
取得費用
自分で作成すれば無料
窓口600円/オンライン(郵送受取)520円/オンライン(窓口受取)490円(令和7年4月1日改定後)
登記申請での使い方
添付情報として提出する書類
登記原因証明情報を作成するための参照資料

登記事項証明書は、登記原因証明情報を作成するときに「不動産の表示を確認するための資料」として参照する書類です。両者は使い道が違うので混同しないようにしましょう。

登記手続きに必要なほかの書類もあわせて確認しよう

登記原因証明情報は、不動産名義変更の申請に必要な書類の一つに過ぎません。他にも様々な書類を用意する必要がありますので、抜け漏れのないようチェックしましょう。以下は共同申請による所有権移転登記の必要書類です(贈与・離婚・売買等)。

書類名
内容・役割
登記申請書
登記の内容を記載する申請用紙。名義変更する人が作成します。
登記原因証明情報
本記事で解説している書類。原因(売買・相続等)と権利移転の事実を証明します。
登記識別情報通知
(権利証)
現在の不動産の権利証に相当する情報。旧来の「権利証」をお持ちの場合はそれを提出、近年登記された物件なら12桁の識別番号(通知書)を提出します。
印鑑証明書
権利を渡す側(売主や贈与者など)の実印の証明書。作成後3か月以内のものが必要です。
住民票
(または戸籍附票)
新しく所有者になる人(相続人や買主など)の現在の住所を証する公的書面。登記簿に登録する住所になります。
固定資産評価証明書
登録免許税の計算に使うため、不動産の評価額が記載された証明書。市町村役場で発行を受けます。
委任状
司法書士など代理人に手続きを依頼する場合のみ必要。本人が手続きするなら不要です。

さらに追加で必要になる場合も

必要書類は登記の種類と原因によって異なります。たとえば抵当権抹消では固定資産評価証明書は通常不要ですし、相続登記でも法定相続分での申請か遺産分割協議か、住所証明情報の要否などで必要書類は変わります。

このように、名義変更登記には登記原因証明情報以外にも多数の添付書類が求められます。提出後に書類の不備が見つかると、平日に法務局へ足を運び「補正(修正)」を行う必要があります。特に原本還付を希望する場合は、コピーの取り方や契印(割印)の仕方に独自のルールがあるため、細心の注意を払って準備してください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 登記原因証明情報は自分で作成できますか?
当事者関係が単純で、登記簿上の住所・氏名と現在の住所・氏名が一致している売買・贈与・財産分与であれば、法務局のひな形を使って本人が作成できる場合があります。本記事H2-9「自分で作成する5ステップ」の手順に沿って進めてください。ただし、住所変更登記が先に必要なケース、共有持分の移転、会社が当事者になる案件、相続・財産分与が絡む案件、未成年者・成年後見人が関係する案件では、原因日付や添付書類の判断を誤ると補正・取下げ・却下につながります。自分で作成することに不安がある場合や、管轄法務局での事前相談が難しい場合は、無理に進めず司法書士へ手続き全体を依頼することもご検討ください。なお、無料相談では手続きの進め方をご案内します(個別書面の内容確認はご依頼後の業務範囲です)。
Q2. 報告形式と既存文書活用型のどちらを使えばよいですか?
司法書士実務では、売買・財産分与・抵当権設定は報告形式で対応するのが通例です。報告形式なら売買金額や個別条件を法務局に出さずに済み、補正リスクも低いためです。一方、相続登記は遺産分割協議書(または遺言書)をそのまま使うのが一般的で、抵当権抹消は金融機関発行の解除証書を使います(法定相続情報一覧図は戸籍類の代替であり、遺産分割の合意内容は別途証明が必要です)。原因ごとに「使う書類」「形式」が定型化されているので、それぞれの慣例に従いましょう。
Q3. 売買の場合の書式・記載例を教えてください
本記事H2-6「①売買の場合の書式・記載例」に詳細な記載例を掲載しています。ポイントは、原因日付を「代金完済日(所有権移転日)」とすること、義務者(売主)は実印+印鑑証明書、権利者(買主)は認印で可、「上記のとおり相違ありません」の確認文言を必ず入れることの3点です。報告形式で作成すれば、売買代金や特約事項を法務局に出さずに済みます。
Q4. 法務局のホームページに公式書式はありますか?
はい、あります。法務局公式サイト「不動産登記の申請書様式について」で、報告形式の登記原因証明情報を含む各種登記申請書のひな形がWord・PDFで無料公開されています。自分で作成する場合は、まずこの公式ひな形をベースにするのが最も安全です。最新の様式は法務局公式サイトで確認しましょう。
Q5. 印鑑は実印が必要ですか?認印でもよいですか?
申請書・委任状について、義務者(権利を失う側:売主・贈与者など)は実印+印鑑証明書が必須で、印鑑証明書は作成後3か月以内のものに限られます(不動産登記令第16条第2項・第3項、第18条第2項・第3項)。一方、権利者(権利を得る側:買主・受贈者など)は認印でも可で、印鑑証明書も不要です。法人が登記義務者となる場合は法務局届出印を押印し、代表者の資格証明情報(平成27年11月2日以降)・印鑑証明書(令和2年3月30日以降)は会社法人等番号を申請情報に記載することで添付を省略できます。なお、相続登記で使う遺産分割協議書には相続人全員が実印で押印し全員分の印鑑証明書を添付する必要がありますが、こちらは作成後3か月以内という制限はありません(古いものでも有効)。
Q6. 登記識別情報(権利証)と何が違いますか?
まったく別の書類です。登記原因証明情報は「登記を申請するときに法務局に提出する書類」で、当事者が作成します。一方、登記識別情報通知(権利証)は「登記完了後に登記名義人へ通知される本人確認用の情報」で、将来その不動産を売却・贈与・担保設定する際に、登記名義人本人が申請に関与していることを確認する資料として使います。本記事H2-10「他の書類との違い」で詳しく比較しています。登記識別情報を紛失した場合は事前通知制度や本人確認情報による代替方法があり、登記識別情報通知とは|紛失時の対応・本人確認情報を司法書士が解説で詳しく解説しています。
Q7. 売買契約書をそのまま提出してもいいですか?個人情報の心配は?
既存文書活用型として、売買契約書をそのまま登記原因証明情報として提出することは可能です。ただし、売買代金・支払条件・違約金条項などの個別契約情報がすべて法務局に提出されます。法務局に提出された書類は原本還付の手続きを取らない限り法務局に残るため、契約情報の開示に抵抗がある場合は報告形式で新規作成するのがおすすめです。実務では契約書とは別建てで報告形式を作成するのが通例で、個人情報・金銭情報を出さずに済むのが大きなメリットです。
Q8. 押印を忘れた場合・印鑑証明書がないと登記は通りませんか?
申請書・委任状の義務者実印の欠如や印鑑証明書の不添付は、法務局から補正の指示が出るのが通例です。補正期間内に追完できれば受付番号は維持されますが、追完できなければ却下(不動産登記法第25条)となり、再申請に伴って受付番号が新たに振り直されます。決済日固定の売買・融資実行を伴うケースでは却下のリスクは絶対に避けるべきなので、提出前のセルフチェック徹底か、司法書士への依頼をおすすめします。
Q9. 登記原因証明情報の作成費用は?司法書士への依頼料はいくらですか?
登記原因証明情報の作成自体は、自分で作れば書面代・印刷代のみで済みます。ただし、所有権移転登記には登録免許税が別途必要です(課税標準は固定資産課税台帳に登録された価格=固定資産税評価額)。税率は、売買による所有権移転登記は原則2.0%(ただし土地は令和11年3月31日まで1.5%に軽減/自己居住用住宅用家屋は0.3%に軽減あり)、贈与は原則2.0%相続は0.4%です。これに登記事項証明書取得費・郵送費等の実費が別途かかります。司法書士に依頼する場合の費用は、登記全体の報酬の中に含まれるのが一般的で、登記原因証明情報の作成だけ単独で発注することはほぼありません。当センターの場合、相続登記なら66,000円〜(基本プラン)/99,000円〜(あんしんプラン)/297,000円〜(フルサポートプラン)、贈与登記なら99,000円〜/198,000円〜、財産分与登記なら99,000円〜/198,000円〜、売買登記なら66,000円〜/99,000円〜と料金プランを設定しています。詳細は不動産名義変更の費用・料金プランをご覧ください。
Q10. 報告形式の登記原因証明情報のひな形・テンプレートはどこで入手できますか?
最も信頼性が高いのは法務局公式サイトのひな形(Word・PDF)です。報告形式の登記原因証明情報を含む各種登記申請書様式がすべて無料で公開されています。本記事H2-6「原因別の書式・記載例」も売買・贈与・相続・財産分与・抵当権抹消の5パターンの具体例を掲載していますので、ご自身のケースに最も近い記載例を参考にしてください。市販の書式集や司法書士事務所のサイトでもひな形が公開されているケースがありますが、最新の様式かどうかは法務局公式サイトで確認することをおすすめします。

まとめ:迷ったら専門家に相談を

ここまで、登記原因証明情報について概要から作成のポイントまで説明してきました。内容をまとめると、「不動産の名義変更時になぜ権利が動いたかを証明する重要書類」であり、「名義変更の原因に応じて適切な書類を作成・提出する必要がある」ということです。

専門家への依頼をおすすめする理由

初めて手続きをする方にとっては、書式や必要事項の確認など少しハードルが高いかもしれません。もし書類作成に不安がある場合は、無理せず専門家(司法書士)の力を借りることをおすすめします。

司法書士に依頼すれば、登記原因証明情報を含め必要書類の大半を司法書士側で用意してくれる場合もあり、依頼者自身で集めたり作成したりする負担が大きく軽減されます。実際、登記申請を司法書士に依頼した場合には司法書士が登記原因証明情報を作成してくれるので、自分で用意する必要はありません。

当センターの実務感覚では、特に次の4ケースは自分で進めるリスクが大きく、初期段階で司法書士に相談する判断が結果として時間とコストを抑えることが多いと感じます。①相続人が4名以上または兄弟姉妹相続のケース/②被相続人の戸籍が明治・大正期まで遡るケース/③数次相続が発生しているケース/④複数の不動産・複数の管轄法務局にまたがるケース。これらに該当する場合は、書類作成に着手する前に一度ご相談ください。当センターでは、相続登記・贈与登記・財産分与登記・売買登記について、登記原因証明情報の作成から登記申請までの司法書士業務をサポートします(贈与税など税務判断が必要な場合は、必要に応じて税理士への相談をご案内します)。

登記原因証明情報は、いったん受け付けられて登記が完了すると、登記簿の「原因」欄として永続的に公示されます。原因日付の誤り・当事者表示の不一致は、後日の売却・融資・相続局面で「権利の根っこ」をめぐる紛争の火種となりやすいため、最初の登記の段階で正確に整えておく価値は非常に大きい部分です。判断に迷う場面があれば、書類作成に着手する前に司法書士へご相談ください。

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この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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