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未登記建物を相続したら|放置リスク・固定資産税・登記の流れを司法書士解説


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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最終更新日:2026年5月28日

未登記建物の相続(要点まとめ)

● 未登記建物とは:建物表題登記がない建物。法務局に登記簿が存在せず、名寄帳や固定資産税課税台帳にだけ載っているケースが典型です。

● 期限と過料:相続登記の義務化(不動産登記法第76条の2)は所有権の登記がある不動産が対象で、登記簿そのものがない未登記建物は同条の対象外です。代わりに同法第47条により、所有権を取得した者には1か月以内に建物表題登記を申請する義務(違反時は同法第164条で過料10万円以下)が課されており、3年の猶予がある相続登記義務化よりむしろ厳しい期限です。実務では表題登記の上で相続人名義の所有権保存登記まで進めて名義を整えます。

● 固定資産税:未登記でも市町村が「家屋補充課税台帳」で課税します。発見が遅れて課税漏れだった場合、地方税法に基づき最長5年さかのぼって追徴される可能性があります。

● 遺産分割協議書での書き方:家屋番号がないため、所在地番・種類・構造・床面積で建物を特定して記載します。固定資産税課税明細書の表記と揃えるのが実務上の鉄則です。

● 費用の目安:建物表題登記(土地家屋調査士)8〜12万円が標準的な木造2階建ての目安(附属建物が複数ある・古い建物で資料復元が必要な場合は15〜20万円台もあり)。所有権保存登記(司法書士報酬3〜5万円+登録免許税)。登録免許税は所有権保存登記の本則税率0.4%(登録免許税法別表第一・一(一)。未登記で評価額がない場合は法務局が認定する価額で算出)。

● 解体するとき:固定資産税の課税を止めるため市町村へ家屋滅失届を提出します。登記簿が全く存在しない未登記建物では法務局への建物滅失登記は不要ですが、稀に「表題部のみ」登記されているケース(表題部所有者が被相続人など)があり、この場合は登記簿が存在するため滅失登記が必要です。自己判断で「未登記」と決めつけず、法務局で登記の有無を必ず最終確認してください。

● 当センターの対応範囲:所有権保存登記・相続登記・遺産分割協議書の作成は司法書士業務として対応します。建物表題登記は土地家屋調査士の業務範囲のため、関東対応エリアを中心に提携の土地家屋調査士と連携してご案内します。

登記簿に載っていない建物、いわゆる「未登記建物」を相続したとき、何から手をつければよいか分からず手が止まる方が多くいらっしゃいます。固定資産税の納税通知書には載っているのに法務局で登記簿が取れない、亡くなった親が建てた離れや車庫が未登記だった、増築部分だけ未登記のままになっていた——こうしたケースは、空き家や古い住宅の相続では珍しくありません。

本記事では、不動産名義変更手続センター(年間2,000件超の相続登記・名義変更の相談実績)で実際に扱っている事案をもとに、未登記建物を相続したらやるべきこと、放置のリスク、登記までの流れと費用、遺産分割協議書の書き方までを司法書士の視点で整理します。

未登記建物の相続手続き:建物表題登記から所有権保存登記までの流れ

未登記建物とは?(建物表題登記がない建物の意味)

「未登記建物」とは、法務局の登記記録(登記簿)に建物の物理的な情報(所在・種類・構造・床面積など)が登録されていない建物のことです。建物を新築したときに本来行うべき「建物表題登記」が行われていない状態を指します。

建物登記の2段階:表題登記と所有権保存登記

建物の登記は、大きく次の2段階で完成します。

段階
登記名
担当する専門家
内容
1段階目
建物表題登記
土地家屋調査士
建物の物理的な情報(所在・家屋番号・種類・構造・床面積など)を登記記録に新たに記載する登記。新築から1か月以内に申請する義務がある(不動産登記法第47条)。
2段階目
所有権保存登記
司法書士
その建物の所有者として誰が登記されるかを定める登記。表題登記が済んだ後に申請する。

未登記建物は、このうち1段階目の「建物表題登記」自体が未了の状態です。そのため、相続のタイミングで名義を整えるには、まず表題登記から行い、続けて所有権保存登記を申請するという手順を踏みます。

未登記建物が生まれる主な理由

未登記のまま放置されている建物が現実に多く存在するのは、次のような事情からです。

  • 古い住宅で、新築時に登記をしないまま使い続けていた(戦前〜昭和40年代の建物に多い)
  • 融資を受けずに自己資金や手元のお金で建てたため、抵当権設定の必要がなく登記をしなかった
  • 母屋に増築した離れ・物置・車庫などが「附属建物」として未登記のまま残っていた
  • 建て替えのときに古い建物の滅失登記をせず、新しい建物も表題登記をしなかった
類型の整理: 建物全体が未登記のケースと、母屋は登記済みだが増築部分・附属建物だけが未登記のケースでは、必要な登記が異なります。前者は建物表題登記から始めますが、後者は建物表題部変更登記として、既存の登記記録を現況に合わせる手続きになるのが通常です(不動産登記法第51条による表題部変更登記の申請義務)。本記事は主に前者(建物全体が未登記)を扱いますが、調査の結果が後者だった場合は、土地家屋調査士に表題部変更登記としての対応を依頼してください。
豆知識: 金融機関から住宅ローンを借りた建物は、抵当権設定登記を行う必要があるため、ほぼ確実に表題登記・所有権保存登記が済んでいます。未登記建物が見つかるのは、現金で建てた古い建物や、母屋に付随する離れ・倉庫など「ローンを組まずに建てたもの」がほとんどです。

未登記建物は誰のものか

「登記がない=所有者が決まっていない」と誤解されがちですが、登記の有無は所有権の発生とは別の問題です。原則として、建物を建築した人、または建築費用を負担して取得した人が原始的な所有者として整理され、その人が亡くなれば相続人に所有権が承継されます(民法第896条)。ただし、古い未登記建物では、固定資産税の納税者・建築確認の名義・実際の建築費負担者が一致しないこともあるため、相続登記・保存登記に進む前に、所有権を裏付ける資料(建築請負契約書・領収書・建築確認台帳など)を確認する必要があります。

登記がない状態でも、固定資産税課税明細書・名寄帳・家屋補充課税台帳・建築関係資料などから所有関係を推認できることはあります。ただし、それらは登記という対抗要件・公示手段の代わりにはなりません。売却・担保設定・第三者との権利関係を整理する場面では、表題登記と所有権保存登記によって所有権を公示できる状態に整えておく必要があります——これが未登記建物の最大の弱点です。

未登記建物の調査・発見方法

相続が始まったとき、まず確認すべきは「亡くなった方の名義の不動産が他にもないか」「その不動産のなかに未登記のものがないか」です。当センターの実務では、次の3つの資料を突き合わせて漏れを防いでいます。

調査の3本柱:名寄帳・登記簿・固定資産税課税明細書

資料
入手先
分かること
固定資産税課税明細書(納税通知書に同封)
市町村役場(毎年4〜5月に郵送)
その自治体内で課税対象になっている土地・建物の一覧。未登記建物も載る。
名寄帳(なよせちょう)
市町村役場・固定資産税課
同一名義人が所有する不動産を一覧で取得できる。未登記建物にも内部番号が付与されている。
登記事項証明書(登記簿謄本)/登記情報
登記事項証明書:最寄りの法務局/登記情報:登記情報提供サービス
登記された建物の情報。未登記建物はそもそも取得できない。登記情報提供サービスでは「登記情報」を確認できるのみで、提出用の登記事項証明書は交付されない。金融機関・裁判所・登記申請等に提出する正式書類が必要な場合は法務局で取得する。

名寄帳に載っているのに登記事項証明書を取得できない建物があれば、それが未登記建物の可能性が極めて高いと判断できます。当センターでお手伝いする場合、ご依頼者様には市町村役場で名寄帳を取得していただき、それと法務局の登記情報を照合して未登記建物の有無を確認します。

名寄帳の取り方

名寄帳は、不動産が所在する市町村ごとに取得します(広域取得はできません)。請求できるのは原則として所有者本人ですが、相続発生後は相続人であれば、戸籍謄本などで相続人であることを証明したうえで取得できます。手数料は1通0〜500円程度(自治体により異なります/無料の自治体もあれば、東京都特別区は概ね300円、政令市は200〜400円、500円を取る自治体もあります)。

政令指定都市など複数区にまたがる場合は、区ごとに名寄帳を取り寄せる必要があります。被相続人が複数の市町村に不動産を所有していた可能性があれば、思い当たる自治体すべてに請求しましょう。

実務のコツ: 名寄帳の「家屋番号」欄を必ず確認してください。家屋番号が空欄、または「未登記」「未登」などと表示されていれば未登記建物の可能性が高いです。一方、番号が記載されている場合でも、それが法務局の家屋番号なのか自治体側の管理番号(地方税法381条の家屋補充課税台帳に基づく独自番号)なのかは表記からは判別できないため、最終的には法務局の登記記録と照合して判断することが重要です。

未登記建物を相続したまま放置するリスク

未登記のままでも建物を使い続けることは可能ですが、相続のタイミングで放置すると次のような不利益が生じます。

1. 第三者に所有権を主張できない

未登記のままでも売買や贈与の合意自体は可能ですが、登記簿がないため買主・受贈者・金融機関に対して権利関係を公示できず、所有権移転登記や抵当権設定登記といったその後の登記手続きに進めません。例えば、相続した未登記建物を売却しようとして買主が見つかっても、所有権移転登記の前提として先に表題登記・所有権保存登記が必要になります。実務上は、表題登記・所有権保存登記を済ませてから売却・贈与・担保設定へ進むのが通常です。

2. 住宅ローンや事業資金の担保にできない

金融機関は抵当権設定登記を行うことを融資の条件としますが、登記簿が存在しない建物には抵当権を設定できません。そのため未登記のままでは金融機関の担保実務にそのまま乗せられず、リフォームローン・事業資金の融資を受ける場面では、事前に建物表題登記と所有権保存登記を求められるのが通常です。

3. 固定資産税が課税漏れだった場合の追徴リスク

未登記建物でも、市町村が現地調査や航空写真などで把握していれば「家屋補充課税台帳」に登録され、毎年固定資産税が課税されます。逆に市町村が建物の存在を把握できていなかった場合、後日発見されると過去にさかのぼって課税される可能性があります(地方税法の規定上、最長5年さかのぼり)。

4. 表題登記義務違反の過料リスク

不動産登記法第47条第1項は「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者」を直接の名宛人として、所有権取得から1か月以内に建物表題登記を申請する義務を課しています。相続によって未登記建物の所有権を取得した相続人もこの条文上の「所有権を取得した者」に該当するため、申請義務を直接負います。これに正当な理由なく違反すると、同法第164条により10万円以下の過料の対象になります。

なお、2024年4月1日施行の相続登記義務化(同法第76条の2)は、所有権の登記がある不動産の相続が対象であり、登記簿そのものがない未登記建物は対象外です。ただし実務上は、表題登記を行ったうえで相続人名義の所有権保存登記まで完了させ、登記面でも所有権を整えるのが通常の流れです。

ご注意: 相続人が複数いる場合、未登記のままだと「誰が固定資産税を払うのか」「誰が修繕の判断をするのか」が曖昧になり、相続人間のトラブルにつながりやすくなります。空き家として放置している間も固定資産税は発生し続けるため、早期に名義を整理しておくことをおすすめします。

未登記建物と固定資産税の関係

固定資産税は「登記の有無」ではなく「建物が存在するかどうか」で課税が決まります。市町村は次の2つの台帳のいずれかで建物を把握しています。

登記建物は「家屋課税台帳」、未登記建物は「家屋補充課税台帳」

台帳
対象
把握の手段
家屋課税台帳
登記簿に載っている建物
法務局から市町村への通知(登記された情報が自動連携)
家屋補充課税台帳
未登記建物
市町村職員の現地調査、航空写真、建築確認申請の情報、所有者からの届出など

市町村が現地調査や航空写真などで存在を把握している未登記建物は、家屋補充課税台帳に登録され、毎年固定資産税が課税されています。納税通知書の課税明細を見て、家屋番号欄が空欄や「未登記」となっている建物があれば、それが家屋補充課税台帳で課税されている未登記建物です。課税明細書に載っているからといって登記簿に登記されているとは限らない点に注意してください。

固定資産税が課税されないケース

建物があっても課税されないのは、主に次のような場合です。

  • 評価額が免税点未満:同一市町村内の同一名義人が所有する家屋の課税標準額の合計が20万円未満の場合(地方税法第351条)
  • 市町村が建物の存在を把握していない:航空写真にも映らない場所、建築確認申請も出されていない場合は捕捉漏れになることがあります(ただし発見されれば過去にさかのぼって課税の可能性)
  • 非課税対象:宗教法人の宗教用建物、公共用建物など特殊な用途のもの

未登記建物発見時のさかのぼり課税

市町村が未登記建物の存在を後で把握した場合、固定資産税は原則として過去5年分までさかのぼって課税される可能性があります(地方税法第17条の5)。なお、偽りその他不正の行為によって税額を免れたと判断されるようなケースでは、7年分まで遡及が問題になることもあります。「未登記だから払わなくていい」という考えは通用せず、むしろ放置期間が長いほど発見時の追徴額が膨らみます。

関連ページ: 相続登記後の固定資産税の名義変更については、相続登記と固定資産税の手続きで詳しく解説しています。

未登記建物を相続したらやること(5ステップ)

未登記建物を相続したときに、登記名義を整えるまでの流れを5つのステップに整理します。各ステップで誰が何をするかが変わるため、順番に進めることが大切です。

ステップ1:相続財産の現況調査

市町村役場で名寄帳を取得し、固定資産税課税明細書と突き合わせて、亡くなった方が所有していた不動産(土地・登記建物・未登記建物)を漏れなく洗い出します。並行して、登記内容の確認だけであれば登記情報提供サービスで足ります(提出用の正式書類が必要な場合は最寄りの法務局で登記事項証明書を取得)。把握した不動産の登記情報・登記事項証明書を取り寄せ、未登記建物を特定します。

ステップ2:相続人の確定と遺産分割協議

被相続人の出生から死亡までの戸籍を集めて、相続人を全員確定します。続いて相続人全員で遺産分割協議を行い、未登記建物を誰が承継するかを決めます。未登記建物には家屋番号がないため、遺産分割協議書には所在地番・種類・構造・床面積を記載して特定します(詳しい記載方法は本記事の「遺産分割協議書での未登記建物の書き方」セクションを参照)。

実務でとくに多い「数次相続化した未登記建物」: 戦前〜昭和期に建てられた未登記建物は、祖父名義のまま父が亡くなり、その父も登記しないまま現在に至る、という二段階・三段階の相続(数次相続)になっているケースが少なくありません。この場合、祖父の出生から死亡まで・父の出生から死亡までの双方の戸籍を集める必要があり、戸籍収集だけで2〜3か月かかることも珍しくありません。さらに、祖父の代の相続人(伯父・叔母・その配偶者・既に亡くなっていればその子)が遺産分割協議の当事者として加わるため、協議当事者が10人を超える事案も実際にあります。未登記建物を見つけた時点で「この建物は誰の名義で課税されているか」「被相続人より前の代でも未登記のまま放置されていないか」を必ず確認してください。

ステップ3:建物表題登記(土地家屋調査士)

未登記建物の場合、まず建物の物理的情報を登記する「建物表題登記」を申請します。これは土地家屋調査士の業務範囲で、現地で建物を測量し、図面(建物図面・各階平面図)を作成して法務局に提出します。登録免許税は非課税ですが、土地家屋調査士の報酬として概ね8〜12万円が標準的な木造2階建ての目安です。ただし、未登記の附属建物(離れ・倉庫・車庫等)が複数ある場合、増築部分の整合確認が必要な場合、建築確認情報が残っておらず資料復元から行う場合などは、15〜20万円程度まで上振れすることがあります。具体的な金額は現地確認の上で土地家屋調査士の見積りで確定します。

ステップ4:所有権保存登記(司法書士)

表題登記が完了したら、続けて「所有権保存登記」を申請します。これは司法書士の業務範囲で、遺産分割協議書・戸籍一式・住民票などを添えて法務局に申請します。登録免許税は不動産の価額×0.4%(登録免許税法別表第一・一(一)の本則税率)です。未登記建物のため固定資産税評価額がない場合は、法務局が認定する価額(認定価格)を基礎に算出されます。司法書士報酬は概ね3〜5万円程度が目安です。

ステップ5:固定資産税の名義変更

登記が完了すると、翌年度以降の固定資産税課税に反映されるのが通常です。固定資産税は原則として毎年1月1日時点の所有者に課税されるため、登記完了によりその年度の納税義務者がすぐに差し替わるわけではありません。

あわせて、相続が発生したものの登記が完了するまでの間は、被相続人の不動産が所在する市町村に対して、相続人が「固定資産現所有者申告書」を提出する義務があります(地方税法第384条の3/令和2年4月以降の死亡分から適用。申告期限は各市町村の条例で定められており、相続発生を知った日の翌日から3か月以内とする自治体が多いです)。複数の相続人が法定相続分で共有している段階では「相続人代表者指定届」も提出し、納税通知書の送付先を一本化します。怠った場合は同法第386条による10万円以下の過料の対象になり得るため、登記の前段階として必ず固定資産税担当課で必要な届出を確認してください。

当センターのサポート範囲: 上記のうち、ステップ1の調査、ステップ2の戸籍収集・遺産分割協議書作成、ステップ4の所有権保存登記は当センター(司法書士)が対応します。ステップ3の建物表題登記は土地家屋調査士の業務範囲のため、関東対応エリア(東京・神奈川・埼玉・千葉)を中心に、提携の土地家屋調査士へお繋ぎする体制でご案内します。

遺産分割協議書での未登記建物の書き方

未登記建物には家屋番号が割り振られていないため、遺産分割協議書で建物を特定する記載方法が登記建物とは異なります。書き方を間違えると、後の表題登記・保存登記で「特定が不十分」と指摘されるおそれがあるため、慎重に作成する必要があります。

登記建物との書き方の違い

項目
登記建物の書き方
未登記建物の書き方
所在
所在+家屋番号で特定
所在地番(土地の地番)で特定
種類
登記簿の記載どおり
固定資産税課税明細書の「種類」欄を転記
構造
登記簿の記載どおり
固定資産税課税明細書の「構造」欄を転記
床面積
登記簿の記載どおり
固定資産税課税明細書の「床面積」欄を転記(実測との誤差を許容)
備考
不要
「未登記」と明記するのが実務上の慣例

記載例(未登記建物の場合)

【物件の表示】
(未登記建物)
 所 在 東京都○○区○○一丁目123番地
 種 類 居宅
 構 造 木造瓦葺2階建
 床面積 1階 60.50㎡/2階 45.20㎡
 備 考 未登記

このように、家屋番号の代わりに「所在地番」で建物を特定し、種類・構造・床面積は固定資産税課税明細書の表記を基準に記載します。同じ敷地に複数の未登記建物(離れ・倉庫・車庫など)がある場合は、それぞれの種類・構造・床面積を区別して記載します。

注意:床面積の同一性リスク: 課税明細書の床面積(外壁芯で測ったものが多い)と、表題登記後の登記面積(木造は壁心、区分建物は内法など構造により異なる)は、実務上必ず数平米単位で差異が生じます。安易に「誤差は許容」と書いてしまうと、所有権保存登記の段階で法務局から「協議書の建物と表題登記の建物は別個の建物ではないか」と同一性を疑われ、上申書や追加の証明書類、最悪は遺産分割協議書の作り直しを求められるリスクがあります。これを避けるため、実務では協議書末尾に「後日、測量により確定した面積と相違があっても、本協議の効力に影響しない」といった趣旨の文言を盛り込むか、可能であれば事前に土地家屋調査士に概略調査を依頼し、その数値をもとに協議書を作成して再度の押印リスクを回避します。課税明細書の数字と現況の差が大きい場合や、増築部分の課税漏れが疑われる場合は、所在地・種類・構造・附属建物の有無も含めて特定し、表題登記を担当する土地家屋調査士・司法書士に文面の最終確認を依頼してください。

遺産分割協議書の基本的な作成方法は、遺産分割協議書の作成方法でもまとめています。

相続登記義務化(2024年4月)と未登記建物

2024年4月1日に施行された改正不動産登記法により、相続による不動産の取得者には「相続登記の申請義務」が課されました。ただし、未登記建物は同条の対象ではなく、別の規定(表題登記の申請義務)が直接働きます。むしろ未登記建物では、相続登記義務化の3年より遥かに短い「1か月」という条文上の期限があるため、優先度の高い案件として扱います。

義務化制度の基本ルール(所有権の登記がある不動産の場合)

  • 申請期限:相続の開始および所有権の取得を知った日から3年以内(不動産登記法第76条の2)
  • 過料:正当な理由なく義務を怠ると10万円以下の過料(同法第164条)
  • 過去の相続にも適用:2024年4月1日より前に発生した相続も対象。猶予期間として、2024年4月1日または相続を知った日のいずれか遅い日から3年以内が期限

76条の2第1項は「所有権の登記名義人について相続の開始があったとき」と規定しており、所有権登記そのものがない未登記建物は同条の対象外です。

未登記建物に直接かかる義務(表題登記の申請義務)

不動産登記法第47条第1項は「新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者」を直接の名宛人として、所有権取得の日から1か月以内に建物表題登記を申請する義務を課しています。相続によって未登記建物の所有権を取得した相続人も、この条文上の「所有権を取得した者」に該当するため、相続による所有権取得の日から1か月以内に建物表題登記を申請する義務を直接負います(違反時は同法第164条により10万円以下の過料)。

古い未登記建物では、条文上の1か月の期限を既に経過しているケースがほとんどです。実務上は、発見後できるだけ速やかに是正手続きへ進むのが安全です。

未登記建物の場合の実務の流れと所要期間

登記建物であれば、必要書類を揃えて法務局に申請すれば1〜2か月程度で相続登記が完了します。これに対し、未登記建物は表題登記から始める必要があるため、現地測量・図面作成・自治体への建築確認情報の照会など、登記建物にはない工程が重なります。土地家屋調査士による現地確認・図面作成と、司法書士による保存登記が連動する形になり、当センターの実務感覚では、相続人確定から保存登記完了までで概ね3〜6か月を要します。戸籍収集が長引いたり、数次相続が絡む場合はさらに数か月延びます。

47条の1か月という条文上の期限を厳守することは現実には困難な事案が多いものの、相続発生後に動き出すのが早いほど過料リスクと追徴課税リスクの両方を抑えられます。売却を控えている場合は、このリードタイムを計算に入れて早期に着手してください。

例外:近く解体する予定の場合: 売却・融資・利用継続を予定している未登記建物は、表題登記と所有権保存登記まで進めるのが基本です。一方、近く解体する予定がある場合は、登記を入れるよりも、市町村への家屋滅失届を優先する方が合理的なこともあります。まずは、建物を残すのか、売るのか、解体するのかを決めたうえで手続きを選びます。
関連ページ: 相続登記義務化の詳細・過料のリスク・例外条件は、相続登記義務化の罰則と過料でも解説しています。

建て替え・解体する場合の手続き

相続した未登記建物を解体する場合、または建て替える場合にも、登記関連の手続きが必要になります。「未登記だから何もしなくていい」というわけではありません。

建物を解体する場合の2つの届出

手続き
提出先
期限
備考
家屋滅失届
市町村役場(固定資産税課)
解体後速やかに
固定資産税の課税対象から外すため。未登記建物でも必要。
建物滅失登記
法務局
解体から1か月以内
登記簿があった建物が対象。未登記建物には登記簿がないため、こちらは原則不要。

未登記建物を解体する場合、登記簿がもともと存在しないため、法務局への滅失登記は原則として不要です。一方で、市町村への家屋滅失届は必ず必要です。これを怠ると、解体済みの建物にも固定資産税が課税され続けるため、解体業者から「取毀証明書(とりこわししょうめいしょ)」を受け取って、速やかに市町村に届け出ましょう。

建て替える場合の手続き

未登記建物を解体して建て替える場合、新築建物については「建物表題登記」が必要です(不動産登記法第47条・新築から1か月以内が義務)。古い建物が未登記だった場合は前述のとおり滅失登記は不要ですが、新しい建物の表題登記は必ず行う必要があります。

住宅ローンを組んで建て替える場合は、抵当権設定登記の前提として表題登記・所有権保存登記が必須なので、金融機関側で土地家屋調査士・司法書士を手配することが一般的です。一方、現金で建てる場合に表題登記を忘れがちなので注意してください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 未登記建物は誰のものですか?
原則として、建物を建築した人または建築費用を負担して取得した人が所有者と整理されます(民法では「原始取得者」と呼びます)。その人が亡くなれば、相続人が所有権を承継します(民法第896条)。ただし、登記がないと第三者に対して「自分のものだ」と公の記録で示すことができません。実務でとくに紛糾するのは、いざ売却したい場面で買主が決まっても、表題登記と所有権保存登記を済ませないと所有権移転登記ができず決済が止まるケース、リフォームローン・事業資金で建物を担保に入れたいケース、相続人同士で誰が管理するかを整理するケース、自治体から空き家の所有者として照会が来るケースなどです。いずれの場面でも、登記簿で所有者を公示できない状態は重い足かせになります。
Q2. 未登記建物は固定資産税がかかりますか?
原則としてかかります。市町村は登記簿の有無ではなく、建物の現況を把握して「家屋補充課税台帳」に登録し、毎年固定資産税を課税します。例外として、同一市町村内の同一名義人が所有する家屋の課税標準額の合計が20万円未満の場合は免税点未満で課税されません(地方税法第351条)。なお、未把握だった未登記建物が後日発見されると、最長5年さかのぼって課税される可能性があります。
Q3. 未登記建物を相続したらまず何をすべきですか?
まず市町村役場で名寄帳と固定資産税課税明細書を取得し、亡くなった方が所有していた不動産を漏れなく洗い出してください。次に、法務局または登記情報提供サービスで登記事項証明書を取得し、登記建物と未登記建物を切り分けます。並行して被相続人の戸籍を出生から死亡まで集めて相続人を確定し、遺産分割協議で承継者を決めます。その後、土地家屋調査士に建物表題登記を、司法書士に所有権保存登記を依頼するという流れです。
Q4. 未登記建物を相続登記しないとどうなりますか?
未登記建物については、まず不動産登記法第47条により所有権取得から1か月以内に建物表題登記を申請する義務があり、正当な理由なく違反すると同法第164条で10万円以下の過料の対象になります。相続でこの建物を取得した相続人も、この申請義務を承継すると整理されています。あわせて、登記がない状態では売却・贈与・担保設定ができず、相続人間で誰が固定資産税を払うのか、誰が管理するのかが曖昧になりトラブルにつながりやすくなります。長期間放置すると、市町村による未登記建物のさかのぼり課税のリスクも高まります。
Q5. 未登記建物を自分で登記することはできますか?
法律上は所有者本人が申請することは可能です。ただし、建物表題登記には建物図面・各階平面図の作成が必須で、これは現地測量と図面作成の技術が必要なため、実務上は土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。所有権保存登記は自分で申請する場合と司法書士に依頼する場合で添付書類はほぼ同じですが、違いが出るのは「相続関係を証明する戸籍一式の取り寄せ・読み込み」と「法務局からの補正対応」です。戸籍が10通を超える事案や数次相続が絡む事案では、本人申請だと補正で2〜3往復することが珍しくありません。自分で申請する選択肢を残しつつも、戸籍が広範囲にわたる場合や、表題登記とセットで動かす必要がある場合は、土地家屋調査士・司法書士に同時に依頼するのが現実的です。
Q6. 遺産分割協議書に未登記建物はどう書きますか?
家屋番号がないため、所在地番(土地の地番)・種類・構造・床面積で建物を特定します。種類・構造・床面積は固定資産税課税明細書の表記と揃えるのが実務の鉄則です。末尾に「未登記」と明記しておくと、登記申請の段階で表題登記の手続きが必要であることが一目で分かるため、書類管理がスムーズになります。
Q7. 古い未登記建物の登記費用はいくらかかりますか?
建物表題登記(土地家屋調査士)が標準的な木造2階建てで概ね8〜12万円が目安です。ただし、未登記の附属建物(離れ・倉庫・車庫等)が複数ある場合、増築部分の整合確認が必要な場合、建築確認情報が残っておらず資料復元から行う場合などは、15〜20万円程度まで上振れすることもあります。所有権保存登記(司法書士)は報酬3〜5万円程度+登録免許税(本則税率0.4%/未登記で評価額がない場合は法務局が認定する価額で算出)が一般的な目安です。具体的な金額は土地家屋調査士・司法書士の見積りでご確認ください(当センターでもお見積りをお出ししています)。
Q8. 未登記建物を解体する場合の手続きは?
市町村役場に「家屋滅失届」を提出します(解体業者から取毀証明書を受け取って添付)。これにより翌年度の固定資産税の課税対象から外れます。登記簿がない未登記建物の場合、法務局への建物滅失登記は原則不要です。一方、建て替える場合は新築建物の「建物表題登記」が必要になります(不動産登記法第47条・新築から1か月以内)。
Q9. 名寄帳に載っているのに登記簿がないのはなぜ?
名寄帳は市町村が固定資産税を課税するための内部資料で、登記の有無に関わらず把握している建物を一覧化したものです。法務局の登記簿とは別の管理体系のため、市町村が現地調査・航空写真・建築確認情報などで建物の存在を把握すれば、登記がなくても名寄帳には載ります。これが「名寄帳には載っているが登記簿にはない」未登記建物が発生する理由です。
Q10. 相続登記の義務化は未登記建物にも適用されますか?
2024年4月施行の相続登記義務化(不動産登記法第76条の2)は、登記簿に所有権の登記がある不動産の相続を中心とした制度で、登記簿そのものがない未登記建物にそのまま適用されるわけではありません。未登記建物には別途、同法第47条による建物表題登記の申請義務(所有権取得から1か月以内)が直接かかります。実務上は、表題登記を行ったうえで相続人名義の所有権保存登記まで進め、登記面でも所有権を整えるのが通常の流れです。「3年以内なら大丈夫」と単純に判断せず、未登記建物では表題登記から早めに着手することをおすすめします。
この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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