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相続で必要な戸籍の取り方|出生から死亡まで・改製原戸籍・除籍の集め方


《この記事の作成者兼監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (
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最終更新日:2026年5月29日

相続で必要な戸籍取得の要点まとめ

● 必要なのは出生から死亡まで連続した戸籍:民法第887条・第889条・第890条で定める相続人の範囲を漏れなく確定するため、被相続人の戸籍を出生時点まで遡って全て揃える必要があります。

● 2024年3月開始の広域交付制度を最初に活用:戸籍法第120条の2の新設により、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍は本籍地以外の市区町村窓口でも請求可能に(令和6年3月1日施行)。

● 広域交付で取れないケース:コンピューター化前の手書き戸籍・改製原戸籍の一部・除籍簿の一部は対象外で、本籍地の市区町村への個別請求が必要です。

● 改製原戸籍とは:戸籍法改正前の様式で作成された戸籍。実務で遡る改製原戸籍は平成改製原戸籍(平成6年法務省令第51号)と昭和改製原戸籍(昭和32年法務省令第27号)の2種類が基本で、それ以前に出生していれば旧法戸籍(大正4年式・明治31年式など)まで除籍簿を辿ります。

● 戸籍取得 5ステップ手順:①広域交付で一括申請 → ②不足分の特定 → ③本籍地に郵送請求 → ④改製原戸籍を遡る → ⑤連続性の最終確認、の順で進めます。

● つまずく7つの落とし穴:手書き戸籍の判読困難・転籍多数・廃棄済戸籍・養子縁組・婚姻除籍・分籍・本籍地不明、それぞれに対処法があります。

● 司法書士へ依頼する判断基準:戸籍が10通超・転籍5回超・廃棄戸籍あり・遠方本籍地のいずれかに該当する場合は、専門家依頼で不足戸籍の特定や代替資料の整理がしやすくなり、手続の差し戻しリスクを下げられます。

相続手続きでは、相続登記や預貯金の払戻しで「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本」が基本資料になります(相続税申告が必要な場合も、全相続人を明らかにする戸籍の写しや法定相続情報一覧図の写しが求められます)。被相続人が結婚・転居・本籍地変更を繰り返している場合は10通以上の戸籍が必要になることも珍しくありません。本記事では、2024年3月に開始された広域交付制度を最大限活用しつつ、改製原戸籍・除籍・転籍が絡む複雑なケースでも確実に揃える方法を、相続登記を年間2,000件超のご相談実績を持つ司法書士が整理します。

この記事の目次
  1. 出生から死亡まで全ての戸籍が必要な理由
  2. 【2024年3月開始】広域交付制度で戸籍取得が革命的に簡単に
  3. 広域交付で取れないケースと従来の遡り取得 5ステップ
  4. 改製原戸籍とは|戸籍謄本・除籍謄本との違いを完全整理
  5. 被相続人別ケース別の戸籍取得範囲
  6. 戸籍取得でつまずく7つの落とし穴
  7. 戸籍取得を司法書士に依頼する判断基準と費用相場
  8. よくある質問(FAQ)

1. 出生から死亡まで全ての戸籍が必要な理由

相続登記や預貯金の払戻しでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が基本資料になります。相続税申告が必要な場合も、全相続人を明らかにする戸籍の写し、または要件を満たす法定相続情報一覧図の写しが求められます。なぜ「死亡時の戸籍」だけでは足りないのでしょうか。

1-1. 法定相続人を漏れなく確定するため

民法は法定相続人の範囲と順位を以下のように定めています。

  • 常に相続人:配偶者(民法第890条)
  • 第1順位:子(民法第887条第1項)/子が死亡している場合は孫・ひ孫が代襲(同条第2項)
  • 第2順位:直系尊属=父母・祖父母(民法第889条第1項第1号)
  • 第3順位:兄弟姉妹(民法第889条第1項第2号)/兄弟姉妹が死亡している場合は甥姪が代襲(同条第2項)

これらは民法第887条・第889条・第890条で相続人の範囲を、民法第900条で法定相続分を定めています。たとえば被相続人に子が3人いると思っていたら、実は若い頃に認知した非嫡出子や離婚前の前妻との子がいた、というケースは決して珍しくありません。過去の戸籍を遡って初めて発覚する相続人が存在する可能性があり、相続人を見落としたまま遺産分割協議をすると、協議自体が無効となり、登記のやり直しや金融機関での手続差し戻しにつながります。

1-2. 銀行・法務局・税務署が求める書類

提出先
必要な戸籍の範囲
根拠
法務局(相続登記)
被相続人の出生から死亡までの戸籍一式+相続人全員の現在戸籍
不動産登記令第7条第1項第5号・同令別表22(相続を証する情報)
金融機関(預貯金解約)
同上(法定相続情報一覧図でも代用可)
各金融機関の相続手続規程
税務署(相続税申告)
被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍謄本、または法定相続情報一覧図の写し(特例適用時は戸籍附票・住民票関係書類が必要な場合あり)
相続税法第27条・国税庁案内
家庭裁判所(相続放棄)
被相続人の住民票除票または戸籍附票、申述人の現在戸籍、被相続人の死亡記載のある戸籍。直系尊属・兄弟姉妹・甥姪が申述する場合は、先順位相続人がいないことを示す追加戸籍も必要
家事事件手続法第201条・裁判所案内

1-3. 「出生から死亡まで」の意味

「出生から死亡まで」とは、被相続人が生まれた瞬間から亡くなるまでの記録が、戸籍同士の編製日・除籍日と、転籍・婚姻・分籍・改製・従前戸籍欄の記載で途切れずつながっていることを指します。具体的には次のような連続性を確認します。

  • 現在戸籍(死亡記載あり)の「編製日」と前の戸籍の「除籍日」が照合できる
  • 転籍前の戸籍と転籍後の戸籍が「転籍」を理由として接続される(従前戸籍欄・新本籍・筆頭者の情報を照合)
  • 婚姻による除籍がある場合、婚姻前の親の戸籍にまで遡る
  • 戸籍法改正による「改製」がある場合、改製前の戸籍(改製原戸籍)にまで遡る
  • 分籍がある場合、分籍前の親の戸籍にまで遡る

特に前戸籍の「除籍日」と後戸籍の「編製日」が1日でもずれていると、登記官や金融機関の担当者はその間の戸籍の存在を疑い、追加提出を求めてきます。転籍直後に死亡したケースなどは数日のずれが命取りになるため、日付の連続は神経質に確認します。

2. 【2024年3月開始】広域交付制度で戸籍取得の負担は軽くなったが、取れない戸籍もある

2024年(令和6年)3月1日、戸籍法の改正により「戸籍証明書等の広域交付制度」が施行されました(戸籍法第120条の2)。これは相続手続きにおける戸籍収集の負担を大きく軽減する制度で、本籍地以外の市区町村窓口でも一定範囲の戸籍を請求できるようになりました。ただし対象範囲には制限があり、取れない戸籍もあることを理解しておく必要があります。

2-1. 広域交付制度とは

従来、戸籍謄本を取得するには「本籍地の市区町村」に対して請求する必要がありました。被相続人が転籍を繰り返していると、それぞれの本籍地ごとに郵送請求するか、現地まで足を運ぶ必要があり、相続人にとって大きな負担となっていました。

広域交付制度では、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍については、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できます。本籍地が北海道でも沖縄でも、東京の窓口で請求可能です。ただし下記2-2で説明する対象外の戸籍があるため、不足分は本籍地への個別請求が必要になります。

2-2. 取得できる戸籍の範囲

請求できる人
本人・配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫)
取得できる戸籍
本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍謄本
請求方法
最寄りの市区町村の戸籍担当窓口で対面請求
必要書類
顔写真付きの本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・パスポート等)
手数料
戸籍謄本450円・除籍謄本/改製原戸籍750円(各市区町村で同額)

注意:兄弟姉妹の戸籍は広域交付では取れません。戸籍法第120条の2は請求権者を本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限定しているため(配偶者は厳密には直系ではありませんが、同条で広域交付の請求権者として認められています)、兄弟姉妹の戸籍はこの制度では取得できません。共通の親の戸籍を広域交付で取得すれば兄弟姉妹の存在は確認できますが、各兄弟姉妹の「現在の戸籍」は依然として個別請求(本籍地への郵送等)が必要で、広域交付だけでは兄弟姉妹相続の戸籍収集は完結しません。

2-3. 広域交付制度の利用手順

  1. 最寄りの市区町村役場の戸籍担当窓口へ来庁(郵送・代理人請求は不可)
  2. 顔写真付きの本人確認書類を提示(運転免許証・マイナンバーカード等)
  3. 請求書に被相続人の氏名・本籍地・必要な戸籍の範囲を記入
  4. 窓口担当者が全国の戸籍情報を検索・取得
  5. 手数料を支払い、戸籍謄本を受領

所要時間の目安|即日交付は困難と考えたほうが安全です。出生から死亡までの一式を遡る場合、本籍地の自治体とのデータ照合や本籍地への確認に時間を要するため、「午前中に受け付けて夕方以降または後日の引き渡し」という運用になる自治体が多くあります。窓口での拘束時間が1〜2時間を超えることも珍しくありません。1日ですべてが揃うと過信せず、平日に余裕を持ったスケジュールで臨み、事前に役場へ電話で確認することをおすすめします。

3. 広域交付で取れないケースと従来の遡り取得 5ステップ

広域交付制度は便利ですが、すべての戸籍が取れるわけではありません。次のケースでは従来通り本籍地の市区町村への個別請求が必要です。

3-1. 広域交付で取れない主なケース

  • コンピューター化されていない手書き戸籍・タイプ印字戸籍:システム検索の対象外
  • 改製原戸籍の一部:自治体によってはまだコンピューター化されていないものがある
  • 除籍簿のうち相当古いもの:保存はされているが電子化未了
  • 戸籍の附票:広域交付の対象外(住民票の写し・戸籍附票は別制度)
  • 一部事項証明・記載事項証明:通常の請求でしか取得できない
  • 兄弟姉妹・甥姪・叔父叔母の戸籍:直系親族以外は請求権者の制限により不可

3-2. 従来の遡り取得 5ステップ

STEP 1広域交付で取れる戸籍を最初に申請する

まずは最寄り市区町村の戸籍担当窓口で、広域交付制度を使って取れる範囲の戸籍をすべて取得します。顔写真付き本人確認書類を持参し、被相続人の氏名・本籍地・必要な戸籍の範囲を伝えます。窓口で全国検索が行われ、コンピューター化済みの戸籍は窓口で交付されることがあります。ただし出生から死亡までの一式を請求する場合は確認に時間がかかり、後日交付になることもあります。

STEP 2取得結果を確認し不足分を特定する

受領した戸籍を年月日順に並べ、「編製日」と「除籍日」の連続性をチェックします。改製前の戸籍(改製原戸籍)、廃棄戸籍、手書き戸籍などで広域交付の対象外となったものを特定し、不足している期間と対応する本籍地を洗い出します。

STEP 3不足分の本籍地に郵送で直接請求する

不足戸籍がある本籍地の市区町村役場宛に、郵送請求を行います。必要書類は次の通りです。

  • 戸籍謄本等請求書(市区町村のホームページからダウンロード)
  • 定額小為替(郵便局で購入。戸籍450円・除籍/改製原戸籍750円分)
  • 請求者の本人確認書類のコピー(運転免許証等)
  • 請求者と被相続人の関係を証する戸籍のコピー
  • 返信用封筒(切手貼付・宛名記入)
STEP 4改製原戸籍を遡って取得する

受領した戸籍に「平成6年法務省令第51号による改製」「昭和32年法務省令第27号による改製」などの記載があれば、その改製前の戸籍(改製原戸籍)も取得します。改製原戸籍は同じ本籍地の役場で発行可能です。出生時点まで遡るには、被相続人の生年により昭和の改製原戸籍まで遡る必要があります。

STEP 5連続性を最終確認する

すべての戸籍を年月日順に並べ、出生から死亡まで「編製日」「除籍日」「転籍日」「改製日」が連続していることを確認します。1日でも空白があれば追加取得が必要です。完了したら法務局・金融機関・税務署への提出準備が整います。

全体の所要期間の目安:広域交付で大半が揃う場合は1〜2週間、追加で郵送請求が必要な場合は3〜6週間、改製原戸籍の遡りが必要な複雑ケースでは2〜3か月かかることもあります。相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内)から逆算して早めに着手しましょう。

4. 改製原戸籍とは|戸籍謄本・除籍謄本との違いを完全整理

戸籍に関する用語は似たものが多く混同しやすいため、それぞれの意味と違いを整理します。

4-1. 4種類の戸籍書類の違い

名称
意味
取得理由
戸籍謄本(全部事項証明書)
現在有効な戸籍で、戸籍内全員の情報が記載されたもの
相続人の現在の身分関係を証明するため
戸籍抄本(個人事項証明書)
現在有効な戸籍のうち、特定の1人だけの情報を抜粋したもの
相続手続きでは通常使わない(謄本が必要)
除籍謄本
戸籍内の全員が死亡・婚姻・転籍などで除籍され、戸籍として閉じられたもの
被相続人の死亡記載・古い戸籍の連続性証明
改製原戸籍謄本(原戸籍/はらこせき)
戸籍法改正により様式が変更される前の旧戸籍
改製前の婚姻・出生・認知・養子縁組記録を確認するため

4-2. 改製原戸籍が生まれた歴史的経緯

日本の戸籍は明治5年(1872年)に初めて編製されて以来、社会の変化に応じて何度も様式が改められてきました。実務で「改製原戸籍」として取得対象になるのは、次の2種類が基本です。

  • 昭和改製原戸籍(昭和32年法務省令第27号):昭和22年の民法・戸籍法改正で家制度が廃止され、「家」単位から「夫婦と未婚の子」単位の戸籍へ移行しました。ただし既存戸籍の実際の書き替え(改製)は昭和32年法務省令第27号によって昭和32年〜40年頃に順次行われたため、改製原戸籍としては「昭和32年式」が該当します。
  • 平成改製原戸籍(平成6年法務省令第51号):戸籍のコンピューター化・横書き化に伴う改製。実施時期は市区町村ごとに異なり、平成10年代〜令和初期まで分散しています。

被相続人が昭和改製より前に出生している場合は、さらにその前の旧法戸籍(大正4年式・明治31年式・明治19年式など、家制度下の戸籍)まで除籍簿を辿ることになります。なお、明治5年導入の「壬申戸籍」は身分差別記載を含むため昭和43年以降は閲覧・交付が一切禁止されており、相続実務で取得して使う資料ではありません。

4-3. 改製原戸籍の見分け方

取得した戸籍の冒頭に次の記載があれば、それが改製前または改製後の戸籍であることを示しています。

  • 「平成6年法務省令第51号附則第2条第1項による改製」 → 平成改製後の現行戸籍
  • 「平成○年○月○日改製につき昭和○年○月○日消除」 → 平成改製前の改製原戸籍
  • 「昭和32年法務省令第27号による改製」 → 昭和改製による戸籍
  • 「戸主」「家督相続」などの記載 → 昭和改製前の旧法戸籍(戦前の家制度下)

5. 被相続人別ケース別の戸籍取得範囲

誰が相続人になるかによって、必要な戸籍の範囲が大きく変わります。代表的な4つのケースを整理します。

5-1. ケースA:配偶者と子のみが相続人(最も一般的)

被相続人に配偶者と子がいる、最もシンプルなケースです。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式(連続性確保)
  • 配偶者の現在戸籍
  • 各子の現在戸籍(婚姻等で別戸籍になっている場合)

このケースでは、被相続人の戸籍を遡る目的は「隠れた認知子・前妻との子の有無を確認するため」です。「他に相続人はいない」と断定するには、出生まで遡って初めて確認できます。

5-2. ケースB:子がいない・配偶者と親が相続人

被相続人に子がなく、両親(または祖父母)が存命の場合です。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
  • 配偶者の現在戸籍
  • 両親(または祖父母)の現在戸籍

被相続人に子がいないことを証明するため、出生から死亡までの全戸籍が必須です。「養子を取った記録がないこと」「認知した子がいないこと」も同時に確認されます。

5-3. ケースC:兄弟姉妹が相続人(最も戸籍が多くなる)

被相続人に子がおらず、父母・祖父母などの直系尊属も全員亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人となります(民法第889条第1項第2号)。このケースは最も戸籍が多くなります。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
  • 被相続人の両親それぞれの出生から死亡までの戸籍一式(兄弟姉妹を全員確定するため)
  • 直系尊属(父母・祖父母など)が全員死亡していることを示す戸籍(先順位相続人がいないことの確認)
  • 各兄弟姉妹の現在戸籍(既に死亡している場合は出生から死亡までの戸籍+甥姪の現在戸籍)
  • 配偶者の現在戸籍

兄弟姉妹相続では戸籍が20〜30通になることも。両親それぞれの出生まで遡り、その間に生まれた全ての兄弟姉妹(半血兄弟姉妹を含む)を漏れなく特定する必要があります。注意したいのは、両親の戸籍を広域交付で取得して兄弟姉妹を特定できても、各兄弟姉妹の「現在の戸籍」は広域交付では1通も取れない点です。結局、生存している兄弟姉妹の本籍地へ1か所ずつ郵送請求を行う必要があり、手間は従来とほとんど変わりません。広域交付で解決できるのは「親世代までの遡り」と割り切る必要があります。

5-4. ケースD:代襲相続・数次相続が絡む

相続人となるべき子や兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子(孫・甥姪)が代襲相続人になります(民法第887条第2項・第889条第2項)。

  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍一式
  • 先に死亡している子(または兄弟姉妹)の出生から死亡までの戸籍一式
  • 代襲相続人となる孫・甥姪の現在戸籍

数次相続(相続発生後に相続人がさらに死亡)の場合は、二次相続の被相続人についても出生から死亡までの戸籍が必要となり、通数が一気に増えます。

6. 戸籍取得でつまずく7つの落とし穴

「複雑な戸籍」と呼ばれるケースには、いくつかの典型的なパターンがあります。事前に把握しておくと対処がスムーズです。

6-1. 落とし穴①:手書き戸籍の判読が困難

昭和初期以前の戸籍は毛筆や万年筆による手書きで、独特の崩し字や旧字体が使われており、現代の感覚では判読が非常に難しいことがあります。特に人名・地名は専門的な知識が必要です。

対処法:発行した市区町村の戸籍担当窓口に問い合わせる方法もありますが、窓口でも「おそらくこう読みますが断定はできません」と濁されるケースが少なくありません。昭和初期以前の戸籍は当時の戸籍法に基づく独特の記載ルールや変体仮名が使われており、パズルを解くような作業になります。一文字の読み間違いが相続人の取りこぼし、ひいては登記の却下につながるため、判読に迷う場合は自己判断せず、戸籍解読に慣れた司法書士に「読み合わせ」を依頼するのが確実です(行政書士は戸籍の取得・整理は扱えますが、相続登記の代理権はないため別途司法書士への引き継ぎが必要になります)。

6-2. 落とし穴②:転籍が多くて戸籍が複雑

転籍とは、住所ではなく本籍地を移す手続きのことです。実際の引っ越しをしても本籍地を動かさない限り戸籍は増えませんが、転籍届を出すたびに新しい戸籍が編製されます。被相続人が結婚・離婚・自身の意思などで5回以上転籍している場合、各本籍地に対して個別請求が必要になります。

対処法:まず広域交付制度を使い、コンピューター化済みの戸籍を一括取得。次に取得した戸籍の「従前戸籍欄」を確認し、転籍前の本籍地を特定して郵送請求します。これを順に遡ります。

6-3. 落とし穴③:戸籍が廃棄されていて取れない

戸籍法施行規則第5条により、現在の除籍簿の保存期間は原則150年と定められていますが、平成22年(2010年)の規則改正前は80年でした。特に昭和初期から戦前にかけての古い除籍・改製原戸籍は、旧80年の保存期間を満了して既に廃棄されている自治体が少なくありません。出生まで遡る過程で、この「戦前の1枚」だけが抜け落ちるケースが頻発します。

対処法:この場合は単に「取れませんでした」では済まず、市区町村から「廃棄証明書(廃棄済証明書)」を取得した上で、相続人全員で「他に相続人がいないこと」を確認する旨の申述書(上申書)の作成へ舵を切る判断が求められます。ただし申述書だけで自動的に認められるわけではなく、事案によっては権利証(登記済証)の原本提示・不在籍/不在住証明書・固定資産税の納税証明書などの補完資料が追加で求められることがあります。判断は管轄法務局や登記官によって異なるため、事前に管轄法務局または司法書士へ確認してから進めるのが安全です。

6-4. 落とし穴④:養子縁組による戸籍移動

被相続人が養子に出ていた・養子を取っていた場合、その記録は養子縁組した時点の戸籍養親側の戸籍の両方に記載されます。普通養子縁組では実親との親族関係も残るため、実親側・養親側双方の戸籍確認が必要です。一方、特別養子縁組では原則として実方(実親・実方の血族)との親族関係が終了するため、戸籍の記載から縁組の種類を確認して相続関係を判断する必要があります。

対処法:被相続人の戸籍に「養子縁組」の記載があれば、その日付・縁組の種類・相手方の本籍地を控えておきます。養親側の戸籍を辿ることで、相続人としての地位や代襲相続関係を正確に把握できます。

6-5. 落とし穴⑤:婚姻による除籍

婚姻すると、夫婦どちらの氏を選ぶかに応じて、新しい戸籍が編製されるか、配偶者の戸籍に入る形となり、いずれにしても婚姻前の親の戸籍からは除籍されます。出生まで遡るには、現在の戸籍 → 婚姻前の親の戸籍 → 親の改製原戸籍 → 被相続人の出生記録のある戸籍、と辿る必要があります。

対処法:婚姻による除籍の記載から、婚姻前の本籍地と筆頭者(多くは親)を特定し、その戸籍を取得します。婚姻前の戸籍がさらに転籍・改製を経ている場合は、そこから再度遡りが発生するため、婚姻年月日を起点に親世代の改製原戸籍まで一気に手当てするのが確実です。

6-6. 落とし穴⑥:分籍による戸籍分離

成年に達した子は親の戸籍から独立して自分単独の戸籍を作る(分籍する)ことができます。被相続人が若い頃に分籍していた場合、分籍前の親の戸籍まで遡らないと出生記録に辿り着けません。

対処法:分籍は本人の意思で単独戸籍を作る届出のため、従前戸籍欄に分籍前の本籍地・筆頭者が記載されます。ただし筆頭者名が旧字体で読みにくいケースや、分籍前の戸籍がさらに転籍・改製を経ている場合は、そこから再度遡りが発生します。分籍の年月日を起点に、親世代の改製原戸籍まで一気に手当てするのが確実です。

6-7. 落とし穴⑦:本籍地が不明・実家が遠方

被相続人の本籍地を相続人が把握していないケースがあります。死亡時の本籍地は住民票の除票(本籍地記載あり)から確認できますが、過去の本籍地は前の戸籍を辿らないと分かりません。また実家が遠方にある場合、郵送請求の往復に時間がかかります。

対処法:被相続人の住民票の除票(本籍地・前住所記載あり)を最初に取得します。広域交付制度を使えば本籍地の遠近は関係なく取得できるため、まずは広域交付で取れるだけ取得し、不足分のみ郵送請求します。

7. 戸籍取得を司法書士に依頼する判断基準と費用相場

戸籍収集は時間と労力を要する作業ですが、専門家に依頼するかどうかの判断は、ケースの複雑さと相続人の状況に応じて行います。

7-1. 自分で取得 vs 司法書士に依頼する判断基準

状況
おすすめ
戸籍が3〜5通程度・転籍なし
自分で取得(広域交付で1日完結も可能)
戸籍が5〜10通・転籍2〜3回
自分で取得が可能だが時間と確実性で依頼検討
戸籍が10通超・転籍5回超
司法書士に依頼を推奨
廃棄戸籍あり・申述書作成が必要
司法書士に依頼を強く推奨
兄弟姉妹相続・代襲相続が絡む
司法書士に依頼を強く推奨
遠方の本籍地が多い・平日に役場へ行けない
司法書士に依頼を推奨
相続税申告期限(10か月)が迫っている
司法書士に依頼で時間短縮

7-2. 当センターの相続登記プラン(料金例)

戸籍収集だけを切り出して依頼することは少なく、通常は相続登記・遺産分割協議書作成・法定相続情報一覧図の作成と一体で依頼されます。費用は戸籍の通数・不動産の数・相続人の人数によって変わりますが、当センターの相続登記プランは以下の通りです。

プラン
料金(税込)
内容
ライトプラン
66,000円〜
相続登記のみ(戸籍は依頼者準備)
スタンダードプラン
99,000円〜
相続登記+戸籍収集+登記申請に必要な範囲での遺産分割協議書作成
フルサポートプラン
297,000円〜
相続登記+戸籍収集+登記申請に必要な範囲での遺産分割協議書作成+法定相続情報一覧図作成

※ 登録免許税・実費(戸籍取得手数料・郵送費・小為替手数料等)は別途。詳細は相続登記の費用と手続きの流れをご覧ください。

7-3. 関東対応エリアでの専門家連携

当センターは登記実務(相続登記・贈与登記・財産分与登記・売買登記)に特化しています。登記手続きそのものは郵送・オンラインで全国対応ですが、付随する他士業との連携は関東対応エリア(主に東京・埼玉・千葉・神奈川)を中心とした体制です。

  • 相続税申告が必要な案件は提携税理士をご紹介(関東対応エリアを中心)
  • 土地の測量・地積更正・分筆が必要な案件は土地家屋調査士と連携(主に東京・埼玉・千葉・神奈川)
  • 紛争性のある遺産分割・遺留分侵害額請求は弁護士をご紹介(関東対応エリアを中心)

関東対応エリア以外では、相続税申告・測量・紛争性のある案件は、お近くの税理士・土地家屋調査士・弁護士(または弁護士会の相談窓口)へご相談ください。

相続登記でお困りの方へ

複雑な戸籍収集を含む相続登記をまとめてお手伝いします

司法書士法人 不動産名義変更手続センターは、年間2,000件超の相続登記・名義変更のご相談実績を持つ全国対応の専門事務所です。当センターでは、相続登記に必要な戸籍収集、登記用の遺産分割協議書作成、法定相続情報一覧図作成、相続登記申請をまとめてお手伝いします(税務申告は税理士・紛争性のある案件は弁護士など各専門家へのご相談が必要です)。

初回ご相談無料。お電話・LINE・Webフォームから、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q1. 亡くなった人の戸籍謄本は誰が取れますか?
戸籍に記載されている本人のほか、その配偶者・直系尊属(父母・祖父母)・直系卑属(子・孫)は、戸籍法第10条に基づく請求権者として請求できます。それ以外の方(兄弟姉妹・甥姪等)は「自己の権利の行使または義務の履行のために必要」であることを示せば請求可能です(戸籍法第10条の2第1項)。相続手続きで必要な場合は、相続人であることを示す戸籍を併せて提出すれば請求できます。
Q2. 兄弟姉妹の戸籍謄本は取れますか?
兄弟姉妹は直系親族ではないため、戸籍法第10条の直接請求権の範囲外です。ただし、相続手続きで兄弟姉妹相続人として戸籍が必要な場合は、戸籍法第10条の2第1項に基づき「自己の権利行使のため」として請求できます。広域交付制度(戸籍法第120条の2)では兄弟姉妹の戸籍は取れず、共通の親まで遡って取得した上で親の戸籍から兄弟姉妹を辿る必要があります。
Q3. 先祖の戸籍はどこまで遡って取れますか?
戸籍法施行規則第5条により、現在の除籍簿の保存期間は原則150年です(平成22年改正前は80年)。明治31年式戸籍以降の戸籍も、保存されていれば取得できる可能性があります。ただし、保存期間経過後に廃棄されたものや、戦災・災害等で滅失したものは取得できません。明治5年導入の「壬申戸籍」は身分差別記載を含むため昭和43年以降は閲覧・交付が一切禁止されており、相続実務で取得して使う資料ではありません。なお、家系図作成を目的とした先祖調査は司法書士業務の範囲外で、行政書士または家系図作成専門業者にご相談ください。
Q4. 広域交付制度で取れない戸籍は何ですか?
コンピューター化前の手書き・タイプ印字戸籍、改製原戸籍の一部、古い除籍簿、戸籍の附票、一部事項証明、兄弟姉妹・甥姪・叔父叔母の戸籍は広域交付では取れません。これらは本籍地の市区町村への郵送請求が必要です。広域交付で出ない戸籍がある場合、窓口で対象外と案内されることはありますが、相続に足りる戸籍一式かどうかまで役所が整理してくれるわけではないため、不足期間の特定は取得した戸籍の編製日・除籍日・従前戸籍欄を自分で確認する必要があります。
Q5. 改製原戸籍と戸籍謄本の違いは何ですか?
戸籍謄本(全部事項証明書)は現在有効な戸籍の写しで、戸籍法改正後の様式(横書き・コンピューター化済み)です。改製原戸籍は戸籍法改正で様式が変更される前の旧戸籍の写しで、平成6年改製前は縦書きの手書きまたはタイプ印字でした。実務で遡る改製原戸籍は、平成改製原戸籍(平成6年法務省令第51号)と昭和改製原戸籍(昭和32年法務省令第27号)の2種類が基本です。被相続人がそれより前に出生していれば、さらに旧法戸籍(大正4年式・明治31年式など)まで除籍簿を辿ります。
Q6. 除籍謄本と戸籍謄本はどう違いますか?
戸籍謄本は戸籍内に在籍者が1名以上いる「現在の戸籍」の写しです。除籍謄本は戸籍内の全員が死亡・婚姻・転籍などで除籍され、戸籍として閉鎖されたものの写しです。被相続人が死亡し、その戸籍に他の在籍者がいなくなれば「除籍謄本」となります。被相続人が世帯主で配偶者・子が同じ戸籍に残っていれば、被相続人の死亡記載のある「戸籍謄本」として発行されます。
Q7. 戸籍が手書きで読めないときはどうすればよいですか?
昭和初期以前の戸籍は毛筆や万年筆による手書きで、崩し字・旧字体が多用されていることがあります。判読が難しい場合は、発行した市区町村の戸籍担当窓口に電話で問い合わせるのが第一選択です。それでも不明な場合は、司法書士・行政書士などの戸籍解読経験のある専門家に依頼することをおすすめします。当センターでも複雑な戸籍の解読・読み解きを含めて対応しています。
Q8. 転籍が多くて戸籍が複雑なときの対処法は?
まず広域交付制度を使い、コンピューター化済みの戸籍を最寄り窓口で一括取得します。受領した戸籍の「従前戸籍欄」を確認し、転籍前の本籍地を順に遡って郵送請求します。転籍が5回以上ある場合は、戸籍の通数が10通を超えることが多く、自力での収集に1〜2か月以上かかることもあります。相続税申告期限が迫っている場合は、司法書士に依頼することで不足戸籍の特定や代替資料の整理がしやすくなり、手続の差し戻しリスクを下げられます。
Q9. 戸籍取得を司法書士に依頼すると費用はいくらですか?
戸籍収集単独での依頼は少なく、通常は相続登記・遺産分割協議書作成と一体で依頼します。当センターの場合、スタンダードプラン99,000円〜(相続登記+戸籍収集+登記申請に必要な範囲での遺産分割協議書作成)、フルサポートプラン297,000円〜(これに法定相続情報一覧図作成を追加)です。いずれも税込で、登録免許税・戸籍取得手数料等の実費は別途となります。費用は戸籍の通数・不動産の数・相続人の人数により変わります。詳細は費用ページをご覧ください。
Q10. 戸籍が廃棄されていて取れない場合の代替手段は?
市区町村から「廃棄証明書(廃棄済証明書)」を発行してもらい、相続人全員で「他に相続人がいないことを確認する旨」の申述書(上申書)を作成して法務局・金融機関に提出するのが基本的な手順です。事案によっては権利証(登記済証)の原本提示・不在籍/不在住証明書・固定資産税納税証明書などの補完資料が追加で求められることがあります。上申書には相続人全員の署名押印や印鑑証明書の添付を求められることがありますが、必要な押印方法・添付書類は事案や提出先により異なるため、事前に管轄法務局または司法書士にご確認ください。

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この記事の作成者兼監修者
板垣 隼(いたがき はやと)
司法書士 / 行政書士 / 1級FP技能士
司法書士法人 不動産名義変更手続センター 代表
司法書士事務所開業から17年。「難しいことを、やさしく、早く、正確に」をモットーに、相続登記や不動産名義変更の手続きをサポート。KINZAI Financial Plan・manegyへの寄稿実績あり。

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