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相続で必要な戸籍取得の要点まとめ
● 必要なのは出生から死亡まで連続した戸籍:民法第887条・第889条・第890条で定める相続人の範囲を漏れなく確定するため、被相続人の戸籍を出生時点まで遡って全て揃える必要があります。
● 2024年3月開始の広域交付制度を最初に活用:戸籍法第120条の2の新設により、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍は本籍地以外の市区町村窓口でも請求可能に(令和6年3月1日施行)。
● 広域交付で取れないケース:コンピューター化前の手書き戸籍・改製原戸籍の一部・除籍簿の一部は対象外で、本籍地の市区町村への個別請求が必要です。
● 改製原戸籍とは:戸籍法改正前の様式で作成された戸籍。実務で遡る改製原戸籍は平成改製原戸籍(平成6年法務省令第51号)と昭和改製原戸籍(昭和32年法務省令第27号)の2種類が基本で、それ以前に出生していれば旧法戸籍(大正4年式・明治31年式など)まで除籍簿を辿ります。
● 戸籍取得 5ステップ手順:①広域交付で一括申請 → ②不足分の特定 → ③本籍地に郵送請求 → ④改製原戸籍を遡る → ⑤連続性の最終確認、の順で進めます。
● つまずく7つの落とし穴:手書き戸籍の判読困難・転籍多数・廃棄済戸籍・養子縁組・婚姻除籍・分籍・本籍地不明、それぞれに対処法があります。
● 司法書士へ依頼する判断基準:戸籍が10通超・転籍5回超・廃棄戸籍あり・遠方本籍地のいずれかに該当する場合は、専門家依頼で不足戸籍の特定や代替資料の整理がしやすくなり、手続の差し戻しリスクを下げられます。
相続手続きでは、相続登記や預貯金の払戻しで「被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本」が基本資料になります(相続税申告が必要な場合も、全相続人を明らかにする戸籍の写しや法定相続情報一覧図の写しが求められます)。被相続人が結婚・転居・本籍地変更を繰り返している場合は10通以上の戸籍が必要になることも珍しくありません。本記事では、2024年3月に開始された広域交付制度を最大限活用しつつ、改製原戸籍・除籍・転籍が絡む複雑なケースでも確実に揃える方法を、相続登記を年間2,000件超のご相談実績を持つ司法書士が整理します。
相続登記や預貯金の払戻しでは、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍が基本資料になります。相続税申告が必要な場合も、全相続人を明らかにする戸籍の写し、または要件を満たす法定相続情報一覧図の写しが求められます。なぜ「死亡時の戸籍」だけでは足りないのでしょうか。
民法は法定相続人の範囲と順位を以下のように定めています。
これらは民法第887条・第889条・第890条で相続人の範囲を、民法第900条で法定相続分を定めています。たとえば被相続人に子が3人いると思っていたら、実は若い頃に認知した非嫡出子や離婚前の前妻との子がいた、というケースは決して珍しくありません。過去の戸籍を遡って初めて発覚する相続人が存在する可能性があり、相続人を見落としたまま遺産分割協議をすると、協議自体が無効となり、登記のやり直しや金融機関での手続差し戻しにつながります。
「出生から死亡まで」とは、被相続人が生まれた瞬間から亡くなるまでの記録が、戸籍同士の編製日・除籍日と、転籍・婚姻・分籍・改製・従前戸籍欄の記載で途切れずつながっていることを指します。具体的には次のような連続性を確認します。
特に前戸籍の「除籍日」と後戸籍の「編製日」が1日でもずれていると、登記官や金融機関の担当者はその間の戸籍の存在を疑い、追加提出を求めてきます。転籍直後に死亡したケースなどは数日のずれが命取りになるため、日付の連続は神経質に確認します。
2024年(令和6年)3月1日、戸籍法の改正により「戸籍証明書等の広域交付制度」が施行されました(戸籍法第120条の2)。これは相続手続きにおける戸籍収集の負担を大きく軽減する制度で、本籍地以外の市区町村窓口でも一定範囲の戸籍を請求できるようになりました。ただし対象範囲には制限があり、取れない戸籍もあることを理解しておく必要があります。
従来、戸籍謄本を取得するには「本籍地の市区町村」に対して請求する必要がありました。被相続人が転籍を繰り返していると、それぞれの本籍地ごとに郵送請求するか、現地まで足を運ぶ必要があり、相続人にとって大きな負担となっていました。
広域交付制度では、本人・配偶者・直系尊属・直系卑属の戸籍については、最寄りの市区町村の窓口でまとめて請求できます。本籍地が北海道でも沖縄でも、東京の窓口で請求可能です。ただし下記2-2で説明する対象外の戸籍があるため、不足分は本籍地への個別請求が必要になります。
注意:兄弟姉妹の戸籍は広域交付では取れません。戸籍法第120条の2は請求権者を本人・配偶者・直系尊属・直系卑属に限定しているため(配偶者は厳密には直系ではありませんが、同条で広域交付の請求権者として認められています)、兄弟姉妹の戸籍はこの制度では取得できません。共通の親の戸籍を広域交付で取得すれば兄弟姉妹の存在は確認できますが、各兄弟姉妹の「現在の戸籍」は依然として個別請求(本籍地への郵送等)が必要で、広域交付だけでは兄弟姉妹相続の戸籍収集は完結しません。
所要時間の目安|即日交付は困難と考えたほうが安全です。出生から死亡までの一式を遡る場合、本籍地の自治体とのデータ照合や本籍地への確認に時間を要するため、「午前中に受け付けて夕方以降または後日の引き渡し」という運用になる自治体が多くあります。窓口での拘束時間が1〜2時間を超えることも珍しくありません。1日ですべてが揃うと過信せず、平日に余裕を持ったスケジュールで臨み、事前に役場へ電話で確認することをおすすめします。
広域交付制度は便利ですが、すべての戸籍が取れるわけではありません。次のケースでは従来通り本籍地の市区町村への個別請求が必要です。
まずは最寄り市区町村の戸籍担当窓口で、広域交付制度を使って取れる範囲の戸籍をすべて取得します。顔写真付き本人確認書類を持参し、被相続人の氏名・本籍地・必要な戸籍の範囲を伝えます。窓口で全国検索が行われ、コンピューター化済みの戸籍は窓口で交付されることがあります。ただし出生から死亡までの一式を請求する場合は確認に時間がかかり、後日交付になることもあります。
受領した戸籍を年月日順に並べ、「編製日」と「除籍日」の連続性をチェックします。改製前の戸籍(改製原戸籍)、廃棄戸籍、手書き戸籍などで広域交付の対象外となったものを特定し、不足している期間と対応する本籍地を洗い出します。
不足戸籍がある本籍地の市区町村役場宛に、郵送請求を行います。必要書類は次の通りです。
受領した戸籍に「平成6年法務省令第51号による改製」「昭和32年法務省令第27号による改製」などの記載があれば、その改製前の戸籍(改製原戸籍)も取得します。改製原戸籍は同じ本籍地の役場で発行可能です。出生時点まで遡るには、被相続人の生年により昭和の改製原戸籍まで遡る必要があります。
すべての戸籍を年月日順に並べ、出生から死亡まで「編製日」「除籍日」「転籍日」「改製日」が連続していることを確認します。1日でも空白があれば追加取得が必要です。完了したら法務局・金融機関・税務署への提出準備が整います。
全体の所要期間の目安:広域交付で大半が揃う場合は1〜2週間、追加で郵送請求が必要な場合は3〜6週間、改製原戸籍の遡りが必要な複雑ケースでは2〜3か月かかることもあります。相続税の申告期限(被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内)から逆算して早めに着手しましょう。
戸籍に関する用語は似たものが多く混同しやすいため、それぞれの意味と違いを整理します。
日本の戸籍は明治5年(1872年)に初めて編製されて以来、社会の変化に応じて何度も様式が改められてきました。実務で「改製原戸籍」として取得対象になるのは、次の2種類が基本です。
被相続人が昭和改製より前に出生している場合は、さらにその前の旧法戸籍(大正4年式・明治31年式・明治19年式など、家制度下の戸籍)まで除籍簿を辿ることになります。なお、明治5年導入の「壬申戸籍」は身分差別記載を含むため昭和43年以降は閲覧・交付が一切禁止されており、相続実務で取得して使う資料ではありません。
取得した戸籍の冒頭に次の記載があれば、それが改製前または改製後の戸籍であることを示しています。
誰が相続人になるかによって、必要な戸籍の範囲が大きく変わります。代表的な4つのケースを整理します。
被相続人に配偶者と子がいる、最もシンプルなケースです。
このケースでは、被相続人の戸籍を遡る目的は「隠れた認知子・前妻との子の有無を確認するため」です。「他に相続人はいない」と断定するには、出生まで遡って初めて確認できます。
被相続人に子がなく、両親(または祖父母)が存命の場合です。
被相続人に子がいないことを証明するため、出生から死亡までの全戸籍が必須です。「養子を取った記録がないこと」「認知した子がいないこと」も同時に確認されます。
被相続人に子がおらず、父母・祖父母などの直系尊属も全員亡くなっている場合、兄弟姉妹が相続人となります(民法第889条第1項第2号)。このケースは最も戸籍が多くなります。
兄弟姉妹相続では戸籍が20〜30通になることも。両親それぞれの出生まで遡り、その間に生まれた全ての兄弟姉妹(半血兄弟姉妹を含む)を漏れなく特定する必要があります。注意したいのは、両親の戸籍を広域交付で取得して兄弟姉妹を特定できても、各兄弟姉妹の「現在の戸籍」は広域交付では1通も取れない点です。結局、生存している兄弟姉妹の本籍地へ1か所ずつ郵送請求を行う必要があり、手間は従来とほとんど変わりません。広域交付で解決できるのは「親世代までの遡り」と割り切る必要があります。
相続人となるべき子や兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その子(孫・甥姪)が代襲相続人になります(民法第887条第2項・第889条第2項)。
数次相続(相続発生後に相続人がさらに死亡)の場合は、二次相続の被相続人についても出生から死亡までの戸籍が必要となり、通数が一気に増えます。
「複雑な戸籍」と呼ばれるケースには、いくつかの典型的なパターンがあります。事前に把握しておくと対処がスムーズです。
昭和初期以前の戸籍は毛筆や万年筆による手書きで、独特の崩し字や旧字体が使われており、現代の感覚では判読が非常に難しいことがあります。特に人名・地名は専門的な知識が必要です。
対処法:発行した市区町村の戸籍担当窓口に問い合わせる方法もありますが、窓口でも「おそらくこう読みますが断定はできません」と濁されるケースが少なくありません。昭和初期以前の戸籍は当時の戸籍法に基づく独特の記載ルールや変体仮名が使われており、パズルを解くような作業になります。一文字の読み間違いが相続人の取りこぼし、ひいては登記の却下につながるため、判読に迷う場合は自己判断せず、戸籍解読に慣れた司法書士に「読み合わせ」を依頼するのが確実です(行政書士は戸籍の取得・整理は扱えますが、相続登記の代理権はないため別途司法書士への引き継ぎが必要になります)。
転籍とは、住所ではなく本籍地を移す手続きのことです。実際の引っ越しをしても本籍地を動かさない限り戸籍は増えませんが、転籍届を出すたびに新しい戸籍が編製されます。被相続人が結婚・離婚・自身の意思などで5回以上転籍している場合、各本籍地に対して個別請求が必要になります。
対処法:まず広域交付制度を使い、コンピューター化済みの戸籍を一括取得。次に取得した戸籍の「従前戸籍欄」を確認し、転籍前の本籍地を特定して郵送請求します。これを順に遡ります。
戸籍法施行規則第5条により、現在の除籍簿の保存期間は原則150年と定められていますが、平成22年(2010年)の規則改正前は80年でした。特に昭和初期から戦前にかけての古い除籍・改製原戸籍は、旧80年の保存期間を満了して既に廃棄されている自治体が少なくありません。出生まで遡る過程で、この「戦前の1枚」だけが抜け落ちるケースが頻発します。
対処法:この場合は単に「取れませんでした」では済まず、市区町村から「廃棄証明書(廃棄済証明書)」を取得した上で、相続人全員で「他に相続人がいないこと」を確認する旨の申述書(上申書)の作成へ舵を切る判断が求められます。ただし申述書だけで自動的に認められるわけではなく、事案によっては権利証(登記済証)の原本提示・不在籍/不在住証明書・固定資産税の納税証明書などの補完資料が追加で求められることがあります。判断は管轄法務局や登記官によって異なるため、事前に管轄法務局または司法書士へ確認してから進めるのが安全です。
被相続人が養子に出ていた・養子を取っていた場合、その記録は養子縁組した時点の戸籍と養親側の戸籍の両方に記載されます。普通養子縁組では実親との親族関係も残るため、実親側・養親側双方の戸籍確認が必要です。一方、特別養子縁組では原則として実方(実親・実方の血族)との親族関係が終了するため、戸籍の記載から縁組の種類を確認して相続関係を判断する必要があります。
対処法:被相続人の戸籍に「養子縁組」の記載があれば、その日付・縁組の種類・相手方の本籍地を控えておきます。養親側の戸籍を辿ることで、相続人としての地位や代襲相続関係を正確に把握できます。
婚姻すると、夫婦どちらの氏を選ぶかに応じて、新しい戸籍が編製されるか、配偶者の戸籍に入る形となり、いずれにしても婚姻前の親の戸籍からは除籍されます。出生まで遡るには、現在の戸籍 → 婚姻前の親の戸籍 → 親の改製原戸籍 → 被相続人の出生記録のある戸籍、と辿る必要があります。
対処法:婚姻による除籍の記載から、婚姻前の本籍地と筆頭者(多くは親)を特定し、その戸籍を取得します。婚姻前の戸籍がさらに転籍・改製を経ている場合は、そこから再度遡りが発生するため、婚姻年月日を起点に親世代の改製原戸籍まで一気に手当てするのが確実です。
成年に達した子は親の戸籍から独立して自分単独の戸籍を作る(分籍する)ことができます。被相続人が若い頃に分籍していた場合、分籍前の親の戸籍まで遡らないと出生記録に辿り着けません。
対処法:分籍は本人の意思で単独戸籍を作る届出のため、従前戸籍欄に分籍前の本籍地・筆頭者が記載されます。ただし筆頭者名が旧字体で読みにくいケースや、分籍前の戸籍がさらに転籍・改製を経ている場合は、そこから再度遡りが発生します。分籍の年月日を起点に、親世代の改製原戸籍まで一気に手当てするのが確実です。
被相続人の本籍地を相続人が把握していないケースがあります。死亡時の本籍地は住民票の除票(本籍地記載あり)から確認できますが、過去の本籍地は前の戸籍を辿らないと分かりません。また実家が遠方にある場合、郵送請求の往復に時間がかかります。
対処法:被相続人の住民票の除票(本籍地・前住所記載あり)を最初に取得します。広域交付制度を使えば本籍地の遠近は関係なく取得できるため、まずは広域交付で取れるだけ取得し、不足分のみ郵送請求します。
戸籍収集は時間と労力を要する作業ですが、専門家に依頼するかどうかの判断は、ケースの複雑さと相続人の状況に応じて行います。
戸籍収集だけを切り出して依頼することは少なく、通常は相続登記・遺産分割協議書作成・法定相続情報一覧図の作成と一体で依頼されます。費用は戸籍の通数・不動産の数・相続人の人数によって変わりますが、当センターの相続登記プランは以下の通りです。
※ 登録免許税・実費(戸籍取得手数料・郵送費・小為替手数料等)は別途。詳細は相続登記の費用と手続きの流れをご覧ください。
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