《この記事の監修者》
司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら)
最終更新日:2025年1月7日
夫婦間での不動産の名義変更する事例は各種あります。夫婦間の名義変更の主な手続き内容として以下が考えられます。
夫から妻に名義変更するケースが多いですが、妻から夫に変更するケースもあります。夫婦共有名義で一部のみ妻名義の場合などは、妻から夫に変更することがあります。
夫から妻、妻から夫に名義変更する事例は上記のとおり相続・贈与・財産分与など各種あります。各種手続きによって費用や税金も異なり、手続きの方法も変わってきます。
上記以外でも夫婦間での売買、代物弁済等の債権での精算等もあります。
何の譲渡行為等もない単純に名義変更というものはなく、名義変更するためには所有権を移転させる必要があり、移転させる方法(原因)によって手続きが異なります。
夫が亡くなり、妻と子2名(長男、二男)がいる場合、自宅の名義は誰にするのがいいでしょうか?
事情などにもよりますので一概にどれが良いということはありません。相続税などの問題と、将来の引き継ぎの両方を考慮する必要があるかと考えます。
夫婦の一方が存命の場合は、存命の配偶者に変えるケースが多いかと思います(今回のケースでは妻)。
この場合は、妻が亡くなった際に再度子供への名義変更が必要になります。
長男が同居し、自宅を引き継ぐことが決まっているのであれば、妻の名義にせずに直接夫から長男の名義にすることも可能です。その場合はこの先、妻(長男の母)が亡くなった場合に不動産名義変更の手続きはありません。
特殊な事例かもしれませんが、長男の名義にした後、長男が母よりも先に亡くなり、お嫁さんが家を売却するから夫の母に今すぐ出て行けと言われて困っていると相談を受けたこともありいます。
名義は子に変えるが、妻の居住権のみ確保する手続きもあります(配偶者居住権)。
一度名義変更すると後から戻すことは困難です。じっくりご家族で話し合いメリット・デメリットも踏まえ、誰の名義にするか決めましょう。ご家族だけでは判断が難しい場合は、専門家にアドバイスを求めましょう。
なお、名義は相続人の全員または何名かで共有することも可能です。
相続時に共有名義にするメリット・デメリット
家族が亡くなったらすべき6つのこと。必要な手続きやその後の行事とは(外部リンク)
お金のやり取りや精算などもなく、生前に名義変更するのは通常「贈与」の手続きになり、亡くなった後の手続きは「相続」になります。
単純に名義変更の費用だけ比較すると、相続の方が安く手続きできます。
登記手続きに必要な登録免許税は相続が評価額の0.4%、贈与が評価額の2%と5倍の差があります。また、贈与の場合は不動産取得税が原則課税されます。相続の場合は不動産取得税はかかりません。
単純に名義変更費用だけで考えると相続の方が良いですが、相続の場合はお子様やお子様がいなければ配偶者の兄弟なども関与します。贈与は夫婦の2名だけの手続きです。よって、手間だけ考えると贈与が楽です。また相続の場合、お子様やご兄弟様が将来手続きに協力してくれない場合は名義変更できなくなることもあります。
他にも、相続税と贈与税の問題もあります。相続税についてはご自宅の評価額だけでなく、全体の資産なども考慮し総合的に判断する必要があります。
自宅の生前贈与と遺産相続どっちが良い?
子のいない夫婦の場合、一方が亡くなった場合は残された配偶者に全ての財産が相続されるわけではありません。
ご両親が健在であればご両親も相続人になり、ご両親が先に亡くなっている場合は兄弟姉妹も相続人になります。残された配偶者と、他の相続人である両親や兄弟姉妹と遺産の話し合いが必要になります。
遺言書を残していた場合は、基本的に遺言書のとおり相続されますので、兄弟姉妹から協力を貰う必要もありません。子のいない夫婦はお二人それぞれが遺言書を残すことをお勧めいたします。
再婚した場合も、再婚後のお二人の間に子がいない場合も注意が必要です。前妻(前夫)との間に子がいる場合は、亡くなった際にその子も相続人になります。この場合も遺言書は必須と考えますし、ご自宅を確実に確保する意味では生前贈与を検討するケースもあります。
遺言書の作成
夫が亡くなった場合の相続税対策として、夫名義の自宅を妻に生前贈与するケースがあります。
夫の財産が妻に贈与されると、夫の財産は減ります。つまり相続税の対象の財産が減るので、相続税も減ります。
通常、贈与税が高税率なので、相続税は減っても贈与税で払う方が高くなることになることが多くなったりするので簡単に贈与で減らせるわけではないですが、結婚20年以上でご自宅の土地・建物を配偶者に贈与する場合は、配偶者控除の利用が可能です。配偶者控除が利用できれば2000万円まで贈与税がかかりません。
よって、2000万円まで贈与税がかからず贈与できることになります。2000万円を超える自宅であっても、一定の割合で2000万円を超えない分を贈与することも可能です。例えば半分だけ贈与することも可能です。
なお、贈与税は課税されなくても、贈与による所有権移転登記にかかる登録免許税などの費用は別途発生します。
なお、相続税にも配偶者控除や、ご自宅については小規模宅地の特例などもあり、生前贈与にメリットが少ない場合もあります。節税をご検討される際は、税理士等に相談し総合的にアドバイスを貰いましょう。
離婚に伴い名義変更を検討される場合、離婚前がいいのか離婚後に名義変更するのがいいのかとのお問い合わせいただくことがあります。
離婚前後で大きく変わってくるのは贈与税です。
離婚届け提出前に名義変更する場合は通常「贈与」になります。贈与の場合は贈与税が原則かかります。結婚20年以上であって自宅の場合には配偶者控除の利用も可能ですので、配偶者控除の範囲内であれば離婚前であっても贈与税はかかりません。ただし、申告手続きは必須です。
なお、離婚後の財産分与として名義変更する場合は、基本的には贈与税は課税されません。
婚姻期間などにもよりますが、一般的には離婚後に手続きされたほうが贈与税の心配は少ないく名義変更できる場合が多いかと思われます。
その他としては譲渡所得の違いもあります。離婚前の贈与の場合は課税がありませんが、離婚後の財産分与の場合は、購入時より財産分与の時点でご自宅が値上がりしている場合に課税されます。所得が発生しても、マイホームの特例を利用することで所得が控除できるケースもあります(最高3,000万円まで)。
税金については誤ると多額の納税が必要になる場合もありますので、詳細については税理士に相談または税務署に確認してから進めることをお勧めいたします。
住宅ローンが残っている場合、不動産の名義変更と合わせて住宅ローンも借換え等にて新所有者に変更されるのであれば特に問題ありませんが、既存の住宅ローンが残ったままで名義変更だけするには問題があります。
名義変更の手続きだけであれば、銀行の協力がなくても可能ですが、契約上の問題・リスクなどが生じます。住宅ローンが残っている場合は注意が必要です。
住宅ローンが残ったままで名義変更
債務を返済できなくなった債務者が、配偶者と離婚し、その債務者が所有する不動産を財産分与として配偶者に譲渡する場合、債権者は、財産分与を詐害行為として取消請求できるでしょうか。
財産分与は、原則として詐害行為取消の対象とはならないが、分与した財産が不相当に過大で、財産分与という形を利用してなされた財産処分といえるような特別な事情がある場合は、不相当に過大な部分については詐害行為取消の対象となりうると考えられます。
財産分与は詐害行為取消の対象となるか?
離婚に伴う財産分与としての不動産名義変更については、以下に詳細をまとめておりますのでご参照ください。
離婚・財産分与による不動産名義変更の手続きガイド(必要書類・費用・Q&A・流れ)
不動産名義変更・相続登記の手続きの詳細(費用、書類、期間、義務等)は以下をご参照ください。
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