《この記事の監修者》
司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら)
最終更新日:2025年5月7日
相続登記は2024年4月の法律改正により義務化されました。怠ると過料の制裁を受ける可能性があります。
相続登記の申請義務化に伴い、相続登記よりも簡易に手続きできる相続人申告登記が創設されました。
相続登記の義務化を詳しく解説!過去の相続も対象?!
相続人申告登記とは?必要書類・手続きのやり方をわかりやすく解説!
【目次】
〈法定相続情報証明制度とは〉
〈法定相続情報一覧図のメリット・デメリット〉
〈法定相続情報一覧図の利用〉
〈法定相続情報一覧図の取得方法〉
〈法定相続情報一覧図の再交付、有効期限〉
〈法定相続情報一覧図の特殊事例、その他〉
~各項目の詳細については上記をクリックしてください~
相続手続きの簡素化・迅速化
従来の手続きでは、相続登記や預貯金の名義変更を行うたびに被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本一式を準備しなければなりませんでした。手続き先が複数に及ぶ場合、そのたびに戸籍を取得したり、先の手続きからの返却を待って再利用したりする必要があり、時間的・経済的に大きな負担となっていました。
相続登記の推進と所有者不明土地問題への取り組み
相続登記が遅れる主な要因の一つは、戸籍収集の煩雑さにありました。本制度の導入により、一枚の証明書で各種手続きを行えるようになり、早期の相続登記を促進する効果が期待されています。特に2024年4月1日から相続登記が義務化されたことを踏まえると、本制度の重要性はますます高まっています。
法務省HPより
法定相続情報証明制度により発行されるようになった法定相続情報一覧図(ほうていそうぞくじょうほういちらんず)とは、被相続人(亡くなられた方)の法律で定められた相続関係を一覧にした家系図のようなもので、法定相続人が誰であるのかを1枚の紙にまとめ、それを法務局の登記官が証明したものです。
法定相続情報一覧図の写しがあれば、この1枚だけで相続関係を証明できます。(※多くのケースでは1枚に全てまとめますが、情報量によっては複数枚になる場合もあります。)
法定相続情報一覧図の記載事項は次のとおりです。
相続人が法務局に必要書類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍及び住民票等)と作成した法定相続情報一覧図を提出すると、登記官が内容を確認した上で、法定相続情報一覧図を保管します。また、相続人の申し出に応じて法定相続情報一覧図の写しが交付されます。
上記の法定相続情報一覧図の記載例は法務省法務局のホームページに記載されているものです。
法定相続情報に記載される内容は以下になります。
法定相続情報一覧図の写しがあれば、次のような各種相続手続で戸籍書類一式の提出の省略が可能になります。
従来は、法務局、金融機関、税務署、年金事務所等の相続手続先が複数ある場合には、相続関係を証する戸籍謄本等の束を提出しては返却してもらい、また次の手続先へ提出…ということを繰り返すこともありました。しかし、法定相続情報一覧図の写しを取得すれば、戸籍謄本等の束の代わりに法定相続情報一覧図の写しを提出することができ、法定相続情報一覧図の写しは必要に応じて複数取得することができるため、各手続先に同時に提出することが可能で、手続の時間短縮にもなります。
※金融機関等によっては、法定相続情報証明制度に対応していない可能性もあるので、個別にご確認ください。
一度法定相続情報一覧図の写し取得してしまえば、上記のメリットのとおり今後の相続手続は楽になりますが、取得するには、戸籍謄本等の一式を一度全て揃える必要があります。さらに揃えた後に法務局への申出が必要となるので、全体としては手間がかかります。
他のデメリットとしては、金融機関や行政によっては法定相続情報一覧図が利用できない場合があります。制度開始直後は認知されていなかった為か、法定相続情報一覧図を利用できない場面がありましたが、現状ではほとんどの相続手続に利用可能です。ただし、稀に利用できない場合もあるようですので手続き前に提出先に確認するのが確実です。
取得の手間が少しかかりますが、取得後の手続きが大幅に楽にはなりますので、メリット・デメリットを考慮して取得の判断をしましょう。
法定相続情報一覧図のメリット・デメリットまとめ
メリット | デメリット | |
・各種相続手続での戸籍謄本等の提出が不要になる ・複数の相続手続を同時に進められる ・戸籍謄本の束を持ち歩く必要がない ・手続き先の処理 ・書類紛失のリスクが低減される ・一覧図の写しの交付手数料は無料 ・申出から5年間は無料で再交付が可能 | ・初回の戸籍収集・一覧図作成に手間がかかる ・交付までに時間がかかる場合がある ・すべての金融機関・行政機関で利用できるとは限らない ・被相続人や相続人が日本国籍でない場合は利用できない ・戸籍謄本等の収集費用は別途必要 ・代理人に依頼する場合は費用が発生する |
法定相続情報一覧図の写しを相続登記の際に提出すると、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍、相続人の戸籍謄本(抄本)の提出が不要となります(相続があったことを証する市町村長その他の公務員が職務上作成した情報の提供に代えることができる)。
法定相続情報一覧図に、被相続人の最後の住所や、相続人の住所を記載した場合は、住民票や住民票除票の提出も不要となります。
なお、遺産分割協議書や印鑑証明書などの、戸籍謄本や住民票で証明する以外の証明書等は別途必要になります。
相続登記の申請の際に、一緒に法定相続情報一覧図の申出をすることも可能です(同時申請)。戸籍謄本相続登記と共通する書類が多いので、同時に手続きすると1度の法務局の手続きで法定相続情報一覧図の申出もでき相続手続全体がスムーズに済みます。
相続登記と同時に申請することで、必要な証明書が少なく済む場合もあります。
2024年(令和6年)4月1日以降、相続登記等の不動産登記申請において、法定相続情報一覧図の写しの添付を省略できることになりました。
これにより、従来必要であった法定相続情報一覧図の写し(原本)を登記申請書に添付する代わりに、申請書の添付情報欄に「登記原因証明情報(法定相続情報番号)」と記載するだけで済むようになりました。法定相続情報番号は、法定相続情報一覧図の右肩に記載される登記官によって付番される識別番号で、例えば「1234-56-78901」のような形式となります。
不動産登記申請手続きでのみ利用可能で、法務局以外での手続きや、法務局での不動産登記以外の手続きでは使用できません。また、法定相続情報一覧図の保管申出から5年以上経過している場合は利用できない可能性がありますが、既に交付された紙媒体の証明書原本は引き続き使用可能です。さらに、法定相続情報一覧図に相続人の住所が記載されている場合は、住所証明書類の添付も省略できますが、住所変更等がある場合は別途書類が必要となります。
法定相続情報証明制度は、戸籍謄本等により相続人が確認できる場合に法務局で証明してくれる制度です。
被相続人や相続人に外国籍の方がいる場合は戸籍謄本がないので証明できません。
また、被相続人が帰化され日本国籍を取得した場合なども出生からの戸籍謄本がないので証明できません。
戸籍謄本で相続関係の全てが証明できない場合は法定相続情報証明制度を利用できないので、法定相続情報一覧図も取得できません。
戸籍に代わる他の証明方法でも取得できませんので、法定相続情報一覧図は使えません。
①市区町村の窓口で、相続関係を証明するのに必要な戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍及び住民票等を収集します。被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等や、相続人の戸籍謄本などが必要です。一度は戸籍謄本等を集める必要があります。
②①で収集した戸籍謄本等をもとに法定相続情報一覧図を作成します。主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例が、法務局のホームページに掲載されています。
③法務局所定の申出書に必要事項を記入し、①及び②の書類と合わせて法務局へ提出します。
法定相続情報一覧図の必要書類一覧
上記は法務省HP掲載の申出書の記入例
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
上記は法務省HP掲載の法定相続情報一覧図の様式及び記載例
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
上記は法務省HP掲載の申出書の記入例
https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/page7_000014.html
法定相続情報一覧図に記載される、相続人の被相続人との続柄については、戸籍に記載されている「長男」「二男」「長女」「二女」等が記載されます。
また、申出人の選択により続柄を「子」と記載して作成することも可能です。
なお、続柄を「子」とした場合は、相続税の申告には利用できません(子の続柄が、実子又は養子のいずれであるか分かるように記載が必要。)。
相続税の申告書の添付書類の範囲が広がりました(国税庁HP)
法定相続情報一覧図も相続関係説明図も、どちらも相続関係を一覧にした家系図のようなものですが、法定相続情報一覧図は法令に基づき作成され他もので法務局の登記官が証明してくれます。戸籍謄本等に代わる証明書として各種手続きに利用可能です。
相続関係説明図は、相続関係を分かりやすくしたものですが、相続関係説明図自体に証明力はないので、相続関係の証明書としては基本的に利用できません。戸籍謄本等とセットで利用することで用いられます。
相続関係説明図とは?
法定相続情報一覧図も法定相続人情報も、どちらも相続関係を一覧にした家系図のようなものですが、法定相続情報一覧図は法令に基づき作成され他もので法務局の登記官が証明してくれます。
法定相続人情報は、法務局における長期相続登記等未了土地解消作業の一環として行われる相続人調査により判明した相続関係を図に表したものです。
なお、どちらも相続登記に利用し、戸籍謄本等を省略することは可能です。法定相続人情報は法定相続情報一覧図と異なり、銀行手続きなどの相続登記以外には利用できません。
法定相続人情報とは?
相続登記の際に必要な被相続人の戸籍謄本等は、実務においては「出生から死亡までの戸籍」ではなく、「生殖可能年齢から死亡までの戸籍」まであればOKとの取り扱いがされております。
しかし、法定相続情報一覧図の申立ての際は相続登記の際の取り扱いとは異なり、「出生から死亡までの戸籍」が必要とされております。
なお、相続登記と同時に法定相続情報一覧図の申立を行う場合は、「生殖可能年齢から死亡までの戸籍」まであればOKとの取り扱いがされております。法定相続情報一覧図の申立を単独で行う場合のみ、「出生から死亡までの戸籍」が必要です。
相続登記の手続き方法(費用・必要書類・義務化等)については、以下にまとめておりますのでご参照ください。
相続登記の必要書類全般については、以下にまとめておりますのでご参照ください。
不動産名義変更・相続登記の手続きの詳細(費用、書類、期間、義務等)は以下をご参照ください。
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