マンションの敷地権とは?名義変更時に知っておくべき権利関係


《この記事の監修者》

司法書士法人不動産名義変更手続センター
代表/司法書士 板垣 隼 (→プロフィール詳細はこちら

最終更新日:2025年5月9日
 

マンションの購入や売却、相続や贈与といった名義変更の手続きを進める上で、「敷地権(しきちけん)」という言葉は避けて通れません。しかし、この敷地権が具体的に何を意味し、どのような重要性を持つのかを正確に理解されている方は意外と少ないのではないでしょうか。敷地権は、マンションという特殊な形態の不動産において、建物の権利と土地の権利を一体として扱うための重要な仕組みです。

マンションの「敷地権」とは?基本をわかりやすく解

マンションの権利関係を理解する上で中核となる「敷地権」。まずはその基本的な定義、仕組み、関連用語との違い、種類、そして法的な背景について掘り下げていきましょう。

敷地権の定義と仕組み:なぜマンションに敷地権があるのか

マンション

敷地権とは、マンションのような区分所有建物において、個々の住戸などの専有部分の所有権と、その建物が建っている土地を利用する権利(敷地利用権)とを法的に一体化させ、原則として分離して処分(売却や抵当権設定など)することができないように登記された権利の形態を指します。

戸建て住宅の場合、土地と建物はそれぞれ独立した不動産として別々に登記され、別々に取引することが可能です。

しかし、マンションは一つの建物の中に多数の独立した住戸が存在し、その敷地は全住戸の所有者(区分所有者)が共同で利用するという特性があります。

かつて、敷地権制度が導入される以前は、マンションの建物(専有部分)の権利と敷地の権利(敷地利用権)が別々に登記・管理されていました。しかし、特に大規模マンションが増えるにつれて、数百人にも及ぶ共有者の敷地の権利を一つの登記簿で管理することが困難になり、権利関係が複雑化し、登記の誤りや取引の際の確認作業の煩雑さといった問題が生じていました。例えば、専有部分だけが売買され、敷地の権利が伴わない、あるいはその逆といった事態が発生するリスクがありました。

このような問題を解決し、区分所有建物の取引の安全と登記手続きの簡明化を図るために、1983年(昭和58年)の区分所有法改正により「敷地利用権と専有部分の一体化」の原則が導入され、敷地権という制度が確立されました。これにより、マンションの住戸を所有していれば、原則としてその敷地を利用する権利も一体として有していることが明確になり、権利関係の安定と取引の円滑化が実現されました。

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敷地権と「敷地利用権」「共有持分」の違い

敷地権について理解を深めるためには、類似した用語である「敷地利用権」と「共有持分」との違いを明確にすることが重要です。

  • 敷地利用権
    マンションの建物(専有部分)を所有し、利用するために必要な、そのマンションが建っている土地を利用する権利そのものを指します。この権利は、土地の所有権である場合もあれば、地主から土地を借りる賃借権や地上権である場合もあります。つまり、建物が存在するための土地に対する法的な根拠となる権利です。

  • 共有持分
    マンションの敷地は、通常、そのマンションの全区分所有者によって共有されています。この場合、各区分所有者が敷地利用権に対して持つ権利の割合のことを「共有持分」といいます。例えば、敷地全体の所有権を100人の区分所有者で共有している場合、各人が持つ100分の1ずつの権利が共有持分です

  • 敷地権
    敷地権は、上記のような敷地利用権(多くの場合、共有持分として存在)と、個々のマンション住戸である専有部分の所有権とが、法的に切り離せないように一体として登記された「権利の形態」を指します。重要なのは、敷地権は「権利そのもの」ではなく、権利の「あり方」や「登記のされ方」を示す言葉であるという点です。

端的に言えば、敷地利用権が「土地を使う権利の内容物」であるとすれば、敷地権はその内容物と建物の部屋の所有権を「法的にパッケージ化し、分離できないようにした表示方法」と捉えることができます。このパッケージ化により、マンションの部屋を売買すれば、自動的に土地の権利も一緒に移転することが保証されるのです。

敷地権の種類(所有権・賃借権・地上権)

敷地権の基礎となる敷地利用権には、いくつかの種類が存在し、それによってマンションの所有者の権利内容や負担が大きく変わってきます。主なものとして、所有権、賃借権、地上権があります。

所有権とは

所有権はマンションの敷地権として最も一般的な形態です。この場合、マンションの各区分所有者は、専有部分の所有権と共に、マンションの敷地全体の土地所有権を共有持分の形で所有しています。つまり、土地も区分所有者の資産の一部となり、土地の価格変動の影響を受けることになります。

賃借権とは

賃借権はマンションの建物が、地主から借りた土地の上に建てられている場合に、敷地利用権が賃借権となります。この場合、区分所有者は土地の所有者ではなく、地主に対して地代を支払う義務を負います。賃借権には、借地借家法が適用されることがあり、契約期間や更新、譲渡などに関して同法の規定が影響します。

地上権とは

地上権も賃借権と同様に、他人の土地を利用して建物を所有するための権利ですが、賃借権が債権であるのに対し、地上権は物権であり、より強力な権利とされています。登記が可能で、地主の承諾なしに譲渡や転貸ができるなど、賃借権よりも権利内容が強いのが特徴です。マンションの敷地権としては、賃借権ほど多くはありませんが、存在します。

これらの敷地権の種類は、マンションの購入価格、ランニングコスト(地代の有無)、将来的な資産価値、建て替え時の権利関係などに大きな影響を与えます。例えば、敷地権が所有権であれば、土地の価値上昇の恩恵を受ける可能性がありますが、固定資産税の負担も伴います。一方、賃借権であれば、初期費用が抑えられる場合があるものの、毎月の地代負担や契約更新時の条件変更、地主との関係性などが考慮事項となります。したがって、マンションを検討する際には、敷地権の種類が何であるかを確認することが極めて重要です。

敷地権の種類による影響

敷地権の種類は、マンションの購入価格、ランニングコスト(地代の有無)、将来的な資産価値、建て替え時の権利関係などに大きな影響を与えます。例えば、敷地権が所有権であれば、土地の価値上昇の恩恵を受ける可能性がありますが、固定資産税の負担も伴います。一方、賃借権であれば、初期費用が抑えられる場合があるものの、毎月の地代負担や契約更新時の条件変更、地主との関係性などが考慮事項となります。したがって、マンションを検討する際には、敷地権の種類が何であるかを確認することが極めて重要です。

敷地権割合とは?

敷地権割合とは、マンションの敷地全体(土地)に対して、各区分所有者が持つ権利の割合のことです。言い換えれば、マンションの土地全体を区分所有者全員で共有している場合に、それぞれの住戸の所有者がどれだけの割合の土地の権利を持っているかを示す数値です。

計算方法

敷地権割合は、原則として、マンションの管理規約に特別な定めがない限り、各専有部分(住戸)の床面積が、マンション全体の専有部分の総床面積に占める割合によって決まります。具体的な計算式は以下の通りです。各専有部分の床面積÷専有部分の総床面積=敷地権の割合 例えば、マンション全体の専有部分の総床面積が1000m2で、ある住戸の専有部分の床面積が50m2であれば、その住戸の敷地権割合は50÷1000=1/20となります。

  • その意味と重要性
    この敷地権割合は、単に土地の権利の持ち分を示すだけでなく、以下のような様々な場面で重要な意味を持ちます。

    ​​〈税金の負担割合〉
    固定資産税や都市計画税のうち、土地にかかる部分の税額は、この敷地権割合に応じて各区分所有者に按分されます。
    ​​〈管理費・修繕積立金の算定根拠〉

    管理費や修繕積立金の額も、敷地権割合(または専有部分の床面積割合)を基準に算定されるのが一般的です。ただし、管理規約によって異なる定めがなされることもあり、その内容が著しく不公平な場合はトラブルの原因となることもあります。
    ​​〈議決権の割合〉

    マンションの管理組合の総会における議決権も、原則として敷地権割合(または専有部分の床面積割合)に応じて配分されます。
    ​​〈建て替え時の権利変換〉

    将来、マンションを建て替える際には、新しい建物の権利や負担金の配分などが、この敷地権割合を基礎として決定されることが一般的です。

このように、敷地権割合は、マンションにおける経済的な負担や権利行使の公平性を保つための根幹となる数値です。そのため、マンションの購入時には、ご自身の住戸の敷地権割合を正確に把握しておくことが不可欠です。

敷地権割合の意味と重要性

敷地権割合は、単に土地の権利の持ち分を示すだけでなく、以下のような様々な場面で重要な意味を持ちます。

  • 税金の負担割合
    固定資産税や都市計画税のうち、土地にかかる部分の税額は、この敷地権割合に応じて各区分所有者に按分されます。
  • 管理費・修繕積立金の算定根拠
    管理費や修繕積立金の額も、敷地権割合(または専有部分の床面積割合)を基準に算定されるのが一般的です。ただし、管理規約によって異なる定めがなされることもあり、その内容が著しく不公平な場合はトラブルの原因となることもあります。
  • 議決権の割合
    マンションの管理組合の総会における議決権も、原則として敷地権割合(または専有部分の床面積割合)に応じて配分されます。
  • 建て替え時の権利変換
    将来、マンションを建て替える際には、新しい建物の権利や負担金の配分などが、この敷地権割合を基礎として決定されることが一般的です。

このように、敷地権割合は、マンションにおける経済的な負担や権利行使の公平性を保つための根幹となる数値です。そのため、マンションの購入時には、ご自身の住戸の敷地権割合を正確に把握しておくことが不可欠です。

敷地権の法的根拠:区分所有法と不動産登記法

敷地権という制度は、日本の法律によって明確に規定され、運用されています。その主要な法的根拠となるのは、「建物の区分所有等に関する法律(通称:区分所有法)」と「不動産登記法」の二つの法律です。これら二つの法律が両輪となって、敷地権制度を支えています。

これら二つの法律が相互に連携することで、敷地権制度は法的に有効なものとして機能し、マンション取引の安全と権利関係の明確化に貢献しています。したがって、敷地権を理解するためには、これらの法律がどのように関わっているかを知ることが重要です。

区分所有法

区分所有法は、マンションのような区分所有建物の権利関係や管理運営に関する基本的なルールを定めた法律です。敷地権に関しては、特に以下の点が重要です。

区分所有法は、敷地権とは何か、なぜ分離して処分できないのかといった「実体的なルール」を定めています。

  • 敷地利用権の定義:区分所有法第2条第6項で「敷地利用権」を「専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利」と定義しています。
  • 分離処分の禁止:区分所有法第22条第1項本文で、専有部分と敷地利用権を原則として分離して処分することを禁止しています。これが敷地権制度の核心となる規定です。
  • 共同利益背反行為の禁止:区分所有法第6条第1項では、建物の保存に有害な行為や区分所有者の共同の利益に反する行為を禁止しており、これも敷地の適正な利用と関連します。 

不動産登記法

不動産登記法は、土地や建物に関する権利の登記手続きについて定めた法律です。敷地権に関しては、以下の点が重要です。

  • 敷地権の登記:敷地権である旨の登記(敷地権たる旨の登記)や、敷地権の目的たる土地の表示、敷地権の種類・割合などを登記簿にどのように記載するかを具体的に定めています。
  • 登記の一体性:敷地権の登記がされると、原則として土地の登記簿には新たな権利変動が記録されず、建物(専有部分)の登記簿で敷地の権利も一体的に公示される仕組みを規定しています。
  • 不動産登記法は、土地や建物に関する権利の登記手続きについて定めた法律です。敷地権に関しては、以下の点が重要です。

    不動産登記法は、区分所有法で定められた敷地権という権利形態を、どのように登記簿に記録し、公示するかという「手続き的なルール」を定めています。

分離処分禁止の原則とは?

「分離処分禁止の原則」とは、区分所有法第22条第1項本文に定められている、敷地権制度の最も根幹をなすルールです。これは、マンションの専有部分(個々の住戸など)と、その専有部分に係る敷地利用権(敷地権の基礎となる土地の権利)とを切り離して、それぞれ別個に売却したり、譲渡したり、抵当権などの担保権を設定したりすることを原則として禁止するというものです。

この原則の目的は、マンションの機能的な一体性を維持し、権利関係の複雑化を防ぐことにあります。もし専有部分と敷地利用権がバラバラに処分できてしまうと、「建物は所有しているが土地の権利がない」あるいは「土地の権利はあるが建物は他人のもの」といった不安定な状態が生じ、マンションとしての利用や価値が著しく損なわれる可能性があります。分離処分禁止の原則は、このような事態を防ぎ、区分所有者が安定して専有部分を使用収益できるようにするためのものです。

  • 原則
    専有部分と敷地利用権は一体として扱われ、一方を処分すれば他方もそれに伴って処分されます。例えば、マンションの一室を売却すれば、その部屋に対応する敷地権も買主に移転します。
  • 例外規定
    ただし、この原則にはいくつかの例外が認められています。
    1. 規約による別段の定め:マンションの管理規約で、専有部分と敷地利用権の分離処分を認める旨の特別な定めを設けることができます(区分所有法第22条第1項ただし書)。この場合、規約の定めに従って分離処分が可能となります。 
    2. 分離処分が禁止される前に設定された抵当権の実行:えば、マンションが建設される前に土地だけに抵当権が設定されており、その抵当権が実行されて競売された場合、土地の権利だけが第三者に移ることがあります 。  
    3. 性質上一体的な処分が不可能な場合:例えば、敷地利用権が賃借権である場合、賃借権には抵当権を設定できないため、建物(専有部分)にのみ抵当権を設定することは分離処分には当たらないと解されています。

分離処分禁止の原則は敷地権制度の核心であり、これによってマンションの権利の安定性が保たれています。しかし、例外規定の存在も理解しておくことが、特殊なケースに対応する上で重要となります。特に規約による例外は、そのマンション独自のルールとなるため、内容をしっかり確認する必要があります。

敷地権の確認方法:登記簿謄本の見方とポイント

マンションの敷地権に関する正確な情報は、法務局で取得できる「登記事項証明書(一般に登記簿謄本と呼ばれるもの)」によって確認することができます。この登記事項証明書は、いわば不動産の戸籍のようなもので、権利関係を公に示す最も信頼性の高い書類です。

敷地権付きマンションの登記事項証明書は、主に以下の部分で構成されており、それぞれに確認すべきポイントがあります。

  1. 表題部(一棟の建物の表示):

    • ここには、マンション全体の建物に関する情報が記載されています。
    • 「敷地権の目的たる土地の表示」という欄があります。ここには、敷地権の対象となっている土地の所在、地番、地目(土地の種類、例:宅地)、地積(土地の面積)などが記載されています。複数の土地にまたがってマンションが建っている場合は、それら全ての土地が表示されます。
  2. 表題部(専有部分の建物の表示):

    • ここには、個々の住戸(専有部分)に関する情報が記載されています。家屋番号、建物の種類(例:居宅)、構造、床面積などがわかります。
    • 「敷地権の表示」という欄があります。ここには、以下の重要な情報が記載されています。
      • 敷地権の種類:所有権、賃借権、地上権など、その敷地権がどのような種類の土地利用権に基づいているかが示されます。
      • 敷地権の割合:その専有部分が持つ敷地全体の権利に対する割合(共有持分)が分数などで表示されます。
  3. 権利部(甲区):

    • 所有権に関する事項が記載されます。敷地権付きマンションの場合、専有部分の所有者が誰であるかがここに記載されます。敷地権の登記がされていると、原則として土地の登記簿の甲区には新たな所有権移転登記はされず、建物の登記簿の甲区で一体的に公示されます。
  4. 権利部(乙区):

    • 所有権以外の権利(抵当権、賃借権など)に関する事項が記載されます。住宅ローンを利用している場合などは、ここに抵当権設定の登記がされます。

確認の際の注意点:

  • 土地の登記事項証明書も確認
    原則として敷地権化されたマンションでは建物の登記事項証明書で敷地の権利も公示されますが、地役権や一部の地上権など、建物の登記簿には記載されず、土地の登記簿にのみ記載される権利も存在します。そのため、特に古いマンションや複雑な権利関係が予想される場合は、念のため敷地となっている土地の登記事項証明書も取得して内容を確認することが推奨されます。
  • 登記情報の正確な読解
    登記事項証明書は専門的な用語や形式で記載されているため、正確に読み解くにはある程度の知識が必要です。不明な点や疑問点があれば、司法書士などの専門家に相談することが賢明です。

登記事項証明書は、敷地権の有無、種類、割合といった基本的な情報から、所有者や担保権の設定状況まで、マンションの権利に関するあらゆる情報が詰まった「カルテ」のようなものです。不動産取引を行う際には、この内容を正確に理解することが、後のトラブルを避けるための第一歩となります。

【登記事項証明書】登記簿謄本とは?(種類、記載内容、取得先を解説)

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